中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「海へ行こうっ!〜第1話−パティ、幹事になる〜」 REIM  (MAIL)
 季節は真夏の8月。
 大抵、福引きというものは12月と相場が決まっている様だが、夏に行うところだってある…というわけで…。
 「大当たりっ! 特等レイグランデ・ビーチ、ペアで3泊4日っ!」威勢のいい声が響き渡る。
 「……それって…あたしに対する当てつけぇ…?」とジト目で睨むパティ…。
 「おいおい、ワシじゃなくてクジ運の神様にでも文句を言ってくれよ」と苦笑しながら彼女に目録を渡す。
 「はあ…当たっちゃったものは仕方がないか…どーしよ、これ…?」と呟く…。
 この時、彼女は大事な事を忘れていた…ここは人通りも多いさくら通りである…よって…、
 「あ? パティちゃん、それ当たったんだっ!」ローラに見つかってしまった…。
 そして「みんなに言いふらしてこようっと!」と言い残して走り去るローラ…その間、何も出来なかったパティ…。
 「厄介なのに見つかったな」振り返ると苦笑しているティルトが立っていた…。
 「あんたなら、どーする?」「パティとは違って誘う相手がいるからな、俺は」答えるティルト。
 「どーせ、あたしはデートする相手もいない不幸な娘ですよーだっ」とあっかんべーをするパティ…これじゃあ…子供だよ…。
 それを見て苦笑しながらティルトも福引きをする…缶詰だけとはいえ、頻繁に買い物をしてるから福引き券は貯まっている。
 「よかったじゃない、特等が当たってさぁ」さっきの仕返しとばかりとパティ。
 そう、呆然としているティルトの手には特等の目録があるのだ…。
 「ま、いいか。俺なら誘う相手もいるし」とティルト…だが、この時、彼はとてつもなく重要すぎる事を失念していた…。
 この近くには…食材も扱っている夜鳴鳥雑貨店があるのだ…。
 「…ティルト様…そこにセリーヌ様をお誘いして行かれるのですね…?」と突然、クレアの静かな怒りの声が聞こえてきても
 別に不思議な事ではない…。
 「げっ!? クレアっ!? それにアルベルト…って、なぜクレアに槍を渡してるんだっ!?」と抗議するティルト。
 「いや、渡したんじゃなくてだな…奪われたんだが…」…妹に槍を奪われてどーする…?
 「あははは、あんたも大変ね」とパティ…ふと、何かがひらめく…。
 「あ、クレア。これで兄貴とでも行って来たら? 行き先はこいつと一緒だから見張るコトもできるわよ」と提案する。
 「パティ様…折角ですがティルト様から誘って頂きませんと…意味がありませんわ…」と答えるクレア…。
 「…あんたも律儀ねぇ…」「それがこいつの取り柄だからな…」呆れるパティと疲れた顔を見せるアルベルト…。
 「はあ…父さん達にあげよっか、これ…」取りあえず『さくら亭』に戻る事にするパティ。
 「とっとと彼氏作って、行って来やがれっ!!」背後からヤケクソ気味のティルトの声が聞こえて来た…。

 「はぁ〜、どーしよ、これ?」と『さくら亭』に戻ったパティがカウンターで目録を手に溜息をついていた。
 ちなみに厨房にいた父親に『母さんと二人で行って来たら?』と振ってはみたが…『店を休むわけにはいかん』
 と切り返されただけであった…。
 「で、どーするんだ? 誰と行くつもりだ?」とくちばしを挟んでくるアレフ−この時、『さくら亭』にいたのはアレフと
 シーラとリサの3人である。
 「アレフ、あんたにあげるから誰か誘って行って来てよ、あ、お土産よろしくね」これに対するアレフの答えは、
 「そんなコトしようもんなら…俺の命が危ない」このところ、デートのブッキングに対する女の子達の『報復』が段々と
 エスカレートしているから…そのうち、命が危なくなるわな…。
 「…あんたねぇ…ったく、もう…じゃあ、シーラにあげるわ。あんた達なら問題ないでしょ?」でも…あったりする…。
 「パティちゃん、フィムくんが…アリサおばさまを留守番にしてまで…遊びで泊りがけの旅行に行くと思う?」
 「…思えないわね…」シーラの指摘に同意せざる得ないパティ…。
 「だったら、トリーシャにでもあげたら?」とリサ。
 「それこそムリだってば。リカルドおじさんが仕事を休んでまで行くと思う?」パティの切り返しにしばし考えて、
 「…それもそうね…」と答えるしかないリサ…。
 「瑞穂ちゃんはどうかしら?」このシーラの提案に対し、
 「…パティ…クリスの命が危ないから…それだけは…やめてくれないか…?」と真剣な表情でパティに頼むアレフ…。
 「ははは…」乾いた笑いを浮かべるしか出来ないパティ…。
 「瑞穂のかわりに美穂はどうだ? あいつなら問題ないんじゃねーのか?」とアレフ。
 「う〜ん…やっぱダメね」「なんでだ?」「だって、美穂以外、自警団って問題児だらけよ?」と答えるパティ…。
 「そうだね。アルベルトにティルト、カリンの3人がその筆頭だしね」と同意するリサ。
 「結局、誰も行けないんじゃないか?」と締めくくるアレフ。
 「なんか、もったいないね」これはリサ。
 パティは黙って目録を眺めていたが…突然、
 「ねえ、シーラ。アリサおばさんが一緒に行くとなったら…フィムもついて来ると思わない?」と切り出す。
 「ついでにシーラもな」と笑いながら茶化すアレフ。
 「うん、もちろんよ」しっかり肯定するシーラ。
 「…相変わらず仲がよろしいようで…で、その目録の処分に困ったからみんなを誘っていくつもりかい、パティ?」と少し
 呆れた口調で口を開くリサ。
 「あははは、分かる?」「まあ、ね。あんたとの付き合いも長いしね。で、旅費はどうするんだい?」と聞くリサ。
 「そりゃあ、あたしが誘うんだから…それくらい出さないと、ね」答えるパティ。
 「私の分は自分で出すわ。こう見えても結構、講演料とか貯まっているし」とシーラ。
 「そうだな、シーラの言う通りだな。俺も自分で出すぜ」と同意するアレフ。
 「なに言ってのよ、あたしがムリに誘うのだから…」というパティの台詞をさえぎる様に。
 「いえ、無理にパティさんが全額出す必要はありませんよ」というミュンの声が聞こえて来た。
 「いつからいたの?」「今、来たばかりですよ」とパティに答えるミュン…続けて、
 「さっきも言いましたけど、パティさんが全員の旅費を出す必要はありませんよ」と念押しする。
 「そうだな、確かにミュンの言う通りだな」「うん、そうね」と頷くアレフとシーラ。
 ミュンがテーブルにつくと同時に何やら相談を始める3人…。
 「あのさ、なにやってんの?」気になって尋ねるパティ。
 「クリスやシェリル、ローラ達の旅費を稼ぐ相談」あっさり答えるアレフ。
 「は?」「旅費のことは私達にまかせてパティさんは日程とか調整をお願いします。あ、私の方も旅費、自分で出せますから」
 と続けるミュン。
 「そうね。あ、それからね、パティちゃん。幹事、お願いね」…何時の間にか、幹事にされてしまったパティである…。


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