中央改札 悠久鉄道 交響曲

「〜未来からの贈り物〜6:未来からの贈り物」 心伝  (MAIL)
6:未来からの贈り物
「じゃ、準備はできたか?」
『うん!』
志狼の前には二人の子どもがいた。八雲と沙也である。
「それじゃ、アリサさん、テディ行きましょう」
「ええ」
「ういっス!」
あのリヴェティス劇場の惨事から一週間たった。
劇場の事件はリカル爪が言った悪霊の話が効いて
沙也の名前は表立って出なかった。
八雲も元気になり沙也も立ち直ったので
今日はローズレイクにピクニックに行く事になった。
「うーん、僕アリサおばさんのサンドイッチ楽しみ!」
八雲が舌なめずりしながら沙也の持っているバスケットを
じっと見つめる。
「八雲お兄ちゃん!そう言ってさっきつまみ食い
しようとしたでしょ!」
「え…?」
八雲の額に汗一筋
「さ、沙也…見てたの?」
「しっかりと!もう、ママに帰ったら怒ってもらうわよ!」
「う…それだけは…」
八雲と沙也がはしゃいでいる。
「なんだか沙也ちゃんの方がお姉さんみたいっスね」
「そうね。やっぱり双子でも違うものね」
テディのつぶやきにアリサはころころと笑っていた。
ローズレイクでは先にアレフとトリーシャ、
そして近頃退院したクリスが準備してくれているはずだ。

          〜ローズレイク〜
「おっ!きたきた。おーい!志狼ぉ〜」
「こっちこっち!八雲クン達も早くおいでよぉ」
ローズレイクのほとりではアレフとトリーシャが手を振っていた。
志狼もその返しに手を振ってアレフ達の元についた。
「準備、ご苦労さまアレフクン、トリーシャちゃん」
「いえいえ、おばさんのためなら例え火の中水の中!」
「また何言ってんだか…」
志狼は苦笑いをしながら辺りを見回した。
「なぁ、クリスはどこ行ったんだ?見当たらないけど…」
「クリスくんならカッセルおじいさんのとこに
行ってるよ。どうせなら人数多い方が楽しいからって」
「へぇ、クリスらしいな」
そう言ってるうちに遠くからクリスの声が聞こえてくる。
「おぉ〜いい、皆ぁ」
「おっせーぞぉ!早く来いクリス!」
アレフが叫ぶとたぶたぶの袖を振りながらクリスとカッセルが
やってきた。
「はぁ、はぁ…やぁ、志狼さん達もきてたの」
「ああ。クリス、怪我のほうはもういいのか?」
「うん、クラウド先生のおかげでね」
クリスはふと目線を横にすると沙也が暗そうにうつむいていた。
クリスは沙也に近づき
「沙也ちゃん」
と、声をかけた。
「…クリスお兄ちゃん」
沙也は今にも泣きそうな顔をしていた。
「ごめん…私のせいでお兄ちゃんに大ケガを…」
沙也のすみれ色の瞳につゆがたまるように涙があふれてくる
「ごめんなさいっ!」
おおかぶりに頭をさげる沙也。
「クリス兄ちゃん。僕もあやまるから沙也を許してあげて…」
一緒に八雲も頭をさげる。
クリスはちょっととまどうと二人の頭をなでで
「沙也ちゃん…八雲くん。大丈夫!
だって怪我ももう治ったんだしね。すんだ事だよ」
「そうそう、こいつ普段はからっきしダメなのに
こういう時だと強いからなぁ」
「アレフクン〜それ誉めてるのぉ?」
クリスはアレフを軽く睨むとアレフは苦笑いをした。
「それじゃ、仲直りね。でも、沙也ちゃん。
もう二度とあんな事しちゃ駄目よ」
アリサが三人の間に入って言うと、沙也はうなづいた。
「さぁ、それじゃ皆でサンドイッチを食べよ!」
トリーシャの昼の陽気な声がローズレイクに響いた。

「むう、やはりアリサの作った料理はうまいな」
「ありがとうございます。カッセルさん」
「御主人様のサンドイッチはエンフィールド一っス!
さくら亭やラ・ルナにも負けないっスよ!」
「おいおい、パティが聞いたら怒るぞ」
太陽がちょうど中点にさしかかっている。
風は秋の風が吹き当たりの山は少し紅の化粧を施していた。
「ねえ、未来のローズレイクもこんな感じ?」
「うん!僕たちもよくここに来て父さん達と
一緒に魚釣りするんだ!」
八雲が元気に答える。
「おやぁ、八雲ぉ。やけにトリーシャの前だと元気だなぁ」
「!」
アレフの突っ込みに八雲の顔は
瞬間湯沸器並みの速さで顔が赤くなった。
「あれ?どうしたの八雲クン?
何か…ボク変な事いったかな?」
「いやぁ、そりゃねぇ…なんせ八雲の」
「わーわーわーわーわーわーわーわーわー!!!!」
急に大声をあげてアレフに突っかかる八雲。
「アレフ兄ちゃん!」
「へっへ〜ここまでおいでーだ!
えー、エンフィールドの皆様ぁ。天羽志狼くんの隠し子
天羽八雲くんの好きな人はなんとあのト…」
2人はそのまま追いかけっこをし始めた…
「ふふふっ、なんか面白そうだからボクも行ってくる!」
「あ、それじゃ、僕も。行こ、沙也ちゃん」
「うん!でもパパは?」
沙也は振り向くと志狼は手を振って
「後から行くからちょっと先に行っててくれよ」
「うん!」
と、仲良く二人は手をつないでアレフを追いかけていった。



「誰が隠し子だ…ったく」
志狼は毒づくとアリサは笑って言った
「でも、沙也ちゃん元気になって良かったわね。
志狼クン、お疲れ様。」
「ほんと、良くあの中から帰ってきたこれたっスよねぇ」
「まぁね」
と、志狼はまだ食べ終わってないサンドイッチをほおばった。
「つかぬ事を聞くが志狼、お前天羽流の…」
「ぐっ!」
急にカッセルの言で志狼は喉をつまらせた。
いそいでアリサがついでくれたお茶を流し込む

「はぁはぁはぁ…じーさん、
何で俺が『天羽流』の人間だってどこで分かったんだ?」
志狼は喉を抑えながらカッセルを見た。
アリサとテディはなんの事か分からず
きょとんとしている。
「何スか?その…あまは…ナントかって」
「天羽流じゃよ…50年前の大戦時数々の闘いに身をおき
英雄として崇められ恐れられた伝説の剣士『天翔ける刃』。
その者が使っていた武術の名が天羽流じゃよ
志狼はその武術の唯一の後継者じゃ」
「まぁ…志狼クンがそんな…」
「すごいっス!志狼さん!」
アリサとテディは志狼の方を向きながら驚いている。
志狼は少し照れながらサンドイッチを再びほおばった。
「そして、恐らくあのリヴェティス劇場の時の…
リカル爪の話しによると天羽流神技というらしいな」
「まぁね」
志狼は軽く首の後ろをかくと草むらに寝転んだ。
「多分、その伝説の剣士って俺のじっちゃんの事だと思うよ。
でもなぁ…俺あんまり話を聞いた事なかったな。」
「ご祖父は何も言ってなかったのか?」
カッセルが聞くと志狼はうなづき
「ああ。旅の途中でその『天翔ける刃』の話しを聞いたら…
驚くことに俺のじっちゃんだったんだよな。
でも、実感わかないよ…」
「そうか…心伝…いや、翔雷は?」
「俺が旅立つ前に死んだよ。



…って何でじーさんが俺のじっちゃんの本名知ってるんだ!?」
カッセルはあご髭を軽くなで
「お前は知らないのか?お前の祖父…そう天羽翔雷は
このエンフィールドに来た事があるのだぞ」
「何ぃ!?」
この事は志狼の方が驚いた。
まさか祖父もこの街に来ていたとは…
不思議な縁を感じる志狼だった。
「何でじっちゃんが?」
「確か…どこかの街から誰かは忘れたが頼まれて
女の子をここに連れてきたのじゃよ」
「へえ…女の子をっスか?」
「ああ、その時エンフィールドは戦争状態でおよそ三十万の兵に
完全包囲されていた。
だが包囲網を独りで突破し
…そして独りで三十万の兵士相手に包囲網を崩した。
エンフィールドの昔の人間なら誰でも知ってる事じゃよ」
「ギョェー人間じゃないっス!」
テディが目をひんむくほど驚いているがカッセルは話し続ける。

「その時ほんのわずかな時間じゃがワシと話した。
ワシはエンフィールドに残ってくれんかと
無理を承知で頼んだが、軽く笑うと
『俺にはまだ行くところがあるんでね。悪りぃな』
と去っていった…」
「…」
志狼は押し黙ったままである。
「いずれ」
カッセルは一言間をおくと
「この街にもっと役にたつ奴が来る。
その時そいつにいろんな事を教えてやってくれと言ってな。
その後翔雷の言うとおりリカル爪がこの街にやってきた。
後に聞いた話しじゃがリカル爪は旅の途中
お主の祖父に会ったらしい。」
「おっさんも?」
「うむ」
カッセルは一言うなづくと志狼は呆然と立った。
「…知らなかったな。じっちゃん、
俺に昔の事はあんまり言わなかったからな
過去より未来を気にするタチだったから」
「でも、そんなすごい事が出来るなんて
素晴らしいお祖父さんね」
アリサがうなづくと志狼もつられてうなづく。
「ええ、親を早く亡くした俺にとって親変わりでしたから…」


志狼はかすかに微笑むと大きく伸びをして
「さぁて!あいつらの所にでも行くか!行くぞテディ」
「うぃっス!」
志狼とテディは八雲達の所へ駆けていった。

「いい子じゃの、志狼は」
「ええ。初めてここにきた時と大きく変わりましたわ。
でも、あれが本当の志狼クンだと思うんです」
「うむ…」
カッセルはふと志狼の顔を浮かべて考え込んだ
「…」
「どうしたんですか?」
アリサが心配そうに覗き込むのを見て
「いや、何でもない。それよりアップルティーの
おかわりを頂けんか?」
と、言ってはぐらかした。カッセルの心中では
(志狼は…あの翔雷とは似てないのう…母方に似たのじゃろうか?)
と、ささいな事を思っていたのだった。
だがそのささいな事がなぜかカッセルは言いたくなかった。


       〜夜、ジョートショップにて〜
楽しいピクニックは終わり皆はそれぞれの家路に帰っていった。
ジョートショップの一階では、アリサやテディ。
八雲と沙也が夕食を食べている。
「あれ?パパは?」
回りを見回してみると確かに志狼がいない。
「そういえば…二階かしらね?」
アリサがスープをつぎながら答えた。
ちなみにこのスープ八雲のおかわりでとっくに五杯めだったりする。
「八雲クン、沙也ちゃん、すまないけど…」
「分かってますって!
さ、八雲お兄ちゃんパパを呼びに行こ」
「ええっ!?だって僕まだスープのおかわり…」
「スープはいつでも飲めるでしょ!」
沙也は八雲を引きずって上にあがった。
「やれやれ…どっちが年上なんスかねぇ…」
テディは二人を見ながら呆れてつぶやいた。

「…」
志狼は星を見ていた。多くの星を。
旅先でいつも見ていた気がするがここエンフィールドに来てから
ゆっくりと見られるようになった気がする。
「子ども…か」
志狼は独り言のようにつぶやいた。
今の志狼には自覚さえなかったがいずれは自分も結婚する
たぶんシーラと。
だが、その時思うのだろうか
『俺はいい親になれるのだろうか?』
と、志狼自身、親。特に父親はまったく知らない。
母は三歳の物心つくまえに亡くなっている。
ただ祖父のまっすぐな不器用ながらも
必死に暖かく強く育ててもらった
手が志狼の脳裏には浮かぶ。
「俺が…父親か…ふふっ、ちょっとはやいな」
志狼は自分で苦笑した。そうなのだ。
まだシーラと本当に結婚するわけでもないし
それにシーラをめぐっての恋のライバルならいる。
まだ、早いなと心の中でそう思った。
それに、未来の自分はこれからの仕事が残っているのだから。

「お父さーん!」
「パパぁ!」
窓の所から子供たちの声が聞こえてきた。
振り替えると八雲と沙也が登ってきている。
「やっぱりここかぁ」
「そうだね」
二人は志狼のそばに座った。
「やっぱり・・って?」
志狼は不思議な感じで聞くと二人はにっこり笑い。
「だってお父さんって必ずここで星を見ているもん。ね」
「うんっ、それに私達に星座とか教えてくれるんだよ!」
「へぇ」
軽く言うと志狼は上の夜空を見上げた
牛乳をこぼしたような星がまたたいている。
「なぁ、八雲、沙也あの星知ってるかい?」
志狼はある星を指した。その星は一つだけ煌煌と輝いていた。
「あの星はなぁ」
『知ってる!』
二人は声をそろえて言った。
「あの星はお父さんを助けてくれた星でしょ?」
沙也が指差して笑った。八雲もつられて
「あの星はお父さんをエンフィールドに連れてきた星なんでしょ?
旅をしていたお父さんはあの星が光っている方に行くと
エンフィールドについたんだよね?
何回も僕たち聞いたもん」
「なんだ…ちっ言ってたのか」
軽く首の後ろをかきながら志狼は笑った。


「じゃ、あの星座は知ってるか?」
「もちろん!ね!八雲お兄ちゃん?」
「えーと…なんだっけ?」
「もう!忘れたの!?あれはライシアン座でしょ?」
「あ、そうだった…」
二人はいろんな星を指差していった。青、赤、白
いろんな星をさしていった。
「けどなぁ、一番いいのは冬のフリュッセ流星群が見られたのになぁ」
志狼は残念そうに二人を見た。
−ちなみにフリュッセ流星群とは
12年に一回だけ見られる最大の流星群がくる。
それは数々の色を為し別名『七色流星』と呼ばれているものだ。
「じゃ、それまでパパの元にいようかな?」
「へっ!?」
志狼はびっくりした顔をし、八雲は慌てて
「ばか!未来の父さんや母さんが待ってるだろ!」
「冗談よ、てへ☆」
沙也はちょっと舌を出して笑った。
「でも、パパたちとは十二年後に見られるよ…未来で」
「そうだね、帰ったらお母さんの
赤ちゃんも生まれているだろうしね」
子供たちは目を細めた。
次の子はどんな子か考えているのだろうか、志狼はそんな気がした。
「…必ず、見ような。親子で…家族みんなで」
「うん!僕と沙也と」
「パパとママと」
「そしてアリサさんとテディ、もうひとりの子どもと」
三人は微笑むと一人一人小指を出してからめた。
そして

『♪指切りげんまんうそついたら針千本のーます♪』
「ゆびきったっ!」
三人は笑った。親子…ってこんなものなんだな。
志狼はそう思った。まだよく分からないけど。
「でも、沙也…未来のパパと」
「分かってるって!だって翼が無くたって
私もお父さんも家族でおんなじだもんね」
沙也は今までの事が嘘のような笑顔を見せた。

急に八雲がすっとんきょうな声をあげ
「あ!忘れてた!お父さん下でアリサおばさんが呼んでるよ!
ゴハンゴハン!!」
八雲は急いで二階の窓にうつった。
「もう、八雲お兄ちゃんったら!…でも私もお腹すいたから
パパ。ゴハン食べよ」
「ああ、アリサさんのゴハンはおいしいからな!!」
志狼は沙也と八雲に引っ張られながら下に降りていった。

           〜数日後〜
いよいよ、八雲と沙也の帰る日になった。
ジョートショップの前では志狼、アリサ、テディはもちろん
アレフ、クリス、トリーシャ。そしてリカル爪とアルベルトもいた。
帰れる方法は疑問だったが沙也が時空魔法のやり方を
覚えていたらしく魔術師ギルドの数人の魔力補助でなんとかなる事が
分かった。むろんギルド長はその沙也の超絶な魔力に舌をまいたのはいうまでもない。

「それじゃ…」
「うん」
八雲と沙也は魔法陣の中央に立つ。
すでに魔法陣にはギルド魔術師達の魔力が付加されている。

「沙也、立派なレディになるまで俺は待ってるからな」
アレフは片目でウインクしてみせた
「ふふっ、アレフお兄ちゃん。またミカお姉ちゃんに怒られるよ」
「やれやれ…それと、八雲!」
「な、何?」
「女の子の告白はしっかりやれよ!
じゃないと気付かない時だってあるからな!」
八雲はまた真っ赤になったが力強くうなづいた。
「何か…変だけど、未来であおうね!」
そういうとトリーシャは一つの髪飾りを出した。
「今、一番はやってる髪飾り。
ホントはボクがつけようと思ったんだけど
…沙也ちゃんにあげるよ」
「トリーシャお姉ちゃん…ありがとう!」

「志狼の子どもだったとはな…達者でな」
「アルベルト兄ちゃん…未来で槍を教えてね」
「ああ、みっちり俺が鍛えてやるさ」
「私も剣術なら教えてあげよう。いつでもきなさい」
リカル爪とアルベルトに向かって八雲はおもいっきり笑顔で答えた。

「ちょっとだけお別れね…」
「でも、未来であえるっスね。生まれてくるのを待ってるっスよ!」
アリサとテディが微笑む。
「アリサおばさん…お父さんと仲良くしてね」
「ええ。志狼くんは私にとって息子と同じなんですから」
すると沙也は目を輝かせて
「じゃあ、アリサおばさんって私のおばあちゃんね!」
と、言うとアリサは「まぁ」と言った顔をして微笑んだ。

「八雲クン、沙也ちゃん…」
クリスは目に涙をいっぱい浮かべていた
「おいおい泣くなよ、クリス。年上のお前が泣いてどーすんだ?」
アレフがからかうとクリスは眼鏡をとりながら
「だって…グス…悲しいもの…未来で会うんだけど…」
「クリス兄ちゃん…」
沙也はクリスの所に近づいた。背は同じくらいである。
「お兄ちゃん…また必ずあえるよ。」
「沙也ちゃん」
「…」
沙也はクリスの耳元で軽くささやいた。
「またね。お兄ちゃん」
唇が、クリスの頬に軽く当たった。
「え…?」
沙也はにっこり笑うと八雲と一緒に父の前に立った。

「…」
「お父さん…ありがとう」
「パパ…ありがとう」
志狼は首を振ると二人の頭をなでた。
「いや…俺からもありがとうっていいたいよ。
大切な未来からの贈り物に…」
途端、志狼はぎゅっと二人を抱きしめた。
「あおうな…未来で」
「お父さん…」
「泣いているの…?」
「いや…泣いてないよ」
だが、志狼の目には涙がうっすらとたまっていた。
(何でこんな時に涙がでるんだろ…?悲しくもないのに)
志狼はゆっくり二人を離すと二人を魔法陣の中央に歩ませた。

沙也の髪の色が金色へと変わっていく。そして白き翼が舞い上がり
呪文を唱え始めた。
「時に非ざらし時空の実よ。
我の行くべき道は遠き悠久の彼方、時空の黄昏
その彼方なる空の門を時の鍵にて開き
我らの道を作りしめよ!」
途端、魔法陣が金色に光だした。
「それじゃ…みんな!!」
「ありがとう!」
二人の声が魔法陣の中から聞こえる
「八雲クン!、沙也ちゃーん!きっと…未来であおうね!」
クリスが力いっぱい叫んだ。
「八雲ぉー!沙也ぁー!!」
志狼も力いっぱい叫んだ。
「ありがとなぁ!!!」
子供たちが手を振っている。
「お父さぁーん!」
「パパぁ!クリスお兄ちゃーん!」
そして光が魔法陣を包み
そして、二人はフッと消えた。

「…」
「帰っちゃったね…」
クリスはつぶやいた。
「ああ、でも未来でいつかあえるんだ。
その間俺達は怠けずにしっかり生きようぜ」
志狼ははるかかなたの空を見上げていた。

(シーラ…俺は君といつか…)
志狼は彼方、ローレンシュタインにいる親友を思い浮かべた

       〜ローレンシュタイン〜
「シーラ?いる?」
「ええ、どうぞ」
シーラの部屋に一人の友人が入ってきた。
シーラはピアノの前で楽譜に一つの曲をかき上げていた。
「あれ?それって…この前言ってた課題?」
「そうよ、ちょっと聞いてみて」
シーラはピアノの鍵盤に指を合わせ弾きだした。
ゆっくりとした曲が流れてくる。
「何だか…子守り歌みたいね
…でも、どこか元気な感じがして、子どもが聞いたら喜びそうじゃない」
「ありがとう。何だか…急に書きたくなったの、こんな曲があってもいいんじゃないかなって」
シーラは友達に楽譜を見せながら微笑んだ。
ふと、見ると友達の顔が驚いた表情になっている
「どうしたの?」
「う、ううん。なんでもない。
ただ…シーラがなんだかお母さんの顔に見えたから」
「まぁ、それじゃ私、あなたのお母さんに似ているのね」
シーラはコロコロと笑った。だが友達は別の意味で言ったのだが
友達は気を取り直して聞いた
「で、この曲名は?」
シーラは軽く考えると笑顔でこう答えた。

「未来からの贈り物って、どう?」

Fin

中央改札 悠久鉄道 交響曲