中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「しすたーず・ぱにっく≪中編≫」 REIM  (MAIL)
 そして…運命の朝…。

   カララン…♪
 「おはよう御座います」と挨拶しながら瑞穂が『さくら亭』に入って来る。
 「おはよう、瑞穂。クリスなら、そこにいるわよ」と指を差すパティ。
 「あ、おはよう…瑞穂さん…」…ティーカップを手にしながら、そわそわした様子で挨拶するクリス…。
 瑞穂は「はぁ…」と溜息を一つもらすと…クリスの向かいの席に座る。
 「クリスさん、そんな事ですと上手くいくものも上手くいかなくなりますよ? 少し自信を持って下さい」と励ます瑞穂。
 「そ、それは…そうですけど…」「それともう一つ。人とお話しする時は相手の人の目を見て、お話しする事」と瑞穂。
 …でも…その相手が女性だと…クリスにとってはちょっとした拷問だよな…。
 「それは…そのぉ…」「いいですね?」「…はい…」瑞穂の勢いにのまれて返事をするクリス…。
 「…どっちが年上なんだか…」少し呆れながら瑞穂の前にハーブティーを置くパティ…。
 ちなみに…7月現在、クリスは18歳、瑞穂は17歳である…。
 「それはそうと、お姉さん達は何時頃、到着の予定ですの?」と尋ねる瑞穂。
 「お昼ごろと言っていますけど…?」答えるクリス。
 「今10時過ぎたところですから、お時間はありますね」と言うと同時に…席を立ち、クリスの腕を取る。
 「あ、あの?」「丁度いい機会ですし、『ラ・ルナ』でお食事でもどうですか?」彼を立たせると…すぐに腕を組む瑞穂…。
 「あ、あのぉ…腕を…放してもらえませんか…?」真っ赤になってお願いする…。
 「あら? 今日一日だけ私達は『恋人』同士ですよ? こう腕を組むのは当然ですよね?」
 これを見ていたパティは…「それくらい我慢しなさいよ」と口を開く…但し、口調は『もう好きにして』であったが…。
 「それでは行きましょうか」と言って『さくら亭』を出た…。
 残されたパティは…。
 「やれやれ…ね。まあ、瑞穂がいるから何とかなる…かな?」と呟きながら、二人がいたテーブルを見ると…ティーセットが
 2組あるのが目に入る…。
 「…ハーブティー、飲み逃げされた…」…パティちゃん、頭のネジ1本緩んでない…?

 「あ? 出て来たよ…うぅ、いいなぁ〜。腕なんか組んじゃって…」と物陰から二人−クリスと瑞穂−を見守る(?)
 人物が3人…。
 「しかし…クリスも角には置けないな…『演技』とは言え、女の子と『デート』とは、な」
 「あは、ナンパばっかしてる誰かさんとは大違いだね」「…トリーシャ…それ、俺のコトかぁ?」うめく様にアレフ…。
 「きゃは、アレフくん、自覚あったんだ」「…ローラ…人のコト言えるのか…?」とローラを軽く睨むアレフ。
 「女のコがね、男のコを取っかえ引っかえするのはいいのっ」「…それはそれで…問題あると思うんだけど? ボクは…」
 …二人の少女のうち、どちらが正しい意見を言っているかは…各人の判断にお任せする…。
 「おっと、こんなトコで漫才なんかしてる場合じゃないぞ」慌ててクリス達の尾行を開始するする3人である。

 「どこに行くのかなぁ?」と尾行しながらトリーシャ。
 「う〜ん、この方向だと…『ラ・ルナ』じゃないか?」と推測を口にするアレフ。
 しばらくして…アレフの推測通りに『ラ・ルナ』に入ってしまうクリスと瑞穂…。
 「う〜、どーしよぉ〜」「どーしようって…誰かが中に入るしかないだろ?」「誰がなのよ?」と会話する3人。
 …『二人が出て来るまで待つ』という選択は思いつかんのか…?
 「お前ら…ここで何してんだ?」と後ろから声をかけられ、心臓が止まるくらい驚く3人。
 「!? なぁんだ、おにいちゃんかぁ。もう、びっくりさせないでよっ」口をとがらせてティルトに文句を言うローラ。
 「なんか、やましいコトでもしてたのか?」「そ、そんなことないよぉ」慌てて否定するローラ…。
 「てへ、ボク、いいコト思いついちゃった♪」さっきからじぃっとティルトを見ていたトリーシャだが、突然、ぽんっと
 手を叩くと嬉しそうにこう口を開いた。
 「『いいコト』って、どんなコトだよ?」尋ねるアレフ。
 「えへへ、こうするの」と言うや否やティルトの腕に抱きつくトリーシャ。
 「お、おいっ! トリーシャ!?」突然の事に慌てるティルト。
 「ティルトさん、『ラ・ルナ』でお食事しようね♪」「待てっ、俺はまだ仕事中だぞっ! それに、だっ!」
 「トリーシャちゃん、あったまいいっ」ティルトの抗議を聞かなかった事にして…ローラが感心する。
 一方、アレフは、
 「ひょっこりとセリーヌが現れたりしてな」とからかい口調でこう言う。
 それに対し、ローラは『そんな小説みたいなコト、あるわけないじゃない』と笑いながら口を開こうとしたが…それは
 出来なかった…何故なら……。
 「…トリーシャさん…ティルトさんに抱きつかないで下さい…」とタイミングよくセリーヌがそこに現れたから…。
 しかも…分かる人は少ないが…凄く怒っている顔で…。
 「あ、あははは…セリーヌさん…おはよう…」彼女の姿を見て…脂汗だらだらで慌てて作り笑いをするトリーシャ…そして、
 目でアレフとローラに助けを求める…が。
 「やあ、ローラ。奇遇だねぇ」「あは、ほぉんと奇遇よねぇ」…身の危険を感じ…咄嗟に他人のフリをする二人…。
 (うぅ…二人ともズルイよぉ…)心の中で嘆くトリーシャ…。
 「…ティルトさん…トリーシャさん…」『…あ、あははは…』…ティルトとトリーシャにおしおきしようとして…彼らに
 向かって腕をあげるセリーヌと…多少罪悪感を感じながらもトリーシャの無事を祈るアレフとローラに…セリーヌへの言い訳を
 必死になって考えているティルトとトリーシャ…。
 …そして…2分後……最大腕力でセリーヌに張り倒されたティルトとトリーシャの悲鳴が響き渡った…。

 「あれ? 何か悲鳴が聞こえたみたいですけど?」とメニューを手にしたクリスがウェイターに尋ねる。
 「少々、お待ち下さい」と言い残してオーナーのところに行くウェイター。
 …何やら入口の方でオーナーとウェイターが話し込んでいたが…暫くしてクリス達のところに戻って来る…。
 「どうも…トリーシャさんとセリーヌさんが…外でケンカしていたみたいでして…」と答える…。
 「…トリーシャちゃんの悲鳴ですね…さっきのは…」なんとなぁく…結果が分かってしまうクリス…。
 「ところで、ご注文は?」「あ、すみません」と言ってオーダーを出す二人。
 「私、セリーヌさんの事、嫌いです…」オーダーを出した後、ぽつりとこう呟く瑞穂…。
 「え? どうしてですか?」「…この前、お姉さんに怪我させたから…」と小声で答える…。
 …丁度その時、クリスはクラウド医院にいなかったが…後からディアーナに聞いた話だと…肋骨のヒビだけで済んだのは
 奇跡だという事だったらしい…。
 「それで、怪我の方は治ったんですか?」「ええ、おかげさまで…と言いたいところですけど…」力無く呟く…。
 「?? 何かあったんですか?」尋ねるクリス。
 「…昨日、おじい様とメイスのお稽古をしていた時に…今度は…腕の骨にヒビが入ってしまわれて…」と顔を曇らす瑞穂…。
 (…そう言えば…瑞穂さんは、お姉さんっ子って誰かが言っていましたっけ…きっと優しい人なんでしょうね…)
 ふと思うクリス…。
 「…色々、大変なんですね…だったら、今日のことは…なしということで…」と気を利かせようとするが、
 「いえっ、約束は約束ですっ」「…はぁ…でも、無理しなくてもいいですよ…」と言いつつも内心では、
 (僕も…美穂さんみたいなお姉さんが欲しかったなぁ…)とうらやましがるクリスである…。

 それから…正午すぎ…。
 クリスと瑞穂は出迎えの為に祈りと灯火の門の前にいた。
 「遅いですね…」「え、ええ…」と答えるクリス…でも内心は(お願いですから…来ないで下さい)であったが…。
 大抵こういう場合は…いきなり背後から…、
 「…クリス…今、あたし達が来ませんようにって思っていなかった…?」と声を掛けられるんだよねぇ…。
 「そ、そんなこと、思っていませんよぉ〜」慌てて後ろを振り返り、こう言葉をつむぐ。
 …二人の後ろには、3人の女性が立っている…会話からするとクリスの姉達であろう…。
 「そうかしら? その割には随分と慌てているけど?」年の頃、20歳前後の女性が指摘する。
 (きっと思っていましたね…クリスさん…)と内心で突っ込む瑞穂。
 それを表に出さずに、
 「あの、クリスさん。私に紹介して欲しいのですけど?」と口を開く。
 その台詞をきっかけに自己紹介を始める5人である…。

 「ふうん…瑞穂ちゃんって、うちの弟と同じクラスなんだ」とクリスより1つ上の姉がこう口を開く。
 「ええ」と相づちを打つ瑞穂。
 「クリス、あなたも角に置けないわね」「え、ええ、まあ…」弟を肘でつつく次姉−クリスとは2歳上である。
 「あ、そうそう、お土産を持って来たんだけど」と長姉−4歳違い−がクリスに紙袋を手渡す。
 「なんですか、これ?」「ワンピースよ」…この長姉の台詞を聞いた瞬間、クリスばかりか…瑞穂も言葉を失う…。
 「…どうして…僕に女の子の服を着せようとするのですか…?」絞り出す様な声で抗議するクリス。
 「だって似合うじゃないの」と次々姉が突っ込んで来る…。
 ちなみに瑞穂は…(う、噂に聞いていましたけど…これ程とは思いもよらなかったわ…)と思っていたりする…。
 「さてと…お二人さん、街の中を案内してくれるかしら?」と切り出して来る次姉。
 「え? あ、はい。分かりましたわ」と返事をするとクリスの手を取ると−これだけで顔が真っ赤になるクリスである…、
 「それじゃあ、行きましょうか?」と街を案内する為に歩き始めた。

 「あら? ここは?」「ここはですね、陽のあたる丘公園と言いまして…」と既にガイド役状態の瑞穂。
 クリスはというと…時たま、補足を入れるくらいで…ほとんど…黙っていたりする…。
 「ふぅん…そうなんだ…って、姉さん、どーしたの?」とさっきから静かにしている次姉の方を見る次々姉。
 「……素敵な人…」ぽつりと呟く…彼女の表情は…『夢みる乙女』の顔である…。
 「も、もしかして…?」「いつもの『病気』…ね」と会話する長姉と次々姉…。
 「あの、クリスさん…『病気』って…?」小声で尋ねる瑞穂…。
 「…お姉さんは…ハンサムな人を見ると…すぐ一目惚れしてしまうんですよ…」小声で答える…こめかみに冷や汗が浮かぶ…。
 …但し、結果は…全部が全部、次姉がフラれておしまいである……最も、そのとばっちりを受けるのは…いつもクリスである…。
 「そ、そうですか…ところで誰なのかしら?」と次姉の視線を追い…自分の目を疑う瑞穂。
 「…クリスさんのお姉さんの感性を疑ってしまいますわ…」呆然と呟く…。
 …この瑞穂の呟きを聞くや否や…弟を睨む長姉と次々姉…。
 「…なぜ、僕を睨むんですか…?」…多分…瑞穂の彼氏(取りあえず、そのフリだけど)だからじゃないのかな…?
 「ん? クリス、瑞穂。なにやってんだ? ところでそっちの人達は?」と彼らに気付いたフィムが声を掛けて来る…当然、
 シーラも一緒である…。
 「え、えと、こちらは…僕のお姉さんで…」と紹介しようとするクリスだが…。
 「初めまして、クリスの姉の…」と次姉が紹介している弟を無視して−しかも…瞳をうるうるさせながら−フィムの手を
 取ろうとする…が。
   ぺし
 …彼の隣にいる黒髪の少女に手をはたかれる…。
 「な、何をなさるんですかっ!?」とシーラに抗議する次姉。
 「それは私のセリフですっ! 人の彼氏にちょっかいをかけないで下さいっ!」と言い返す。
 「本当なの、クリス?」「ええ、まあ…」長姉に尋ねられて、こう答えるクリス。
 「で、ただ付き合っているだけなの?」と弟に尋ねる次々姉…その視線は…只今冷戦中の二人の女性に向けられている…。
 (う〜ん…ここは『いえ、婚約してます』と答えないと…後でパティさんに殴られそうですね…)
 と内心、考えていた−そして、行動に移そうとしていた−瑞穂だが…クリスの「ええ、そうです」の二音節で無に帰した…。
 (…クリスさん…私の代わりにパティさんに殴られて来て下さい…)…問答無用で真っ先にフィムが殴られると思うが…?
 「それなら婚約していないのですから…他の人とお付合いしても問題はありませんわね」と勝ち誇った顔で次姉。
 それに対し、クリスをジト目で睨んでいたシーラはというと。
 「あら、フィムくんは留学してた私が帰って来るまで…フィアンセを待つ様にずっと待っていてくれたわ」と『フィアンセ』の
 ところを強調してきっぱりと言い返す…それにしても………随分と言う様になったね…シーラちゃん…。
 その答えを聞くや否や、キッ!とシーラを睨む次姉。
 睨まれたシーラも負けじと睨み返す。
 ……二人の間で…激しく火花が散っていたりするのは……気のせい…なんだろうか…?
 「…なんか…シーラさん、性格変わっていません…?」…やっとの事で呟くクリス…。
 「…『恋は女性を強くする』は…本当だったのね…」しみじみと呟く瑞穂…。
 …この状態が永遠に続くかと思われ始めた時。
 「シーラ、そろそろ行こうか?」「フィムくん、ちょっと待って…きゃっ!?」フィムにいきなり抱き上げられた事で
 小さな悲鳴を上げる。
 「それじゃあ、俺達はこれで…」とシーラを抱かかえたまま立ち去るフィム…。
 抱かかえられた方は…少しもイヤそうな顔をしていないばかりか…次姉に向かって小さく舌を出していたりする…。
 一方、残された5人はというと…。
 「あの子、意外と子供っぽいところあるんだ…」と次々姉が言葉をつむぐ。
 「ええ、そうみたいね」相づちを打つ長姉。
 「…シーラさんの意外な一面を見たわ…」「ええ…僕もです…」これは瑞穂とクリス。
 舌を出された方は…わなわなと拳を震わせ…「…クリス…何故、お手紙で紹介してくれなかったのかしら…?」とうめく…。
 「…書くのを…忘れてました…」たじろぎながら答えるクリス…。
 「クリス…長生きしてね…」と十字を切る長姉…見ると…次々姉も手を合わせて祈っていたりする…。
 …この後の事を想像してしまったのか…姉弟達から目をそらす瑞穂…。

 …この直後に…次姉の手加減無しチョークスリーパーが…クリスの首にきまっていた事を…ここに記しておく…。


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