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「ある晴れた日に〜めんず編〜」 心伝
ある晴れた日に〜めんず編〜

さて、あいも変わらずエンフィールド。ちょうど日の当たる丘公園では
志狼、リュウイ、セリン、ヒロ、ロディにゆーきと
五人の青年、少年達が暇そうにしゃべっていた。
「あー…暇だなぁ…」
志狼はぼーっと空を見上げていた。手にはセリンとヒロが持ってきた
焼きイモが握られている。
「せっかく、いい天気ですし…何かしません?」
セリンが焼きいもをひとかじりしながら言った。
「と、いってもなぁ…セリン、何かする事ある?」
「うーん…」
セリンはしばし、考え込むとぽんと手を打った。
「告白ごっこでもしません?」

『はぁ!?』
全員が「何じゃ、そら!?」って顔をしてセリンを見た。
セリンはやや照れくさそうに笑うと
「いやですね…この前由羅さんやトリーシャ達がそんな事してたって
聞いたから」
「あ、それこの前テディから聞いたぞ…アリサさんの言ったのを
アルベルトが勘違いしたって…」
志狼は首の後ろを軽くかくと回りの皆を見た。
「…なぁ、セリン。
それ、男だけがやるってのもむなしい気がするんだけど…俺」
リュウイが冷や汗たらーりと言った顔でセリンを見ている。
「でもよ、何か面白いかもしれないからやってみるか?
このままでも暇だしよ?」
ヒロはニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。
「うーん…何か参考になるかもしれないから、俺も聞いてみたいな」
ロディも眼鏡を直して笑う。
「俺…恥ずかしいです…」
ゆーきは恥ずかしそうに顔を赤らめてうつむいた。
ロディがゆーきの肩を叩いた。
「ま、いいじゃないか。本当に好きな人に向かって言うわけ
じゃないんだしさ。」
「そうですけど…」
「それじゃ、誰が初めにやるか決めるか…」
と、皆で一斉にじゃんけんを始めたのである…。

「と、いうわけで一番手はヒロだぜ」
「ヒロ、思いきって言ってくれよ」
「そ、そうだな…あ、えーと…ゴホン」
ヒロは何度か咳払いするとまっすぐと前を向いた。
が、どこか目が泳いでいた…。


「あー…とりあえず…お前の事…好き…だと思う。
うん!好きだね!」

「…どうよ?」
ヒロが回りの反応を聞くと皆いまいち首をかしげた。
「なんだかなぁ…告白にもお前の優柔不断さ出てる気がするなぁ…」
志狼がつぶやくとリュウイもうなづいて
「そうだな。だと、思うとか使ってたら何か伝わりにくいと思うけどな」
ヒロはちょっとムッとなりリュウイにつっかかった。
「それじゃ、お前はどーいうんだよ!次はお前の番だぞ」
「分かってるって。じゃ、ちょっと待ってろよ」
リュウイは一旦目をつぶってゆっくりと深呼吸をした。
何度か、深呼吸をするとリュウイはカッと目を開けて
「俺…不器用かもしれないけど言うより言わない方が駄目だから
ここで言う。…君が好きだ」

『おおーっ』
皆の反響が公園にこだまする。
リュウイは照れ臭そうに赤面して笑った。
「ストレートですね。リュウイさんらしいですよ」
セリンが笑顔を向けるとリュウイは顔を抑えて「まいったな」
って表情をしている。
「さてと…次はロディか」
「俺かぁ…」
ロディは眼鏡をいじりながら考えている。
「俺、あんまりそういう経験ないからなぁ…ま、いいか」
ロディはずれた眼鏡を付け直すと

「俺はね…何でかわからないけど…君が好きなのかも
しれないな…。でも、好きとか嫌いとかに理由はいらないよね!
だから…ちゃんと好きって言いたいな」

「うーん…何か告白って言うより希望を言っている気がするぜ…」
「そうかい?」
ヒロの突っ込みに首を捻るロディであった。
ちなみに彼はクレアに惹かれているのに自分でも自覚が少ないのである。
(ま、しかたないか…)
と内心思うヒロだった。

「さてと、次はゆーき君だねぇ」
ニヤッとヒロは笑うとゆーきは少したじろいだ。
「あのー…やっぱり言わなきゃ駄目ですか?」
「とーぜんだな」
ゆーきは顔をリンゴみたいにまっかっかにしてうつむいた。
「じゃ…言いますね…」


「俺、ずっと前から君の事が好きなんです…迷惑じゃなかったら
…付き合ってくれませんか…?」

「…何か、真に入ってるよなぁ…」
志狼が感心したようにうなづく。
ヒロがからかうように
「なぁ、ゆーき。それ、メロディに言ったのか?」
と、言うとゆーきはさらに真っ赤になって
「え…それは…あう…あうあうあ…」
言葉もまともに喋れなくなって皆は大笑いした。
「いやぁ、青春してるねぇ。ゆーき」
リュウイもつられて笑った。


「さてと、次はセリンだぜ」
「僕ですかぁ…何か照れるな」
セリンは頬をわずかに赤くしながら軽く指先でかいた。
「ま、とりあえず言ってみろよ」
「は、はい。じゃあ…」

「僕…正直言って永遠に貴女を愛せるかって言われると…自信ないです。でも、出来る限り貴女を愛することはできますよ。
だって…僕は生きてる限り貴女が好きですから」

「…おい、セリン」
「はい、どうしました?志狼さん?」
「…どこでそんな臭いセリフ覚えたんだ?」
「え…」
セリンが志狼と同じように首の後ろを軽くかきながら回りを見回すと
――全員が凍っていた。その目は
(どっからそんな臭いセリフが出てくる!?)
と、いった目である。
「たぶん…この前トリーシャに借りた少女マンガの影響だと
思います…」
「お前なぁ…」
うつむいて、照れているセリンを見て
志狼は軽くため息をはいた。

「さてと、これで皆言い終わったか…」
「待て、志狼」
ヒロは逃げ帰ろうとする志狼の肩をぎゅうっと掴んだ。
「お前、まだ言ってないよな…」
「え…俺は、審判役で」
「そんなの決めてないよな。志狼」
ロディがヒロの持っている逆の肩を握った。
「志狼さん、一人だけ言わないのは卑怯ですよ」
「そうですよぉ。僕たちに言わせて一人だけ言わないのは卑怯です!」
前方にセリンとゆーきが立ちはだかる。
「えーと…その」
「俺も聞きたいねぇ、志狼が何て言うか」
リュウイも意地の悪そうな顔で笑っている。
「あ…やっぱし」
『当然だ!!』
皆の声が見事にハモったのは言うまでもない。

志狼はみんなに座らせられ首の後ろを軽くかいた。
「さてと…志狼はなんて言うのかなぁ?」
ヒロが意地の悪い笑顔を見せて志狼を見た。
志狼にとってこれほど地獄はなかった。
「…ちょっと待て!少しぐらいかんがえさせろ」
と、言うと志狼は汗まみれになって考え出した。
ちなみに志狼の頭には…なーんにも言葉が浮かんでこなかった。

           〜数十分後〜
「…まだか?」
「浮かばない…」
リュウイの何度目の「まだか?」が言い続けられていた。
しかし、志狼は汗をがまがえるの様にダラダラと流していた。
「だってよぉ、何か言い難いんだよ」
またも首の後ろを掻くと全員はため息をついた。
「…そうだ、志狼!お前シーラに言うつもりで言ったらどうだ?」
「へ?」
ロディの言葉に志狼とリュウイが目を点にする。
「本当に言うわけじゃないけどま、目の前にいると思えばいいだろ?」
「…まぁ、本人がいるわけじゃないから…いいか」
リュウイが仕方なさそうに志狼を見た。
「それなら、言えるだろ?志狼?」
「む、ま、まぁな…」
志狼は目を伏せると深呼吸するとやがて、目を開くと、言った。

「俺は…初恋なんだよな。たぶん、これが…もし、君が
俺が嫌いでもこの事だけは伝えて置きたい。」
志狼は急に立ち上がった。目はすでに
…あっちの世界に飛んでいた。
「お、おい志狼!?」
「俺は、誰にも負けたくない。リュウイにも、アレフにも
他にもお前が好きという奴よりももっともっと好きでいたい。
だけど、今よりも君が頑張るより俺はもっと頑張りたい
…だって、ライバルだもんな」
志狼は胸に手を当ててうつむく。
「でも、君がいつか気付いてくれるには俺が言わなきゃいけないんだろうな…だから、だから!俺はいつか言ってみせる!」
「あの…志狼さん?」
「俺は君が好きだぁっ!シーラァッ!!!!」

「…や、やけに熱のこもった告白だな…」
リュウイが半ば呆れ気味に声を出すとゆーきがあさっての方向を
みながら肩をちょんちょんとつついた。
「ん?どうした、ゆーき?」
「あ、あれ…」
ゆーきが指差した方向を見ると−
「あ…!」
リュウイは言葉が急に止まった。
「どうした?リュウ…」
ヒロもリュウイに声をかけようとしてその視線の方を向いて
言葉が途切れた。
「あ…」
「なんてこったい…」
そう、リュウイ達の視線の先には誰もが言葉を失った。
「し、シーラぁ!?」
そう、そこにはさっきの告白相手−シーラ・シェフィールドが
ちょうどお散歩の途中だった。
「し、志狼クン…」
「あ、し、シーラ。今のはね…」
リュウイが必死の説明をしようとしているが
シーラは顔をまっかっかにしてうわの空である。

「…あう」
バタッ
「あ、志狼さん!!しっかりしてください!!」
そう、当の本人の志狼は気絶してしまって倒れてしまった。
「…あの、志狼くん。私の事好きなのは…うれしいけど…でも…」
「シーラぁ!だから、今のは、冗談で…」
リュウイはシーラに必死の言い訳をしているがやっぱりシーラはうわの空である。残りの四人は志狼の方を見ていた。
「あー…こりゃ完全KOだな」
ロディが志狼をつんつん突つきながら言った。
「とりあえず、志狼さんをクラウド医院へ運びましょう!」
「ったくこいつは迷惑ばっかかけるよなぁ…」
ヒロとセリンは志狼を両肩にかけて病院へ運んだ。


その後、リュウイの必死の説明(嘘もまじえて)で
シーラに理解してもらったが
しばらく志狼とシーラは顔を合わすたんびに
顔が真っ赤っかになるようになったのは言うまでもない…




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