中央改札 悠久鉄道 交響曲

「未来からの贈り物1」 心伝  (MAIL)
悠久幻想曲〜未来からの贈り物〜
エンフィールドの夕暮れ。志狼は今日の仕事を終え、
テディと共にジョートショップへと帰っていた。
「うー、今日はいつもの倍働いたからなー。腹減ったぞー。」
「今晩のゴハンは志狼さんの好きなエンフィールド牛の照焼きと
特性ポテトスープにするってご主人様言ってたっスよ。」
「おおっ!そりゃいいねぇ。だったら走って帰るか!」
「やれやれ、それじゃまるっきしピートさんじゃないっスか。」
と、こんな会話をしてると、
「あーっ!いたぁ!!」
「はぁ!?」
志狼が大声が聞こえた方を見るとそこには、志狼とにたような
ライトグリーンの縞の服を着てリュックを背負った少年がたっていた。年は8、9歳ぐらいだろうか。やや茶髪がかった少年が元気よさそうに志狼のほうにかけよってきた。
「あの…ひょっとして天羽 志狼さんですか!?」
「あ、ああそうだけど…俺に用かい?」
そういうと少年は、おもいっきりの笑顔でこういった。
「会いたかったよ、父さん!!」
「…え!?」
「…」
「…」
『なにいいいいいいっ!!!!』
志狼とテディは何秒かの『目が点』の状態から状況を把握した。
「志狼さん!いつのまに隠し子がいたっスか!?」
「バカヤロー!俺はまだ19だぞ!こんなでかい隠し子が
いてたまるか!」
志狼はテディに文句をいうとその「息子」に目をやった。
「なぁ、君、誰だかしらないけど悪い冗談はよせよ。
大人をからかっちゃダメじゃないか。」
「大人っスねぇ…」
「なんか、言ったか!?」
「い、いえ、なにも言ってないっス…。」
「ううん、父さんは信じられないかもしれないけど僕は未来から
来た『天羽 志狼』の子だよ。」
「未来!?そんな馬鹿な!?」
「うそ臭いっス」
「あー、信じてないな?それじゃそのまず、
その犬みたいのはテディでしょ。」
「ボクは犬みたいじゃないっス。でも、合ってるっス!」
「そして、父さん。名前、天羽 志狼。1月1日生まれ。好きなもの
アリサおばさん特製のピザ。エンフィールド牛の照焼きとポテトスープ。それとシーラさんのたこさんウインナー」
「おおっ!あってるっス。」
「趣味、特にないけど散歩、特技が事をはぐらかす。
それと使った包帯を触るとジンマシンが起こるんだよね。」
「なんで、そこまで…」
「ね、信じてくれる?あ、僕の名前は天羽 八雲っていうんだ。」
少年はにっこり笑うと勝手に自己紹介をしだした。
「今は9歳。ジョートショップに住んでて」
「ち、ちょっと待ってくれ。」
志狼はその息子―を手で制して言った。
「勝手に俺の息子を名乗られちゃ困るよ。だって俺は結婚もしてないし、それにさっきも言ったように隠し子なんかもいやしない。
それにさっきの事はこの街にすんでいる奴ならある程度は
知っていることだぜ。嘘を言っちゃいけないよ。」
真剣なまなざしで志狼は八雲を見た。八雲の無邪気な目に志狼がうつる。志狼は子どもの頃の自分をみているような錯覚に襲われた。
「確かに俺に似てる。けど…」
心の中でつぶやいてると
「…じゃ、これを父さんの言ってた通りこれを見せたらいいかな。」
八雲は後ろのリュックから脇差しのようなものを
取り出すと呪文を唱えた。
「身を変えられしものよ。あるべき姿へと変われ!
チェンジング・マター!」
そうすると脇差しのようなものが大きくなっていき
それは剣となっていった。
「あれは、志狼さんの愛用の剣じゃないっスか!?」
「ね、これで分かったでしょ。」
おそるおそる志狼は、その剣を手にとり鞘を見て、そして刀身を見た。
「…嘘だろ。おい!テディ!そしてえ〜と…」
「八雲だよ。」
「そう!君もちょっとジョートショップへ来てくれ。」
言うや否や志狼はジョートショップへと走った。
「ああっ!志狼さ〜ん待ってくださいっス〜。」
         ―ジョートショップ−
ドドドドドドドド…
バタン!カララン
カウベルの音とドアの音が変にまじりあって聞こえた。
そこにはアリサとクリスが遅いティータイムを取っていた。
「どうしたの、志狼くん。そんなに慌てて」
「何かあったの?」
ところが、志狼は二人の声を無視して自分の部屋に駆け込んだ。
「どうしたんでしょう。」
「さあ…」
おくれてテディと八雲が入ってきた。
「あら、テディどうしたの?」
「志狼さんが血相変えて帰ってきたけど…その子は?」
「そ、それが…」

志狼は自分の荷物入れの奥からひとつの物をとりだしてきた。
モンスター退治の時ぐらいしか出さない愛用の片刃の剣である。
「…」
志狼はおそるおそる剣を抜いた。
片刃の刀身に夕日の光が反射する。静かに気をこめる。
「!」
確信した。間違いなく自分の剣である。
志狼は鞘にいれてアリサ達がいるところに向かおうとすると。
「えーっ!」
急にクリスの驚愕の声が聞こえた。
と、そこに志狼が入ってきた。
「志狼くん、あなた…」
アリサの目の表情を見て志狼はうなずいた…
「志狼さん…」
クリスがつぶやくと、志狼は、口を開いた。
「間違いなく、その剣は、俺の剣…なんで…やっぱり君は」
「ね!わかったでしょ!」
八雲は、邪気のない顔で笑った。

「まー、未来から…それは大変だったわねぇ。」
「うん!でも、アリサおばさんって昔っから美人だったんだね!」
「まぁ、八雲クンたら。」
「でも、クリス兄ちゃんがこんな人だなんて、未来の兄ちゃんと
違うから驚いたなぁ。」
「え?僕そんなに違うの?」
「うん!未来のクリス兄ちゃんは…」
八雲はアリサ、クリスは夕食の輪に入っていた。
志狼とテディはというと、
八雲のリュックを志狼の部屋に置いていた。
「志狼さん、何であの子が志狼さんの子どもなんっスかねぇ。
ボクまだ信じられないっス。」
テディが不思議そうに言うと志狼は二人の剣の刀身をみながら言った。
「確かにな。でもこの俺の剣を持ってたってのは…案外あの子の
言ってる事は本当なのかも…」
「剣なんか、どこでもあるじゃないっスか。」
志狼は首を横にふった。
「いや、この剣は特別なんだ。
俺の故郷の刀匠が特別に俺に作ってくれたもの。その証拠に」
言った途端、志狼の気が急激に高まってゆく。すると志狼の剣が
青白い光に包まれていった。
「これは、ファイナル・ストライクを打つ時光ってたッスね。
そういえば、シーラさんとかは光ってなかったのに。」
「この剣は特別気に反応する鉱石で作られているんだ。だから
青白く光るんだよ。そして」
志狼は自分の剣を置き、八雲の剣に持ち替え気を集中させた。
「ああっ!」
テディが驚愕の声をあげると同じように青白く光始めた。
「この剣をこんな風に作り上げる事が出来るのは俺の故郷の
じっちゃんしかできない。それに俺にしか剣を作ってくれなかったし、じっちゃん、その後亡くなっちまったからな…。」
「なるほど、それなら同じ剣を持ってるのは、いないはずっスね。」
「そういうわけ、だが、まぁそれだけじゃないんだがな。」
志狼は剣を鞘に入れ奥に放り投げた。
「でも、もし仮に志狼さんの子だったとしても母親は
誰なんっスかねぇ?」
「そうだな、一体…誰だろ?」
志狼が母親について頭の中の女性リストを検索しているとアリサの声が聞こえた。
「志狼くーん。八雲くんが話しがあるって。」
「はーい。」
志狼達は返事をするとアリサ達のいる部屋へと戻った。
「父さん。」
「あー…何だい八雲?」
なにかぎこちないしゃべりだが志狼はなんとか八雲と話し続けた。
「僕が、なぜここの時代にきた話しをとりあえずしなきゃ
いけないから話すね。」
八雲はポケットの中から一通の手紙をだした。
「12年後の父さんから父さんへって。」
「俺に!?」
「うん。」
志狼は手紙の宛名のとこを見ると確かに「天羽 志狼様」と書いてある。
差出人も天羽 志狼だが。
志狼は手紙の封を開けると妙にリアルな絵に手紙が添えてあった。
『拝啓 天羽 志狼様 って何か自分に出すために手紙書くってのは
おかしいよな。まぁ、とりあえず元気か俺!』
「このへんな調子といい、くせのある字は間違いなく志狼さんの
字っスね。」
テディに志狼はムッときたがうなずきながらもその手紙を読んだ。
『とりあえず、俺の事だから今起こってる事にとまどってるだろう。
テディ辺りが隠し子かとか言ってると思う。』
「その通りっス。」
『だが、まぎれもなく八雲は俺の息子だ。証拠の剣もある。
お前があの剣がそこらへんのモノと違う事はお前自身よく知ってると
思う。念のため数年後にできるメガフォートって奴で家族の肖像画を
写した。』
「メガフォートって何?」
「フォートって妖精を入れて絵をそっくりそのまま写すのがあるらしいけど、それをえらーい人がもっと長く写せるようにしたんだって。」
「ええっ!?今、最新式のモノなのにもっといいものができるの!?」
クリスは驚いてその絵を見た。
「ジョートショップで取ってるのかぁ…
ね、何か少し大きくなってない?」
「うん。父さんが一生懸命働いて、おうちを大きくしたんだって。」
フォートのジョートショップと作りはあまりかわらないが
やや大きくなっている感じがある。
「これが、志狼さん?」
「うん!」
フォートの志狼は今よりややふけているがりりしく見える。
腕にだかれてVサインをしているのは間違いなく八雲だろう。他には…
「で、こっちがアリサさん。」
「まぁ、これが?何か未来の自分を見るのって不思議ねぇ。」
アリサがややため息まじりで白髪混じりの自分を見た。
「テディは変わってないね。」
「ガーン!クリスさん言ってはいけない事をっス…」
「あ…ごめん。」
志狼はフォートの自分を見た。腕に抱かれているのは八雲だろう。
だが、肩車をしている子は…そして
「なぁ、このフォート。お母さんが写ってないじゃないか。」
八雲はその言葉に反応したのか、ピクっとなった。
「あー、それは…」
「この肩車してる女の子は?」
クリスの言葉に話題がそれたからか、八雲は慌てた様子で言った。
「僕の双子の妹の沙也!僕、沙也を迎えにきたんだ!」
「は?」
ふと、フォートに目をやりながら手紙の続きを読んだ。
『なぜ、俺の息子がきているかというと娘の沙也が時空魔法の実験に
まきこまれてな。ちょうど時空魔法が暴走しちまいやがった。』
「時空魔法ってまだ確立されてない魔法なのに…
12年後にはできちゃうんだ…。」
クリスがちょっと感動してるようである。
『で、その時空魔法を使ってた魔術師のいうところによると波長があうやつの所に現れる可能性が高い、という事は俺の所に現れるだろう。
そして、さらに行き先の時間を特定するためほぼ同じ波長の息子の八雲がいいってことになった。八雲も自分から希望した。
本当は俺が行きたかったんだが…同じ人物が同じ時間にいるのは
極めて危険らしい。くやしいがな…
そこで俺からのジョートショップへの依頼だ。息子と娘を
守ってほしい、いきなりで戸惑うだろうし、実感は沸かないと思うが…頼む。お前がいつか、この子達が生まれてきたら分かるから。』
志狼は手紙の中にある写真を見て手紙をしまった。
「父さん…」
「分かってるよ、この依頼ひきうけた!」
八雲は顔をパアッと明るくさせた。
「ありがとう!じゃ、今から行こう!」
「まてよ。もう、今日は遅いから明日からだ。だから、今日は寝ろ。」
「うん!それじゃおやすみなさい。」
八雲は素直に志狼の部屋に向かった。
「ふーん、やっぱりああいうところって志狼さんそっくりだね。」
「クリス。俺、お前らから見るとああなのか?」
「まさしく、その通りっス!」
テディが変わりに言うと志狼はため息をついた。
「やれやれ、それじゃ、アリサさん。俺、八雲の寝床作ってきます。」
「あ、僕も手伝うよ。」
「すまないな、クリス。」
志狼とクリス、テディは志狼の部屋に帰っていった。
「ふふふ。志狼くんがお父さんね…。」
アリサは食器をかたずけようとすると一通の手紙が落ちていた。
「あら?これは…お客様のものかしら?」
見ると差出人は「天羽 志狼」となっている。
届け先は「アリサ アスティア様」となっていた。
「これは…。」
アリサは手紙を開けた。
『アリサさん、一応アリサさんだけには真実を話しておきます。これは八雲自身も知りません。八雲と沙也の母親は…』

続く

中央改札 悠久鉄道 交響曲