中央改札 悠久鉄道 交響曲

「魔力の怖さ…マリアの怖さ」 とも
 魔力の怖さ…マリアの恐さ

 「ぶー☆なんでマリアに教えてくれないのよっ!」
 「だーかーらー。話聞いてなかったのか?!」
 「聞いてたわよ!マリア、失敗なんかしないもん!」
 「失敗以前の問題だ!」
 「紅蓮、ちっとは落ち着いたらどうや?疲れるだけやで?」
 「そうだよ。マリアも落ち着きなって。」
 睨み合う紅蓮とマリアに、二人を抑えようとするアルザとト
リーシャの姿があった。もう、すでに一時間がたとうとしてい
る。
 「うちもう飽きたわ。なあ、面倒やから教えてやったらどう
や?」
 「アルザ〜。もう忘れたんか?これやろうとして死にかけて
たヤツがいたろ?」
 「あ、そうやったなぁ。マリア、そうゆうことであきらめや。」
 もうアルザはどうでもいいようだ。
 「やーよ!マリア、あきらめないんだから!」
 「ごめんね、紅蓮さん、アルザ。マリアのこと、説得したん
だけど…。うんとね、ボクがマリアに魔法のことしゃべっちゃっ
たんだ。」
 「いや、トリーシャのせいだけじゃないけど…。」
 この紅蓮とマリアの言い争いの原因は、昨日のことが引き金
だった…。

 さくら亭、夕飯時。
 「お〜い。あんちゃん!いつものはまだかぁ〜?」
 今日もさくら亭は満員御礼だ。そして、紅蓮らがエンフィー
ルドに住み始めて一ヶ月が過ぎようとしている。そしてさくら
亭には、一日に一回、客のリクエストに応じる紅蓮の姿があっ
た。
 「はいよぉ!さて、と…なんかリクエストある方いますか〜?
今日は女性のみ、うけつけま〜す。ただし、先着一名限りね〜。」
 いつもはウェイターを勤め、リクエストに一回だけ答える…。
これが彼の日課だった。
 「はいは〜い!」
 「は〜い、どなた〜…って…ローラにデューク、シェリルに
シーラ。あと…?」
 振り向いたそこには、ジョートショップの面々&ローラ&マ
リアが立っていた。しかし、まだ紅蓮はマリアの事は知らない。
 「マリアだよ☆よろしくね。」
 「ああ、よろしく。俺は紅蓮。…で、ローラ。今日はお前が
一番乗りだからな。今日のリクエストは?」
 自己紹介しながらも仕事をする紅蓮。
 「う〜んと…。あっ!ねえねえ、さくら亭にちなんで桜吹雪
みたいなのがいい!」
 「…よし、それでいいな?」
 紅蓮の問いに目を輝かせながらうなづくローラ。
 「じゃ、みんなはとりあえずそこの席についててくれ。」
 そう言うと、紅蓮は両手に魔力を込め始めた。
 『右に集うは真紅に染まりし力。左に集うは白き風。
  我が両の手に集いし力よ…我が身体を媒介とし、一つとな
  りて我が右手にいでよ!』
 紅蓮の力強い言葉とともに、右手に現れる桜色の球体。
 「みなさ〜ん!聞いての通り、今日のリクエストはローラの
桜吹雪!楽しんでいこう!」
 『光よ…小さき粒となりて風とともに舞え。』
 紅蓮が手を上にかざすとともに光が弾け、光は風とともに舞
い続けていた。

 「よっ、デューク。お嬢さん方。」
 注文票を持った紅蓮がデューク達の前に現れた。
 「あ、紅蓮か。みんなで飯食いに来たぜ。」
 「こんばんわ、紅蓮さん。」
 「こ、こんばんわ。あいかわらず、すごいことを平然として
ますね。」
 「ありがとね、紅蓮お兄ちゃん。すごくきれいだよ。」
 「ふ〜ん。紅蓮ってウェイターもやってるんだ☆」
 皆、いつもの調子だ。
 「とりあえず、注文聞きに来たんだけど…。まだ決まってな
かったか?」
 「決まるもなにも…俺はいつもの通り、日替わりを頼む。」
 「じゃ、私はたらこスパゲティ。」
 「わたしはオムレツにしてください。」
 「あ、マリアもそれがいい☆」
 みんなそれぞれ好きな物を注文する中、ローラは一人、何も
注文しようとはしない。
 「ローラは…。あ、そうだ。悪ぃ悪ぃ、なんか悪ぃこと言っ
ちったな。」
 「ううん。いいの。わたしは、体が戻ったらお兄ちゃんにいっ
ぱいストロベリーパフェおごって貰うから♪」
 そう言ってデュークに笑いかけるローラ。だがデュークは困っ
たような顔だ。
 「ローラ…いいけどさ〜。ほどほどにしてくれよ?」
 「わ〜い!ありがと!」
 「ははっ、そんときゃパティに割引いてもらえるよう、頼ん
でやるよ。じゃ、持ってくるまでごゆっくり!」
 そういうと、紅蓮はカウンターへと向かって行った。

 「ほ〜い!おまちどうさん!っと、デュークが日替わり、シ
ーラがたらこスパゲティ、シェリルとマリアがオムライスだっ
たよな。後、これは俺のおごり。飲んでくれ。」
 そう言って、料理と一緒にオレンジジュースを持ってきた。
 「やった!マリア、も〜らい☆」
 「い、いいんですか?」
 「いーのいーの。」
 「それじゃ、いただくとしようか。」
 そして、しばしの間、みんなは笑いの飛び交う一時を過ごし
た。

 「ごちそうさん。ありがとな、紅蓮。」
 「ホントに、ごちそうさまでした。」
 「すいません、なんだかおごってもらっちゃって…」
 「ありがとね〜。今度来るときは、もっと違う、ロマンティッ
クなもの考えてくるから。」
 「うん、ありがと、ジュースごちそうさま☆あ、そうだ!ねぇ
ねぇ紅蓮、明日の午前中、予定ある?」
 「ん?アルザと日の当たる丘公園に行くけど?」
 「じゃあさ、マリア、紅蓮に聞きたいことあるんだけど…。
その時、一緒に行ってもいいかな?」
 「ああ、別にかまないけど。」
 「ほんと?!じゃあ、日の当たる丘公園で待ってるからね☆」
 「ん。分かった。」
 「じゃ、マリアそろそろ帰るね。ばいばい☆」
 マリアがそう言うと、シェリルも
 「あっ、もうこんな時間。寮の門限に遅れちゃう。それじゃ、
さよならっ!」
 と言いながら一つ礼をすると、寮へと走って帰っていった。
 「じゃ俺も戻るか。シーラ、送ってくよ。」
 「ええ。ありがとう。デュークくん。」
 「気を付けてな。特にシーラ。デュークに襲われないように
な♪」
 「ええっ?!」
 紅蓮の軽い冗談に、驚いて目を丸くするシーラ、
 「ばっ馬鹿やろ!んなことするか!」
 そして、まにうけて怒鳴るデュークだった。

 そして次の日…すなわち今日の朝
 「おはようさん、紅蓮。ほな、いこか。」
 「おっ。おはよ。んじゃいくか。そうそう、アルザ。公園で、
マリアっていう娘と一緒になっけどいいか?」
 「かまへんで。はよいこうや。」

 …そして、日の当たる丘公園前。
 「あ、紅蓮〜!こっちこっち!」
 見ると、マリアが公園の一角で手を振っていた。トリーシャ
も一緒にいる。
 「おはよう、マリア、トリーシャ。」
 「へー、マリア言うんか。うちはアルザっちゅうんや。よろ
しくな。」
 「よろしく☆早速だけどさ、紅蓮。」
 「ん?」
 「マリアに合成魔法教えて☆」
 ガクッ
 思い切り肩を落とす紅蓮。そして、
 「却下!」
 きっぱりと言い放つ。
 「なんで〜?!けち!いいじゃない!マリアに教えてくれたっ
て!」
 好き放題に言いまくるマリア。と、そこへトリーシャが出て
きた。
 「やめなって、マリア。すっごく危険なんだってさ。ボク、
心配なんだよ?」
 「ぶー☆」
 「ったく。前に違う街にあるギルドの高位のじーさんが俺の
真似して死にかけたんだぞ?!」
 「ふんだ。マリアなら才能あるし、若いし、失敗なんてしな
いから大丈夫だモン☆」
 「そーゆー問題ぢゃな〜い!!」
 そして、最初の会話へと続いていった…。

 「もう!紅蓮になんか頼んだマリアが馬鹿だった。いいもん!
見よう見まねで成功してやるんだから!」
 そう言うと、マリアはとっさに魔法の詠唱に入った。
 『四つに別れし火の玉よ
 一つとなりて敵を討て
 ルーン☆バレット』
 ドッコ〜ン☆
 マリアを中心に大きな爆発が起こり、煙が広がる。
 「けほっけほっ。ト、トリーシャ?ルーン・バレットって目
眩ましの魔法だっけ?」
 「こほこほ…。ううん、攻撃魔法だよ。」
 「も、もしかして応用が利くのか?!」
 「違うよ、単に失敗しただけだよ。」
 「…!洒落にすらならん!マリアには絶対に試させん!アル
ザ、マリアを捜してくれ。」
 「ほいきた!うちにまかせとき!」
 …が、皮肉にもその対応は少々遅かった。
 「きゃあぁぁぁぁ!!」
 土煙の向こうでマリアの叫び声がしたのだ。
 「ちっ!最悪だな…。トリーシャ、『ウンディーネ・ティア
ズ』は使えるか?」
 「ごめん、紅蓮さん。ボク、使えないんだ…。」
 「仕方ない!とにかく、マリアのとこへ急ごう!」

 「うう、な、なんでマリアには使えないの…?」
 力無くしゃべるマリア。心なしか、息も弱々しい。
 「あんましゃべんな!…トリーシャ、魔法が暴発する恐れが
あっから、ここらにいる人を公園の外へ。アルザ、ジョートショ
ップに行ってデューク達呼んできてくれ。ここは俺がなんとか
する。早く!」
 「うん!」
 「分かったで!紅蓮!すぐ呼んでくるさかい、あんま無茶し
たらあかんで!」
 駆け出そうとするアルザ。が、
 「待って!アルザ!」
 トリーシャが急にアルザを呼び止める。
 『シルフよ、汝の力により我が友に風の翼を与えん
 シルフィード・フェザー』
 「これで、いつもより早く行けるから!」
 「おおきに!さ、いっくでぇ!」
 風の精シルフの加護で、凄まじいスピードで走り去るアルザ。
トリーシャも自分にシルフィード・フェザーをかけ、人々に知
らせて周り始める。
 「さて、と。神聖魔法の急な回復は体がもつかどうかわから
んからな。」
 『右に集うは清き水の加護
 左に集うは水の精…我が身を通じ、一つとなれ。
 ウンディーネ・リクレイション』
 紅蓮の手から、蒼い光がマリアに降り注ぐ。
 「…もってくれよ…!」

 「紅蓮!悪い、遅くなった!で、マリアの様子は?」
 来たのはデュークだけだった。他はまだ戻ってないらしい。
 「一人か…。まあいい、こいつにウンディーネ・ティアズを。
神聖魔法は使うなよ、急な回復でもしたら俺の対処が出来なく
なるくらいになっちまう。頼むぜ、デューク。」
 マリアをデュークに任せた紅蓮は、魔法の詠唱に入った。
 『汝、魔力を統べし者よ。我が願いを聞き入れ、力を貸し与
えんことを願う。
 右に集うは魔力をうち消す負の力!
 左に集うも等しき力!
 我が身を通じ、一つとなれ!デストラクト・マジックスペル!』
 力強い言葉によって、魔法が解き放たれ、マリアを包む。す
ると、マリアの苦痛に満ちた表情が次第に和らいでいった。
 「ふう、これで一安心だな。しかし、もう『デストラクト・
マインド』覚えたんか?」
 「この間、な。うまくいくかは一か八かの賭だったよ。」
 「お、覚えたてかよ…。」
 マリアの表情も落ち着きはじめた頃、トリーシャが戻ってき
た。
 「ね、マリアは?!」
 彼らを見つけるなりマリアのことを気にするトリーシャ。
 「デュークの脇でぐーすか眠ってる。あ、そうそう。トリー
シャ。」
 「え?なに?」
 「暴走を止めた後遺症のこと。罰も含めて向こう二週間魔力
を封じられたままだから。」
 「ええ〜!?う、うん。わかった、マリアに伝えとくよ。」
 びっくりしながらも、なんとか受け答えするトリーシャ。
 「でも、マリアはどんなリアクションするんだろうな。」
 笑いながら言うデューク、
 「逆恨みだけは勘弁だな。」
 同じく笑う紅蓮。だが、その後すぐ…おかげで昼時の混む時
間に遅れたために怒り狂ったパティに、必死に謝る紅蓮&状況
を説明して彼を助けようとするデュークとトリーシャの姿があっ
た。

 数日後…ジョートショップ
 「最近、マリアちゃん見かけませんね。いつもの爆発の音も
聞こえないし…。」
 ウェンディが心配そうに呟く。たまたま暇を貰ったので、ティ
ナとウェンディが遊びに来ていたのだ。
 「そういえば、紅蓮さんも最近なんだか元気がないような…。
デュークさん、何か知りません?」
 ティナも心配そうだ。
 「えっ?ああ、うん。そうだね…。」
 曖昧な受け答えのデューク。
 「(まさか、あん時のこと言うわけにもいかないからな…)」
 あの後、マリアには罰を与えたし、ギルドが関わると面倒に
なると結論付け、ことがおさまるまで(一応、マリアの魔力が
戻るまで)あのときのメンバーのみの秘密、となった。ちなみ
に、公園で避難させた人達には「マリアがまた変な魔法を試そ
うとしていた。」と嘘(半分はあってるが)をついたのだ。
 「なんかデュークくんも元気ないわね、大丈夫?」
 デュークの隣に座っているシーラが、彼の表情に気づいたの
か顔をのぞき込む。と、そこへ…
 カランカラン!
 「悪い!ちっとかくまってくれ!」
 紅蓮が飛び込んできた。
 「え?ああ、じゃ、そこの箱ン中へ…。」
 「サンキュ!」
 すぐさま飛び込む紅蓮。続いて…
 カランカラン!
 「どこ行ったのよ!紅蓮!どこ!?」
 マリアがものすごい顔で飛び込んでくる。
 「デューク!紅蓮はどこ!?隠すと…!」
 言うなり詠唱に入るマリア。どうにも止まらないほどに怒り
狂っている。
 「わ、分かった分かった。落ち着け、マリア。紅蓮は裏口か
ら…。」
 紅蓮を逃がそうとするデューク。が、現実はそんなに甘くな
い。
 「へ、へ、へーっくしょん!」
 紅蓮がくしゃみをしてしまったのだ。
 「あ!そんなとこに…。デュークっ!裏口がどうとか言って
なかった?!」
 怒りの矛先が紅蓮だけから紅蓮とデュークに変わる。
 「あ、あの…いやな、その、だな。まあ、友達だからな、か
ばってやりたいと…。」
 「問答無用!
 『金色の旋風よ…』」
 再び詠唱に入るマリア。
 「まずい!ヴォーテックス唱える気だ!…逃げるか?」
 「ん。異議なし。じゃ…。」
 『『シルフィード・フェザー!』』
 お互いにうなずきあった二人は、あらかじめ詠唱して置いた
魔法を解き放つ。そして、脱兎のごとくジョートショップから
飛び出る二人…が、少々遅かった。
 「甘いわよ!マリア、それくらい予想できるんだから!
 『我が意のままに、彼の者に襲いかかれ。ヴォーテックス☆』」
 ゴオオォォォォーー
 珍しくちゃんと制御出来ているマリア。怒りによるエネルギ
ーは凄まじいものだ。案の定、ヴォーテックスに二人は巻き込
まれ、吹っ飛ばされる。
 「なぁ、紅蓮。マリアのヤツ、まだ魔法使えないはずじゃ?
魔力封じたんだろ?」
 「金にものをいわせて、強力な魔法補助アイテム探し出した
んだと。二週間じゃなくて三日ぐらいにしときゃあ良かったか
な。」
 吹っ飛ばされながら呑気に会話する二人。
 「やれやれ…マリアに関わると後々面倒だな…。」
腕組みをし、呑気なことを言う紅蓮…そして…行き先は…
ドッポォォォ〜〜〜ン………
ローズレイクのど真ん中だった…。
その後、二人とも高熱を出し三日三晩寝込んだ、と言うこと
を付け加えておく。

 そして、マリアはというと…
 「待ちなさいよ!紅蓮!」
 「いやだ!それに、前にも言ったとおり教える気はこれっぽっ
ちもない!」
 逃げる紅蓮に追うマリア。が、生まれてずっとこのエンフィー
ルドで過ごしてきたマリアと、来たばっかの紅蓮とでは、紅蓮
の方が逃げるのには分が悪すぎる。行く手を遮られてしまった。
 「さ!もう逃げられないわよ!さっさと観念なさい!」
 「教える気はないとゆーとるだろうが!」
 「ぶ〜☆紅蓮のけち!もう、マリア失敗なんてしないもん。」
 「だ〜か〜ら〜!失敗なんて程度の低いことぢゃねーって!
何度も言わせンなよ!それに、俺はこれから仕事なの!」
 「ふんだ、いいもん。見よう見まねで…」
 「えーかげんにせい!!!!!」
 死にかけたのに全然懲りていなかったりする。紅蓮が自分の
命の恩人だということもすっかり忘れて。

 後書き      

 ども。作者のともです。
 今回のSSについて……一応、紅蓮くんは魔法に関すること
がすごいので、噂が広まれば真っ先に起こりうる事件と言った
らやっぱりマリアしかないだろう、とこれを書きました。けど、
周りの被害は全然でしたが、マリアは死にかけちゃったなぁ。
でも、まったく懲りていなかったりする。(あきらめないってい
いとこなんだけどなあ。でも自粛ってしないんだろーなー。)
 ああ〜。勉学に励まにゃならんのに頭ン中でキャラが走り回っ
てイタズラしてる〜。ネタ作りしてる〜。同人活動いっさいし
てないのに冬コミ(冬の陣←(友人談))に行こうとしてる友人に
「同人作家」っていわれた〜。しくしくしく(T0T)
 それでわ…ともでしたっ。

中央改札 悠久鉄道 交響曲