中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「べすとふれんど? 〜後編〜」 とも  (MAIL)





 「ねぇ、アルザ〜。ボクに教えてよ…」

 「そんなにうちらのこと知りたいんか? トリーシャもしつこいなぁ。」

 「だって…気になるんだもん。」

 さくら亭の一角のテーブルで、今日もアルザとトリーシャの口論(とまでは行かないが)
が続いていた。学園組の朋樹、シェリル、マリア、クリスも興味津々といった感じで一緒
にいる。

 「ま、ええわ。減るもんでもないし。でも、みんなで飯くらいおごって欲しんやけど…
ええか?」

 「どうする?」

 トリーシャが皆に聞くと、ほぼ同時に全員が首を縦に振った。

 「いいんじゃない? 話聞いた後に、みんなで何か食べるのもさ。」

 「マリアもそれでいいよ。」

 「私も。」

 「僕も、興味ありますし。いいですよ。」

 「よっしゃ。みんな、おおきに。そん時はな…」

 商談(笑)も成立し、アルザは話を始めた…






 ウェンディ、料理めっちゃ得意やったろ? それ初めて知ったときが、みんなでぶらつ
いてた時やった。



 「優勝は…なんと! 飛び入りのウェンディ選手だァァァァァ!」

 わあああああ!

 ウェンディな、フェスティバルの料理大会に優勝してしもうたんや。プロみたいなヤツ、
差し置いてな。

 「え? あ、あの…わ、わたし、ですか?」

 「はい、そうですよ。文句無しの満場一致でした。」

 そう言われて、ウェンディは目ェ白黒してた。おもろかったで? まるで、シェリルや
シーラが、アレフあたりに迫られてるみたいなもんやった。

 「冗談…」

 「なにを言ってるんです? 冗談なわけないでしょう。これが賞金と楯です。お受け取
り下さい。」


 
 「ウェンディ、飯作るの得意やったんか?」

 その後、宿に帰ったうちの第一声がこれや。なんたって、うちの幸せは美味いもんぎょ
うさん食うことやからな。しかも…

 「はい…でも、そんなに上手くは…」

 「は? あれ、すっげぇ美味かったぞ。へっへ〜ん、アルザ、羨ましいだろ?」

 「い、いつの間に食うたんや!? ずるいで、紅蓮!」

 「はっはっは。一般観客による評価も含まれてたんだよ〜ん。それにこっそり忍びこん
どいた。アルザもやっときゃよかったのに。」

 「知らん! そないなコトなんて知らんかったで! うう…殺生や…」

 フィスティバルの時、紅蓮に一般試食の権利盗られてもうたんや。こん時は、さすがに
紅蓮に殺意抱いたわ(笑) けどな、神はおったんや!(笑)

 「そんなに食べたいんでしたら…作りましょうか?」

 「ええんか?!」

 「でも、あんまり美味しくないですけど…」

 「いいから、早う作ってくれへん? それ聞いたら、腹減ってもうた…。」

 ぐぅ、となった腹抱えたら、みんなして笑いよったんや。まあ、楽しかったしある意味
ウケ狙ってたさかい。そん時はそれでよかったんや。…そんときはな。



 そして、出来たのは相当なもんやった。…どんなもんが出てきたとかはさすがに覚えて
へんけど(爆) ただ、ものすごく美味かったことだけ覚えとる。

 「………(汗)」

 「(ガツガツガツ!) アルザ! それは俺のだ!」

 「(ガツガツガツ!) 甘い! うちがもろうた!」

 「二人とも、たくさんあるんですからもうちょっと落ち着いて…」

 「「おかわり、ティナ(ウェンディ)!! 」」

 「「は、はい!」」

 …紅蓮とはいい闘いをしたわ。惜しい戦友を亡くしたで…。

 (おいおい、本人目の前にして言う言葉かよ… by紅蓮)

 「「ごっそーさん!」」

 「は、はい。お粗末様でした。…あまり美味しくないのに…夢中で食べてましたね…」

 「まだいうか、この口は?」

 「い、いひゃいでふ! にゃにしゅりゅんれしゅか!」

 うちは、ウェンディの顔を引っ張った。なんでかは知らんけど…。なんや、無性にやり
たくなってな。

 「…やっぱり、わたしをいじめるんですね。美味しいっていうのも、無理に…」

 「っ!」

 パァン!

 「なっ…なにするんですか!?」

 「うちはな、あんたのそう言うとこが大っ嫌いなんや! なんで自分をそんなに嫌うん
や?! 自分が世界一不幸なんて、大間違いや!!」

 「アルザ…」

 「ちょっと、落ち着いて…」

 「うちは落ち着いとる! まずウェンディの自分が可愛くないとかぬかしてたヤツや。
それは、うちにたいして失礼やで。うちはそないに可愛くないし、女らしさもない。」

 「かわいさはともかく、女らしさは無ェ…」

 ゴスゥ!

 話に水さした紅蓮にパチキ入れて黙らせ、うちは続けた。いつもならティナが紅蓮助け
るんやけど、こん時ばかりはほっとかれたみたいやったな。

 「それに、料理もそうや。あれは、そこらの定食屋よか美味い。でも、それを作った本
人が否定したら、それでも一生懸命作っとるヤツらはなんや?」

 「……」

 「あんたは、そう言うヤツら否定しとるんやで。その腕もっとるのに。やりたくても、
やれんのもおるんやで?!」

 「うっ…ううっ…」

 「今度は泣いて逃げるんか? ええ。もうええわ。泣きたいだけ泣いとりゃええ。」

 そういって、うちはくるりと背を向けて外に歩いた。

 「そのまま、ずっとそうしとれ。うちはもう知らん。…ほなな。」

 「おい、アルザ!」

 「心配せんでええ。今日はこいつと一緒の宿に泊まるのイヤなだけや。レミットかカイ
ルあたりの宿にいっとるわ。」



 そうはいったものの、うちはどっちにも行く気はなかった。ま、一人でいたかっただけ
なんやけどな。



 どうせ、その時は夏に近い日の夜。雲もあらんし、雨の心配もないと思うたうちは、近
くの公園に寝ッころがっとったんや。

 「あ、アルザ…さん?」

 「なんや、ウェンディか。」

 夜も遅うなった時間に来たのは、ウェンディやった。息も絶え絶えで…そこらじゅう走
りまわっとったんやな。

 「どしたん、こないな時間に。なんか用か?」

 「あ、あの…すいませんでした。」

 「は? 何あやまっとんのや、いきなり。」

 「えと、あれから自分なりに考えたんです。それで、わたし…」

 「うちみたいになりたい、か?」

 「え? な、なんで…?」

 「なんとなく…や。別にええやん。ウェンディはウェンディ。うちはうちや。…受け売
りやけどな、どっかのアホの。」

 「自分は自分…ですか?」

 「そや、自分見失うたらあかんっちゅーことや。自分は自分、自分の代わりはどこにも
おらん…ってな。」

 うちはそう言って、立ち上がってウェンディの肩を叩いた。で…

 「ウェンディ、飯作ってくれへん? もう腹減って死にそうや…な?」

 「はい、わたしのでよければ。」

 そう言ったときの、ウェンディの顔はほんま嬉しそうやった。



 ま、あとは時々つるんだりして…いつの間にか、滅茶苦茶仲良うなっとったんや。





 「ま、こんな感じやな。あ、パティ。さっそくよろしくな。」

 話を終えると同時に、アルザは注文を始めた。

 「女同士の友情ね…。」

 「…意外…。アルザさんが真面目なコトなんて…」

 「トリーシャ? うちはそんなに軽く見えるんか…?」

 「あたたた…ギブ、ギブアップ〜〜!」

 トリーシャに、アルザはふざけてチョークスリーパーを極める。トリーシャの方も痛く
はないのだろう、顔は笑っていた。

 「仲、それでよかったんだ。うん、納得。」



 皆、昔の話に浸っている中…紅蓮の一言がアルザを固めた。

 「アルザ、ウェンディ彼氏出来たってよ。」

 「…なんやてぇぇぇぇぇ!? ほんまか?!」

 「ああ。しっかり書いてある。アルザに言おうかどうか迷ってるみたいだ。」

 「うちに言わんとは…! 許すまじ、ウェンディ! 女の友情、なめたらあかんで!」

 と、アルザはヤケ食いを始めた。…しかし、それは…

 「紅蓮、それホント?」

 「なんでだ?」

 「紅蓮、目がにやけてた。嘘ついたでしょ。」

 「…くっ…腕を上げたな、とも。」

 とうことだ。しかし、黙ってるあたりは朋樹も十分に性格悪いと思うが。





 その後。アルザはこともあろうにウェンディの実家になぐり込みをかけた…たった一人
で。しかし、残念なこと(?)に紅蓮の嘘と判明。急きょウェンディはエンフィールドに
帰り、紅蓮をシメてまた実家に戻っていった。さすがに強者四人+αにシメられた紅蓮は、
一週間ほど入院生活を余儀なくされたという。…合掌。






 後書き。

 ども。ともです。アルザとウェンディの話を書いてみました。
 ホントはもうちょっと書きたかったんですけど、小さくまとめたんです。
 また、でっかいの書く気なので…(^^;
 書くきっかけは、ある人の一言を思い出して。
 「アルザとウェンディって、最初の相性悪いんですよね。」
 …よし、書いてやろうと(笑)


では。ここまで読んでくれた方、感謝です。
ともでした。

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