中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「韻は因となる」 皐月  (MAIL)




甘く切なく響く声

夜の闇にとけ込むように響く声






其れは歌



其れは唄



其れは詩





夜に恋する一人の女が歌う唄

夜を想って歌う唄


いつの頃からか彼女は現れた


月光が夜闇を最も深くする時に現れる


月のごとく銀の姿で


だが彼女の歌を知る者は居ても彼女の姿を知る者は居ない


ただ一人をのぞいて・・・・・・













 
                       ダーク
                   Episode7:韻は因となる















歌姫の舞台の翌日、街はいつもと変わらない喧噪を出していた
具体的に言うとどこかで誰とは言わないが魔法を失敗して爆発させていたり
誰とは言わないが大勢の女の子に追われていたりなどだが




ただ・・・そんな喧噪から切り離された場所というか人間が居た



さくら亭の片隅の一席



頬杖をつき何をするでなく座っているカオス
いつもの黒衣に変わらぬ紫曜の瞳



が、普段の口の悪い青年がそこには居ない

なんと表現すべきかといった表情で座っている
それは時折不意にカオスが見せる表情(かお)



そんな顔をしているときのカオスにはどんな言葉も届かない
無視しているわけではないだろう




ただ、『届かない』



『誰か』の声が、韻が、音が、己の裡に沈んだカオスに届ききる前に潰される

深海のような彼の裡

推し量ることもその重さも理解することなどできない

ヒトでは耐えられないその自分の心の重さに・・・

その重さは思い出とも記憶ともいえる

始まりから始まり、終わりになったら終わる

ひとはそれを生誕と死と呼ぶ



無限にして夢幻の心


そして、その心よりサルベージされた記憶



それが・・・夜の歌姫・・・






カオスの脳裏に舞う銀色の『彼女』

いつともしれぬ時より歌い続ける


「・・・いつか・・彼女は『夜』を招くことができるのか・・・」

かすれるような言葉

秘められた重さは何人たりとも支えられないほどだ




貴韻・・因・・イン・・隠・・いん・・・


夜の・・・前奏曲・・




再び夜が訪れた






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