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「桜花幻想曲〜3〜想い花」 心伝
桜花幻想曲〜3〜想い花

「どういう事だ!志狼さんとテディに何をした!」
「ふふふ…」
ゆーきの怒声を嘲笑うようにリーンは笑った。
「ちょっと、眠ってもらってるわ。
安心して、命まではとらない」
リーンは桜の枝をさわりながら言った。
僅かに桜の花びらが揺れ、落ちる。
「あなたが、おかしな事をしなければ…ね。
例えば、その剣をぬこうとしてるとか」
「くっ…!」
ゆーきは魔法剣ヴァイパーにかけようとした手をゆっくりとはずした。
「そうそう、いい子。そうじゃないとね」
「…志狼さん達は…!」
静かな怒りをこめゆーきはつぶやいた。
リーンは微笑するとローズレイクを指差した。
「まずは、あそこに行ってもらうわ。
そうね…一人じゃつらいかもしれないから
助っ人を一人だけ呼んでもいいわ。
それと、この事は自警団にもジョートショップのアリサさんにも
伝えない事。いいわね?
そうじゃないと二人と一匹がどうなっても知らないわよ」
「二人!?もう一人いるのか!?」
「ふふっ…じゃ、待ってるからね」
そう言うとリーンは笛を吹くと消え去った。

「くっ!」
ゆーきは途端にローズレイクの方に走り出した。
(一体、なんなんだ!?志狼さん達をさらうなんて)
ゆーきは一目散に駆けてゆく
「ゆーき!」
不意に声をかけられたのでややよろめきながらも逆の脚で止まり声の方を向いた。
「ケイさん!」
見るとケイが竿と魚篭を持ってこっちを向いていた。
どうやら魚つりの帰りというのが見ただけで分かる。
「どうしたんだ?そんなに慌てて?」
「ケイさん…」
ゆーきはケイに真剣な目を向けると
しぼりだすような声で言った。
「志狼さん達が…さらわれました…」
「…!」

「なるほどな。で、その桜の精とやらはどんな奴なんだ?」
大体のいきさつを聞いたケイは
ゆーきと共にローズレイクへと走っていた。
「分かりません…ただ、志狼さんが捕まったという事は
それなりの実力はあると思います。」
「そうだな…志狼はそれなりの腕はあるからな
しかし、何であいつらをさらったんだろうな?」
「さあ…」
ゆーきは頭の中で考えていたが答えは出なかった。
(そう言えば今日は雑貨店手伝うつもりだったのに…)
ゆーきは雑貨店をしてる父に少しだけ悪く思いながら
ローズレイクへ走った。

         〜ローズレイク〜
水面が煌煌と日光を反射させ鮮やかな光を出している。
カッセルの家を越えゆーきとケイはローズレイクの
端にまで来た。野桜がざっと咲いている
「出て来い!」
ゆーきは大声で叫ぶと花吹雪が吹くと
リーンが横笛を持って現れた。
「あれが、桜の精か?」
ケイは構えながらゆーきに聞いた。
「そうよ、一応始めましてかな?
ケイ・ラギリオンさん。…いえ幻獣神ネガリオ様
ってとこかしら?」
「!」
ケイはこの言葉を聞いて警戒の色を強める。
実はケイは人間ではない。
はるか六万年前に作られたバイオロイドだった。
だが、ひょんなきっかけからケイの体に
幻獣の神ネガリオが憑依し幻獣族として生き続けていた。
だからケイの体には2つの人格がある。
まぁ、ネガリオが表に出た場合でもしっかりと記憶はあるらしい。

しかし、ケイの体にネガリオがいるという事は
わずかの人間でしか知らない。
「貴様…何者だ…?」
ケイは殺気を放ちながらリーンを睨んだ。
「ま、あなたの事ぐらいは分かるわよ」
リーンは手にを口に当てながらくすりと笑った。
「志狼さんとテディは!?」
ゆーきは顔に怒気を含め近づいた。
「そーね…それじゃ、返すためのテストをしますか」
「テストだと!?」
「そ。今から、3つの試練を出すわ。
それに勝ったら志狼さんとテディ…そしてもう一人」
「もう一人!?ゆーき確か二人って…」
ゆーきはうなづいて言う。
「ええ、どうやらもう一人さらわれたらしいんです。
一体誰が…」
「それは、ついてからのお楽しみ。
ま、王子様を待つお姫様がいるって事は確かね」
「お姫…様?」
「それじゃテストを始めるわよ!」
リーンは笛を唇に当て吹き始めた。
幻想的な曲とともにあたりが霞がかって見えなくなる。
「こ…これは」
「…!ゆーき!」
ケイの一言で気付いたが桜の花びらが襲いかかってくる。
「くっ!」
ゆーきは瞬間的によけた。が少し頬が小さく切れて赤い物が流れる。
『さあて、それ全部よけてね。』
のんきなリーンな声が聞こえてくる。
「くそっ!なめてやがるのか!!」
ケイは避けながら呪文の構えを取った。
「黒き力の一欠けよ、暗闇よりいでしその力
我が手に集いて黒き稲妻となれ。ラグナ・ヴォルト!」
ケイの指先から黒い稲妻がほとばしり
桜の花びらが散っていく。
「この程度の攻撃!俺達に通じると思っているのか!」
ケイははき捨てるように叫ぶと
ラグナ・ヴォルトを連発していった。
「…」
ゆーきもヴァイパーを振って花びらの刃を払っていく。
しかし、何かひっかかるものがあった。
(さっきのあの子…どこかで…)
ゆーきの頭には何かがひっかかっていた。
そう、過去の記憶でもないのに忘れられていた何がか。

花びらをさっさとかわし楽勝といった顔で二人は立っていた。
あたりには花びらが異様に一面にあった。
「この程度か…」
『そんなわけないでしょ、とりあえず一つめは終了
ってとこね』
ケイの嘲笑にリーンが答えた。リーンの言葉には
別に悪意は無くただ楽しんでいる感じがした。
「リーン!」
ゆーきは頭上に叫んだ。といっても見えるのは桜色の霧だけだが
『なーに?まさか、降参とかは言わないわよねぇ』
「違う!君…」
ゆーきは一瞬ためらったようだが、すぐに
「君は…俺とどこかで会ってないか!?」
「何っ!」
リーンの反応が返るよりも早くケイの驚きの声が早かった。
「答えてくれ!」
ゆーきは続けて叫んだが
『…』
リーンは何も言わない
「リー…」
ゆーきが名前を呼ぼうとすると桜色の霧は晴れ辺りが見え始めた。
普段と変わらないローズレイク近くの森が見えてくる。
『…第一関門突破ってところね。次はその森に進みなさい…』
リーンの声が聞こえてくる。
だが、先ほどの無邪気な声にしては低かった。
ゆーきとケイは無言でうなづくと先の森へと進んでいった。

森はそう深くなく昼の柔らかいこもれ日がさしてくる。
「やれやれ、これが志狼を助けに行くのじゃなかったらピクニックだぜ…」
ケイは回りを見ながらつぶやいた。
「それじゃあ…アリサさんのサンドイッチでも持ってきて
今度行きますか?」
「メロディも連れてな」
途端、ゆーきの顔が真っ赤になる。
ゆーきはメロディに淡い恋心を抱いているのは
誰もが知るところである。
「え…そ、それはその…」
クリス並みに女の子に弱いゆーきはおろおろとしていた。
「ハハハ!そう照れるなって!」
「照れてませんよぉ…」
向きになって言い返すゆーき。
どう見ても志狼救出に行ってるとは見えない二人だった。
「にしても…」
ケイは森の葉を戯れにちぎって話を変える。
葉は濃い緑色をしていた。
「ゆーき、お前本当にあの子を見た事があるのか?」
「…」
ゆーきはうつむいたまま下を向いている。ゆーきの眼前には
深緑の草がずっと続いていた。
「確かに…どこかであった気がするんです。このエンフィールドで」
「じゃ、ここの住民か!?あいつが」
「そうじゃないと思うんですけど…確かにどこかで」
ケイは両腕を後ろにして組んだまま空を見上げた。
「お前さんの雑貨店の常連とか…」
「…」
「でも、お前になんの用があって…」
途中でケイの言葉はさえぎられた。
「ケイさん…」
ゆーきが自然に構えを取る。ゆーきは武術を「ケモノ師」と名乗る
青年に武術のてほどきを受けていた。
そのこともあるのか気配を読み取るのは獣並みである
「ん?」
ケイはそっちの方向を見るとその気配の正体を見た。
「…なるほどね…あれが『第二関門』って奴か?」
「そうらしいですね…」
二人が見たもの。それは全長3メートルほどの巨大なドラゴンだった…


「何で、こんなものがいるんだよっ!」
「俺に聞かないで下さいっ!」
ドラゴンの爪や牙をかわしながら二人は毒づいた。
「くそっ!メガフレア使うなり
龍王バハムート呼ぶなり出来るが…」
ケイはドラゴンをひと睨みするとはき捨てるように言った。
確かにケイの魔力ではほぼ一撃で倒す事は可能だ。
だが、
「場所が悪すぎるじゃねえか!!火事どころじゃねえぜ!!」
木を何者ともせず壊しながらドラゴンはせまってくる
ドラゴンは一声吠えるとゆーきに腕を振り下ろした。
「くっ!」
腕に吹っ飛ばされるゆーき。だが、後ろには幸いにも
苔が密集していてクッションになった。
「いてて…」
「この野郎っ!」
ケイは愛刀幻夢を抜いて飛び掛かる。そして幻夢が
ドラゴンの目に深々と突き刺さる
−はずであったが
外れた。
「へ?」
ドラゴンの体をケイはすり抜けたのだ。
「何!?」
「ケイさん!後ろ!」
ケイの後ろを振り向くと目前にはドラゴンの
尻尾があった。
尻尾がケイの目を覆い勢いが伝わる。
「くおっ!」
たまらず吹っ飛ぶケイ。
「痛っ」
木に直撃しながらもケイは向かって来る。
だがケイは冷静ドラゴンを見やった。
(俺達の攻撃がはずれて、あのドラゴンが当たる…)
「くそっ!」
ヴァイパーを振り回すゆーきの姿がドラゴンの後ろに見えた。
だが、ゆーきの剣もはずれドラゴンの攻撃は当たる。
(…!そうか!こいつは…あれか!)
ケイは左腕の腕輪をつかみ右腕につけかえた
(後は、頼むぜ!ネガリオ!)
途端、ケイの髪や瞳が銀色に変わる。
これこそケイの中に潜む幻獣神ネガリオである。
ケイ−いやネガリオはすっくと立ち上がると
「ゆーき!!どけ!」
ゆーきは叫ぶ声の方を向いて少し驚いたがケイが
覚醒してるのを知ってすぐに後ろに下がった。
「ったく…まさかアストラルドラゴンが出るとはな…」
ネガリオは軽くジャンプしドラゴンの頭に乗ると
「ふん!」
気合一閃!ネガリオが拳を頭にぶつけるとドラゴンは
霧のように消え去った。

「…き、消えた…」
ゆーきはさっきドラゴンがいた方向とネガリオを
あっちこっちと見ている。
ネガリオはため息一つつくと
「分かってるあのドラゴンがなんだったか…
後はケイに聞いてくれ」
腕輪を右腕に付け直しネガリオはケイに戻った。
「ふう、やっぱりアストラルドラゴンだったか…」
ケイは今まで窮屈そうだった様に腕を回していた。
「ケイさん…さっきのアストラル…何とかって?」
「ああ、アストラルドラゴンのことか。
あれは、一種の幻獣なんだよ」
「幻獣!?」
「そ。だが本当の幻獣じゃないな…
いわば幻術で作り出した目くらましにに近い。
その証拠にゆーき。お前さっきのとっくに痛くないだろ?」
「え…」
ゆーきはさっき木にぶつけたとこや尻尾をぶつけられたとこを
さわって見た。痛みはなかった。
「ほ、本当です!痛くありません」
ケイは納得したようにうなづき話しを続ける。
「だがさっきの様に痛みを覚えさせる事もできる。
術者によっては殺す事も可能だな…
しかも、幻獣に似た力を持っている
だから、ネガリオを起こしたわけさ」
「そうか…ネガリオさんなら幻獣ぐらい簡単なわけですね」
「ま、そゆこと。しかし」
ケイは遠くのほうを見てつぶやいた。
「ここまでの術が使える奴とはかなりの奴だな
…ゆーき、油断しないほうがいいぞ」
「はいっ」
二人はそのまま淡々と続く森の奥へと入っていった。


「…」
桜の花びらのヴィジョンに二人の姿が写る。
それを自称桜の精−リーンはじっと見ていた。
やがてため息を一つつくと画面が消え花びらは風に流された。
(…)
「心配だった?あの子が」
リーンは空を向いて言った。
近くには幾年をも育っていた桜の大樹が一本だけあった。
ローズレイクのカッセル家の反対側にこの木はそびえていた
(うん…)
少し気弱な声が聞こえてくる。
「そうね…でも、ああしないと私もまずいからね。
そこの所は分かってね。・・・あの人の力見たかったから」
(…)
急にまたリーンはふらつくと倒れそうになる
(…!大丈夫?)
「心配しないで…伊達に桜の精じゃないわよ。
それより、あなたもしっかりと決心つけなさいよ。
おぜん立てはしてあげたんだから」
リーンは長い髪を揺らすと遠くのほうを見た。
「…来たわね!」
見ると、ゆーきとケイがそろってこちらに向かってきた。

「ついに、見えたぜ」
ケイとゆーきは桜の大樹の前にまできた。
そこにはリーンがたたずんでいる。
「リーン!」
ゆーきがさけぶとリーンは怪しい笑いをして
「ついにきたわね…ならば第三の試練を受けてもらいましょうか
王子様?」
「ふざけるな!志狼さんとテディは!?
そしてもう一人の子ってのは!!」
ゆーきがさらに叫ぶとリーンは手を前に突き出し
「まぁまぁ、あせらないの。それじゃ女の子にはもてないわよ
それじゃ第三の試練、いってみますか」
リーンが指をならすと桜の大樹から人が出てきた。
「…!」
ケイはその人を見て驚いたそのやや身長高めの男。
そして、ゆーきも知っている男。
「ば、バカな…」
その男はゆっくりとゆーき達を見ていった。
「第三の試練は…俺だ」
ゆーきは愕然とした
「な、何で?」
「ゆーき、俺と一人で闘え!」
その男は急スピードでゆーきの方に走ってきた
「な、何で…何でなんですか!!」
ゆーきは剣を抜きながら叫んだ。

「志狼さんっ!」

人の思いは時に桜のように
美しく…はかない


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