中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「NO-3 〜事の元凶〜」 とも  (MAIL)
NO-3 〜事の元凶〜

 カランカラン…
 「こんにちわ。…ってあら?」
 さくら亭に入ってきたはいいが、異様な雰囲気に立ちつくすシーラ達三人。
 「あら?シ、シーラ!いつ戻ってきたのよ?!」
 「お帰りなさい、シーラさん。あれ?お友達も一緒なんですね。」
 気付いたパティとクリスがすぐに懐かしそうに話しかける。話題が欲
しかったのだ。この雰囲気を忘れられそうな話題が。このときのシーラ
は、二人の目には希望に光に見えたことだろう。
 「ええ。本当は、まだここに来るつもりじゃなかったの。でも、友達の…」
 と、後ろにいる由紀とメアを見る。
 「メア・ヴォルンです。よろしくお願いします。」
 「橘由紀よ。よろしくね♪」
 深々と頭を下げるメアと、陽気に自己紹介する由紀。そんな中、クリ
スは素朴な疑問を持った。
 「え…と、由紀さん?ライシアンの人達ってみんな「橘」って姓なん
ですか?」
 すると、由紀は不思議そうな顔をしてこう言った。
 「え?うちの家族以外ではあんまり聞いたことないけど?まあ、珍し
い姓かもね。」
 「と…言うことは…。由紀さん、いきなりですいませんが、お姉さん
はいますか?」
 「え?由羅って姉貴がいるけど…!まさか!もしかして由羅ネェがこ
こに?!ねぇねぇ、酒好きで美少年好き、んでもっていっつも酒瓶持ち
歩いてない?あげくのはてに…」
 「ええ、酔ってるかどうかわかんないくらいのハイテンションな人です。」
 由紀の、由羅に対する嫌がらせとしか思えないような言葉を締めくく
るように、クリスは力無くつぶやく。
 「由羅ネェ、ここにいたのね…。あんた、由羅ネェの標的にされてる
でしょ。苦労、分かるわよ〜。あたしなんか、由羅ネェのせいで同じ趣
味してるように見られてたんだから。」
 「苦労してたんですね…。」
 同一人物で苦労しているせいか、やけに気の合う二人。と、急に由紀
がキョロキョロと周りを見回す。
 「そういえば、紅蓮ってヤツは?いないの?」
 「由紀!失礼でしょ!あの、紅蓮さんいらっしゃいます?先ほど、シー
ラとの待ち合わせ場所まで案内してくれたんです。たしか、朋樹さんと
言う方も一緒だったんですけど…。」
 由紀の言動を注意した後、礼儀正しい口調で尋ねるメア。
 「ああ、紅蓮と朋樹ね。そこでテーブルに突っ伏してるわ。」
 隅っこの方で暗くなっている二人を指さすパティ。その向こう側には、
さっきと同じように黙々と食事を続ける三人の姿も見える。
 「なんかあったの?」
 「さあ?単なる痴話喧嘩でしょ。」
 由紀の問いに、素っ気なく答えるパティ。
 「でも、それじゃあ困るのよ…」
 「お嬢さん方、どこから来たんですか?」
 由紀の言葉をさえぎり、急にアレフがわいて出た。しかし、ティナに
やられたところが二〜三ヶ所焦げている。
 「あ、悪いけどあたし、彼氏いるから。そこの二人もいるから声かけ
ても無駄よ。」
 べし。
 何事もなかったようにアレフのことをどけると、由紀は話を続ける。
 「シーラ連れてくれば、「いつものヤツ」やってくれるって言ってた
のよ。これじゃあ、明日帰らなきゃなんないのに…。見れないじゃない。」
 「そんなこと言われてもねぇ…。原因が分からなきゃ解決のしようが…」
 由紀とパティが頭を抱えているとき…

 カランカラン
 「パティちゃ〜ん!ねぇねぇ、聞いて聞いて〜!」
 ローラが元気よく入ってきた。また、何か話題でも仕入れてきたのだ
ろうか…。
 「あのね、なんと!あの紅蓮さんと朋樹くんがナンパされてたのよ!」
 ヒュン!
 その言葉を聞いた途端。紅蓮と朋樹が凄まじい素早さでローラの肩を
つかむ。
 「ローラ?その話、詳しく聞きたいんだけど…?」
 二人にしては珍しく、顔はにこやかに笑っていても目は冷たい輝きを
発している。逃げようにも大の男二人に肩をつかまれては…特に相手は
紅蓮と朋樹。逃げると非常にやばい。
 「え?ええっと…。珍しく朋樹くんが授業サボってたから、何してる
んだろ、って思ったの。そしたら洋品店行って何か買い物してて。で、
公園の南口で二人の女の子に声かけられてて。紅蓮さんと朋樹くんの大
きな声聞こえたあとに何かいろいろ話しながら雑貨店に入っていったで
しょ。だから、逆ナンパされてそれに応じたのかなって…。」
 一瞬の沈黙のあと、紅蓮が何か言おうとするが由紀がそれを止める。
そしてローラに話しかけ始めた。
 「ローラちゃんって言ったわよね?あたし達は道をたずねただけ。ま
あ、いたずら心で紅蓮にモーションかけてみたけど、ぜんっぜんぐらつ
いてもくれなかったもの。よほどティナって娘が好きなのね。朋樹も全
然関心持ってくれなかったし。こいつはこいつで、好きな娘いるのね。
噂好きもいいけど、あんまり首突っ込みすぎると変なことに巻き込まれ
るわよ。気を付けなさい、ね?」
 ローラのおでこをチョン、と指でつつく。
 「(誰だろ?)はぁーい。あ、でも朋樹くんの好きな娘ってだれ?あ〜!
もしかして…!」
 「ローラ?それ以上言うと、もう食べさせてあげないよ。あれ。」
 朋樹の言葉に、ローラは思い切り首を横にふる。
 「やだやだ〜!…分かりました。もう、その事にはふれません。」
 「由紀も話さないコト。メアにシーラもね。」
 朋樹の雰囲気に気おされしたのか、無言でうなづく三人。
 「やれやれ、やっと問題解決、ね。ティナ達もローラの言ったこと、
真に受けたんでしょ?」
 パティの言葉に言い返すコトが出来ない三人。
 「(まあ、少なくとも三人は僕に好意を持ってくれてるってコトか…。
それだけでも良しとするかな…。)」
 他に聞こえないようにつぶやく朋樹。その顔には安堵とはにかみの表
情が入り交じっていた。

 「さ〜って!問題も解決したことだし!紅蓮!「いつものヤツ」って
の景気よくやってちょうだい!」
 数分後。それぞれの誤解も解けた。(シェリルには明日、学校で話す
ことになった。)そして、ローラの処置は『三日間さくら亭での飲食一
切禁止』で片が付き、由紀のリクエストが出る。
 「へぇへぇ。ま、俺が言い出したコトだしな。んじゃ、シーラの一時
の帰郷。新しい友人を記念して!」
 『右に集うは内に眠りし光
  左に集うは生命の源の光
  集いし光よ、散りて光の雪となれ!』
 紅蓮の声と共に、光の雪が舞う。今日のは、いつもよりも時間を長く
したヴァージョンだ。それを終えると、すぐに通常業務に戻る紅蓮。
 「へぇ。あんた、やるじゃない。ローレンシュタインでも見たことな
いわよ。どうやったの?」
 「私も知りたいですね。こんな綺麗なの、初めて見ましたよ。」
 由紀は紅蓮の胸を軽く叩く。メアも見とれながら感嘆の声を上げた。
 「俺が知ってる中で、これ出来ンのは俺とともだけだ。間違ってもや
ろうとすんな。死んでも知らねぇぞ。」
 テキパキと仕事をしながら答える紅蓮。
 「まあ、またエンフィールド来たときはここに来なよ。シーラがいな
くても、これぐれぇならやってやるからよ。」
 ケラケラと笑う紅蓮。と、パティの声が響いた。
 「紅蓮〜!これ、七番テーブルにお願いね!」
 「ああ!今行く!じゃ、ごゆっくり!」
 紅蓮はそういい残すと、忙しそうに走って行く。
 「面白くていい街ね、ここは…。」
 「ええ、私の自慢の故郷だもの。」
 「あたし、卒業したら由羅ネェのとこに世話になろっかな。ね、シー
ラ。また来ない?エンフィールドに、さ。」
 今だ続く光の雪に目を移した三人は、その雰囲気の中…何気ない会話
を交わす。
 「シーラが飛び級受けてまで頑張ってる気持ち、なんとなく分かるわ。
あ、私たちも飛び級だったわね。」
 「そうね…。でも、これじゃ、あっちに帰りたくなくなるわけだわ。
でもシーラ。ローレンシュタインでやることやってから、エンフィール
ドに帰るのよ!それまで、あたし達は何が何でも頑張るんだからね!」
 「由紀…、メア…。ありがとう…!」

 その後…。シーラ達は少々名残惜しそうにローレンシュタインへと戻っ
ていった。「三人そろってまた遊びに来るから」と言い残して。しかし。
シーラ達の方は片が付いたものの、エンフィールド…特に朋樹はまだ終
わってなかった。

 「ねぇ、ねぇってば。」
 「何?トリーシャ。今授業中だよ?もう少し静かに…」
 「朋樹くんの好きな娘って誰?いい加減教えてよ。」
 「あのさ…。それディアーナにも昨日聞かれたんだけど…。そんなに
知りたいの?」
 「うん。」
 キッパリと言うトリーシャに脱力する朋樹。
 「…ダメ。教えない。」
 「ええ〜?!ディアーナさんには?教えたの?!」
 「教えてないよ。あのさ、トリーシャにしろ、ディアーナにしろ、な
んで同じコト聞いてくるの?これで三日連続だよ?いい加減そっちのこ
とから離れてよ…。」
 朋樹は力無く…疲れた口調でトリーシャに訴えかけた。早くこの話題
が終わるコトを願いつつ。


 後書き

 ども、ともです。ふう、書き終わった書き終わった。朋樹以外は(?)
ハッピーエンドとなりました。
 オりキャラ作るのは難しいですね。今作は二人(実質、由紀は由羅を
ベースにしたので一人ですが…)出てきました。口調、性格etc…。考え
ること多いです。まあ、好きだから我慢できますが。

 次は、「もう一人の迷い人 後編」の後書きで書いた、「書きたいネタ」
のSSのっけます。

 では、また。ともでした。

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