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「NO-2 〜報復〜」 とも  (MAIL)
 NO-2 〜報復(?)〜

 「っと…。あれ?」
 教会に着いた紅蓮は、入り口でウロウロしているティナを見つけた。
時間に遅れていないはずなのに、と思いながら近づいていく。
 「悪ぃ、待たしちまったか?」
 「…!」
 声をかけながら近づくと、ティナはハッとしたような顔をして振り向く。
 「信じてたのに…。紅蓮さん…の…!」
 虚ろな目のティナ。紅蓮にゆっくりと近づくと…
 パシィ!
 いきなり平手打ちをする。紅蓮が頬をおさえながらティナを見ると、
その目には涙があふれんばかりにたまっていた。次の瞬間、雰囲気が
変わってヴァナが出てくる。
 『我、闇の眷属の血を受け継ぐ者なり…
  一族の名、ハーヴェルの名のもと、我が名ヴァナの名のもとに…
  我が内に封じし力、今ここに解放せよ…!』
 ヴァナの身のまわりに禍々しい闇の魔力の波動が集い始める。自分の
中に流れる、ヴァンパイアの力を解放したのだ。そして怒気の入り交じっ
た目で睨んだヴァナの口から、今にも消え入りそうな声が響く。
 「ぐ…れ…ん…のぉ!」
 最後の方には怒りのこもった声になったヴァナは、
 「バカァッッッ!」
 ゲシィィィ!
 と、一言叫ぶと同時に、グーで思いっきり紅蓮をブン殴る。直後、吹っ
飛んでいる紅蓮にかまわず詠唱を始める。
 『白き滅びを誘う閃光よ
  瀧の如く降り注ぎて、彼の者を打ち滅ぼせ!
  ヴァニシング・レイン!』
 「げげっ!そ、それは…!」
 おおかた、紅蓮が教えたアレンジものだろう。通常、閃光が敵を撃ち
抜くはずが、紅蓮の真上から豪雨のように降り注ぐ。
 「のおおぉぉぉぉ!」
 ドガガガガガッ!
 「…な、なんで…?」
 プスプスと服から煙が出ている紅蓮は、地面に倒れながら力無くつぶ
やく。そしてヴァナは、泣きながら何処かへと走り去っていった。
 「あら〜?紅蓮さん、どうしたんですか〜?そんなとこで寝てると、
風邪引いちゃいますよ〜?」
 ティナが走り去った直後、大きな音に気付いたセリーヌが現れる。相
変わらずののんびりした口調で紅蓮に話しかけるが、紅蓮はブツブツと
何事かつぶやき続けている。
 「あらあら。こぉ〜んなに大きい穴開いちゃってますね〜。…どうし
ましょう〜?あ、そうだ〜。こんな時は神父さんに相談してみましょう〜。」
 セリーヌは紅蓮の傍らに開いている大きな穴を見たあと、紅蓮のこと
を忘れて孤児院の中へと歩いていった。

 同じ頃…紅蓮がとんでもないことになっているとは思いもしない朋樹
は、鼻歌混じりに帰路についていた。
 カチャン…
 「たっだいま〜。」
 いつものように声をかけ、二階の部屋へあがろうとすると…トリーシャ、
ディアーナにシェリルが立っていた。そしてその目は、なぜか冷たい眼
差しである。朋樹は単純に「サボりのせいだろう」と思い、
 「ゴメン、今度からはなるべく少なくするから。いつものことじゃな
い。どうしたの…?」
 と軽く言い訳をする。と…!
 パァン!
 その言葉を聞いた途端、ディアーナとシェリルが二人同時に平手打ち
をしてくる。
 「朋樹くんって、そんな性格だったんですか?!」
 「学校では少し授業サボってても、その辺はしっかりしてると思って
いたんですけど…。」
 睨みながら言う二人。しかし、朋樹はなにが起きたのか、なぜこうなっ
たのか、ということがよく理解できていない。なにより、好きな娘に平
手打ちされたということで気が動転してもいるせいもあるだろうが…。
そして、同様に睨みを利かせながらジリジリとにじり寄ってくるトリー
シャ。その手には、最近愛用になっているチョップ棒が握られている。
 「ちょ、ちょっ、タイム!タ〜イム!」
 「問答無用!秘技!トリーシャ連撃コンボ!」
 その勢いに圧倒されながらも彼女を抑えようとする朋樹の言葉をも聞
かず、電光石火の速さで襲いかかるトリーシャ。
 ゲシィ!
 最初に右斜め四十五度に入れられ、意識を失いかける朋樹。
 ガスッ!
 次に縦回転の遠心力を利用し、突き上げるようなチョップを繰り出し
ながら跳躍する。そして…!
 「朋樹くんの…バカァ!」
 ドゴッ…ドガガガッ!
 猛烈な怒鳴り声と共に、目にも止まらぬ速さで全体重をのせた一撃、
さらに乱撃を始める。
 「ト、トリーシャちゃん、もうそのくらいでいいんじゃない?意識無
いわよ、これじゃあ。」
 さすがに悪いと思ってきたシェリルがトリーシャを止めたとき、朋樹
の頭には無数のタンコブが出来ていた。意識は、すでに無きに等しい。
ピクピクとケイレンすらしていた。
 「いいの!いこッ!ディアーナさん、シェリル。」
 「はいっ!」
 「わ、私は用事があるから帰るね…。」
 プリプリと怒りながらトリーシャとディアーナはさくら亭の方に、シェ
リルはあまり長くいたくなかったのか、そそくさと寮にとそれぞれ向かった。

 「パティちゃん、おかわり!」
 「あ、ボクも!」
 「あたしも!」
 三人そろって同じものを注文する…。こんな状態がさくら亭の開店時
からえんえんと続いている。さらに近づきがたいオーラを発しており、
さすがのパティでも文句一つ言えない状態なのだ。ちなみに、紅蓮と朋
樹はと言うと…
 「……………。」
 「………………。」
 隅〜〜〜っこの方でダークな空間を作っていた。しかも、ティナ達か
ら一番遠い席だ。さっきのことを聞こうと近づいただけで、ティナに外
まで吹っ飛ばされてしまったためだ。紅蓮に至っては二度目なので、朋
樹以上に落ち込んでいる。
 「…アレフくん、あそこ、何かあったんですか?」
 「さあな。ずっとあの調子だよ。大方、二人が何かしでかしたんだろ
うよ?」
 ピクッ
 何気なく話すクリスとアレフ。そんな会話の中の言葉に反応する三人。
 「よし、俺があの三人の傷を癒してあげようかな♪」
 「や、やめときなよ。そっとして置いてあげた方が…」
 しかし、クリスの引き留めもむなしく、アレフは三人の方に近づいて
いく。そんな中、ティナ達はいったん食事をやめ、何かブツブツと話し
ていた。
 「なあ、三人とも。そんな顔してると…」
 『タイムズ・ウィスパー』
 近づいたアレフに、感情を込めずに魔法を放つディアーナ。
 「必殺…トリーシャステルスチョップ。(×三)」
 ゲシィ!ゲシゲシィッッッ!
 いつの間にか、クロノス・ハートを唱えていたらしいトリーシャは、
目にも止まらぬ速さでアレフに近づくと三連撃を喰らわす。アレフの体
は、開けてあったドアから外に放り出され、
 「…滅ぼせ。ヴァニシング・レイン。」
 ドゴゴゴッッッ!
 「ををををおお?!」
 間髪入れずにティナが魔法を放った。外では、いまだ魔法の降り注ぐ
音とアレフの叫び声が聞こえている。
 「………。」
 一言ともしゃべらず席に着いた三人は、また黙々と食事(?)と続け
た。さらに気まずい空気が辺りを包む。クリスは黙ってその一部始終を
見、紅蓮と朋樹の話題をふるのはよそう、と心に決めたのだった。パティ
も、アレフの二の舞になるのはごめん、と黙りを決め込んでいた。


 後書き

 ども、ともです。今回は紅蓮と朋樹がひどい目にあっちゃう話…って、
アレフもあってる〜!…アレフに恨みはないはずなんですがねぇ…。(笑)

 次は完結。果たして、由紀達は「いつものヤツ」を見ることが出来る
のだろうか?紅蓮と朋樹は一体どうなってしまうのか?次をお楽しみに。

 と、ゆーわけで。
 でわ、また。ともでした。

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