中央改札 悠久鉄道 交響曲

「二回戦」 とも
NO-3〜二回戦〜

 一回戦終了後、すぐさま二回戦が開始された。二回戦もアル
ベルトの試合から始まる。
 「二回戦第一試合、始め!」
 相変わらず、燃えに燃えているアルベルト。一方、対戦相手
はその異様ともいえるアルベルトの雰囲気にただたじろぐだけ
だった。
 「どうした!」
 アルベルトはいつになっても戦おうとしない相手に、槍を突
きつけて威嚇する。
 「…くっ。やってやろうじゃねぇか。後悔するなよ。」
 相手の男は得物の曲刀をするりと抜くと、突進しながらアル
ベルトに斬りかかる。
 ビュン!カキィン!
 アルベルトは男の攻撃をギリギリで受け止め、
 ドゴォ!
 「ぐふっ…。」
 がら空きになった男の腹に蹴りを入れ吹っ飛ばす。
 「オラオラオラァ!」
 ガギィ!
 そして、槍を回転させて遠心力をつけ、男の曲刀をたたき壊
した。
 「ちきしょう…。ギブアップだ。俺の負けだよ。」
 「相手の選手のギブアップ宣言により、アルベルト選手の勝
利!」
 男は自分の負けを素直に宣言すると、ゆっくりと選手控え室
に向かって歩いて行く。そして、勝ったアルベルトはというと…
 「アリサさん!勝ちましたよ!」
 とVサインをしていた。そして、アリサも
 「すごいわ。おめでとう、アルベルトさん。」
 と素直に喜んでいる。
 「ってと。次は俺か。」
 軽くのびをすると、選手控え室へと向かおうとする。
 「それじゃ、気を付けて下さいね。」
 ティナの言葉で送り出された紅蓮は、片手をあげてそれに答
えながら混雑するギャラリーの中へと消えた。

 「二回戦第二試合、始め!」
 紅蓮と向き合うのはレオン。デュークが言うだけあってかま
えにスキがない。
 「噂は聞いていますよ。『黒き魔性』を潰したそうで。…楽
しみですね。」
 ヒュン!
 言葉が終わると同時に斬りかかるレオン。紅蓮はそれを難な
くよける。が、レオンは片刃の剣の刃を返さずに二撃目を打ち
込み、紅蓮はその速さに意表をつかれて攻撃を受けてしまう。
 「いくら片刃の剣だからといって、必ずしも刃を返すわけで
はありませんよ…。それに、あのおかしな刀は使わないのです
か?あの、魔法を放つ刀を…。」
 レオンは笑みを浮かべながら言う。
 「『おかしな刀』ねぇ。言ってくれンじゃん。さっきの一撃
もきいたし。ンじゃ、その一撃に敬意を表して『紫電』で相手
すっか。」
 『右に集うは猛き神々の怒り
  我が意のままに具現化せよ…』
 紅蓮の言葉に応じ、薄紫色の刃を持つ刀が現れる。
 「ほう…。魔法の属性で刃の色が変わるんですね。」
 レオンは剣をかまえつつも紅蓮の刀を見定める。
 「へぇ、さすが。リカルドさんと張り合ってるだけあんじゃ
ん。こいつぁ…おもしれぇ!」
 ヒュイン!カキィン!
 間合いを詰め、真一文字に斬りかかる紅蓮。そして、それを
流れるような動作でレオンは受け流す。
 「くっ……。」
 『蒼き風よ…鋭き刃となりて』
 レオンが魔法の詠唱にはいる。紅蓮もその魔法が分かるや否
や詠唱にはいる。
 『左に集うは蒼き風の刃…力を示せ』
 『彼の者に襲いかかれ』
 『『ニードル・スクリーム!』』
 ビュオオォォ!
 同時に魔法を解き放つ二人。そして、二つの突風が闘技場の
中央でぶつかり合い、砂埃をあげて消えた。
 「あっれ〜?レオンのニードル・スクリーム吸収するぐらい
の魔力加えたのに…ちぇっ、以外と…!」
 ヒュン!
 砂埃がおさまらない中、独り言を言う紅蓮。その言葉をさえ
ぎるかの様に、レオンの剣が紅蓮の左腕をとらえる。
 「いけませんね。試合の途中でしょう?」
 「ちっ。砂埃に紛れて攻撃たぁ…ずいぶん卑怯だな。」
 血を乱暴に拭い、腕にバンダナを巻きながら紅蓮は言い放つ。
 「これも一つの戦い方ですよ。それに…一回戦であなたは刀
から風を発したでしょう。私も同じ様なことが出来るんですよ。」
 そう言ったレオンはいったん剣をかまえ直し、間合いを取る
と…
 「ハッ!」
 気合いとともに剣をふった。すると切っ先から空気を切り裂
くカマイタチが紅蓮に襲いかかる。
 オオォォ…!
 風はうなりをあげながら襲いかかってくる。紅蓮は一つ舌打
ちをすると、後ろに飛びながら詠唱を始める。
 『左に集うは金色の旋風、力を示せ
 ヴォーテックス!』
 ゴオォォン!
 竜巻がまき起こり、カマイタチを飲み込みながら消えていく。
 ギィン!
 自分の出したカマイタチが消滅すると同時に紅蓮に斬りかか
るレオン。が、紅蓮は動じない。
 「ふん。あんまり俺に接近しねぇほうがいいぜ、ブレイク!」
 パリパリ…バリバリバリィ!
 紅蓮の手の紫電が一瞬放電したかと思うとレオンを包み込む
ように電撃が駆けめぐる。
 「ぐ、ぐああぁぁ!ぐぅっ、ま…まだ、だ…?」
 電撃をうけてもなお立ち上がろうとするレオン。が、一度は
立ち上がったものの、急に力無く座り込む。
 「……?な、なぜだ?からだが…。」
 「…おそらく、さっきの電撃のせいだろ。無理すんな。下手
すりゃほんとに動けなくなっぞ。」
 残念そうにため息をつくと、紅蓮は話を続ける。
 「レオン、お前体質的に電撃に弱かったみてぇだな。あ〜あ、
こんなことなら紫電使わなけりゃよかったな…。おもしろかっ
たのに。」
 ヒュン、と紫電が消える。
 「…私の…負けです。」
 「レオン選手ギブアップ。勝者紅蓮選手!」
 アナウンスが響き、レオンを運ぶ担架が出てきた。
 「レオン。」
 「なんです?」
 紅蓮は運ばれていくレオンに声をかけた。
 「また…やろうぜ。」
 「いいですよ。その、紫電抜きでね。」
 紅蓮に、レオンは笑いかける。
 「それに、私もまだまだ未熟のようです。少し修行でもしよ
うと思います。では、また…。」

 紅蓮がコロシアムの選手控え室へ戻ると、アルザ達が話して
いた。
 「あ、紅蓮や。ごくろーさん。おもろい試合やったな。」
 「あれ?…あ、そっか。次はアルザとデュークの試合だったっ
け。」
 「『だったっけ』って…紅蓮さん、もしかして忘れてたんで
すか?」
 ウェンディはあきれて笑い始める。
 「ふふふっ。紅蓮ってば、案外ぬけてんのねぇ。」
 「…ヴァナ。」
 いつものティナからは想像できないような…まったく正反対
の口調に、紅蓮はため息とともにヴァナの名を出す。
 「およ、久しぶりやなぁ。なんや、最近出てけぇへんやない
か。」
 ティナ…今はヴァナの肩をアルザが叩く。
 「そーいや、最近アルザとあたしはあんまり話してなかった
わね。ティナとは話してたけど。」
 そう言いながら笑うヴァナ。
 「なんかしゃべりたそうな顔してんなぁ。そないにうちとしゃ
べってへんか?」
 「そうね。ウェンディとは一緒に住んでるからしゃべること
あるし、紅蓮とはさくら亭でよく会うけど。アルザとは会う回
数が少ないしね〜。」
 なんてコトを話しているとアナウンスが響いてきた。
 「これより二回戦第三試合を…」
 「あ〜らら。おしゃべりはまた今度ね。じゃ、かんばってね〜♪」
 名残惜しそうに手をヒラヒラと振るヴァナ。
 「うん。ほな、行ってくるわ!」

 「二回戦第三試合、始め!」
 闘技場の中央で対峙するデュークとアルザ。デュークは愛用
の剣をかまえ、アルザは素手でファイティングポーズをとる。
 「?…アルザ、素手だと怪我するぜ!」
 「これでええんや。うちはこっちの方が性にあっとるさかい。
…いっくでぇ!」
 「へっ。後悔すんなよ!」
 言ってデュークは、アルザに向かって剣を振り下ろす。
 「遅いで!」
 ガスッ…ドゴォ!
 アルザはよけようとせず、手の甲で剣の腹を打つ。さらに、
それで一瞬バランスを崩したデュークに間髪入れず蹴りをたた
き込んだ。
 「どうや?うちの攻撃は。」
 得意げに仁王立ちになるアルザ。が、デュークは臆した様子
もなく立ち上がった。
 「ててて…。そうゆう戦い方なら素手の方がいいかもな。け
ど、なぎ払う様な攻撃にゃどうすんだ?こればっかりは素手じゃ
あ無理だぞ?」
 「…あ、そうやった。んじゃ、これ使わせてもらうで。」
 『大いなる大地よ、全てを支える汝の力
 我が両の手に宿し、力を示せ。
 アース・シールド』
 アルザの言葉に応じ、両腕が鈍く輝き出す。
 「ちょ、ちょい待ち。なんか違くないか?その詠唱。」
 今はエンフィールド辺りの魔法を使うデュークだが、過去に
旅をしていたし、何よりも紅蓮達と共に戦ったことがある。ア
ルザの詠唱が一部分違うことに気付いたようだ。
 「そうや。なんたってこれは紅蓮直伝のアレンジヴァージョ
ンやさかい。うちはどーも攻撃魔法とかが苦手でなぁ。どっち
かっていうと精霊の方が得意なんや。そやから、紅蓮のアレン
ジしたこれ使わせてもろうとるんや。ほな、威力見せたる!」
 ガギィ!
 「………うそ。」
 アルザの一撃でデュークの肩当てが壊れたのだ。剣ほどの強
度はなかったにせよ、幾度となくモンスターの攻撃に耐えてき
た代物だ。そう簡単には壊れないもの…だった。
 「なんや?うちの一撃で壊れてしもた。駄目やで?そないな
弱っちい欠陥品。」
 「け、欠陥品……なぁ、アルザ。それって…誰でも使えるわ
け?」
 肩当てを壊されたデュークが、力無くたずねる。
 「んなもん、知らへんわ。でも、紅蓮が『精霊と相性が良け
れば出来る』言うてたなぁ。」
 笑いながら言うアルザ。そして、ちょうどその近くに紅蓮達
がいた。その会話は聞こえていた上、周りの観客の視線が紅蓮
に突き刺さる。さらに、その場にシェリルとトリーシャも居合
わせていたのだ。当然のように、目的は違うにせよ二人はすぐ
さま興味を示す。

 「紅蓮さんってそんなことまで出来るんですか?」
 「すっご〜い!効果の集中なんて聞いたことないよ、ボク。」
 「出来るのは合成、具現化とそれ含めた三種類だけだけどね。
それに、これ開発すんのにすっごい手間かかるんだぜ?それも
あって、ここの魔法はまだほとんどやってないんだ。」
 「じゃあさ、ここの魔法で成功したらボクにも教えて?ボク
さ、学校で精霊との相性がいいから、精霊魔法中心に覚えると
いいって言われたんだ。」
 うれしそうに言うトリーシャ。
 「本当?トリーシャちゃん。」
 「うん。そう言えば、マリアも同じようなこと言われてたっ
け。『マリア、そんな地味なのいや!』って言ってたけど。」
 紅蓮はマリアの名を聞くと、少し難しい顔をした。
 「でも、具現化は物質化させるだけだけど、効果の集中は魔
法の効果そのものをいじるからな。その魔法自体を使う本人が
極めなきゃいけないんだ。アルザだって、ああ見えてもかなり
練習したんだぞ。」
 しかし、トリーシャはさらにやる気を出したように
 「大丈夫。ボク頑張るから!」
 と意気込む。
 「トリーシャちゃん…。」
 「トリーシャ…。」
 密かに感動する二人。が、次の言葉がそれをものの見事に打
ち砕いた。
 「イシュタル・ブレスで出来れば、怒られて叩かれても痛く
なくなるし♪」
 「……。」
 「あれ?どうしたの?二人とも。」
 「いや…。まあ、仕事とか忙しいからその内に、な。(アル
ザ〜。余計なこと言うなよぉ〜。)」
 紅蓮は過去のいやな思い出を思い出しつつ、心の中でアルザ
に文句を言う紅蓮だった。

 ガキィン!
 アルザは紅蓮の心の叫びや視線に気付くこともなく、デュー
クとの戦いを楽しんでいた。
 「あっはは〜♪どした?そんなんじゃうちは倒せへんで!」
 「っきしょー!ぐ〜れ〜ん〜。やっかいなモン教えやがって〜。」
 デュークがぼやくのも無理はない。剣を振り下ろそうが横な
ぎに振るおうが全てアルザに止められてしまうのだ。見た目で
分かるのは、切れはしないが多少の痛みを我慢していることが
分かる程度だ。
 「(ちっ、仕方ない。)」
 デュークはアルザに気付かれないように詠唱を始める。
 「どしたんや?デューク。もう疲れたんか?」
 「…まさか。そろそろ決着つけよーぜ。アルザ。」
 デュークは両手で剣をしっかりと握りしめると、ゆっくりと
かまえ直す。
 「ええで!」
 アルザもそれに応じる。
 「うおぉぉ!」
 デュークは渾身の力を込めて剣を振り下ろす。アルザも片腕
では弾かれると判断したのか両手で受け止める。
 ガッ…!
 「もろうた!」
 がっちりと受け止めたアルザは、そのまま蹴りを放とうとす
る。
 「…こっちのせりふだ。ヴォーテックス!」
 アルザが蹴りを放つより速くデュークが魔法を解き放つ。
 ゴオオォォ!
 「!」
 アルザの足下から竜巻に近い風が巻き起こる。アルザはその
風に足を取られ、デュークはそのスキを逃さず後ろをとる。
 トスッ…バタッ
 「あっぶね〜。両腕のみの効果でよかった…。」
 一息つくデュークの下には気絶したアルザの姿があった。
 「アルザ選手気絶により、デューク選手の勝利!」
 デュークの勝利が告げられると同時に、アルザを運ぶための
担架がでて……。
 ガバッ!
 来るとき、アルザが飛び起きた。
 「おろ?なんや…うち、気絶しとったんか?」
 きょろきょろと辺りを見回し、自分を見て驚くデュークや担
架を持った係りの自警団を見、アルザは自分が負けたことを悟った。
 「うち、負けたみたいやな…。ま、ほんならそれでええわ。」
 そういった後、スタスタと選手控え室へ歩いていく。出入り
口に近くなったとき、くるりとデュークに向かって振り返ると、
 「デューク!うちを負かしたんや。せめて決勝戦ぐらいには
出るんやで!せやないと、うち、しょうちせぇへんからな!」
 と、ビシッ!と指を指しながら馬鹿デカイ声で叫ぶ。そして、
再び選手控え室へと歩いていった。
 そして、デューク、係りの自警団員はアルザの行動の一部始
終をポカンと口を開けながら呆然と見るだけだった。

 「二回戦第四試合、始め!」
 第四試合…準決勝に進む最後の一人を決める試合が始まった。
 「死ねぇぇ!」
 開始直後、異様なくらいの大男がいきなりイビルに剣を振り
下ろす。
 ドゴォ!
 地面にくぼみが出来るほどの威力を見せつけられ、誰もが殺
された、と思ったとき。イビルは大男の背後に立ち、ブツブツ
と詠唱をしていた。
 「貴様ごとき、これで十分だ…。」
 『ライニング・ジャベリン』
 イビルの指先から稲妻がほとばしり、大男に直撃する。
 バリバリバリィ…
 「グワアァアァ!」
 電撃で意識を失ったのか、大男はつっかえ棒がとれた人形の
ように倒れ込む。
 「イ、イビル選手の勝利です…」
 イビルの勝利が告げられ、担架を持った自警団員があわてて
出てくる。大男は、服は焼けこげ、体は電撃のショックで小刻
みにけいれんしていた。そして、自警団員の一人がイビルに注
意をしようとしたとき、すでにイビルの姿はどこにもなかった。

 後書き

 ども、ともです。悩みに悩んで出来が思いっきり遅れてしま
いました。しかも、あんまり出来が良くないかも…(^^;
前回、「イビル」と名前を出したキャラ。今回はちょいと戦っ
たとこを書いてみましたが…なんか中途半端でした。もうちょ
っと精進したいと思います。
 では、また。ともでした。

中央改札 悠久鉄道 交響曲