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「べすとふれんど? 〜前編〜」 とも  (MAIL)



カランカラン♪

 「紅蓮! 手紙やで〜!」

 思い切り開け放たれたドアから聞こえてきたのは、大きく響くアルザの声。中にいた者
は、それの凄まじさにいっせいに耳を押さえた…約二名をのぞいて。

 「らっしゃい。うっせーぞ、アルザ。慣れねェ…」

 「……静かになさい!」

 紅蓮とパティだ。

 「まあまあ、ちょっとくらいええやん。そんな小さなこと気にしてたらシワが増える
で?」

 ゴン!

 ケラケラ笑うアルザに、瞬時に間をつめたパティのフライパン攻撃が炸裂した。

 「そんな問題じゃないわよ! …ったく、いつもいつも…」

 「パティ、お前だんだん人間離れしていくな…武闘大会優勝できんじゃねェか?」

 ガンッッ!

 「紅蓮も一言多いわよ!」

 「うわっちゃ〜! …傷残ったらどーすんだよ…」

 熱したフライパンを片手に、怒鳴るパティ。紅蓮は顔を押さえ、うずくまっている。

 「あいッ変わらずオモロイなぁ、お二人さん。どや、うちと三人で…」

 「「やるか!!」」

 「漫才でも組まへんか…」まで行かず、紅蓮とパティが口をそろえて言う。横ではトリ
ーシャ、シェリル、朋樹、クリス、マリアの学園組が笑いながら見物していた。




 「で、手紙だって?」

 「そや、ウェンディからやで。ティナにはもう渡してきたさかい、後は紅蓮とフィリー

だけや。っと、フィリーは?」

 「どーせ、また公園で昼寝だろ? それか、ヘキサ達とつるんでるかだな。」

 紅蓮は二人分の手紙を受け取り、自分の分を開けて読み出す。

 「ふ〜ん、そろそろ帰ってこれるのか…」

 「うん! 久々に会えるかと思うと、嬉しくてしゃあないわ。」

 心底嬉しそうに話すアルザに、トリーシャが話に入ってくる。

 「アルザってウェンディさんと仲いいんだね。」

 「そうや、なんたってうちらは親友やからな。…どっかの誰かさん達とは違って、まだ
恋人作ってへんし。女の友情や。ま、男できても続けよ思うとるんやけどな。」

 笑いながら紅蓮を見、わざとらしく強調してアルザはしゃべった。

 「なんせ、うちら捨てたんやからな。」

 「うそ?!」

 「何言うてんのや、ほんまやで。うちもウェンディも紅蓮のこと好きやったんやけどな、
ティナに盗られてもうたんや。」

 少ししんみりとした口調で、アルザは呟いた…顔をうつむかせて。

 「…紅蓮、言葉遣いだけじゃなくってホントに悪人だったんだね。」

 「…み、見損ないました!」

 「うん、ボクも」

 「マリアも」

 「…僕も、です…」

 「…女の敵はあたしの敵…!」

 学園組(朋樹は知ってるのでちょっと笑いながら)は ジト目で。パティに至っては真
っ赤になっているフライパン(熱のせいで陽炎がたっている)をかまえている。

 「だぁ〜〜〜! ちょっと待てぃ! 盗った盗られた捨てられたって…ウェンディとア
ルザ了承済みでティナと付き合ったんじゃねェか! 変なこと吹き込むんじゃねぇ!」

 「「え?」」

 「それに、俺はティナも大事な仲間だが…アルザやウェンディだって大事な仲間だ。た
だ、ティナと…ヴァナが一番になっちまった。それだけだ。」

 「でも…」

 「それに、見ろ…」

 紅蓮に言われ、全員がアルザの顔を見る。

 「あ…」

 「この顔が、さっきの言葉を話したように見えるか?」

 うつむかせていた顔を紅蓮が上げると、いかにも「楽しませてもらいました」と言わん
ばかりに笑いをかみ殺している、アルザの顔があった。

 「…騙した…わけ?」

 紅蓮に向けた怒りをアルザで発散しようと、パティはゆらりと目標を変えた。

 「あ、あはは…イヤやな、パティ。そないに怒らんといてえな。な、そないな物騒なも
ん、しまってやな…」

 「……問答無用!」

 スパァン!

 アルザの言い訳もむなしく、彼女はフライパンの餌食となった…合掌…



 「うう…ちょっとした、おちゃめやないかぁ…」

 「まだ言うつもり…?」

 「もう言いません。」

 「よろしい。」

 かたやモンスターを素手で倒す元冒険者、かたやさくら亭の看板娘。どう見たって看板
娘の方が強そうだ。

 「にしてもよ、アルザ。」

 「なんや?」

 「あんだけウェンディと仲悪かったのにな。よくそこまで仲良くなったもんだ。」

 「え?」

 「せやな〜。最初の方なんか、目ェ合わすのもイヤやったもんな。」

 「またまた〜。アルザ、そんな嘘もう通用しないってば。」

 ポン、と肩を叩き、トリーシャは苦笑する。が

 「ほんまやで。現に今、紅蓮が言うてたやないか。」

 と大真面目な顔でアルザは言った。

 「こればっかりは嘘やない。な、紅蓮。」

 「ああ。あれが本当の犬猿の仲っていうんだよな。」

 「でも、今は仲いいよね。…ウェンディさん、いないけど…。手紙、結構やり取りして
るみたいだし。」

 「なにか、きっかけなんてあったんですか?」

 「当たり前やないか。きっかけなくちゃ、今みたいに仲良くなるなんてあらへんわ。」

 にこりと笑い、アルザはそれを肯定する。すると、トリーシャがそれにすぐさま反応し
た。

 「ね、教えて?」

 「始まった。トリーシャの「聞かせて病」が。」

 「なんや、病気なんか?」

 「そうそう。噂になりそうなこと聞くと、口が勝手に動いて、「ね、教えて?」って。」

 「そないな病気、あるんか。ね、教えて?」

 「ああ…! とうとうアルザにまで病気が…! このままでは、エンフィールドにこの
病気が蔓延してしまう…!」

 「って、それってただの知りたがり屋なだけやないか〜!」

 ビシッ

 まんま、それをネタに漫才を始めた朋樹とアルザ。お約束のつっこみも忘れない。それ
もいいのだが、二人は一つのことを忘れていた。それは…

 「二人とも…ボクのこと、からかって楽しい…?」

 怒りに燃えるトリーシャだ。チョップ棒を持っていなかったのがせめてもの救いだろう。

 ヴン…

 「ほい、トリーシャ。小さめにしといたから、周りは壊さねェだろ。」

 具現化のチョップ棒(大きさ当社比76%)を渡すという、いらんことをする紅蓮。朋
樹とアルザのキツイ視線をものともせず、お茶を入れようと厨房へ入っていく。

 「覚悟はいい?」

 「ちょっとタンマ!」

 「そ、それくらいで…」

 「問答無用! 必殺・トリーシャチョップ!!」

 ガガガガァッ!

 「みぎゃ!」

 「とっと…ぉ?! あだだだ!」

 朋樹はあっさり撃沈、アルザも何とか頑張るものの結局撃沈する。



 「…トリーシャ。」

 ズズズ、とギャラリーと化して他のメンツと茶をすすっていた紅蓮が、トリーシャを呼
んだ。

 「はぁ、はぁ…何? 紅蓮さん。」

 「ブッ倒すのはいいけどな。」

 再び茶をすすり、一息ついて言った言葉は…

 「そんなに強くしばき倒しといて…それじゃあ今日はもう起きねぇぞ?」

 「…はっ! と、朋樹くん! アルザ〜!」

 我に返って起こそうとするも、ドでかいタンコブをいくつも作っていた二人はいっこう
に目が覚めることはなかった。

 「アルザとウェンディさんのこと、聞こうと思ったのに〜! 紅蓮さん、二人のこと、
知らない?!」

 「俺は言わねぇぞ。詳しくは知らんし、話す気にもなんねェ。後で聞くこったな。」

 そういうと、紅蓮はお茶のおかわりを入れるためか…再び厨房に入っていく。

 「こんなことなら、もうちょっと手加減しておけばよかった…」

 「…トリーシャ、そういう問題じゃないんじゃない?」

 「マリアちゃんの言うとおりよ、トリーシャちゃん。」

 マリアとシェリルは、意気消沈したトリーシャの相手をし、彼女だけでもと家に連れて
行った。

 「…とりあえず…これどうするわけ?」

 「これって…どうするんでしょう? 僕じゃ無理ですし…紅蓮さんが何とかしてくれる
んではないんでしょうか?」

 後に残され、何もできないでいたパティとクリスは、茶をすすって話していた。

 「俺がやっとく。それでいいだろ? 少しくらい休んでも、よ。」

 「はいはい、それくらいならね。でも、ちゃんと時間には戻ってきてね。人手足りなく
て、大変なんだから。」

 厨房から顔を出した紅蓮の言葉を、パティはしぶしぶと言った感じで了承する。

 「了解。クリス、俺が戻るまで代わりよろしく。」

 「え? 僕ですか?!」

 「そ。じゃ、頼むぜ。」

 言いながら紅蓮は、二人を両肩にそれぞれをかつぐとドアを開けて出ていった。

 「…頑張りなさいね…」

 「ありがとうございます、パティさん…」


 成り行きで手伝いをすることになったクリスは寮の門限に遅れ、シスターにこっぴどく
叱られたという。

 チョップの餌食となった二人も、打ち所が悪かったのか二日間も目を覚まさず…。アル
ザとウェンディの話は後で話す、と流れてしまったことを記しておく。





 後書き。

 ども。ともです。

 う〜ん、これ、続くのかなぁ…続けたいけど…(^^;
 ネタ的には中途半端ですから、二人(アルザとウェンディ)の過去を書きたいと思いま
す。どうしようかと思いましたが、やっぱり…書いてみたいので(爆)


 では。ともでした。



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