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「桜花幻想曲〜4〜夢花」 心伝
桜花幻想曲4:夢花

「ゆーきぃ!」
志狼はダッシュからの飛び蹴りを入れる!
ゆーきは体を傾け飛び蹴りをかわす。
志狼は一回転すると軽く地面に着地した。
「やるじゃないか、ゆーき」
志狼は笑うと再び構えを取る。
ゆーきは今だ現状が把握できないでいた。
「何でなんですか…?志狼さん」
「私のテンプテーションにかかってるのよ」
桜の木の方から桜の精−リーンが言った。
「テンプテーション!?誘惑幻術か!?」
ケイが叫ぶとリーンは微笑みながらうなづくと
「彼を私がおびきよせてね、その後眠らせて
テンプテーションにかけたってわけ。
意外と早くかかったものだったけどね」
「くっ…」
ゆーきはリーンに向かって睨む。
「ゆーき…手伝おうか?」
ケイが横に立って幻夢を音も無く抜いた。
−が片手でゆーきはそれをさえぎった。
「大丈夫です。お師匠様と何回か組み手やってますし
…それに志狼さんともやって何回か勝った事あるんですよ」
ゆーきは笑顔を見せると
志狼にきっと向き合った。
「志狼さん…すいませんが、俺は勝ちます!」
「なめるなよ。来い!ゆーき!」


ゆーきは志狼との間合いを一気に詰めると横になぎ払った。
「でやぁっ!」
だが、志狼はバックステップで軽くよける
−と思ったがステップの片足がつくとすぐさま前に詰める。
「え!?」
ゆーきもすぐさま後ろに飛ぶ。
空気の切れる音が志狼の手刀と共に目の前で聞こえた。
「今のをよくかわしたな。ゆーき」
志狼は口の端をゆがませて笑った。
ゆーきが軽く息をつくと頬に赤いのが流れた。
「!」
「天羽流無手技 凪鼬。手刀をかわしてもその衝撃までは
逃げられないぜ。」
志狼はさらにゆーきに手刀を見舞っていくがゆーきはかわしていく。
(これが…あの大戦で伝説を作り上げたという天羽流…!)
ゆーきは内心あせった。
リカル爪に聞いた事がある。
その昔リカル爪が駆け出しの頃
一人の剣士に命を助けてもらったと言う話を聞いた。
その剣士の異名は“天翔ける刃”
数々の戦いに身を置き無敗の力を持って戦争を終わらせた
原因の一人とも言われている。
その剣士が使っていた武術が「天羽流」
そして、その剣士こそこの志狼の祖父という事だと…!

「そらそら!ぼーっとしていたら次々行くぜ!」
「!」
さらに手刀を放つ志狼。
ゆーきは手刀そのものからはよけていたが
しかし、その度にその真空のせいでかすかな切り傷が出来ていた。
「くっ!」
ゆーきは打つ手が無くわずかに下がっていくだけしかできなかった。



「…」
ケイは二人の戦いをじっと見ていた。
「どうしたの?ケイさん?」
横には急にリーンがちょこんと座っていた。
ケイは少し眉をひそめると呟いた。
「…なんかおかしいな」
「何が?」
ケイはちらと横目でリーンを見るとすぐにゆーき達に目をやった。
「今までの事全てだよ」
ケイは軽く額をかくとリーンの方を睨み付けた。
「ゆーきが会った桜の精、そして今までのテストとかいった事。
そして、お前の存在だ」
リーンはまるで無視しているようにゆーき達を見ている。どうやら話は聞いているようなのでそのままケイは話し続けた。
「テスト…ってのは嘘だな。第一関門、あの程度なら俺がいなくとも
ゆーき一人で切り抜けられる。
もし、ゆーき一人で来ていたらお前は第二関門を作る気は
なかっただろ?」
「…どうして分かるの?」
「アストラルドラゴンを放った時点で分かったぜ。
幻獣神であるネガリオなら当然分かる範囲の事だ。
第二関門はゆーきをテストするものじゃない、
『ゆーきが連れてくる奴を確かめるテスト』だろ?
だから俺、つまりネガリオの力を持つ俺に向けてアストラルドラゴンを放った。もしあれが別の奴だったらそいつに見合ったテストをするつもりだったな?」
「どうかしらね?」
リーンはほくそ笑むと手の中にある笛をもてあそんだ。
「それにお前自身だ、桜の精さんよ。
おまえから感じるのは微弱ながらも精霊の気
−だが、もう一つの気はまるっきし人間じゃねえか。
そして、その桜の気。お前、まさ−」
「この戦いが終わったら」
リーンはケイの言葉を途中でさえぎり言った。
「みんな…話すわ。もう、桜の時期も…だしね」

「つぇあっ!」
ゆーきの剣の一閃で志狼の服の袖が破ける。
志狼は一呼吸整えるように息を吸い構えた。
「志狼さん…」
ゆーきの目がわずかに潤んだ。
何故、自分はこうも闘えるのか、疑問だった。
本当なら闘いたくない−
その瞬間、ゆーきの視界から志狼は消えた。
「!?」

刹那−ゆーきの腹に爆音が響いた。

「あ…くっ…」
ゆーきの腹に衝撃が走る。
「く…わぁっ」
さっき、さくら亭で食べた物が込み上げてくる。
目の前が幕を降ろすように真っ暗になろうとしていた。
「ゆーきぃ!?」
ケイの声が遠くに聞こえる
(ケイ…さ…ん)
「天羽流無手技…獣拳破」
志狼の静かな声がより遠くに聞こえた。
(志狼さん…お願いですから…目を…)
痛みからかそれとも別の感情からか目から一粒涙が出た。
視界が歪む目の前には桜の精−リーンがいた。
(君は…誰なんだ?…そして、何がしたいんだ…)

わずかにリーンの唇が動く。
「え!?」
ゆーきの視界が、意識が急激にその唇へ集中された

オモイダシテ…ワタシノコト…ソシテ…アナタヲマッテイルヒトガ
ココニイル…


あれは…僕がエンフィールドに引越してきた時…
僕はまだ、誰も知り合いがいなかった。
友達もいじめられていた事から人に話そうとしなかったから
誰もいなかった。
そんな時…
「ねぇ、君!」
「え?」
そう、あの子に…リーンに会っている!
リーンは僕に話し掛けてきた。
「君、ここらでは見ないね。どこからきたの?」
「南の街から…」
僕はぶっきらぼうに言った。だって、女の子と話すのは…嫌いだった
から。
「ふぅん」
そう、その子は笑うと手を引っ張って僕をどこかに連れていった。
恥ずかしかった。だって、僕が女の子に手を握ってもらうのって初めて
だったから…
「どこに行くの?」
「いいからついてきて!」
そう言うと彼女は僕の手をもっと強く引っ張った。


「着いたわよ!」
そこは、大きな湖だった。
「…ここは?」
僕はあたりを見回すと彼女は言った。
「ローズレイクよ。ここ、私が気に入っている場所なの」
「ふぅん…」
僕は軽く回りを見渡しながらその風景に見とれていた。
「…キミ、心が暗いね」
「え!?」
僕はその子の言っている意味が分からなかった。

…心が暗いって?

「わかるの。人に傷つけられた人には必ず心に暗さが出る。
それは人への優しさにもなるけど歪みが出てしまったら
さらに人に暗さを振りまくことになるの。
でも、まだキミはその暗さに歪みがないね。」
その女の子はにっこり笑うと
「キミの名前教えてくれるかな?」
そういうと僕は口が勝手に動き出すようにしゃべった
「結城…青葉 結城…」



「ふみゅう?」
その女の子にはいつ会ったかなぁ…?
あの桜色の髪をした猫の耳持つ女の子−メロディと、
「このひと、だれですかぁ?」
メロディはその猫みたいな指で僕をさして言った。
(一体、この子…何なんだ!?)
「青葉 結城くんっていうんだって」
その女の子はメロディに僕のことを紹介してくれた。
「ゆーき…ちゃん?」
「ちゃん!?」
僕が叫ぶとメロディはにっこり笑った。
「うん!ゆーきちゃんだぁ!!」
これから僕がゆーきと言われるようになった…

「組み手でも…する?」
それが、お師匠さまとの出会いだった。
ケモノの耳持つ不思議な青年−「まるにゃん」とか言われてたけど…
僕は徹底的に負けた…
「う〜ん、まだまだね。ま、いつでもおいで」
この時から僕は強くなろうとしたんだ…

ボクハツヨクナリタカッタ…

ナンノタメニ?

イジメラレナイヨウニスルタメ?



ソウダッタ。







デモ…今は違う!

「ゆーき君」
「あ…こんにちわ」
その女の子は僕の店まで来た。
「いつも、頑張っているね」
「…」
何か、恥ずかしかった。メロディと話している時より何か…
恥ずかしかった。

…初メテノ、オンナノコノ トモダチダカラカ?

「ねぇ、ゆーき君」
「…何?」
「ゆーき君って強いよね」
僕は慌てて手を振った。
「そ、そんな事ないよ!僕はまだお師匠様にも勝った事ないし
…それに、そんなに強くない」
「大丈夫だよ」
女の子は微笑んだ
「例えば、ゆーきくん。目の前でメロディちゃんがさらわれたらどうする?」
「なっ…!」
僕は急に真っ赤になった。
「冗談。例えばの話しよ」
「もう…」
僕はあの子になぜかかなわなかった。
なぜか…
「じゃ、ちょっと変えて…私がさらわれそうになったらどうする?」
「え…?そ、それは…」

ボクハマッカニナッテナニモイエナカッタ

「そ、それは…」
「それは?」
結局何も僕は言えなかった。
「もう!ちゃんと言ってよね!」
「…ゴメン」
そう言うとあの子は笑った。
「うふっ、ゆーき君ってやっぱり素直だね」
「そう?」
「でも、さっきの答え今度きかせてね!」
「え!?」
あの子は走り去った。


リーン…桜の精
そして、いつも僕…いや俺に微笑んでくれた
初めての…友達!

「そうだ、あの子なんだ…」
「ゆーき!?」
ゆーきは立ち上がった。
その瞳は獣の獲物を狩る瞳。
構えは俊敏な豹のようになっていた。
「獣の本性…バーサーカー…か」
志狼は改めて構えを取る。
「ゆーき君…」
リーンはつぶやくとぎゅっと胸のあたりで拳を握った。


「あの時の…こたえられなかった、答え。今、出します…」
ゆーきはヴァイパーを構えると志狼に突っ走った。
どこまでも、志狼にまっすぐに
黒い槍となって。

「俺は志狼さんに…勝つ!!」


桜花の風吹く頃
少年は内なる獣を開放した。
…あの時の答えをだすために・・・だすために!





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