中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「Last_Day-1」 とも  (MAIL)



 「覚悟は良いな?」

 明け方…寮の一室に集まったメンツ全てに、紅蓮は尋ねた。

 「俺らは万全だぜ。な?」

 「…みんな、気合いは入ってます。」

 最初に答えたのは、ジーク。隣りに座るロイもそれに頷く。

 「言われるまでもないですよ。」

 「ああ、任せておけ。」

 変わらない口調でフィドルも答え、アルベルトはその言葉を続ける。

 「トリーシャ、やるわよ!」

 「うん!」

 「はぁ…」

 気合い入りまくりのカレアにトリーシャを見、カリアは一人ため息をつく…が

 「でも。あんなヤツらに大きな顔はさせていられないわね。」

 しかし、冷たさを宿らせた、青い目で呟く。

 「そうそう、あーゆー大人達にはお仕置きしなきゃね♪」

 「右に同じ。テロリスト上等!」

 「ああぅ…そんな、物騒な…」

 「そんな物騒なもの作ったのは、コウだよね?」

 「ぅぅ…」

 漫才的なことをする、朋樹、ラティン、コウ。

 「デュークとアルザは、もう行動してる。くれぐれも無意味な怪我はすんな。自分のこ
とも大事だが、誰かがピンチになったらかまわず助け出せ。怪我すんのは、テロの大馬鹿
共だけでいい。いいな?」

 『おう!』/「はい。」

 ずしゃぁ!

 一人「はい」といったロイ以外、みながいっせいにコケる。

 「あれ? みんな、どうし…」

 「ロイ、頼むから他にあわせてくれ…。気合い入れるのに「はい」はねェだろ?」

 「いけませんでしたか?」

 なぜ?といった顔で、ロイは紅蓮に聞き返した。紅蓮は脱力しながらも言い聞かせるよ
うに言う。

 「…絶対によくない。…覚えとけ。」

 「はぁ…」

 よくわからない、といったロイだが、コクリと頷く。

 「こほん。じゃ、もっぺん…やるぞ!」

 『おう!』

 今度はきれいにそろい、それぞれの配置場所へと散っていった。






 少し前―――体育倉庫―――


 ガコッ…

 「っぷう。助けに来たで〜。」

 よっこらしょと出てきたのは、アルザ。後から、でっかい袋も一緒に取り出す。

 「アルザさ〜ん!」

 「久しぶりやな、キャラット。元気そうやないか。」

 久々にあった二人は、わずかな会話を交わした。しかし、端から見ると一方はそうでも
ないが…もう片方はでっかい袋を抱えている。…滅茶苦茶変だ。

 「…何、それ…? 今からここにでも住み込むわけ?」

 疲れたようにもらすのはヴァナ。この状況下、ヴァナが先導権を握り、ティナが意識下
からのサポートをしているのだ。事が済むまで、ティナは出てこないだろう。

 「そうや。あんたらっていう、でっかい荷物や。」

 そう言って、袋の中から人間の足が出てくる。

 「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 「落ち着きなさい、ただの人形よ…」

 取り乱すキャラットを抑え、ヴァナが冷静に呟く。

 「…あ、ホントだ…」

 「一応、これ身代わりに置いとくさかい。さっさと着替えてや。」

 人形を組み立てながら、アルザは二組の洋服を出した。人形の顔はともかく、髪型はそ
のまま複製させたかのようにそっくりだった。ぱっと見、気付く者は少ないだろう。

 「うわ…ボクの頭とおんなじ…どうやったの?」

 「そんなん、簡単や。うさぎ人形の耳、取っつけただけや。ヴァナ、あんたの髪はえら
い苦労したで? うちがどれだけ苦労したか…」

 「はいはい、ちゃんと埋め合わせするわよ。」

 アルザの意図を分かってか、ヴァナは疲れたように約束をする。

 「…で、あたしとティナ。どっちがいい?」

 「ティナや。」

 「じゃ、あたしと紅蓮。」

 「紅蓮やな。」

 「じゃ、あたしとローラ。」

 「う〜んちょっと迷うわ…。安全なトコでヴァナや。」

 「?」



 会話の内容を理解していないキャラットの頭の上には、?マークが浮かびまくっていた。
もっとも、内容の人選は、「料理を作る人間」で…ま、ヴァナは料理が苦手なだけなのだ
が。魂の片割れのティナは大得意なのに…分からんものである。



 「さ、着替え終わったか?」

 「うん。」

 「はい。これ、人形に着せるんでしょ?」

 人形を組み立て終わり、二人はそれぞれの着ていたものを渡した。

 「(これ、紅蓮あたりやったら高値で買うてくれそうやな…あとでキープしとこ。)」

 人形にそれを着せながら、アルザはふといいこと(爆)を考えついたらしい。

「(…ん? そうや、キャラットのも別売りにしておけば…アレフ…やないな。どっかの
アホ共にオークションでも…うくく、燃えて来たで…! ラ・ルナ…いや、さくら亭でぎ
ょうさん食ったる…!)」

 考えがまとまったようだ(笑) ちなみにヴァナとキャラットから見ると、人形に服着
せながらニヤニヤしているという、とんでもなく怪しいものがそこにいる、といった感じ
か。

 「アルザ…?」

 「ん、なんや? ヴァナ。」

 「それ、後でちゃんと返してね。あたしとティナのお気に入りなんだから。売ったりし
たら…あたしの料理…」

 「神に誓って、絶対せぇへん!!」

 哀れアルザ、一分で作戦はもろくも崩れた(笑) 一方、ヴァナは…

 「(やっぱ、あたしの料理って…ティナ、後で徹底的に教えてね…(半泣))」

 『(ええ、善処するわ…(汗))』

 意識下にいるティナに、泣きながら料理指導を頼んでいた(笑)


 「さ、気を取り直して…まずは、職員室に捕まっとるのを救出や!」

 「了解。さっさと済ませましょ。」

 「うん! ボク、頑張るよ!」

 三人は人形を残し、秘密の出入り口へと入っていった。


 同時刻…紅蓮達も散り、戦いが始まった。





 ピィィィィ!!!

 「何が起こった?!」

 「分かりません! しかし、この呼び子はNO−2方面です!」

 「よし、念のため「犬」を含めた六人構成で行ってこい!」

 「了解しました!!」





 「て、敵しゅ…! ぐっ…」

 ピィィィィ!!!

 「応え…うげぇっ!」

 「ちッ…呼び子、使われてもうたな。」

 足下に転がった笛を踏みつぶし、アルザは呟いた。

 「ま、いいんじゃない? これで、少しは勢力分散できたワケだし。こっちとしては好
都合じゃない。」

 「二人とも、鍵は開けたよ。」

 ドアに引っ付くようにして鍵を開けていたキャラットが、声を押し殺して言う。手際は
よく、十数秒ほどしか経っていない。

 「さすが、リラの相棒やな。でも、なんでこれで逃げなかったん?」

 「だって、リラさんが何されるか…」

 「さっさと行くわよ。ノロノロしてると厄介だわ。」

 ヴァナが促し、会話を止める。そして、二人はヴァナの後について入っていった。



 中にいたのは学園の教師のみだった。三人は、すぐさま手分けして一人一人の縄をほど
いていく。

 「みんな、無事ですか?」

 「ええ…。それより、これは何事ですか?!」

 比較的しっかりとしていたシスター・リンがヒステリックに叫ぶ。他の教師達は2〜3
怪我人がいるものの、軽傷ばかりだった。これなら、逃げ出すのに支障はないだろう。

 「うっさいオバハンやな…! うちらは自警団に協力してるんや! なんか文句でもあ
るんかい!」

 キーキーわめくシスターに半ギレしたアルザは、一喝でシスターを黙らせた。と同時に、
シスターも冷静に対処をしだす。

 「わかりました…。それで、逃げるのですか? それとも、ここに立て籠もるのですか?」

 「そっちの方は、もうそろそろ…」

 「しっつれいしま〜す♪」

 と現れたのは、名も分からぬ生徒。現れた場所が床下からなのはご愛敬だ。

 「あんたか?」

 「うん。こっちに非常通路あるから。あ、これ紅蓮さんからの。」

 そういって、一枚の紙が渡された。それにサッと目を通し、アルザは満足そうに頷く。

 「よっしゃ。あんたは、先公ら引き連れて脱出しとき。シスター、立て籠もるのは学生
寮や。そう言うことで頼むで。」

 「はい…。それで、あなた方は…?」

 シスターの質問ももっともだ。が、その言葉はこの三人にとっては相応しくない。むし
ろ…

 「決まっとる…ブッ倒すまでや!」

 「恨みもあるしね。」

 「ボクだって…!」

 こっちの方が似合う。

 「そうですか…では、神のご加護を…」

 シスターはそう言うと周りの教師達を促し、その生徒の指示通りに行動する。それを見、
アルザはヴァナとキャラットを見た。

 「さ、うちらはまだ仕事残っとるからな。」

 「後はなに…?」

 「ちょっと待って…!」

 会話を止めたのはキャラット。耳が何かを探るように動き、目も真剣なものとなる。

 「こっちに、…………五人! 来るよ!」

 と、ドアを見る。それと同時に、バンとドアが開け放たれた。

 「まずはこっち、やな。」

 「オッケー、腕ならしには丁度いいわ。ここ最近、暴れてなかったし。」

 敵が中に入ろうとするのを眼光で押さえたヴァナが、アルザに同意した。ヴァナは左半
身、アルザは右半身をそれぞれ前に出し、二人からやや後ろの中央にキャラットが歩み出
てきた。男達も後込みせずに剣をかまえている。

 「ほな…こいつらブッ倒してからや!!」

 それが合図だった。アルザとヴァナの剛拳がそれぞれ一人ずつK.Oし、強靱な脚力を
もったうさぎ…もとい、キャラットの一蹴りが、手前とその真後ろの者を巻き添えにして
吹っ飛ばした。そのまま二人は壁に叩きつけられ、動かなくなる。

 「楽勝楽勝! あと一人や!」

 「ちきしょう…「犬」! 出てこい!」

 ピュィィ!

 スタッという音がし、一人の少女が無言で現れた…が、それはリラだった。

 「あいつらを殺せ!」

 男が指をさして叫ぶが、リラは黙ったままだ。そんなリラに掴みかかろうとしながら男
は怒鳴り…

 「…おい! 聞いて…」

 ゲシィッ!!

 一蹴りで沈黙させられてしまった。もうキャラットが解放されている今、そんな命令な
んぞ、リラが聞くはずがないのだから。

 「キャラット…無事でよかった…」

 「リラさん…!」

 周りの状況を無視し、二人は涙を流して抱き合った。わずかに聞こえるのは、互いの謝
罪のみ。

 「はぁ…周りの目も気にして欲しいわ…。」

 「ま、ええやないか。これでうちらの仕事が一個減ったんやし。」

 脱力するヴァナに対し、アルザはさも気にしていないかのように微笑った。



 「で、これが次の指令やな。」

 近くにある机に、受け取った紙を広げながらアルザは言った。そこには、三つほどの指
令が書かれている。

 「あたしは…爆弾処理ィ?! 何よ、これ!!」

 「大丈夫やて、そないに難しいもんでもあらへんらしいし。手先の器用さなら、リラが
一番やろ?」

 「…分かったわよ…。で、なんでキャラットも一緒なわけ? ちょっと危険じゃない
の?」

 「リラさん…ボク、足手まとい…?」

 うるうると目を潤ませ、訴えるようにリラを見つめるキャラット。それを見、リラは柄
にもなくオロオロし始める。

 「あ、あのね、キャラット…あたしは、その、足手まといとかそう意味で言ったんじゃ
なくって…」

 「あんた達、今までパートナーだったんでしょ? 少しは信じてあげなさいよ。ね、キ
ャラット?」

 「うん! ボク、頑張る!」

 にやけた笑みを浮かべ、ヴァナが無責任にキャラットをあおる。そして、キャラットも
やる気になってきたようだ。

 「分かったわよ…ま、あの連中の手際から見てちょっと難しいとは思うけど…。やって
やろうじゃない。…で、外したのはどうする気? 湿らせて使いモノにならなくするだけ
でいいの?」

 「ああ、それはな…もっといい方法があるらしいんや。量はそんなでもないらしいで。
あ、ラティン言うのがサポート来る書いてあるわ。こき使ってええて。」

 「はいはい。」

 「あたしは、と…ふ〜ん…いったん待機、ね…」

 つまらなそうに呟くヴァナ。まだまだ物足りないようだ。

 「ほな、ヴァナはうちと行こか?」

 「そうね…。あんた達、気をつけなさいよ。」

 「大丈夫よ、この子は耳もカンもいいから。行くわよ、キャラット。」

 「うん。アルザさん、ヴァナさん、ティナさん。行ってきま〜す!」

 ぶんぶんと手を振りながら、キャラットは嬉しそうにリラの後をついていった。

 「さて、うちはこれからお子様の助っ人や。ちょいと急ぐで?」

 「いいわ…じゃ、行くわよ!」

 二人を見送った後。ヴァナとアルザは凄まじいスピードで疾走していった。



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