中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「DARC 喉を灼かれても歌い続ける歌姫の歌を聴け」 皐月  (MAIL)





さて、魔族の一件より一週間ほど過ぎ街がまた静かなそして活気有る日常を取り戻した
ころその事件の中心人物はと言うと実はそのままシェフィールド邸に居候する事に
なっていた。
もちろんその際、内外問わず色々あったのだがまぁそれは省略させていただくとして
決めた当の本人達、シェフィールド夫妻達は次の講演があるとのことで
最早エンフィールドにいなかった

旧知の仲・・・それを差し引いても年頃の娘と若い(見た目は)男性を
メイド達がいるとしても一つ屋根の下に住まわせるとは・・・
・・・もうナニかを狙っているとしか思えない。
そしてそれはおそらくはずれてもいないだろうが・・・・

が、当の本人達はというと気にしているのはシーラだけであって
カオスは飄々としたものだ。

そして・・・・・・










深く暗く静かな夜

闇を流し込まれたように昏い・・・
巡る風がローズレイクに波と音を創り木々を揺らす
波紋の湖に映し込まれた白銀の真円の月が揺れる・・・


ゆらりゆらりと・・・


降り注ぐ月光はこの湖の由来でもある白いバラを揺らし香りに色を与えるかのようだ

不意に変わる

何かが変わる

音・・・いや歌・・・そう歌が聞こえる
このローズレイク湖畔に響き渡る歌声

哀しい旋律・・・

歌い手の心か?それは夜想曲であり鎮魂歌でありそのなにものでもない

それでも歌は在る。この世界に!この地に!

哀しく引きずり込まれる旋律

魔曲とも呼べる歌。神韻の響きよ

 
歌い手はいずこに?


歌い手はそこに。湖の映り込む月の真上に水に浸かることなく濡れることなく
幻の月を壇上とし月光を光源とする


幻の歌い手


白いドレスが月光を弾く。飛沫のように破片を散らす光
自らを抱きしめるようにいかなる神品をおもわすかのような腕を曲げ
燐光を纏う銀色の髪を後ろに流し美麗な顔を僅かばかり上に向け
柳眉を哀しげに歪めながら銀色の瞳に月を映す・・・



歌が続く、何を想うのか?誰を想うのか?
それは女の泣き声か?それは女の涙か?

幻の歌い手は・・歌姫は歌う・・・がその存在が幻ならばその歌もまた幻が道理


姿無き姿で月光を浴び
声なき声で歌う


酸の海で酸の霧に身を灼かれ喉を灼かれても歌い続けるセイレーンの様に。
誰かを歌声で呼び続ける















いつから?










いつまで?










どこから来て?










どこへ行く?















風が騒ぐ。水が悶える。木々がざわめく。夜が壊れる。





そして・・・・・・





消える・・・・・・





今まで騒々しさが嘘のように思える静寂
いや、がさりと踏み鳴らされる足音が聞こえる
足音はそれ以上なく静かに水辺に歩き始める
照らすべき者を唐突になくした月光は人影を照らす
銀の光が人影を明確にする
影はじっと女のあった位置を見続けている
その月光にも侵されない紫の瞳で・・・

「あの歌は・・・」

カオスだ

歌姫に劣らぬ白い肌。黒曜石すら及ばぬ未知の宝石のような黒髪。
紫水晶(アメジスト)より深く輝く紫曜の瞳。体に纏う黒衣。
この若者は闇の中でもそれに犯されることなく


                    凛

と、立つ。


「あの歌は・・・」


呟きを繰り返す


「未だ歌い続けているのか?『夜の歌姫』よ?」


返事はない
おそらく返事の無いことをわかっていただろう。カオスも待つことをせず
屋敷への帰路へとつく。
風だけが今この時の別れを惜しむかのように吹き抜けた・・・・・・。




これが、歌姫の舞台の一日目だった・・・。


















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