中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「DARC 捻れ歪みそして今に・・・」 皐月  (MAIL)


                ハイイイロノマチ


黒でも白でもなく混沌とした街
元はどれ程の人達がいたのだろう
かつては行き交う人々を支えた大きな街路は塵一つ、生命(いのち)一つなく
ただただ空虚な風を吹きすさべていた


此処には光が在ったのに、此処には明かりが在ったのに
今は闇が・・・暗黒が”どにょり”と、石畳を張っていた
もう此処には生命は戻らない。もう此処には光は戻らない。
現在と未来に在るのは・・・


解けることの無い呪い
覚めることのない虚夢


それだけがこの街を死都に変えていた


暗雲を突く十字のシンボル
それはすでに陰りを帯びかつての誰かの威光を覆っていた


                      教会


在りし日には幾多もの人々がここを訪れただろう
敬虔に黙し瞳を閉じその頭上より祈りの言葉をかけられただろう
が、すでに祈りの言葉をかける者はいないしかけられるべき人もいない
いるのはただ静寂だ

隔離された世界、拒絶された街
そこだけ切り離されている

そして静寂の中心にて夢見る者

壇上の上の椅子に腰掛け虚ろな瞳をぼんやりと動かしている


               何かを探すように



据えた匂いのする教会の中
時折崩れた壁より吹き込む風が埃を浮かす
白く白くそこをぼかしながらもそれよりもぼやけているような人



               韻が・・・響く


         「シャティエル・・・まだ・・・会えない?」




それだけは埃にぼやけることがなかった・・・・・・





風にざわざわと揺れる木々
それと同じく流れる赤い髪
女が・・・立っている
小高い丘の上より眼下の灰色の街を見下ろしながら

その視線は冷たく鋭く


「聖霊都市ブリージュ・・・一夜にして死んだ街・・・」

その街すら引き裂きそうな爪のような声

「現在は教会よりS級危険域に指定・・・

           現在は住人の存在は確認されず

                     公式には・・・だけど・・・」

その視線はある建物を見ている
ひときわ大きく天に十字を突く建物を・・・
そして今まで風に乗っていた言葉
最後の方は風に流される

「エンフィールド・・・そこに彼もまたいるか・・・」

呟き声
それに加わる韻

影のように来た男

「ヴァネッサ・ウォーレン指令だ・・・

            エンフィールドへゆけ」



突き立てられる楔のような声
女の返事を待つこともなく男は消え
そして女もまたそこを辞した
















               カチャリ

部屋にティーカップを置く音が響いた
場所はエントランスから客間へ移り
そこで優雅なひとときを過ごす面々
その部屋の隅に包帯ぐーるぐるのものが在るのはご愛敬として
今はこの一時を静暖な時を過ごすカオス

最初に口を開いたのはティエラだった

「それにしても本当お久しぶりですわね。カオスさん」
「ああ、そうだな」

それに答えるカオスの声もまた普段より暖かい
ちなみにシーラは寝ていてジュディはその彼女に付いている

「最後にあったのはあの子がまだ10歳にもなっていなかった頃ですもの
 時の流れを感じますわ。あの時貴方が立ち去るときのあの子の態度たら・・・」

口の中で笑いをかみ殺しながらしゃべり続けるティエラ

「そう言えば今回はどうしてこちらに?」

ほんの何気ない質問−−−とすら言えない言葉
だったはずなのにそれはこの後の空気を昏く重くした





             沈黙が・・・・・・ただ痛い









「・・・・ブリージュに・・・・行って来た・・・」

その一言だけでティエラはクレスは”びくっ”と身を震わせた

「あ・・・カオス・・・さん」

顔を蒼白にしながら言葉をつなぐティエラ

「アザゼルは変わらずに・・・」
それが見えていないかのように話を続けるカオス
「・・・夢を見続けていたよ・・・」

静かな声。秘められる想いは激情を含む
それは『タブー』だった

「そう・・ですか・・・。あの彼はまだあそこで・・・」
「忘れれないんだろうな。けど過去は戻らないあそこに有るのは夢の残滓だけだ・・・」
「それでも・・・彼は待ち続けているのか?もうシャティエルは還らないのに」
「だから夢の中にいるんだよ。もう戻らないとわかっているから

 自分が作り上げた箱庭の中で虚しい夢を紡ぎ幻と言葉を交わす」

つぎはぎだらけのガラスの箱庭いつ崩れるともしれない箱
どこかが砕けるたびに新たなガラス(ゆめ)をはめ込む
その中で始まるギニョール(人形劇)
出演者は二つ、観客も一人
ストーリーは昔話、男も女もいた想いで話を繰り返す

「けど!あの子は!シーラは関係無いこと!」

叫び出すティエラ。それを飄々と受け流しカオスは言う

「そうかもな・・・だけどシーラは何も知らない・・」
「そんなこと!!

              ・・・関係ないわ・・・・・・」

弱々しく消えていく言葉

「すまない」

カオスが一言わびる
そしてまた沈黙の帳が降りる







「・・・とりあえずはこの話はやめよう。今はなしたところで意味はさしてないしな」

出し抜けにカオスが言う
場の雰囲気が変わる
それでも先ほどのは棘となり残る
小さく傷跡を残し、見えない血を流させる
治るのか治らぬかそれすらもわからない傷
一滴二滴と心の地平に雫を落とす
              
                紅く赤く

染みを作り汚していく

(・・・いつかシーラが本当のことを知ったらその時は・・・)

続かない誰かの心の言葉
いつか来るその時

流転する運命

そして始まる悲劇

もしかして幕はこの時に上がっていたのかもしれない

(・・・その時は・・・)

その言葉だけがただ重かった・・・


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