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ワラフヲトコ「追憶」 雨水 時雨
 この話を読んで頂き、真にありがとうございます。
 さて、この話にはまだ謎な部分があります。
 この話を読んでくださった皆様、お礼といってはなんですが、以下にその一つを記します。
                雨水 時雨

  <エピローグに代わり、ある男の手記より抜粋>

 ○月○日
 両親が死んだ。あっけの無い死だった、旅行途中の事故死だった。幼い僕と妹だけが、奇跡的に無事だった。
 でも、泣いてはいられない、僕がエリスを護らなきゃ。天国の父さん母さん、僕は誓う、僕は強くなる、エリスを護る為。だから僕はもう決して泣かないよ。

 ○月○日
 父さん母さん喜んで下さい、あの名門と名高い医学校に、僕は特待生として入学する事になりました。僕は将来、お医者さんになって、たくさんの人々を病気から救い、笑顔を取り戻したいと思います、頑張るぞ!

 ○月○日
 勉強はとても楽しいです、少々難しい所もあるけど、その事を知ることで多くの人が救えるというのなら、少しも苦になりません。
 それと、最近、エリスが風邪気味です。今度一回きちんと病院へ連れて行こうと思います。

 ○月○日
 ああ、父さん母さん、この世に神という存在は居ないのでしょうか!?
 エリスが病気にかかっていました、しかし、単純な風邪等ではなく、現在の医学では治療法も確立されていない難病です。
 けど、僕が絶対に治してみます、見つかっていないなら僕が見つけるまでです。
 そう、僕はあの日誓ったのです、エリスは僕が護ると。

 ○月○日
 学んでも学んでも、知らされるのは己の無力さと絶望だけです。
 エリスは日一日と病魔に蝕まれています。最近ではあまり笑わなくなってしまいました。たまに泣いている姿を見ると、僕は酷く悲しく、苦しくなります。

 ○月○日
 魔法医療を学ぶことにした。こなったら藁にもすがる思い。
 エリスはついにベッドに臥せる様になった。

 ○月○日
 病状にこれといった変化無し。
 追記・魔法医療も無効。

 ○月○日
 病状悪化。
 追記・とりよせたルコンの実、全くの効果無し。

 ○月○日
 病状極めて悪化。
 エリスは酷く衰弱し、見る影も無い。そんなエリスを見るのはとても悲しい、そして苦しい。

ーしばらく書かれていないー

 ○月○日
 エリス死亡。最後に笑ってくれたのが唯一の救い。

ーしばらく書かれていないー

 ○月○日
 父さん母さん、僕はこの屋敷を出ようと思います、ここに居ると毎夜エリスの泣き声が聞こえてきて、夜を迎える度に僕は気が狂いそうになります。
 明日、僕はここに全てを置いて出て行きます、さらば僕の思い出、僕の過去、僕の悲しみ。

 ○月○日
 父さん母さん、現代の人々が一番何を病んでいるか知っていますか?それは心です、そして病んだ心を癒すには何が良いか知っていますか?それは笑いです。
 突然ですが、僕はピエロになります、そして人々に笑いをふりまくんです、それで人々は救われる。想像しただけで心が高鳴ります。

 ○月○日
 凄い事を聞きました。まさに奇跡の箱を呼ぶのに相応しい物です。ある街に人を眠らせ、未来へ運ぶという魔法の箱があると聞きました。眉唾な話ですが、一応調べに行きたいと思います。でもそんな箱があったらどんなに素晴らしい事でしょうか!その箱にのれば、未来へ行けるのです、未来の世界にはどんな病気の治療法も開発されているでしょう。
 その街の名前も聞いてあります、いざエンフィールドへ。

 ○月○日
 父さん母さん喜んで下さい、ついについに奇跡の箱を手に入れました。少々強引な手を使いましたが、それで人々が救われるのなら、良いではないかと僕は思います。
 さて、今日はここまでです、箱について調べたいので。

 ○月○日
 僕はやっと人を救う事ができました。
 箱は思ったよりも複雑で、何やら面倒な魔法が絡んでいましたが、独力でそれも解読できました。それが解ればあとは簡単でした、もう二つも僕は同じ物を作りました。
 そして、ついに今日僕は一人の女性を救ってあげました。その女性は老いて行く事を嘆いていました、だから僕はその人を救ってあげました、この箱の中にいれば永遠に歳をとる事はありません、それに未来の世界には歳をとらなくなる方法もあるでしょう。
 父さん母さん、僕は今とても満たされた気分です。

 ○月○日
 父さん母さん、まさに現実は小説より奇なり、という奴です。エリスです、エリスが居たのです。
 いきなり変な事を言ってすみません、エリスにそっくりな娘がいたのです、その娘はローラという名前で笑った顔がとても素敵でした。彼女の笑顔を思い出すと僕は幸せな気分になります。それにしても偶然とは恐ろしいもので、あの魔法の箱で救われた娘が、ローラだと聞きました。
 願わくば彼女が泣くような事がないといいのだけど。

 ○月○日
 今日、僕はまた一人の少年を救いました。これで僕が作った箱は無くなってしまいました。
 それより、それよりもです。例の少女、ローラが湖の近くで泣いていたのです、僕はとても苦しくなってしまい、思わず声をかけて話を聞いて、この家に連れて来てしましました。
 詳しく話を聞くと、この少女には再び救いが必要なんだと解りました。しかし箱はもう無く、オリジナルが残っているだけです、仕方が無いのでそれを使う事にしました、調整が必要なので、治療は明日になると思います。
 それにしても運命とは数奇なものです、少女は元居た箱に再び戻り、救われる事になるのです。そう考えると、今という時がどれだけ病んでいるのか解ります、悲しい事です。

 ○月○日
 父さん母さん、僕は狂っているのかもしれません。父さん母さんと突然に無くし、エリスも続いて不治の病にかかり、僕の心は変になっていたのかもしれません。特にエリスを自らの手で(数文字判読不可能)事が、一番僕の心を乱したのだと思います。しかし、今日この少女を、エリスの生き写しなこの少女を救ったら、僕は僕に戻れるような気がします。
 そうしたら、僕は再び医者になろうと思います、この街には名医がいると、以前何処かで聞きました。その人に弟子入りして、一からやり直そうと思います。
 箱の人達はどうしよう。後々考えようと思います、とりあえずはエリスを救う事です、エリスを救い、やっと僕は心から笑える様になるんです。
 そう、やっと、やっと僕が僕自身を救うのです。
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