中央改札 悠久鉄道 交響曲

「NO-2〜一回戦〜」 とも  (MAIL)
 NO-2〜一回戦〜

 「ここにいる諸君、おめでとう。君たちは、多数の志望者の
中より勝ち抜いてきた十六人の強者である。それでは、これよ
り武闘大会の開催を宣言しよう。組み合わせは各自に配った通
りだ。なお、各試合ごとにアナウンスにより呼び出しを行うの
で、遅れないようにしてもらいたい。それでは、第一試合が始
まるまで、各自の自由にしていただいて結構。解散!」
 開催の挨拶が終わり、自警団員なのだろう、係りの者が試合
場の準備を始める。毎年やっているだけあってさすがに素早い。
出番がまだ先の選手は、各々控え室や友人の元などへと向かう。
その中に、紅蓮達の姿もあった。
 「ふぁ〜あ…。駄目だ、俺こういうの苦手でさ。すぐ眠くなっ
ちまう。」
 あくびをしながらのんびりと言う紅蓮。が、リサはそんな紅蓮
をたしなめる。
 「なにいってんだい。そんなんじゃ、勝てるものも勝てないよ!」
 「まあまあ、ええやないか。それより、うちと当たるんはリサ
やで?」
 怒るリサを後目に、紅蓮と同様のんびりとしているアルザ。ど
うやら今のこの二人には『緊張感』という物がないようだ。。
 「『短気は損気』言うやろ?あんま怒らへん方がええで。」
 「……なあ、なんでお前らそんなにのほほんとしてられるんだ?
普通、こういう時はピリピリしてるものだぞ?」
 デュークもそれなりに注意するが、二人は相変わらずのままだ。
 「武闘大会言うても結局は単なる試合やろ?うちらは幾度とな
く実戦こなしてたんやで?こんなん、そん時の緊張感に比べたら
どうってことあらへんわ。」
 もっともらしいことを言うアルザ。そのことを言われ、リサも
それを認める。
 「そうだね…。あんた達はこないだまで旅を続けてたんだっけ
ね。よし、あたしがどの位出来るか試してやろうじゃないか!」
 「そうこなくっちゃおもろないで!よっしゃ!負けへんで、リ
サ!」
 気があったのか、二人して意気投合している。
 「おいおい、二人仲いいのはいいけどさ。そろそろ行こうぜ?
第一試合が始まっちまう。」
 デュークの言葉を合図に、コロシアム内にアナウンスが流れる。
 「それでは、一回戦第一試合を始めます…出場される選手は闘
技場内までおこし下さい。」
 「さ、早く行こうぜ!」
 言うなり駆け出すデューク。アルザもそれに続く。
 「ちょ、待ってぇな!紅蓮、リサ、はよ行こうや!」

 紅蓮達の観戦場所で…
 「あ、第一試合はアルベルトさんが出るッスよ。ご主人様。」
 たしかに、あのほうき頭(笑)はアルベルトのようだ。さすが
はテディ、アリサの目の代わりにしっかりとなっている。まあ、
それがテディの仕事なので当然といえば当然だが。
 「へぇ、初っぱなからか。お〜い。アル〜。頑張れよ〜!」
 止せばいいのに、いらぬ事を言うデューク。当然のごとくアル
ベルトはデュークに対して怒り始めた。戦闘の途中の上、対戦相
手を無視しながら…。
 「うるせぇ!俺のことをアルって呼ぶな!デューク!」
 「やかましい!ンな事俺の勝手だろ!ほら、対戦相手ほっぽり
だしてんなよ。どう対処していいか困ってんぞ!早く闘え!」
 「いい気になりやがって…。」
 負けじと言葉を返すデューク。アルベルトも本気で切れそうに
なった時、突如アリサが口を開いた。
 「デューククン、もうそれくらいにしたら?迷惑がかかるでしょ
う…。アルベルトさんももうやめてください。今日は武闘大会な
んですから、そちらの方を頑張って下さいな、アルベルトさん。」
 と、にっこりと笑う。その言葉にデュークはおとなしく引っ込
み、アルベルトは…
「は、はい!分かりました!見ていて下さい、アリサさん。」
 と、異様な…もう止まらない暴走列車のような勢いがつく。そ
して、恐ろしいほどに気合いが入る。これが愛の力なのだろう。
(もちろん、一方的なものだが…(笑))
 「さあ来い!」
 愛用の槍をしっかりとかまえ、さらに気合いが入るアルベルト。
 「く、くそ!てめぇなんぞに負けてたまるか!」
 言って男も得物の大剣をかまえ、ジリジリと間合いをはかる。
そして、一気にアルベルトへつっこむ。
 「くたばれ!うおお!」
 男も気合いを入れながら大剣を振り下ろす。…が、今の(一方
的な)愛の力に燃えるアルベルトに敵う者はそうはいない。
 「うるさい!キサマが倒れろ!!」
 一瞬にして槍を短く持ち、声と同時に槍で男の大剣を防ぐ。
 ガキン!
 「ぐっ…。まだだ!」
 今度も大剣を振るうが、
 カキィィーン…
 アルベルトに弾かれた剣が宙を舞い、地面に突き刺さる。そし
て、アルベルトは男に槍を突きつけ、ゆっくりを口を開く。
 「勝負有りだ。負けを認めろ。」
 「ちきしょう…。」
 男はガックリと肩を落とすと、負けを宣告する。
 「勝者アルベルト選手!」
 ワアアアァァァーー
 審判がアルベルトの勝ちを告げると同時に歓声がわき起こる。
 「やったッス!アルベルトさんの勝ちッス〜!」
 「すごいわ。おめでとう、アルベルトさん。」
 他の歓声に混じってテディやアリサの声も聞こえる。そして、
アルベルトはアリサの声を聞き逃さなかった。
 「いや、これくらい当然ですよ!はっはっは!」
 「…単純なヤツ…。」
 アルベルトの浮かれように、静かな声でツッコミを入れる紅蓮
だった。

 そして、第二試合が終わり、第三試合。紅蓮の出番となった。
 「紅蓮さん、頑張って下さいね。」
 ティナが心配そうに声をかける。
 「おい、相手が誰だか知ってるのか?」
 デュークが紙を見るなり紅蓮に言う。
 「お前の知り合いの…確かフィドルって言ったっけ?自警団員
の。」
 「ああ。それが?」
 「お前の対戦相手なんだよ。」
 「へえ、そりゃ楽しみだ。」
 言いながら紅蓮は闘技場へ向かった。

 「それでは、一回戦第三試合、始め!」
 「それでは行きますよ!」
 ゆっくりと剣をかまえたフィドルは、早々に気合いを込める。
 「よし…じゃ、俺も行くか!」
 『左に集うは蒼き風の刃
  我が意のままに具現化せよ…』
 紅蓮の言葉に応じるように風が紅蓮を包み、それとともに左手
に青白い刃を持つ刀が現れる。
 「ニードル・スクリームですか…。」
 「とりあえず言っておくが、これ持ってるときに『ブレイク』っ
て言葉言うとニードル・スクリームが出るぜ。」
 「…なんのつもりです?手の内明かすなんて。」
 「解説してやっただけさ。別に、俺の得物はこの『蒼天』だけ
じゃない。」
 「…行きます!」
 フィドルは身を低くし、一気に突っ込んでくる。
 「ふ〜ん、そうくっか…。」
 紅蓮はフィドルの低い動きに対し、普通にかまえたままだ。
 「シルフィード・フェザー!」
 フィドルはあらかじめ詠唱しておいた魔法を解き放ち、スピー
ドをさらに高める。そして、距離を一気につめて剣を思い切り振
り上げる。
 ブォォン!
 勢いづいた剣が紅蓮を襲う…が、最近まで旅をしていただけあ
り、身を高くしていたことも幸いして難なくよける。
 「なるほど。でも、もうちっと意表を突くようにしなよ。」
 言いながら刀を振るう。

 フォォォン…ガキィィン!
 フィドルもそう易々とやられないように剣で受け止める…が…
 「ブレイク!」
 紅蓮の言葉とともにニードル・スクリームがフィドルを包む。
 「ぐぅっ…。」
 さらに、フィドルの腹に鈍い痛みが走る。紅蓮の蹴りが入った
のだ。
 「接近戦になったら使えるモンを使っとく。覚えとけ。」
 言葉と同時にさらに刀が空を切る。それと同時に負けじと剣を
振るうフィドル。
 ギィン!キン!ガキィィィン…
 二人とも打ち合いを続け、つばぜり合いとなった。
 ギギギギィィィ
 二つの剣が重なり合い、かすれた音を出し続ける。
 「どうした?もう終わりか?」
 続けながら言う紅蓮。
 「まだです!」
 フィドルはとことん闘うつもりだ。…が。
 パキィィン…
 音ともにフィドルの剣が折れてしまう。
 「勝負あり、だな…。」
 言って刀をおさめる紅蓮。しかし、フィドルはまだあきらめて
いない。
 「まだです!剣が駄目なら拳がある!」
 殴りかかるフィドル…が、あっさりと紅蓮にかわされる。
 「あきらめもまた必要だ。ま、よくやったよ。フィドルは…」
 フィドルはもう一度鈍い痛みを感じると同時に、意識は闇の中
へと落ちていった。そして、その中でおぼろげに言葉が響いた…。
 「勝者紅蓮選手!え…?紅蓮さん、ご自分でフィドルさんを…?
…………」

 そして、勝った紅蓮をデューク達が出迎えた。
 「よ、紅蓮。ご苦労さん。おもしれえことやってくれたな。」
 出迎えるなり肩をたたき、笑って言うデューク。
 「ほんまや。あないなキザなこと、うちにはでけへんわ。」
 アルザも、デュークと同様に笑っている。
 「いーだろ、別に。ただ、俺なりに相手に対して礼儀を尽くし
ただけだ。俺の勝手だろ?いーぢゃねーか。」
 デュークとアルザのからかいに本気でむくれる紅蓮。単なる皮
肉程度のことなのだが、まにうけているようだ。
 「まあまあ、いいじゃないですか。それより、次はアルザさん
とリサさんの試合じゃなかったんでしたっけ?ね、ティナさん?」
 ようやくここの暮らしにも慣れてきたウェンディが、険悪な雰
囲気に敏感に反応してとっさに口を出す。
 「そうだったかな?え〜っと…」
 がさごそと紙を取り出すティナ。そして、ティナが見るよりも
早くリサが代わりに答える。
 「いや。あたしらの出番は次の次。第五試合だよ。」
 「え〜!?まだまだやん。なぁ、リサ。軽くウォーミングアッ
プといかへんか?」
 退屈になったアルザがだだをこね始める。
 「そうだね。そろそろ体を温めといた方がいいかも知れない。
じゃあ、行こうアルザ。」
 「よっしゃ!ほんなら早ういこ!試合までには戻るわ!」
 そう言いながら、二人は外へと走っていった。

 「そういや、この第四試合に出てるヤツのどっちかが俺の次の
対戦相手なんだよな。勝ちそうなヤツがどっちだか分かるか?デュ
ーク。」
 第四試合が始まり、闘技場では長髪の男と斧を持ったゴツい男
が睨み合っていた。
 「う〜んと…。あの長髪がレオン、斧を持ってるのがクランク
だ。ま、いつもおっさんと張り合ってんのがレオンだからな。ク
ランクが勝つことはないだろ。」
 デュークが指を指しながら紅蓮に説明する。そして紅蓮も納得
するようにうなづいている。下の二人の戦いが始まり、レオンの
動きを見ていた紅蓮が意外なことを言う。
 「ふむふむ…。なるほど。」
 「?何がなるほどなんだ?」
 「レオンってヤツとアルベルトのこと。動きから察するに、い
い勝負すると思うぜ。いっつもお前と競ってンだろ?アルベルト
のヤツ。結構強いと思うぞ?俺は。」
 驚くデューク。まあ、いつも喧嘩を売ってきては返り討ちに合
うヤツが、そんなに実力があるとは全然思ってなかったのだろう。
 「へえ、あのアルベルトがね…。」
 「お前もそうだぞ?そのアルベルトに勝ってんだかんな。あん
時より相当強くなったよ、デュークは。」
 「………。」
 急に無言になるデューク。
 「お前はあんま自覚してねーだけだ。お前とこうして闘えるか
も知れないと思うと楽しみだよ。」
 ポン、と軽くデュークの背中をたたく紅蓮。そしてさらに付け
加える。
 「そうそう、変な怪我なんかしねーよーにな。シーラやシェリ
ル、アリサさんを心配させるよーなことはすんなよ?特にシーラ
は。」
 試合が終わったときにからかわれた仕返しのつもりなのだろう
か、今度は紅蓮がデュークをからかうように言う。
 「ばっ、馬鹿なこと言うんじゃねぇ!お、お前こそ、あの三人
…特にティナを変に心配させねーよーにな!」
 動揺しながらも、なんとか言い返すデューク。が、紅蓮はこれ
をさらりと受け流す。
 「ああ、俺は、俺の好きなティナに心配かけるよーなことはし
ねぇつもりだから。」
 「………。」
 「おまえも、ちっとは気付くようにしろよ。んでもって、ちゃ
んと自分の気持ちにも気付いとけ。ま、今日は全ての力を出せる
ようないい日にしようや。な?デューク!」
 「勝者レオン選手!」
 いつのまにか勝負が決まり、デュークの言う通りレオンが勝っ
た。
 「へぇ。ほんとだ。レオンか…。さて、どんだけの力量か楽し
みだ。」
 心底楽しそうにしている紅蓮。…が、この時の紅蓮の思いもむ
なしく、悲劇の時は刻一刻と迫りつつあった…。

 「それでは、一回戦第五試合始め!」
 闘技場の真ん中で対峙する二人。アルザは腕をまくりながら気
合いを入れ、リサも同様にかまえる。
 「ほな、いっくでぇ!」
 魔法の詠唱をしながら突っ込む。リサはそれに気付かず、待ち
の姿勢に入る。一気に間合いを詰め、仕掛ける体制に入るアルザ。
それと同時に攻撃を仕掛けるリサ。若干リサの手が速かったが…
 「ウインド・ウイング!」
 とっさにアルザが魔法を解き放つ。さらにスピードを上げたア
ルザはリサの視界から消え去り、リサの拳は対象がいなくった空
間を空しく空振りする。
 「もろたで!」
 後ろにまわったアルザは、リサに足払いをかけると腕をとって
極める。悲痛な悲鳴を上げるリサの腕。
 「リサ!うちの勝ちや。素直に負けを認めや!」
 アルザはリサにギブアップをすすめる。しかし、リサには諦め
の色は見えない。
 「いやだね!こんぐらいで…!」
 火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか、リサは腕を極めている
アルザを強引に持ち上げると無理矢理地面にたたきつける。
 「あたた…。そうこなくっちゃおもろないわ!」
 「いくよ!」
 ガッ!
 二人の拳がぶつかり合う。その後も押しつ押されつの攻防戦が
続き、二人とも限界が近づきつつあった。
 「ひいひい。リサもやるなぁ。」
 「はあはあ…。アルザこそ。でも座り込んでちゃ勝てないよ!」
 座り込んでいるアルザに渇を入れるリサ。アルザもその言葉に
うなづく。
 「ふぅ〜、そうやな。ほな、これで終わりや!」
 器用なことに、その状態から突進するアルザ。リサはいきなり
の事と、類を見ないその攻撃に対応しきれない。
 ドゴォッ!
 鈍い音とともに、綺麗にリサのみぞおちにアルザの突きが決ま
る。
 「…次は…負けないよ…」
 そのままリサは気を失い、
 「リサ選手気絶により、勝者アルザ選手!」
 アナウンスがアルザの勝ちを宣言する。そして、リサはそのま
まアルザに寄りかかるように倒れ込んだ。
 「うあ〜。リサって結構重いなあ。お〜い!誰か担架持ってき
てえな!」
 アルザの言葉を待っていたかの様に担架を持った医療班が出て
くる。
 「ほな、まかせたで。リサ、またやろな!」
 運ばれていくリサに軽く手を振ったアルザは、くるりと背を向
けると元気よく走って戻っていった。

 そして、第六試合。デュークの出番が来た。
 「さて、軽くいくか。」
 闘技場で向き合うのは、アッシュ。そこそこに強い相手だが、
すでに二度ほど負かしている。もはや、デュークの敵ではない。
 「Why?なぜデュークなんデスか?Me、ナニか悪いコトしたんデ
スか〜!」
 一応出てきたものの、相手は自分を余裕で負かした相手だ。いく
ら何でも分が悪すぎる。
 「おい!さっさと始めようぜ!」
 いらいらし始めてきたデューク。その姿を見て、覚悟したんだろ
う。
 「も、もうヤケデス!HAAAAAA!」
 満身の力を込め、アッシュは剣を振る。
 「やっとやる気出したか!」
 アッシュの剣に対し、垂直に交わるように剣を振るうデューク。
 ガキィィン…
 折れた剣が宙を舞い、地面に突き刺さる。
 「……。」
 そこには、剣を鞘におさめようとするデュークと、折れた剣を持
ちながら肩を落としたアッシュの姿があった。
 「アッシュ選手戦闘不能と見なし、デューク選手の勝利!」

 そして、第七、第八試合が終わり二回戦へとコマを進めた八人が
そろった。その中には、あのさくら亭に来た男も混じっている。魔
法は紅蓮達と同じ、勝ちの宣言の時『イビル』という名が分かった
だけだった。

 後書き

 ども、ともです。第二話、『〜一回戦〜』やっと終わりました。
(…安直な題名やなぁ。)とりあえず、今の予定では四つに分かれ
ることになってます。あくまで予定ですが(^^;;
怪しい男、名前と魔法系統だけ明かします。イビルが言った『あい
つ』と『ヤツ』は最後のあたりで明かしますので、エタメロが分か
る人は考えてみて下さい♪(各五点)(賞品とかはありません。悪
しからず…)
 んでわまた。ともでした☆

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