「NO-2〜正体〜」
とも
エタメロinエンフィールド NO-2〜正体〜
「しっかし、アレフも馬鹿だよなぁ…。」
デュークがつぶやく。そして、クリスに傷を癒して貰ってい
るアレフの横に、ケラケラと笑う男の姿があった。
「へへっ、悪ぃ悪ぃ。まさか、デュークのダチとはなぁ。い
やな、時々変なヤツがちょっかい出したりして来るんでな。つ
い、いつもの癖でなぐっちった。おっと、自己紹介がまだだっ
けな。俺の名は紅蓮、まあもうすぐ同じ街に住むことになるん
だ。よろしくな。」
「しかし…お前、元の世界に戻れなかったんだろ?よく平気
だな。」
デュークは心配そうにしているが、紅蓮は全然気にせずにい
た。
「いいさ。そのかわりに仲間がたくさんできたからな。」
「でも、向こうの家族ここととか、気にならないのか?」
すると、急にティナ達がくすくすと笑いだした。
「…?」
「ああ、それならな。「暁の女神」にもう一度頼んでさ、ここ
の映像をそのまま向こうに送ってもらったんだ。俺のメッセージ
もついでにな。でもよ、「暁の女神」がさ、なんかしらんが俺の
家族の映像とメッセージを持ってきたんだ。俺の親父に、「自分
たちのを息子に渡せ」って無理矢理映像とメッセージを撮らされ
たんだと。「暁の女神」、ビビってたぜ。家族にいろいろ言われ
たよ、「他の帰る方法見っけてとっとと帰ってこい」だとか、
「映像に映ってた娘達はなんだ」とか…ったく、あの馬鹿親父が
…。」
「す、すげえ親父だな…。女神をパシリ扱いするとは。」
「ああ…。それはそうと、お前も大変なんだってな。濡れ衣着
せられてンだって?ま、頑張れや。」
「ん…。サンキュ…。」
紅蓮が妙な視線に気がつき、周りを見回すと、アルザが何か物
言いたげな目をしていた。
「どした?アルザ。」
「なあなあ紅蓮。うち、腹減ったわ。なんか食わへん?」
「そういえば…もう暗くなってきましたね。」
辺りを見回すと、仕事帰りの者などの客が入り始めてきた。い
つの間にか、夕方になっていたのだ。
「そうだな…。おい、デュークにアレフ、クリス!一緒に飯食
おうぜ!特にアレフにゃ悪ぃことしちまったからな。おごるから
よ。」
「いいのか?」
「いいっていいって。お尋ね者の「黒き魔性」っつー奴らぶっ
潰してさ、賞金がたんまり入ったんだ。うさ晴らしにゃあ、ちょ
うど良かったぜ?」
「く、黒き魔性?!」
「なんだ、知ってンのか?デューク。」
「し、知ってるも何も、A級の賞金首だらけの集団だぞ!?」
「ゲゲッ。」
「ふ〜ん。」
デューク達はかなり引いていたが、紅蓮は関係なさそうにパティ
を呼び、注文を始めた。
「パティちゃん。とりあえず、ビールとスモークチーズ。あと、
みんなでつまめるモン、二〜三品、よろしくな!後は、めいめい
に頼んでくれ。」
「じゃ、うちは…ええい、面倒や!ここのメニューのこっから
ここまでよろしくな!」
「あ、私、お魚のムニエルがいいです。」
「それじゃ、私はB定食をください。」
「僕はオムライス。」
「俺は…そうだな、特製スパゲティくれ。」
「俺は、バーボンだ。」
「アレフ、お前未成年だろ。」
「ま、ま、いいじゃねーかデューク。俺もだもん。」
デュークがアレフに注意するが、紅蓮が横やりを入れる。
「ねー。注文はこれでいい?」
「いや、まだ頼むかもしんないから。」
「え゛?」
パティが固まった…無理もない。
「アルザは食うからな、覚悟しときなよ?パティちゃん。」
「パティでいいわよ。分かったわ。じゃ、ごゆっくり!」
そういうと、パティは忙しそうに厨房へと消えていった。
「よ〜っし!じゃ、どんどんやってくれ!」
「うわ〜い!え・ん・か・い・だぁ〜!」
「へ?」
よく見ると、猫耳の少女と狐の耳を持つ女性が紛れ込んでいた。
「うふふふ〜。クーリスくん♪もっとこっちに来なさいって。
いつ見てもかわいいわねぇン。」
「うわあぁぁ!ゆゆゆ、由羅さん?!どど、どうしてここに?!」
「え〜?メロディとご飯食べに来たのよン♪」
「デュ、デューク?このお人達はなんだ?」
紅蓮は頭を抱えている。由羅のいきなりのハイテンションに対
応しきれないのだろう。(って言うか誰もついていけないと思う
が…)
「ライシアンっていう種でな、由羅っていうんだ。あと、猫耳
の娘はメロディ。」
「ここって、いろんな人が住んでるんですね。」
ティナが感心したように言う。と、由羅が新顔の紅蓮らに目を
つけた。
「あら?あららら?新顔ねぇ。なになに?デュークくんのお友
達?ねぇねぇ。あたしにも紹介してよン。」
「へいへい。こいつが紅蓮で、こっちがティナ。水色の髪して
るのがウェンディで赤毛のがアルザだ。この町に住むんだってさ。」
「ふ〜ん。ま、よろしくねン。さ〜って、あたしも飲もうかな。
パティちゃ〜ん。あたしにもお酒ねぇ〜ん。」
「ふみぃ!メロディ、こねこランチがいいのぉ〜!」
「OK!はい、とりあえず、紅蓮にウェンディ、あとティナにク
リスにデュークとアレフの分ね。」
「およ?なあなあパティ、うちの分は?」
「すぐ持ってくるから待ってなさい!あんなたくさん、一度に
持ってこれるわけないでしょ!」
「ほーい。あ、紅蓮。唐揚げ貰うで!」
そして…
「ふえ〜。うち、もう食えへんわ。」
「…」
みんな絶句していた。アルザの底なし胃袋に対して…。
「アルザ〜、お前いつもより食いすぎだぞ?」
「別にええやん。第一、『めいめいに頼め』言うたのは紅蓮や
で?」
「あ、あの、紅蓮?お勘定なんだけど…。大丈夫?」
パティが遠慮がちに言った。相当食べたのだろう(特にアルザ)
注文の紙が心なしか厚く見える。
「ん?あ、そっちの方は心配いらねーから。二五〜三〇万はあ
るし♪」
「へ?」
パティ再び固まる。
「あそこには賞金首がごろごろいたかんな。塵も積もれば山と
なるってヤツ?」
「おめえ、ほんっとにばけモンだな。」
「!ひっで〜。それっていぢめだぞ?」
デュークが紅蓮をちゃかしたとき、
ゴーンゴーン
…どこかで鐘が鳴った。おそらく時間を知らすものなのだろう、
クリスがびっくりして頭を上げた。
「あっ。僕そろそろ帰らなきゃ。」
「え〜!クリスくん、もう帰っちゃうのぉ〜?もうちょっとい
てよん。」
「あ、ちょ、ちょっと由、由羅さん?!だ、抱きつかないでっ
て…寮の門限に遅れちゃうんですってば!」
「じゃ、由羅ちゃんが送ってってあ・げ・る♪帰るわよん、メ
ロディ♪」
「ふみゃあ、じゃ、まったね〜。ゆらおねえちゃん、まってく
ださ〜い!」
こうして、クリスは由羅に連れて行かれてしまった。大丈夫な
のだろうか。
「さて、と…おめえらはどうする?」
紅蓮はデュークとアレフを見て言った。後は彼らだけなのだ。
「俺ももう帰るわ、デュークは?」
「俺も帰るよ。アリサさん、心配してるだろうしな。」
「そっか。ンじゃ、明日あたり、…と、ジョート…ショップだっ
け?挨拶にでも行くからよ。俺はここに十日ほどいるからさ。つ
ーことでパティ、これ前金な。」
と、紅蓮はパティにずしっとした袋を渡す。
「はいはい。え?こ、こんなに…。」
「今日の食った量見たろ?アルザは食うからな。こいつの飯だ
けとりあえず十人前にしてくれ。増えるかも知ンないけど。」
「じゃな、紅蓮。また明日。」
「おう。」
そして帰り道…
「なあ、デューク。あの紅蓮っていったい何者なんだ?」
少しちゅうちょしたデュークだったが、少しづつ話し始めた。
「あいつは…紅蓮は、この世界の住人じゃない。異世界から迷
い込んできたらしいんだ。」
「ま、マジかよ。そんなふうには見えねーけど?」
「ああ。そもそも俺は、ある事件に巻き込まれてあいつと知り
合った。そん時は驚いたぜ。なんせ、今は違うが当時は明らかに
異文化の…いや文化なんて代物じゃない、今の技術じゃとうてい
考えられない素材の服を着てたからな。あいつの世界では、魔法
なんてモノは存在しないらしい。科学っていう、魔法とは正反対
の技術が主流だったそうだ。」
「なんか、今の俺達には考えられない話だな…。」
「あいつにとってもそうさ。あいつは、「魔宝」っていうモノ
を集めて自分の世界へ帰ろうとしていた…。」
「でも、帰ることはできなかった、か…。」
「そーゆーこと。でも、あいつはここに残れたことに不満はな
いらしい。自分の世界にはない、いろんなモンを手に入れたらし
いからな。」
「そっか…。」
「話は終わりだ。じゃーな、アレフ。」
「ああ。また明日、な。」
カランカラン♪
「ただいま。アリサさん、テディ。」
「おかえりなさい。」
「お帰りなさいッス!こんな時間まで何やってたッスか?」
「実は…。」
デュークは紅蓮達のこと、彼らがここに住むことなどを二人に
話した。
「そう、大変ねぇ。」
「異世界の人ッスか?会うのが楽しみッス!」
「それで、明日にでも遊びに来るらしいんですけど…。」
「構わないわよ。お友達は大切ですものね。」
「すいません、アリサさん。いきなりで…。」
「ご主人様が大丈夫って言ってるから大丈夫ッスよ。どんな人
なんスかね。」
後書き
すいませんっ!前回は「初めてなんだからなんかインパクトを」
って、コメントに後書き載せちゃいました。
ども、ともです。なんか、終わり方が中途半端になってしまい
ましたね。(^_^;;;)うむむ…まだまだ修行が足りん。(←当たり
前)
前回書き忘れたこと…アレフが異様に非道い仕打ちを行ける羽
目になってしまいましたが、アレフが憎いだとか、そういう事は、
一切ありません。(←念のため)ただ、しっくりくるキャラが、ア
レフだったんです。(ううっ自分の首絞めてる様な気が…)
それでは…また。ともでしたっ。