「とある朝のひととき」
REIM
(MAIL)
パティにとって『悪夢』の誕生日が終わった4日後の話…。
ごぉ〜ん、ごぉ〜ん…
セントウィンザー教会から朝6つの鐘の音が聞こえて来る。
「…ん…6時…か…」と寝ぼけ眼をしたパティがむっくりを起き上がり…、
ぽて
あ? また寝た…。
「こらぁっ! パティ、起きなさぁいっ!」
どがっ!
彼女の胸の辺りに母親の肘が降って来る…。
「ちょっとぉ〜! 実の娘を殺す気っ!?」少しだけ目が覚めたパティが母親にくってかかる。
「二度寝するからよ。それより早く起きてお店手伝いなさいっ!」「わぁかったわよぉ…あと5分……寝かせて…」
ぽて
「三度寝するんじゃないのっ!」
…次の瞬間…青筋を浮かべた母親の踵が…パティの後頭部に炸裂した…。
同時刻、ティアンズ生花店では…。
「…あ?…もう…6時…ですね…」とミュンは呟くと…隣で寝ているはずの夫を起こさない様にそっとベッドから抜け出し…、
ごんっ
足を滑らせて…床に顔を打ち付ける…。
「…いったぁ……ほっ…大丈夫…みたいですね…」今の物音にナッツが気付かなかった事に安堵し−転んだ事は二の次−…
そっと寝室から抜け出すミュン−鼻の頭が少し赤いが−である…。
「…ふう…やれやれ…だな…」妻の姿が見えなくなったのを気配で確認したナッツがこう呟きながら身を起こす。
…彼は30分前から狸寝入りをしていたのだ…考古学者を目指していた彼は−今でも歴史書をよく読んでいる−『発掘現場では
早起きが肝心』とどんなに遅く寝ても5時半に目覚める様に訓練していたから…。
「…ミュンの為とはいえ…起こされるまで寝たふりをするのも…疲れるもんだなぁ…」と苦笑いすると同時に…。
「きゃあっ!?」
ずってんっ!
…今度は階段を踏み外して…尻餅をついたミュンの悲鳴が聞こえて来た様な気がするナッツである…。
それから…1時間が過ぎた7時頃…。
「ただいまぁ〜」日課のジョギングを終えたパティが『さくら亭』に戻って来る。
「戻ったか…すぐ厨房に入って、ジャガイモの皮を剥いてくれ。それと…」と矢つばきに指示する父親。
「はいはい、今やりますってばぁ〜」とロールパンを一つ、口の中に放り込むと言われた通りに仕込みを始めるパティ。
「ふう、これでいいですね…さてと…」朝食の支度を終えたミュンが夫を起こしに2階に上がる。
寝室に戻ったミュンは、
「あなた、朝食の支度が出来ましたよ。起きて下さい」と言って身体を揺さぶる。
「ん…おはよう、ミュン」少し芝居がかった声で−妻にはまだ気付かれていないと思っている−身を起こすナッツ。
「おはようございます。さ、早く着替えて下さい」「ああ、そう急かさないで」と普段着に着替えるナッツである…。
7時半過ぎ、シェフィールド邸では…。
「お嬢様、朝食の準備が出来ました」とジュディがシーラを起こしに来る…。
「………ふぉう?……ひま……ほひるわ……(通訳:「………そう?……今……起きるわ……」)」ぼぉ〜っとした表情で
上体を起こすシーラ…。
「お嬢様?」「………ふぁい?……」「はぁ…」とほぼ毎朝の事とは言え…シーラの寝起き姿を見て溜息をもらすジュディ…。
たまに自分一人で起きてくれる分、寝起きが物凄くよくないトリーシャよりは少しマシだが…朝の弱い彼女の寝起き姿は…
とてもじゃないが『お嬢様』とは言えない…。
…こういう場合、ジュディのとるべき手はただ一つ。
「…しっかりして頂かないと…そのお姿をフォートにおさめてフィム様にお見せ致しますが?」
「っ!!! おはよう、ジュディ」…どうやら自覚があるらしく…自分の寝起き姿だけは…見られたくない様だ…。
(はぁ…フィム様を御一緒になられたら…ご心配ですわ…)思わず自分の事の様に心配してしまうジュディであった…。
8時、開店した『さくら亭』。
カララン…♪
「あ、いっらしゃい♪ あれ? 珍しい組合せですね」と団長と夜勤明けのリカルドが一緒に店に入って来た事に
少し驚くパティ。
「ん、今、家に帰っても朝食にはありつけそうにもないからね」と口を開くリカルド。
「あははは、それでご注文は?」とてきぱきとオーダーを取るパティ。
「それでは朝定をお願いします」「私もそれでいい」「はいはいと。朝定2つぅ〜」
これから始る修羅場前ののどかなひとときである…。
8時半前、ティアンズ生花店では。
「ミュン、そっちの方は?」「ええ、今、お水をあげたところです」朝食を摂り終えた二人は、開店準備に余念がない。
「え〜と…今日の配達予定はと…『ラ・ルナ』だけか」注文票を確認するナッツ。
「あ、昨日、バクスターさんから注文を受けてますよ」「どれどれ…」
8時半、ティアンズ生花店開店。
…8時45分…。
「…むにゃむにゃ…」…いつもの事とはいえ…まだ寝てるのか? トリーシャ…。
「トリーシャ、そろそろ、起きて欲しいのだが?」部屋の外から帰宅した父親の声が聞こえる…。
「…うるさいなぁ…もう1時間寝かせてよぉ…」…おい…。
「私は別にかまわないが…今日は朝から学校ではなかったのか?」とリカルド。
「……今…何時ぃ…?」「8時40分を過ぎたところだ」「…8時…40分…?」
・・・・・・・がばぁっ!!
「遅刻だあっ!!!」慌てて跳ね起きるトリーシャ…。
…大慌てで学園に駆け込んだトリーシャであったが…出欠中の教室への忍び込みに失敗し…そのまま廊下に直行した事を
付け加えておく…。
9時。
からんからん♪
「おはよう、フィムくん」「おはよう、シーラ。今日も早いね」ジョートショップで依頼票の振分けをしていたフィムが
顔を上げる。
「そりゃあ、誰かさんがいるからだろう」とからかうアレフ。
「そう言うアレフさんはデート資金がなくなったから来たんじゃないっスか?」「テディ!! 余計なコトを言うなぁ!!」
…どうやら…図星らしい…。
「それで、今日のお仕事は?」「ん、今日は…」打合せを始める3人…。
…この日のエンフィールドの街は…昼頃、マーシャル武器店が大音響とともに半壊しただけで…平穏な日であったという…。
≪Fin≫
[あとがき]
REIMです、今回は少し趣向を変えて、朝6時から9時までのシーラ,ミュン,パティ,トリーシャの
行動(特に寝起き)を書いてみました(笑)。
まあ、ほんの少しだけキャラをくずしたかたちで書いてみましたけど(←ホントか?)、どうだったでしょうか?
今、『ある』キャラを主人公にした小説を書き起こしているところです。
連休中に掲載出来る様に書いているのですけど…出来るかなぁ…。(←ちと不安…)