「海へ行こうっ!〜第8話−花火とスイカ割り〜」
REIM
(MAIL)
その日の夕方…。
「そんなことがあったんだ…」と妹から今日一日の事を聞いた美穂がこう呟く…ちなみに彼女が起きたのは…ついさっき…。
今、彼らは庭で夕食−バーベキューである−の準備中である…。
「しかし…エンフィールドにいる時とやってるコトは一緒じゃねーか」と苦笑するフィム…こちらは昼前に目が覚めてる…。
「…人事のように言ってない…?」…本気で溺れ掛けたパティが半眼で睨む…。
「気にするな」「気にするわよっ!」とフィムにくってかかるパティ。
「でも…ほんとに良かったですね…パティさん…」これはミュン…。
「そうね…少し遅かったら…」「その代りに僕が踏まれましたけどね」とライラの台詞を遮る様に苦笑する鳶。
「すまんすまん…あの時は慌ててたから…」代表して謝るナッツ…。
「でもさ…なんで溺れてたワケ?」とアンリが疑問に思う…すると…。
「パティちゃんってば、実は…か……むぐっ」…いきなりフィムに口を塞がれるシーラ…。
「ほえ? どうしたのですか?」「い、いや、なんでもない…」慌ててミレナに答えるフィム…。
そして、シーラの耳元で、
(…カナヅチって言ったら…パティにドつかれるぞ…)と囁いて、手を緩める…。
(ごめんなさい…つい、うっかりして…)囁く様に返事するシーラ…。
「なんか言った…?」…パティのこの問いに揃ってぷるぷると首を横に振るフィムとシーラ…。
「ふぅん…で、あたしがなんだってぇ?」とからかい半分で二人を睨むパティ…。
「…しっかと聞いてるじゃないか…」呆れるフィム…。
「まあね♪」「パティちゃんのいじわる…」ちょこっとだけ拗ねるシーラちゃん…。
「やっぱり、パティさんって…地獄耳の上に意地悪なのですか…?」と呟く瑞穂…。
げしっ!
「あんたね…妹にどーいう躾してるのよっ!」…代わりに姉を殴る…。
「…瑞穂…あなたの来月のお小遣い、6割カットね…」「…しくしく…ひどいですぅ〜」…滂沱の涙を流しながら…姉目掛けて
延髄蹴りを放つ瑞穂ちゃんであった…。
(アリサ「あらあら、喧嘩したらだめよ…」 フィム「…ケンカ以前の問題のような気がするんですけど…?(汗)」)
「さてと…これから花火をするんだけど…ミュン、ちゃんと準備してくれた?」とパティ。
あれから夕食を終えた一同は、花火をする為に浜辺に来ていた。
「それは…ティムさんにお願いしたのだけど…」「ああ、心配ない。準備はしてある」とミュンに答えるティム。
そして、片手で抱えていた花火が入った袋を砂の上に下ろす。
「あ、ボク、これやろっと♪」「あ〜っ! それ、あたし狙ってたのにぃ」「じゃあ、あたしは、と…」等と一斉に手を伸ばす
トリーシャ、ローラ、アンリ以下10人−アリサとライラは見物−の女の子達。
それに合わせるかの様に。
「ああ、そうだ、言い忘れてた。1本だけ爆薬を仕込んでおいた」と物騒な事を言うティム。
その途端、花火を取ろうとする女の子達の手がぴたりと止まる…。
「ばばば爆薬ってっ!? どーしてそんな危ないことすんのよっ!!」怒鳴るパティ。
「決まっている。ただの花火では面白くない」きっぱり答えるティム…。
「お、面白くないって…」「どういう性格してるんですか…?」ちょっと身を引くリオとクリス…。
「スリルがあっていいだろう」「…スリル…ありすぎなんだけど…」小声で抗議するシーラ…。
「って、ゆーか…スリル以前の問題だと思うぞ…俺は…」…これはアレフ…。
「おい、黙ってないで何か言ってやれよ…」とさっきから黙っているナッツに振るフィムであるが…。
「で、オレにどー言えと?」「……苦労してたんだな…おまえも…」「まあ…ね…」しみじみと納得してしまう…。
一方、今回の『苦労』の大元のティムはというと…。
「俺は向こうで花火をして来る」と言って袋から1本、花火を手に取ると…おもちゃを取り上げられた子供みたいに…恨みと
怒りと殺意をたっぷりと込めた目で睨んでいるクレア、トリーシャ、ローラの視線を無視して向こうの方に歩いていった…。
「ふむ…ここら辺でいいだろう…」と言って、手にした花火に火をつけるティム…そして…。
どっかぁぁぁぁんっ!!!
…と浜辺に派手な爆発音が轟き渡った…。
「…自業自得だね…」「…因果応報とも言えるで…」「天才とナンとかは…紙一重って言うからな…」
『当たり』を引いて吹っ飛ばされるティムに冷たい視線を向けるアンリ、リサ、リューク…。
「まあ、少なくても残りは安全ってコトね…尊い犠牲だったけど…」と滂沱の涙を流しながらも…『安全宣言』を出す美穂。
それを合図に…一斉に花火を手に取る女の子達やリオ、テディであった…。
(ティム「…勝手に人を殺すな…」 フィム「…結構頑丈だな…どっかのイノシシみたいなヤツだぜ…」
アルベルト「……コロス…(槍を構える…)」)
ちなみに…吹っ飛ばされたティムはと言うと…爆風と熱風で全治12日の怪我を負ったが…神聖魔法が大得意なミレナが唱えた
≪ティンクル・キュア≫のおかげであっさりと全快したという…。
(クリス「でも、≪ティンクル・キュア≫じゃあ…」 シェリル「ええ、普通は全快しませんね…」 ミレナ「ほえ?」)
翌日…。
「さて、海で遊ぶのも…今日で最後だな…」と感慨を込めて呟くアレフ。
「そうですね、明日には帰っちゃいますしね」とアレフに首肯する鳶。
「なんか遊び足りないよぉ〜」駄々をごねるローラ。
「しかたがないよ…」これはトリーシャ…確かに彼女に言う通りである…ビーチに着くのが遅かった上に…誰かさんの作った
クッキーの一件もあるし…。
「そうね…私とフィムくんは…もっと遊び足りないしね…」ローラをたしなめる様にシーラ…すると…。
「…ねえ…シーラさん…もう一人忘れてない?」と自分を指さす美穂…。
「安心して、美穂…あのコったら、思いっきり、しかもキレイさっぱり、あんたのコト忘れてるから…」…こう言い終えた直後、
電光石火の早業で美穂に張り倒されるパティである…。
「それはそーと…先輩やリュークは…?」「そう言えば…兄様もおりませんわ…」「どーしたんだろ?」順にナッツ、クレア、
アンリである…。
と同時に。
「みんな、お待たせぇ〜」とひょっこりと現れるライラ。
更に彼女の後ろには…アルベルトとリュークが山のようにスイカを抱えて立っている…。
「どーしたんですか? そんなに山のようにスイカを買って来たりして?」と尋ねるナッツ。
「決まってるじゃないの。海と言えば…コレでしょ」と言って棒を振り下ろす真似をするライラ。
「あ、なるほど…スイカ割りね」と納得するパティ。
「そーゆうコト。そんじゃ、あと任せたからね」とパティの肩をぽんっと叩く…。
「は?」「みんな忘れていると思うけど…パティさん、一応幹事さんなんですけど…?」と呟くシェリル…。
「…そーいえば、そーだったような気が…」『…あのな…』…一斉に突っ込みを入れられてしまうパティであった…。
1番手は…ミレナであったが…。
「…なあ…いくらなんでもあそこまで行けば…気付くと思うんだが…?」「ははは…そ、そうだな…」アレフの問いにジト汗を
たらしつつ乾いた笑いを返すしかないナッツであった…。
「え〜ん、スイカさん、どこですかぁ〜」とミレナは…遠浅の海の中で半泣きしていた…。
2番手から4番手まではシェリル、パティ、ローラの順で進んだが…。
「わ、私に恨みでもあるの…?」「え? なんのコト?」…何故か、そう何故かは知らないが3人とも…スイカの代わりに
シーラを−それもまったく無意識で−狙っていたりする…最も3回とも紙一重で避けてはいたが…。
トリーシャ曰く…「多分さぁ…失恋の恨みじゃないの…?」………それ、説得力あり過ぎだよ、トリーシャちゃん…。
ちなみに…。
「…すごく怖かったわ…」「…あっさり避けちゃった方もすごいと思うけど…」とシーラに台詞に思わず、こんな突っ込みを
入れてしまうアンリちゃんであった…。
「…ったく、人を狙ってどーすんのよっ」と3人に文句を言うライラ。
最も…。
「兄様っ!? お気を確かにっ!!」「…う…う〜ん…」と頭にコブを2つ作ってKOしたアルベルトを揺さぶるクレア…。
「…なあ…俺がちょっと席を外してる間…何があったんだ…?」この光景を見たフィムが近くにいたリオに問う…。
「…ボクに聞くよりも…アリサおばさんやシーラお姉ちゃんに聞いた方が…」と問われたリオがこう答える…。
「…なあ、クリス…?」「…不幸な事故でした…」とぽつりと呟くクリス…。
「そりゃ、確かに不幸な事故だけど…」「…世の中にはな、『知らぬがホトケ』ってことわざがあるんだぜ」
「…どーゆう意味だよ、アレフ?」…結局、この件は…それっきりとなったのだった…。
(ローラ「…パティちゃんも気をつけた方が…(汗)」 パティ「そ、そうね…(大汗)」 フィム「???」)
気を取り直して…美穂の手番では…。
「え〜とですねぇ…右…ですね〜」「じゃあ、左ね」
「スイカさん、後ろにありますよ〜」「それじゃあ、まっすぐっと」
………セリーヌとミレナの言うコトの反対の方を選んでいた……。
(セリーヌ&ミレナ「…しくしく…(お目々うるうる)」 美穂「…う…(言葉に詰まる…)」)
「みなさん、楽しそうですね」とナッツに向かって述べる鳶。
「まあ、そうじゃないのもあったけどね」「ふむ、確かにな」と答えるナッツとティム。
「うちはちょっと悔しいで…」これはリサ。
「そうね、アンリもそうだけど…瑞穂も侮れなかったわね」とライラ。
「ええ、あれには参りましたね」と苦笑するナッツ…なんのコトはない、野次の飛ばし方の事である。
特に瑞穂のはウソを上手く混ぜている為、引っ掛かる者が続出してるのだ…現にナッツやライラばかりでなく、リサもあっさりと
引っ掛かっていたし…。
「俺はトリーシャとかいう娘も流石と思うがな」彼女のおかげで空しく砂浜を叩いたティムがこう言う。
「僕はクレアさんもすごいと思いますよ」これは鳶…同じく砂浜を叩いただけであった…。
「そやけどな…あっちの方がもっとすごいと思うで…」とある方向に視線を向けるリサ…。
「う〜っ!! くやしいよぉ〜っ!!」とじたばたしてるトリーシャ…。
「…トリーシャちゃんを引っ掛けるなんて…フィムさんってすごいです…」と感心するシェリル…。
「なんでよぉ〜っ!」「落ち着くのだ、アンリっ!」となだめるニール…。
「納得がいきませんわっ!!」「ま、待てっ! クレアっ!!」…後ろから妹を羽交い締めにするアルベルト…。
「あんまりですっ!!」「だから待ちなさいってばっ! 瑞穂っ!!」と押し止める美穂…。
…………彼女達よりもフィムの方が一枚上手だったりする……。
「…あんたね…ちょっとやりすぎよ…」「…ですね…」と呆れた声で呟くパティとミュン…。
「トリーシャお姉ちゃんにクレアお姉ちゃん、美穂お姉ちゃんに…」と指を折るリオ…それにアレフが、
「それと瑞穂やアンリ、ミュンとニール…それと俺まで引っ掛けやがったしな…」と苦笑しながら続ける…。
「ま、あいつらが怒るのもムリねーか」と締めくくるリュークである。
一方…。
「あらあら、みんな元気ね」「ういっス」「…アリサおばさま…」
…複雑な表情で…そんなフィムにあっさりと砂浜を叩かせたアリサにこう呼び掛けるシーラちゃんであった…。
しばらくして…アルベルトとリュークの二人がスイカを割ることに成功したが…。
「あんたらは手加減ってもん、知らないのっ!!?」
スイカを木っ端微塵にした上に…それの洗礼を受けた女性陣から祝福がわりの蹴りの集中砲火を受けていた…。
ラストはセリーヌであったが…、
周りの野次を聞きながらうろうろしていたが…別なところで「えいっ」と棒を振り下ろす…そして…。
どっごぉん!
「…ドコをどーやったら…岩を粉々に出来るワケ…?」このライラの疑問に答えられる者は誰もいなかった…。