中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「Second_Day」 とも  (MAIL)



 朝。トリーシャはシェリルによって起こされた。

 「ん〜…なに〜…?」

 「これ見て、トリーシャちゃん。」

 「う゛〜〜………え?」

 寝ぼけていた目が瞬時に覚醒し、それを何度も読み返す。

 「これ…?」

 「ええ。朝、ドアの隙間から入っていたの。」

 「……うるさいわよ…なに〜?」

 ふてくされた顔で起きてきたのはマリア。この事態に一番腹を立て、一番がっかりして
いたのは彼女だった。魔法至上主義のマリアにとって、魔法が使えないことに加えて魔法
が意味を成さないのがむかつくらしい。

 「ほら、これ。」

 しぶしぶ紙を受け取り、それを見る…が、興味なさそうにトリーシャに突き返した。

 「え? え?」

 「いい。マリアには関係ないもん。」

 「それはそうだけど…」

 「……と、トリーシャちゃんはどうするの? やっぱり、参加する?」

 「…うん、やるよ。シェリルは?」

 「私は…いいわ。足手まといになるだけ…。頑張ってね。」

 少し残念そうに微笑み、シェリルはトリーシャの手に自分の手を重ねる。

 「ふ〜ん、いい雰囲気ね。」

 「マリア…! ふてくされるのもいい加減にしなよ。らしくないじゃない。」

 「別にいいじゃない、マリアの勝手でしょ。」

 「「……!」」

 二人はしばし睨みあうが、どちらともなくそれを止めて背中を向けあった。






 一方…由羅邸


 「ふ〜ん…」

 「それで、アタシ達に協力してもらいたい、と。」

 「面白そうやん。うちはええで。協力したる。んぐんぐ…」

 リサとエルは少し考えるが、アルザはあっさりと了承し…今はガツガツと料理に手を伸
ばしている。

 「アルザ、あんたそんなに簡単に決めちゃっていいわけ?」

 「ほな、エルは友達見捨てる言うんか?」

 間髪入れられたつっこみに、エルは顔を曇らせた。自分としてはすぐに助けに行きたい
が、反面、動物的なカンが自分に忠告を出しているのだ。

 「そういうことじゃないよ。ただ、なんか嫌な予感がする…」

 「なんや、それくらいのことかいな。んなもん怖がってたら、できるもんもできん。エ
ルはいつの間にそんな弱虫になったん?」

 「だから、それは違う…!」

 「まったく…二人ともそれくらいにしておきな! 笑われるよ。」

 言われて、二人はいったんおさまる。それを見て、紅蓮は再び口を開いた。

 「サンキュ、リサ。…で、だ。俺は強制はしないし、自分の自由にしてくれて結構だ。
ただ、ケンカは困るぞ。」

 ちょっとすごみを利かせて言うと、アルザとエルはこくこくと頷いた。

 「よし。」

 「お茶入れましたので、のんで下さい〜」

 とてとてとメロディがお茶を運んできた。由羅は朋樹とラティンを強引に拉致って、や
け酒の最中だったりする。



  「オレ、もう限界…」

  「何言ってるのよ! うう、クリスく〜ん…(号泣)」

  「こういうお酒の席って、やだ…お酒は美味しいけど…」



 「ふにゅう、メロディもなにか手伝えること、ないですか?」

 話を聞いていたメロディは、やはり気になるのか話の中に入ってくる。

 「なんだ、メロディも手伝いたいのか?」

 「はい、クリスちゃんとトリーシャちゃんとシェリルちゃんとティナちゃんとヴァナちゃ
んと…え〜と…メロディ、お友達を助けたいの。」

 「…よし。じゃあ、忍び込むの上手いネコの友達っているか?」

 「うん。えと、ミーちゃんにシロちゃんにぴろちゃんにトロちゃん…い〜っぱいいるよ?」

 「じゃ、明日辺りに集めてくれないか。」

 「わかりました、了解です!」

 ピッと手を頭の横にやり、敬礼のようなポーズを取るメロディ。

 「(誰が教えたんだ…?)よし、今後、この作戦が終了するまで君を「ネコさん部隊隊
長」と任命する!」

 戸惑いつつも調子に乗って、紅蓮もそのノリで命令を下した。

 「わ〜っい! 隊長さんだ〜!」

 そういいながら、メロディは外へと飛び出していった。

 「よし、次だ。」

 「紅蓮、意外とノリええなぁ。」

 「あ? それくれぇ常識だろ。…ともかく。今、中で情報収集を頼んでる。だいたい、明
後日には整う手はずだ。頼みって言うのは、決起するときに寮の連中のサポートだ。どうだ?」

 「…ふう。それを聞いて、頼みを断れると思うかい?」

 「そうだよ。アタシだって、親友が捕まってるんだ。無視しろって言う方が無理だね。」

 「恩に着る。とも、ちょっと来てくれ。」

 「ちょっと…由羅、離してってば…。はいはい、なに?」

 泣き、酔いつぶれ、ぐてぐてになった由羅を引っ張って朋樹が現れた。

 「明々後日…三日後に決起する。中のヤツらにハッパかけといてくれ。」

 「で? 後、一つくらいあるんじゃない?」

 「……かなわねぇな。そんときに忍び込んで、リラと連絡とってくれ。キャラットは助
けるから…。…ラティン!」

 「は、はいぃぃ〜。な、なんすか〜〜?」

 何とか出てきたものの、ラティンは頭を抑えながらフラフラしている。相当飲まされた
ようだ。

 「倉庫に通じる所は知ってるな?」

 「はいぃ。そっちはまかせて下さい…。一応、全部把握してるんで…。朋樹、9のルー
トだよな?」

 「うん。」

 「OK。リサ、エル。」

 「なんだい?」

 「リサはアルザと一緒に女子寮の援軍を頼みたい。さっき聞いたとおり人数は少ないだ
ろうが、万一ということもある。決起する直前にいって欲しい。」

 「了解。」

 「たしか、カリア&カレア姉妹ってのがいたね?」

 「エル、知ってるの?」

 朋樹が、ちょっと意外そうに聞き返した。

 「ああ、ちょっとね。あの二人もいるんだ、何とかなるんじゃないか?」

 「そうかも。二人が組んだら、並のヤツじゃ手におえないからね。」

 「次、エルだ。」

 「アタシは男子寮か?」

 「そうだ。ちょっとつらいかも知れねぇが、頼む。」

 「わかってる。任せときな。」

 エルは、にこりと笑って親指を立てた。それを見、紅蓮も笑い返す。

 「最後には、寮を砦にする。攻め込まれないようにしたら、一気に攻め立ててヤツらを
落とす。お互い魔法は使えないんだ…思い切りぶちのめすぞ!」

 「ふふふ……おもろいな……うちはこういうの好きなんや…」

 すでにトリップしている者一名。ケンカを見るのもやるのも好きなアルザにとって、今
回の学園での闘いっていうのはたまらないのであろう。

 「あ。いっこ忠告。」

 「なんだ? とも。」

 「学園の校舎内は、危険だと思うから近づかないようにしてね。」

 「……なんでや? おもろいのに…」

 「…………まさか!」

 「紅蓮は察しがついたようだね。今、罠部隊を作ってるから。設置式の罠をたくさん作っ
ておいてもらってるからよろしく。」

 なぜか不気味な笑みを浮かべる朋樹。それを見、紅蓮は少し青ざめていた。

 「とも…お前、今度は罠に興味もちやがったな…?」

 「なんや? 少しくらい興味持ったってええやん。」

 「こいつの場合は、勝手が違うんだ。…作戦。とも、教師の連中助けた後に罠設置しろ。
くれぐれもその前に設置しないように。したら、シメる。」

 「りょ、了解。そ、そんなことし、しないってば。やだなぁ…」

 冷や汗かきまくっているその顔をみては、ぜんっぜん説得力がない。ラティンも同様だ。
大方、どさくさに生じて嫌いな教師を罠に引っかけようとでもしていたのだろう。単純で
ある。紅蓮とは大違いだ。

 「……ま、あいつだけならOK。」

 「…! 了解!!」

 …訂正。紅蓮も朋樹もラティンも同類同レベルだった。






 「これで、情報はあらかた手に入ったわね?」

 「ええ。けど、こんなに簡単に集まるとは思わなかったわ。そっちはどう?」

 「はい、もう少しで…終わりました。」

 「こっちも……」

 ここは、カレアとカリアの部屋。思った以上(男子寮+女子寮全て)の目撃情報、参戦
願い、テロリスト達の情報&似顔絵等の書類が集まったため、処理が終わったのは夜とな
っていた。中には、変なものもあったのだが。

 「けど、まさかこんなにあるとは思わなかったよ…」

 この四人の中で一番苦労したのはトリーシャだろう。カリアとシェリルは慣れているの
で平気であろう。カレアもカリアの手伝いをしているので、そんなには苦ではなくなって
いる。その中、全然慣れていない書類整理を延々とさせられていたのだから。

 「ボク、もうやりたくない…。この怒り、恨み…明後日の時に思い切りぶつけちゃお…。」

 「いいわね、それ。アタシもそうしよう。トリーシャ、勝負よっ!」

 「うん、カレア。望むところっ!」

 トリーシャとカレアはガッチリと握手し、笑いあった。

 「…あんなに燃えて、疲れないのかしら?」

 「いいんじゃないですか? 私、トリーシャちゃんのああいうところが好きですし…時
々、羨ましくなります。」

 「そうね、わたしもそうよ。カレアのことはわたしも好きだし…あの性格、ちょっとで
も欲しかったわ。…あなたとは、気が合いそうね。」

 「そう…みたいですね。」

 シェリルとカリアも微笑みながら握手を交わした。

 「さ、後ちょっとよ。さっさとおわしてしまいましょう。」



 こうして、夜はふけていった。…後、二日…………



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