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「桜花幻想曲〜5〜恋花」 心伝
桜花幻想曲5:恋花

「ちやぁっ!!」
ゆーきが飛び上がりながらの大上段で剣を振り下ろす。
だが、志狼はなんなく残像を残しながら右に避け
ゆーきの脇腹に蹴りを見舞う。
吹っ飛ばされながらも手で地面を跳ね上げながらゆーきは体勢を持ち直した。
「瞬波影をやる限りお前の攻撃は当たらないぜ。ゆーき」
「くっ!まだまだぁ!」
ゆーきは間髪入れずさらに攻撃していく。
だが、全て天羽流無手技・瞬波影によってかわされていた。
「くそっ!」
「さて、こっちも行くぞ!」
志狼は突きを入れたゆーきの腕を握り自分へと引っ張る。
「せいっ!」
すぐさま、蹴りを入れる志狼。
一発では終わらず連続で蹴りを入れてゆく。
ゆーきは腕を握られたままその攻撃を食らってるしかなかった。
「くっ!」
ケイがたまらず前に出ようとするとリーンが前に立ちはだかった。
「貴様…どけ!」
「ゆーきくんのジャマはさせないわよ」
「お前ぐらい消すのは簡単だ」
そう言い放つとケイの回りに殺気と共に陽炎が形成されていく。
だが、リーンは微笑すると
「テディがどうなってもいいの?」
「…!」
「今はある所で眠らせてあるけど、忘れちゃ困るわね。」
ケイは忌々しそうな視線でリーンを睨むと、その場で腰をおろした。
「見るだけしかねえのかよ…」
ケイの独語を聞くとリーンはゆーき達のほうへ向き直した。

(ゆーき君…)
(…)
(…お願い!もう、やめてあげて!)
(それは、できないわ)
(え!?)
(私がなんであなたと合わさっているか。それはあなたの願いをかなえるためだけじゃないの。どうしても、あの子に…ゆーきくんにしてもらう事があったから)
(そ、それは何?)
(…志狼さんの闘いが終わったら、教えてあげる)

「でやぁっ!」
志狼の蹴りが下からゆーきの顎に当たろうとした。
−瞬間
「なっ!」
志狼の脚がゆーきの顔面直前で止まっている。
ゆーきが剣の峯で防いでいたのだ。
ゆーきは志狼の手を振りほどくと袈裟がけに斬った。
志狼は当然瞬波影で避ける。
志狼の寸前でヴァイパーははずれる。
だが、志狼の右腕の服に切れ目が入っていた。
「な!?」
ゆーきは大振りに胴を薙ぐようにヴァイパーを振った。
志狼は当然瞬波影のバックステップで避ける。
志狼が地面に軽くついた途端、今度は腹のあたりに
一筋の斬れ目が入った。
「ま、まさか…」
志狼は獣の目つきをした敵を見た。
獣は獲物を狩る目をしている。

「当たってきている…ゆーきが瞬波影を破ろうとしている!?」
ゆーきの動きが過敏になるのがケイには分かった。
わずかずつだが、その斬れ目が深くなってきている。
ゆーきの剣の速さが瞬波影に追いつこうとしている。
(こりゃぁ…ゆーきの奴化けるな)
ケイがそう思った瞬間三度目の攻撃が志狼にあたった。
「がああぁっ!」
ヴァイパーの切っ先が志狼の衣服の袖を切り裂いた。
わずかに志狼の右腕から血が流れる。
「…!」
「せやぁぁあっ!」
バーサーカーになったゆーきにもはや躊躇はない。
相手が例え志狼であろうとも。切り付けていった。
(あの娘なんだ…リーンとは…あの娘なんだ!)

            
「ゆーきさん、この店名前ないんですか?」
それはシェリルとメロディとあの子がいた時だった。
「そうですね…父さんがずぼらだから」
「うみゅう…ななしさんなんですね。このおうち」
「そ、そうなんだ…」
僕はメロディがくるたびしゃべるたび赤くなっていた
「ゆーきくん」
「…ん?」
「名字を取って『青葉館』ってどう?」
「あおばかん?」
メロディが言うと何か…いい感じ。

「おはよ。ゆーきクン」
「…おはよ」
また、この子だ
僕はうらやましいよ。君は一つ年上なんだから
学校に僕は行けないし…
「いつか一緒にいこうね。当然、メロディちゃんも一緒にね」
「…ああ」
何かぶっきらぼうな会話だけど
それでもこの子は信頼出来る。
だって…僕の一番初めての友達なんだから…!



「でえええええええええええええええええっつ!!!」
剣を叩き付けるように志狼にぶつける。
志狼は軽く横にかわすが、
途端、地面から爆発が起こる!
「何っ!」
志狼は爆発に巻き込まれて吹っ飛ぶ。
が、体を回転させてなんとか着地すると志狼はちらと先ほどいたところを見た。
そこは、さっきの爆発で小さなクレーターのようになっていた。
「やるな…ゆーき!」
気合と共に志狼の気がふくれあがった。
「ああああああああああああああああああああああああ!!!」
獣じみたゆーきの絶叫じみた絶叫と
共にゆーきの気も爆発的にあがる。

獣の声がローズレイクに響く。
ゆーきの振りかぶったヴァイパーが志狼の喉元を狙って吠える。
喉に今刺さろうとした瞬間。志狼は急にしゃがみ後回し蹴りで
ゆーきの足を撃ち転ばせる。
「もらったぁ!」
仰向けに転んだゆーきの腹に向けて志狼がジャンプして膝を叩きつけようとした。


「桜かぁ…」
そ、エンフィールドじゃさくら亭か、
ローズレイクの周辺にしか咲いてないんだから。
「きれいだなぁ…」
ねぇ、花びら見てメロディちゃん思い出す?
「なっ…!ち、違うよ!」
ふふ。そう、顔真っ赤にしなくてもいいじゃない
「…」
でも…
「え?」
ううん、何でもないわよ。

―負けるわけにはいかない!―
「うおおおおぉ!」
ゆーきは手で地面を押し飛び上がった。
「何!?」
「食らえぇ!熱波旋風衝ぉ!!」

ゆーきの持つ黒いヴァイパーから炎が巻き起こる!
そして、炎は志狼に蛇のようからみつき激しく燃え出した。
「わっ!」
志狼の体が炎に包まれる。
たまらず、志狼は必死に転がり体にまとわりつく炎を消した。
「あつっ…!」
「…っ!」
ゆーきは肩で息をつきながらヴァイパーを構え直した。
「こ、これでぇぇぇ!」
志狼に追い討ちをかけようとするゆーき。

だが
「そこまでよ!」
リーンの声が朗々と響く。
「…ゆーきクン。あなたの勝ちよ」
リーンは静かに目をつぶり笛を吹いた。
静かだが深い音色が辺りに響き渡る。
志狼はさきほどまで起き上がろうとしていたが
急に錆びた人形のように動かなくなった。
「志狼さんはこれでテンプテーションから抜けられたわ。
…約束通り、志狼さんとテディは返してあげる」
もう一度笛を吹くと桜の木からにじみだすようにテディが現れた。
ゆーきは、剣を納め軽く息を吸うとリーンにつぶやくように言った。
「もう、一人…」
「…うん」
リーンは静かにうなづいて上目づかいでゆーきを見た。
「リーン…いや、リリア。何で君は?」
「…思い出したの?」
「ああ。お…いや、僕がエンフィールドにきた時に声をかけてくれたよね?」
「そうね」
ふっと、リーン、いやリリアと呼ばれた少女は目をつぶった。
やがて、髪の色が桜色から栗色に、そして、あの桜の妖艶さが消えた。
「リリア・チェリーヒル…やっぱり君だったんだね」
「うん…ごめんね。ゆーきくん」
リリアは泣きそうな目で頭を下げた。
「おいおい、なんか説明がつかねえな…」
ケイが頭を乱暴に掻きながらゆーき達に近づく
「ケイさん…?」
「おい、ゆーき。まだ、事件解決したわけじゃねーんだぞ。
とりあえず、そこの桜の木にいる当事者に聴こうじゃねーか」
ケイの視線はリーンから外れ桜を睨んでいた。


「あ、ばれてるのね」
桜から軽快な声が聞こえてきた。
桜の木から人の形が浮かび上がり、それは女性の形を取った。
「あなたは…」
「コイツがほんとのリーン…つまり、桜の精だ」
「ま、そゆことね」
桜の精はゆーきにウインクをするとゆーきの顔を赤く染めた。
まぁ、ゆーきのような純情少年にはリーンの格好は刺激が強いのだろう。
まるで、踊り子のような格好で下着のような服に異国風の衣をはおっただけなのだから。
「おいおい、純情少年まどわすじゃねーよ」
「あらあら、そうねぇ。ま、この格好では始めましてかな?ゆーき君」
「は、はい」
リーンはリリアの方を向くとわずかに目を潤ませた。
「ごめんなさいね、リリア」
「うん…」
リーンは静かにうなづくと話し出した。
「話すわ−全てを、そしてゆーきくん」
リーンは一度口を閉じると言った。
「ヴァイパーをあなたが継いだのなら…
私の願いをかなえてもらいたいの…」

桜花は散り始めている…
そして、季節はめぐる。


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