「海へ行こうっ!〜第4話−海でのお約束(笑)〜」
REIM
(MAIL)
さて…色々とあったが、総勢26人(!)になった一行は…再び船上の人となった…。
「あとどのくらい?」と誰となく尋ねるトリーシャ。
ちなみに彼女は今、セーラー服をアレンジした服を着ている…理由は…再び船酔いになったアレフによって、いつもの服を
台無しにされた為である…。
…トーゼン、トリーシャチョップをアレフにおみまいしたのは言うまでもない…。
「そうだな、あと3時間ってトコかな」答えるナッツ。
「…さっきみたいなことがなければ、な…」とうめくように呟くティム…。
2時間前、セリーヌがちょっとだけ…ほんのちょっとだけ舵輪をいじって…豪快と言ってもいいくらい航路を外れたばかりか、
小岩に激突しかかったのだ…。
おかげで元の航路に復帰するまでに1時間を費やしたのだった…。
そのセリーヌはどうなったかというと…瑞穂とアンリの2人にぼこぼこにされていたりする…トーゼンである…。
「確かにな…あれのおかげで1時間半のロスだったからな…」しみじみと呟くアルベルト…。
「まあ、この後…何事もなけりゃあ…ですがね」と彼らの近くにいた船員Aが口をはさんで来た。
「その素振りだと…なんかあるんですか?」と尋ねるナッツ。
「出るんですよ…」「なにが?」と後を促すトリーシャ…見るとローラも続きを待っている。
「ユーレイ船が…」と帆を操作していた船員Bが船員Aの代わりに答える。
「…随分とお約束な話だな…」とフィム…その口調は…呆れていたりする…。
「見たいような…見たくないような…」…複雑な顔で呟くトリーシャ…。
トリーシャのこの呟きを聞きとがめたシェリルが、
「そんなの見なくていいですっ!!」とローラを睨んできっぱり言い切る…まあ、マリオン島での課外授業の時に精神体状態の
ローラに散々からかわれまくったし…。
「…あ、あははは…」シェリルに向かって愛想笑いをするローラ…頭の後ろにはでっかいジト汗が流れているが…。
そんな彼らに対して、
「ひっじょーに…申し訳ないんだが…出ちまったよ…」と船長が指さす先には…『お約束』のものが…浮かんでいた…。
……………一瞬の間が空く……。
『なんでぇぇぇぇっ!!?』とハモるクリス、トリーシャ、ローラ、リオの4人…。
『お約束すぎるわよぉぉぉっ!!!』これは…パティ、瑞穂、アンリである…。
『…ふぅ…』…気を失うシーラ、ミュン、シェリルの3人…。
「…どーにか…なりそうか…?」気を失ったミュンを支えているナッツに尋ねるアルベルト…。
「…ならんと思うな…」「…はっきりと言うなよ…」同じく気を失ったシーラを支えながら文句を言うフィム…。
ちなみに…シェリルは…誰にも支えてもらえず…甲板の上に倒れたままであったりする…。
「ふむ…幽霊船相手では打つ手なし…か…」「…ティムくん、それは…はっきりと言うものではありませんね…」これは鳶…。
「セバスチャン、みなさん、どうして慌てているのですか?」…明らかに…そう、明らかに場違いな声で−ほえほえとした声で−
執事風の黒服の男性に尋ねるミレナ。
「はい、皆様、幽霊船に慌てていらっしゃるようです」これまた場違いな声で答えるセバスチャン…。
…どーでもいいが…少しは状況を認識しろっ!! 二人ともっ!!
「ほえー、それは大変ですね〜。でも大丈夫ですよ」「大丈夫って…どうしてなの、ミレナちゃん?」と尋ねるアリサ。
「私がなんとかしますわ〜」と答えるミレナ…なんか物凄く不安なんだけど…?
「なんとかするって…そんな気休めを言わないでよっ」ミレナに向かってこう言う美穂。
「そーだぜ…第一、ユーレイ船をどーにかする方法なんざ、あるわきゃ…」とフィムが続けようとしたが、
「大丈夫ですよ…神様、お願い…”Holy=Bless!”」と力ある言葉を唱えた瞬間。
ミレナを中心にして『聖なる結界』が現れ…あっさりと…それこそ何もさせてもらえず…登場、即退場と相成る幽霊船…。
…確かに…彼女のおかげで…どうにかなったらしい…。
………………しばし…無言の時が流れる………。
「…なーくん…今、思い出したけど…確か、このコって…」とナッツに問い掛けるライラ…。
「…高位の白魔法の使い手ってこと…すっかり忘れてました…」と答えるナッツ…。
…2年近く前、取材中−ライラ、ナッツ、ミレナの3人で−にアンデッドに囲まれた事があって…今頃、思い出したかの様に
ミレナが≪ホーリー・ブレス≫を使って難を逃れるという事があったのだ…その時、初めてライラとナッツの二人は…ミレナが
高位の白魔術師(=神聖魔術師)という事に気付いたという…。
「…あのさ…一言、言ってもいい…?」…表情を殺し、固い声でミレナに問い掛けるパティ…。
「ほえ? なんでしょうか?」と答えるや否や、
「そんな便利な呪文があるんなら、さっさと使いなさいよぉぉぉぉぉっ!!!!!」
…その場にいた一同を代弁するような『一言』であった…。
「…やっと…着いたのか…」船酔いでげっそりとやつれた−それ以外の理由もあったが−アレフがウェーバー家の別荘に着くと
同時にこう呟く…。
「…色々とありましたけど…」しみじみともらすクレア…。
「まあな…でも流石に…この時間じゃ、海で泳ぐのムリだな…」妹に合わせるかの様に口を開くアルベルト。
彼らが目的地に着いたのは…そろそろ日が西に傾きはじめた時刻である…。
この時刻に泳ごうもんなら…1回限りのあの世への片道切符を渡されるようなもんであろう…。
「それは明日でもいいじゃないの…それよりもあたし…さっさと横になりたいんだけど…」とひどく疲れた声を出すパティ…。
…『あの』後…一人でミレナと押し問答をしていたのだが…その結果は…『糠に釘』、『暖簾に腕押し』という諺を身をもって
体験したとだけ言っておこう…。
「まあ、大変でしたね〜」…しかも…当の本人は自覚してないし…。
「誰のせいだと思ってんのぉぉぉっ!!?」…血圧上がるよ…パティちゃん…。
「ミレナ相手に怒鳴っても仕方がないって…で、部屋割りはどーなってんだ?」とセバスチャンに尋ねるナッツ。
「はい。その件なのですが…少々問題がありまして…」
「問題って? どんな?」「はい、大部屋が3室しかありません」「内訳は?」「6人が二部屋、8人が一部屋で御座います」
「他に部屋は?」「はい、二人部屋が4室程御座います」等とやり取りをしているナッツとセバスチャン…でも、これって…。
「パティちゃんのお仕事なんじゃあ…?」「確かに…そうですね」…フォローありがとう…シーラちゃん、ミュンちゃん…。
「8人の方は男性陣、6人の方は女性陣…だな」と簡単な部屋割りをする…。
「ふむ…今、男性陣は11人いるから…3人、そこに移ってもらう事になるな…」と首を突っ込んでくるティム。
「だな…あと女性陣は15人だから…こっちも3人か…で、誰が移るかだが…」思案顔になるナッツ。
「そんなの決まってんじゃん。ナッツとミュンが二人部屋でしょ」これはアンリ。
「はい?」「あ、あの…?」…途端に戸惑いの顔をする二人…。
…反対意見無しで決まってしまったする…当然と言えば当然である…。
「で、あとはどーするのよ?」…ナッツの代わって仕切るパティ。
「美穂さんと瑞穂ちゃんでいいじゃないかしら?」と提案するシーラ。
『なぜ??』口を揃えて尋ねる姉妹…。
「そうね、お二人とも姉妹ですしね」…このアリサの一言で決定した…。
「女性陣はこれで決定か…あとは…」「アレフくんとクリスくんでも放り込んどく?」フィムの呟きにこう答えるトリーシャ。
「鳶とリオっていうのもありだよな」これはナッツ。
…結局、クジ引きの結果…残る一組は…アルベルトとリュークの二人に決定したのだった…。
(ナッツ「…二人とも血の気が多いんだよな…大丈夫かな…?」 アルベルト&リューク「どーゆう意味だっ!?」)
「ふう…今日は色々とあったなあ…」と呟くフィム…。
今、彼は夕食まで少し時間があったので…一人で夕暮れ時の海辺を散歩していた…。
ちなみに夕食の準備は…トリーシャ、セリーヌ、クレア、ミュンの4人で行っている…。
「でもまあ…海に来るのも…何年ぶりか…」という独り言に対して、
「何年ぶりなの?」と背後から聞き慣れた声が聞こえて来た…。
「7,8年ぶり…かな…で、どうしたんだ? シーラ?」と振り返らずに尋ね返す。
「くす、声を聞いただけで私だと分かっちゃうのね」と嬉しそうな声で言いながら小走りで彼の隣に来るシーラ。
「そりゃあ、いつも一緒にいるしね…それで何してるんだ?」ともう一度尋ねる。
「今からフィムくんとお散歩…かな」照れながら答えるシーラ。
「今からって…」「だめ?」上目遣いで彼氏を見詰める…。
「…降参…」と苦笑いするとともに…自分の腕を差し出す…。
そして…嬉しそうな顔で差し出された腕に抱きつくシーラ…二人は会話を交えながら、夕暮れ時の浜辺を散歩し始めた…。
二人は…暫く浜辺を歩いていたが…。
「あの、フィムくん。ちょっといいかな?」と立ち止まるシーラ。
「なに?」「あのね…」と前置きすると…少し背伸びしてフィムに何か耳打ちする…。
「…え…?」ちょっと驚いた顔を彼女に向ける…。
「だめ…かな…?」…少し顔を赤くして俯くシーラ…。
そんな彼女を見ていたフィムだが…苦笑して、
「確信犯」と言ってシーラの額をちょんと軽くつつく…。
すると…シーラはまるでいたずらが見つかってしまった子供の様に小さく舌を出し、そして…そっと瞳を閉じた…。