中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「Last_day-3」 とも



 そのころ。紅蓮、デューク組は学園内部にいるテロリストを一掃するべく走っていた。
フィドル組+ジーク&男子寮精鋭隊は外を中心に除去作業をしている。

 「そろそろ頃合いか。」

 ある程度清掃(笑)した紅蓮は、縄でぐるぐる巻きになっている男達をジロリと睨んで
呟いた。

 「そうだな、はやいとこ集合かけ…」

  「キャァァァァ!!」

 と、二人が一息ついたとき悲鳴が飛んだ。

 「近い! 行くぞ、デューク!」

 「ああ!」



 二人が悲鳴のした場所へ駆けつけてみると、にやけた男に刃を突きつけられた少女が恐
怖に震えていた。服は所々斬り裂かれ、そこには血がにじんでいる。そして、今にも振り
上げた凶刃が少女に襲いかかろうとしていた。

 「ちっ!」

 キィン!

 とっさに腰の刀を引き抜き、紅蓮はその一閃を止める。

 「ナンだよ、てめぇ!」

 凶刃を止められ怒り狂った男は、止めた張本人である紅蓮に斬りかかってきた。

 「デューク、行け!」

 「わかってる!」

 その隙をつき、デュークが少女を助け出した。そのまま少女を抱え、デュークは走り去
る。

 「ちぃ…もう少しで殺れたのになぁ…。」

 つまらなそうな顔をし、男は舌なめずりをする。そして…「殺れたのに」。これを聞い
た途端、紅蓮の表情が憤怒の色に染まった。

 「………「殺れたのに」………だと?」

 「何言ってるよ…楽しいだろ? 他人の命を自分が握ってる…あの高揚感が!」

 ガッ…ギィィィィィ…

 さらに振るってきた刃を押さえ、しばしつばぜりあう音が響く。

 「…てめェ…そんなに他人を殺るのが楽しいか…?」

 「楽しいね! オレよりも劣ってる勘違い野郎を殺るあの瞬間…。たまらないねェ!!」

 男はその真っ赤な目をギラギラと輝かせて言った…そして心底楽しそうに。

 「アンタも同類だろう?! いい加減、目を覚ませよぉ!」

 ギィン!

 力を込め、紅蓮は男を吹っ飛ばした。そして、なぜか刀をしまう。

 「恐怖を、見せてやるよ。俺を…怒らせたてめェにな。」

 「ほざけぇ!!」

 パシィ!……ペキィンッ!

 紅蓮は振り下ろされた刃を片手で掴むと、苦もないようにへし折り…

 「馬鹿な…ぐっ…がァァァァァ!!」

 グジャァ!

 もう片方の手が…男の聞き腕であろう右手を握りつぶした。異常なくらいの握力に、男
は恐怖する。

 「そんな…アンタ、ホントに人間かよ…?」

 「人間ってのはなぁ…普段は精々30%位しか力を発揮できてねェんだよ…」

 「…? な、なにを…」

 混乱する男を後目に、紅蓮は自分の頭をちょんちょんとつつきながら話を続ける。

 「頭ン中に本能の枷(かせ)があるからだ。俺は、それを一時的に取っ払うコトができ
る…」

 パキィン!

 続いて、へし折ってそのままもっていた剣の刃をいとも簡単に握りつぶした。

 「あうう…あ………」

 男の目には恐怖の色一色のみ。身体はガクガクと震え、その目は恐怖の対象となった者
…紅蓮から視線が外れることがない。

 「どうだ? てめェは、そうやって恐怖していた人を…怯え、苦しむ人達を何人殺して
きた!!」

 ガリィィ!!

 壁を引っ掻くようにした紅蓮の手に沿い、そこに深い爪痕が残る。が、素手の…しかも
魔法による効果すらない状態で壁を引っ掻いたため、指先に血がにじむ。

 「俺は…あの時からてめェみてぇなヤツ見るとムカッ腹が立って仕方ねェ!! 今だっ
て、殺せるもんなら殺してェんだ!!」

 ドガッ!!

 続いて、壁を思い切り殴りつける。拳の痕がくっきり残った周囲には、クレーター状に
くぼんだ上、広い範囲に亀裂が走っている。

 「………けど。……俺は理不尽で無意味な殺しはしたくもねェ…。ダチの命を奪った…
クソ馬鹿共みたいにはなりたくないからな。」

 紅蓮はそう言い捨てると、未だ身動き一つ出来ないでいる男を一瞥してそこから去って
いった。




 カリア・カレア姉妹の部屋。

 「これでいいね。」

 デュークが助けてきた少女をトリーシャ達に渡し、朋樹とコウは最終調整に入っていた。

 「うん、問題はないよ。」

 朋樹の問いに答え、コウはベルトポーチに数種類の瓶を詰めながら忘れ物がないことを
確認する。瓶についたラベルや、貼り忘れがないことはすでに確認済みだ。

 「それじゃ、行こうか。」

 「うん。早く合流しないとね。」

 最後に互いの所持品を確認した朋樹とコウは、目的地を確認すると足早に窓から飛び出
していった。





 「ねえねえ、アルザさんやティナさんは今何をやってるの?」

 「アルザさんはぶらぶらしてるよ。ティナさんは、孤児院にいて…」

 カチャカチャ………

 「孤児院? ティナさんらしいね。そう言えば、メロディちゃんって誰?」

 「キャラットちゃんがうさぎの半獣人族なら、メロディちゃんはネコの半獣人族ってト
コだよ。…ライシアンって分かる?」

 「うん。確か、狐の半獣人族だよね?」
 
「そうそう。アルザさんとメロディちゃんは、そのライシアンの女性の所に住んでるん
だよ。」

 カチャカチャ…カチャカチャ………

 「いいなぁ…ライシアンって、きれいな人多いんだよね? ボクもきれいになりたいん
だ…。」

 「大丈夫、キャラットちゃんだって十分可愛いって。」

 「だーっ! もうちょっと静かに出来ないわけ?!」

 爆弾解体中のリラの横で、ぺちゃくちゃとおしゃべりに興じていた二人が怒鳴られた。
リラもいい加減切れてしまったようだ。キャラットは耳を垂らして縮こまり、ラティンも
一緒に小さくなる。

 「見張っててっていったでしょ? 大丈夫なの?」

 「ああ、それなら心配無用です。」


     「うっぎゃぁ〜〜〜〜!!!」

     「おい待て、俺も連れてってくれ〜〜!!」

     「蛇が、蛇がぁぁぁぁ〜〜!!!」

     「なんでこんなトコに罠があるんだよぉぉぉ〜〜!!」

     フミャァァァァ!!!!
     「うっぎゃぁぁぁぁ!! ネコ…ネコがぁぁぁぁ!!!!」

…………………………………………………

 「ね? 大丈夫でしょ?」

 「…はぁ…」

 にこりと微笑ったラティンを見、リラは脱力するようにため息をついた。

 「すごいね、ラティンくん!」

 「ま、友達と一緒に作っただけだけどさ…」

 「それでもすごいよ!」

 多種多様の悲鳴が響きわたり、ドタドタと誰かが逃げていく音がしていた。それを聞い
てリラは頭を抱え、キャラットはキラキラとした目でラティンを見る。

 「あんた、よくテロリスト相手に通用する罠作ったわね…。」

 「全部三段仕様の罠ですから。もちろん、一個目と二個目が解除されることは予定に入
ってますし。抜かりはありません。」

 「ま、いいわ。それで? これが最後だけど、どうするの?」

 「あ、そうなんですか? それじゃ、この筒に入れて……」

 懐から取り出した細長い筒に、リラから受け取った火薬を入れ、ほぼ八分くらいのとこ
ろでふたを閉める。

 「後のこれは、湿らせて使い物にならなくしましょう。」

 「…いったい、何をするつもりよ…?」

 「それはですね……………」

 ラティンはそう言うと、

 「起こってからのお楽しみです。」

 と、片目をつぶって笑った。




 ガコッ!

 「うわぁぁぁ!!」

 「げっ…」

 テロリストのメンバーであろう二人が、罠の解除をしていた最中に落とし穴の中に落ち
た。ラティンの言っていた三重のトラップ引っかかったのだ。

 どすっ!

 鈍い音を立て、地面に落ちる。と、目の前に人影が見えた。

 「なっ…なんだ、てめェ!」

 「ふっふっふ…メロディのへやへようこそです〜〜。」

 仁王立ちしているのはメロディだった。本で見た悪役の気分に浸っているのか、ぼんや
りとした明かりの中で薄ら笑いを浮かべている。

 「ばっ…化けネコぉっ?!」

 ヒュンッ!

 驚いた男の一人が、反射的にナイフを投げた。が…

 キィン!

 メロディの後ろにいた男子学生のはなったパチンコの玉にはじかれる。普通ならはじく
ことなどできないのだろうが…おそらく強化されているパチンコなのだろう。

 「ふみぃ! メロディはネコじゃないですっ!!」

 バリバリバリィ!!

 言いながら、しかしネコのように男の顔を引っ掻いた。顔を押さえ、男は床に倒れての
たうち回る。

 「おいっ! …くそぉ…テメエらになめられてたまるかっ!」

 ナイフを取り出し、男は一気に突っ込んでくる。が、ナイフがメロディに届くことなく
パチンコを額にくらい、その場で気絶した。男子学生はメロディの親指を立てて合図する
と、無言のまま倒れている男達をぐるぐる巻きにして隠し扉の奥に放り込んだ。

 「メロディ達の勝利なの・だぁ〜〜〜!!!」




 「ふぁ〜あ…退屈だな…」

 あくびをかみ殺し、フワフワと浮きながらヘキサがぼやく。それを見、フィリーは呆れ
果ててため息混じりに怒鳴りつけた。

 「ったく…。シャキッとしなさいよ!」

 「っせ〜よ、虫。」

 「ッキ〜! なんですってぇ?!」

 ヘキサにフィリー。この二人は、今回の最大の障害…学園を包んでいるドームの調査に
かり出されていた。魔力が一切使えないこのドーム内で唯一魔力が消えていない(それに
よって、今も普通に飛ぶことが出来ている)ヘキサが、おそらく存在するであろう中心と
なる機器もしくは装置を、感覚を頼りに探しているのだが…。未だ、気配すら感じない。

 「戦ってる連中のトコにでも遊び行くか…」

 「あんたねえ…」

 「だって、オレらだけじゃ進展ねぇだろ? 一回合流して情報聞こーぜ。」

 「…それもそうね。いいわ、じゃあ行きましょ。」

 渋々といった感じで、フィリーはヘキサにしたがった。ヘキサの言うことももっともだ
ったし、なにより不吉な予感がフィリーを離してくれなかった。

 「(なによ…この感じ…)」

 「(ちっ…イヤな感じだぜ)」

 ふとフィリーがヘキサの顔を見ると、その顔にも汗が一筋流れていったのが分かった。
それも、冷や汗の類の汗が。

 「…あんたも分かるの…?」

 「ああ…しゃーねーな。とっととあいつらのところへ行くぞ。」

 そう言うと、ヘキサは先だって飛んでいく。フィリーもあわてて後を追って飛んでいった。




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