「海へ行こうっ!〜第6話−真夏のキモ試し〜」
REIM
(MAIL)
「…昨日は…ひでー目にあったぜ…」と呟くアレフ…。
「まったくだ…」珍しくアレフに同意するアルベルト…。
仲が良くないこの二人が口を揃えるのだから…相当なもんだったのだろう…。
「そちらもそうだったかもしれんが…こちらも悲惨な目にあったぞ…」「そうよね…」これはティムとアンリ…。
彼らは…夕食の席に着いていたが…流石に食欲がないみたいで…サラダとかスープとか軽い物ばかりを口にする人が
ほとんどであった…。
今日の夕食は…ミュンとアリサ−何故か…一晩で復活−の二人で準備したのだが。
「アリサおばさんの言う通りですね」と感心するミュン。
「ええ、昨日のことを考えると…みんな、軽いものばかり食べるんじゃないかなと思ったの」とアリサ。
最も…。
「…う〜、まだ…気持ち悪い…」「…ボクもっス…」…ひとかじりで…味覚に天災級のダメージを被ったフィムとテディが
うめき声をあげる…。
何しろ…毎日、アリサの手料理を食べているから…味覚が過敏になっていたのだ…。
…ちなみに…今の彼らは…ジュースを飲み干すのが精一杯であった…。
「…マリアお姉ちゃんやローラちゃんのも…すごかったけど…ミレナお姉ちゃんのは…死ぬかと思った…」と野菜スープを
口にするリオ…あれで、護身獣ものたうち回ってたし…。
「…ボクに言わせれば…マリアもローラもミレナさんも…同レベルだよ…」と小声でトリーシャ。
「…あのコたちに比べれば…マリアのは…まだマシよ…」と事ある毎にマリアの料理を味見(=毒見)させられる事が多い
パティの呟きであった…誉められてよかったね、マリアちゃん。
(マリア「どこが…?(お手々ぷるぷる…)」)
夕食後…。
「ところでミレナ様。何故、ここに黒板があるのですか?」と別荘の持ち主のミレナに尋ねるクレア。
今、彼らは広間にいるのだが…何故か、昨日は置いてなかった黒板−それも回転式の−が置いてあるのだ。
「どうしてですか? セバスチャン?」と内容省略で執事に尋ねるミレナ。
「はい。先程、パティ様に頼まれまして、お持ち致しました」と答える。
「パティに? なに企んでやがるんだ…あいつは…?」と小声で呟くフィム…その直後。
ごぉい〜ん
とフィムの頭にフライパンが降って来た…。
「人を悪党みたいに言わないでよっ!!」「ってぇ……おまえは、ほんっとに暴力がキライなのかよ…?」
と加害者に向かって文句を言う…。
「…パティさんって…地獄耳…なんですね…」ぽつりと感心した口調で呟く瑞穂に
「そんなことばかりしてるとお嫁に行けないわよっ、パティちゃんっ」怒った口調で言うシーラ…そして、
「そんなのは、いつものコトじゃないっスか」と更に余計な一言を言うテディ…。
そんな彼女らに対するパティの返事はというと…。
ごちんっ(×3)
であった…。
そして…何事もなかったかの様に少しおどけた口調で、
「さて、ここで問題よ。真夏でぇ、しかも夜の海辺ぇ、と言ったら何があると思う?」と切り出すパティ。
一同、思案気な顔をする…しばらくして…ミレナが、
「あ、もしかして、みなさんでお星さまを見るのですねぇ〜」とぽんっと手を叩きながら、のたまってくれた…。
「違うーっ!! キモ試しよっ!!」とばんっと力一杯、黒板を叩くパティ。その瞬間、
ごんっ!!
という鈍い音が聞こえると同時に…頭を抱えてその場にうずくまった…。
何の事はない…彼女が叩いた拍子で黒板が45度回転したのだ…何やってんだか…。
「…やっぱり、天罰…かな…?」「誰のよ?」とひそひそ話をする美穂とライラ…。
「それは…多分…」と言って、さっきパティにぶたれた3人+1匹に視線を向ける美穂である…。
「…気を取り直して…ルールを説明するわよ…」と少し痛そうな顔をして口を開くパティ…。
「…どんなルールだよ…?」聞き返すアレフ。
「そうね…まず…」と言って黒板にルールを書くパティ…その内容はというと。
・1組2〜3人(組合せはあとで)
・お互いで脅かし合う
・取りあえず、ゴールすること
・魔法及び武器は禁止(特にナッツ、シェリル、クリス、アルベルト、美穂、トリーシャ)
最後の一文を見た瞬間、「なんなのよ? それって…?」ともらす美穂…。
「書いてる通りよ。分かったわね、アルベルト、美穂、トリーシャ?」念押しするパティ。
まあ…アルベルト=槍、美穂=メイス、トリーシャ=チョップ棒とくれば…相手がただでは済まないからなぁ…。
「魔法も、ですか…?」これはシェリル。
「当たり前でしょっ。ナッツもクリスもいいわね?」「はあ…」とパティに返事するクリス…。
何しろ…ナッツ、シェリル、クリスの攻撃呪文は…当たるとシャレにならないダメージだし…。
「で、組合せだけど…面倒だから、あたしの方で決めといたわよ」と言って、黒板に組合せを書き込む。
1.ナッツ&ミュン(夫婦だから)
2.美穂&瑞穂(姉妹だから)
3.アルベルト&クレア(兄妹だから)
「…ほんっとに…面倒くさげに決めたな…」組合せを見た瞬間、呆れるしか出来ないナッツ…。
最も…。
(何故、アリサさんとじゃないんだぁっ!?)という心の叫びと
(…くすん…クリスさんと一緒ではないのですね…)というのがあったけど…あえて誰とは言わないが…。
そうした心の声を知ってか知らずか、次の組合せを一気に書く…。
4.アレフ&クリス(友達でしょ)
5.シェリル&トリーシャ(同上)
6.アンリ&リサ(同上)
7.ティム&鳶(&ぴー太郎)(同上)
8.ニール&リューク(同上)
「…どーゆう理由なの…それ…?」呆れた口調で問うトリーシャ…。
「…ホンマ、ものぐさやな…」心を込めて呆れるリサ…言うや否や、彼女目掛けてチョークが飛んで来たが…まあ、変わりに
ぴー太郎が撃墜されたとだけ言っておこう…。
「げぇーっ!? コイツとかよっ!?」とニールを指さすリューク。
「その言い方、ひどいのだっ!」と抗議するニール…。
その横で…。
(ふう…クリスの安全は…確保出来たな…)と安心するアレフくんだったりする…。
「それじゃあ、もう1組は…フィムさんとシーラさん、ですよね…?」と口にするシェリル。
「リオくんとじゃないですか?」これはクリス。
「でもでも、フィムさんとアリサおばさんという組合せだってあるよ?」と後が恐くなりそうな事を言うローラ。
…その途端…アルベルトが殺意を込めた目で…フィムを睨んでいたりする…。
そんな外野の声を無視するかのように…。
9.フィム&シーラ(文句ある?)
と二人の名前を黒板に書くパティ。そして、
「二人とも、文句ないわよね?」とフィムとシーラに有無を言わせない口調で問い掛ける…。
「…あのな…」とだけ呟くフィム…ちなみにシーラはというと…。
「…あ、あの…?」と真っ赤になっていたりする…それはそうと…何故、フィムの腕に抱きついているのだ…?
「ひゅーひゅー、二人ともお熱いね☆」とこれを見て冷やかすアンリ。
…それと…誰とは…そう誰とは言わんが…安堵の溜息をついているヤツもいるが…。
10.ローラ&ミレナ&セバスチャン(ただ…なんとなく…)
これを見た瞬間。
(…かわいそうに…)とベルファーク組全員がローラに心の底から同情していたりする…。
一方、何も知らないローラは、
「全然、理由になってなぁいっ!」と文句を言っていた…。
「とにかくっ、任せたわよっ」とローラを無視し、次の組合せを黒板に書き入れる。
11.アリサ&リオ&ライラ(&テディ)(お願いします)
「ええ、分かったわ、パティちゃん」と快く承諾するアリサ。
「ま、いっか。と、いうことでよろしくね」「あ…は、はい…」と慌ててライラに返事するリオ。
(くぅ〜っ! 羨ましいぞっ、リオっ!)…誰の心の叫びかは…ここでは問わない事にしよう…。
残るは…。
「あのぉ? 私は?」と自分に指さすセリーヌ。
「今、書くわよ…」と言って…、
12.パティ&セリーヌ(…不本意だけど…)
と書くパティ…字が乱れているのは…仕方がない事であろう…。
「…パティちゃん、生きて帰って来てね…」…ぽつりと呟くシーラ…。
「…勝手に人を殺さないでよ…」口をとがらせるパティ…。
「??? あのぉ〜、どういうことなのでしょうかぁ?」と間延びした声で小首を傾げるセリーヌちゃんであった…。
さて…キモ試しの結果だが…長くなりそうなので簡潔に述べる…。
その1 フィム&シーラ組、ナッツ&ミュン組、ティム&鳶&ぴー太郎組の3組
→ドライアッド(=樹の精霊)に道を聞いて…誰にも会わずにゴール…。
(パティ「魔法禁止って言ったでしょっ!?」 フィム&ミュン&鳶「精霊に聞いただけですっ(だっ)!!」)
その2 アリサ&リオ&ライラ&テディ組
→とりあえず…何事もなくゴール…。
(アリサ「やっぱり驚いてあげないと失礼ですわね。きゃあっ」 ライラ「…あんた…それ…ギャグのつもり…?」
美穂&瑞穂「…………失礼しました………(そそくさと退散…)」)
その3 ニール&リューク組
→これまた…何事もなくゴール…。
(リューク「つまんねーぞっ!」 ニール「そうなのだっ!」 トリーシャ「ぜーたく言わないのっ!!」)
その4 シェリル&トリーシャ組、アレフ&クリス組、アンリ&リサ組、美穂&瑞穂組、アルベルト&クレア組の5組
→暗闇から突然現れたセバスチャンの素顔で…アレフ及びアルベルト以外全員気絶…。
(セバスチャン「な、なんて失礼なっ!!(怒)」 ミレナ「ほえ〜、みなさん、気持ち良さそうに寝てますね〜」
アレフ「…なんか違うぞ…それは…(汗)」 アルベルト「…だな…(呆)」)
その5 ローラ&ミレナ&セバスチャン組、パティ&セリーヌ組の2組
→…翌朝…無事……保護…。
(一同「……………やっぱり…やってくれたか……」)
……翌朝、保護されたと同時にローラ−一晩中、さ迷い歩いた為、ぼろぼろになっていた…−は、
「ミレナさんがとんでもない方向音痴ってコト、早く言ってよぉぉぉぉぉっ!!!」と絶叫していたという…合掌…。