中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「ビー玉」 式部瞬
大人には解らない
違う
大人になれば、解らなくなる
違う
大人になれば、解るのかもしれない

大事なもの
大切なもの

違う
大人になると、きっと忘れてしまうんだ
忘れることが大人になることだって、本には書いてあった

ビー玉
透明なガラス玉の中に、赤や青や黄色の模様がキレイに入っている
紅水を通せば世界は燃えるような赤に包まれて
蒼水を通せばどこまでも続く海原のように蒼く染まって
そして
闇を通せば、星と月の瞬きに、鮮やかに輝く

だけど、ただのガラス玉

なのに、子供は沢山集める
友達と競うように
大人から見れば他愛もないものなのに
なのに、大事に集めて、いつまでも飽きずに眺めている

私にも、大切なビー玉があった
誰よりもみんなに愛されて
何より私が大好きだった
いつも大切にしていた
いつも飽きずにみつめていた
いつもキレイに磨いていた

でも、壊れてしまうのなんて、一瞬だった
黒い刃が突き刺さって、ビー玉は微かに欠けてしまった

欠けたビー玉は、真っ直ぐに転がることは決してなかった
迷うように、右へ、左へ
何かにぶつかって
何かにぶつかられて

そして、転がって行くなかで、どんどん削れてしまった
亀裂が無尽に走って
今にも砕けて砂になってしまいそうで

もう、闇の向こうの光に輝くこともなくなって

そして私はそのビー玉が嫌いになった

でも…

「ほら、これでチェックメイトだ」
「うへぇ!?マジ!?んな馬鹿な〜!」
「馬鹿はあんただよ。無闇にQueenを動かすから」
「くっそ〜!!」
「あはははは。夕飯、ご馳走さま」
「くそ…研究してきたはずなんだが…」
「まだまだだね、ふふふ…」

でも今は
そんな、欠けて、今にも砕け散りそうなビー玉を
「好きだ」
と言ってくれる人がいる
ボロボロで、真っ直ぐ転がらなくて、もう光りにも輝かないビー玉を
「綺麗だ」
と言ってくれる人がいる

……そのビー玉は、私の、「宝物」になった


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