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「過去より… 序章〜物語の始まり〜」 とも  (MAIL)
過去より… 序章〜物語の始まり〜

 タタタタ…!
 リバティー通りを抜け、旧王立図書館前のさくら通りを疾走するロ
ーラ。これから、さくら亭で好物のストロベリーパフェをオゴっても
らうためである。そんな中、日のあたる丘公園にさしかかったとき、
急に足を止める。かすかにリュートの音色が聞こえたためだ。
 ポロン…ポロロン…
 「まただ…。この街に吟遊詩人が来てるのかなぁ…。」
 好奇心に勝てず、公園に飛び込むローラ。そこいたのは、木にもた
れかかりリュートを奏でる青髪の青年だった。
 「あの…。もしかして吟遊詩人…なの?」
 「はい?ええ、そうですよ。」
 目をつぶりながらリュートを弾いていたせいもあって、いきなり声
をかけて来たローラに驚く青年。それでもにこやかに答える。それを
聞くやいなや、ローラは
 「じゃ、あたし何か聞きたいなぁ。ね、恋のお話って無いの?」
 と言い出す。青年はちょっと考えたと思うと、ポンと手をあわせる。
 「それでは、最近知った話をしましょうか。ああ、立ってないでど
こかに腰掛けなさい。それでは疲れますよ。」
 青年はにっこりと笑うと、ローラを自分の横へ座らせる。そしてリュ
ートを奏でながら語り始めた。

 あるところに、一人の少女がいました。その少女は心やさしい人で
した。しかし、少女にはある秘密がありました。魔族の血が流れてい
たのです。少女は思いました。
 「なぜ、私の父は魔族なの?友達も、みんなみんな、それで私をい
じめる。私をいじめて楽しいの?私は、生まれてきてはいけなかったの?」
 決心した少女は自分の素性を隠し、ある街に逃げました。行き先は
差別のないと言われていた街。素性を隠したのは、実際は差別がある
かもしれないと思ったからです。数年後、幾人かの友人を得、穏やか
な日々を送っていた少女は人生の転機にあいます。異世界の少年に会っ
たのです。少年は少女にこう言いました。
 「自分の世界に戻るための手助けをして欲しい。」
 少女は、その誘いをうけます。特に目的はありません。その街を出
ようとも思っていなかったのですが、なぜか承諾してしまったのです。
幾度となく重ねていく様々な出会い。最初は成り行き上でしたが、お
互いを信頼しあえるようになった共に旅をした仲間達…。そして、い
つしか心から愛するようになった少年…。少女には一つの目的ができ
ました。それは「少年の力になること…」。
 しかし、運命が…彼女の血によって生まれたもう一人の自分が恐ろ
しいことを考え出します。それは…
 『少年を殺し、永遠に自分の物にする事』
 少女は必死に抵抗しましたが、もう一人の自分に意識を乗っ取られ
てしまいます。少年を殺そうとするもう一人の自分…。しかし少女は、
「少年に対する強い想い」の力でもう一人の自分を消し去り、少年を
救います。
 そして、さらに冒険を重ねた後。少年の願いが叶うかどうかの前日…。
少女は思い切って、自分の想いを少年に伝えました。困惑する少年。
少年もまた、いつしか少女を愛していたのです。
 「迷っている。君を取るか。自分の世界を…家族を取るか。」
 少女は嬉しくもあり、悲しくもありました。自分のせいで少年が帰
れなくなるかもしれないのですから…。
 「すいません…。私にかまわず、あなたの好きなようにして下さい…。」
 少女はそう告げると、その日は静かに少年のもとを去りました。明
日、笑って少年を送り出そう、と心に決めて…。
 少年が願いを告げるとき、その場にいた少女とその仲間達はその願
いに驚きます。それは…。
 「元の世界には戻らない。自分は少女と共にここへ残る。自分の家
族にはすまないが…。」
 少女は自分の耳を疑います。しかし、事実以外の何物でもありませ
んでした。少女は少年に抗議しました。なぜ、私を取ったのか…と。
しかし少年はそれにこう答えます。
 「君が、自分にとってなによりも大切なのだ。」
 と…。
 二人は、共に旅をした仲間の中の王女に一時期世話になります。幸
せに思えたひととき。しかし、幸せは長くは続きませんでした。少女
が連れ去られてしまったのです。犯人は彼女の父親でした。
 「人間如きに、私の娘をまかせるわけにはいかない。」
 それが少女を連れ去るとき、少年に言った言葉でした。少年は仲間
を集い、少女を助けに向かいます。王女は自分の代わりに、と若い旅
の剣士を遣わしました。
 数々の難所を切り抜け、少年と剣士、少年の仲間はついに少女の父
と対峙します。最後の闘い。仲間は傷ついていき、残ったのは少年と
剣士の二人のみ。数時間の闘いの後、少女の父親はついに倒れます。
 「とどめを刺せ。」
 彼はあきらめたように少年に言います。
 「義父になるかもしれない人を斬ることはできない。」
 少年はそう言い返すと、少女と…仲間達と共にその場所を去ろうと
しました。少女の父親は少年の行為を見て自分を恥じ、少年と自分の
娘にこう告げ、姿を消しました。
 「私はもうなにも言わない。二人を見守ることにするよ…。」
 共に戦い抜いた少年と剣士は、お互いを認め合い、永遠の友情を誓
います。また会う日を信じて…。
 そして少年と少女は、ある街に流れ着き、剣士と再会します。彼ら
はその後もお互いを支え合い、幸せに暮らしていると言います…。

 ポロロ…ン…
 余韻を残し、静かに話を終わらせる青年。ローラは、その話に感動
していた。
 「やっぱり、燃えるような恋よね…。」
 一人、ウットリと空を見つめる。
 「ねえねえ。二人の間に子供はできたの?」
 「さあ…。どうでしょうね…?」
 ローラの率直な問いかけに、曖昧な答えを返す青年。
 「ダメよ。二人以上はいなきゃ。愛の結晶だもの。」
 またも自分の世界に突入するローラ。しかし、ハッと我に返り、さ
くら亭に行く途中だったことを思い出す。
 「そうだ!あたし、さくら亭に行く途中だったんだ…。いいお話、
ありがとね。吟遊詩人のお兄ちゃん。あたしローラって言うの。お兄
ちゃんの名前は?」
 ローラは名前を聞こうとするが、青年はゆっくりと首を横にふると
こう答える。
 「いえ…。私は名前を持たない吟遊詩人。名乗ることはできません
よ。それより、急ぐのではないですか?」
 「あ!そうだ。じゃ、またね!」
 と言うと、ローラは来たときと同じスピードで公園を駆けていく。
青年はそれを微笑みながら見送ると、再びリュートを手にし、優しい
調べを奏で始める。それを合図にしたように、一人の妖精が木の上か
ら青年の元に飛んできた。
 「「名前を持たない吟遊詩人」ねえ…。いつからそんな風になった
のよ、ロクサーヌ。」
 妖精は笑いながら、青年…ロクサーヌの肩にちょこんと座る。
 「をや?フィリー、起きていたのですか?」
 肩に乗った妖精・フィリーに尋ねるロクサーヌ。その顔はいかにも
悪いことをした、と言わんばかりの表情だ。
 「真下でリュート掻き鳴らしながら語り始めたり、キャーキャー言っ
てる娘がいたりしたら誰だって起きるわよ。それよりこれからどうす
るの?あたしはしばらくこの街に居座るつもりだけど。」
 「そうですねぇ…。私はまた旅にでも出ますよ。」
 ロクサーヌは笑いかけると、フィリーを落とさないように立ち上がる。
 「そっか…じゃあ、またしばらくさよならね。」
 「まあ、しばらく経ったらまた顔を出しますよ。では、また…」
 フィリーは名残惜しそうにするが、ロクサーヌは何事もないように
歩いていった。そして…ロクサーヌを見送ったフィリーは、ローラの
言っていたさくら亭と言う言葉を思い出していた。
 「ここ…紅蓮達のいるエンフィールドって街だったっけ。さくら亭
か…。紅蓮の名前でツケにしてパフェでも食べよっかな♪もうちょっ
と昼寝したら探してみよッと。」
 フィリーは、紅蓮がそこで働いているとは夢にも思わず、鼻歌混じ
りでローラの走っていった方向を確かめると、もう一度木の上での昼
寝の続きを楽しむべく、木の葉のベッドへと戻っていった。

 一方、さくら亭では…
 「でねでね…で、…なって…。ね〜?いいお話でしょ。」
 さっそくさっき聞いた話をしているローラ。その目には星が輝いて
いる。周りではトリーシャ、朋樹、シェリル、ディアーナ、クリスが
ジュースを飲みながら話を聞いていた。
 「なんか…その組み合わせ…。知ってるような…知らないような…。」
 「吟遊詩人の話の中の人?まさか…。そんなことあるわけないです
よ。向こうの世界で似たような物語でも読んだんじゃないですか?ほ
ら、朋樹くんって本読むの好きだって言ってたじゃない。」
 話を聞き終えた朋樹は心当たりがあるようなそぶりである。ディア
ーナは気のせいだろう、と言ってはいるが…。
 「ね、紅蓮はそんな話聞いたことある?ティナの相手ばっかりして
ないでさ。」
 と、朋樹はティナと話している紅蓮にも話をふる。よほど気になる
のだろう。
 「紅蓮さん、吟遊詩人ってもしかして…。」
 「ああ、たぶん間違いねえだろ。」
 朋樹の問いに、知っているような感じの二人。しかし、そぶりから
するとあまり話したくはないようだが…。
 「うっそぉ!知ってるのぉ?!ね、教えてよティナさん、紅蓮さん!」
 「あ、ボクも興味あるな。何か関係あるの?」
 「私も知りたいです。興味ありますよ、やっぱり。」
 ちょっと懐かしそうな…それでいて辛そうな顔をするティナ。紅蓮
はティナのその表情を気にしながらもそれを語り始めた。
 「ああ、知ってるとも。なんせ、その少女はティナ。少年は俺なん
だからな。」
 「ええ〜?!」
 「んで、吟遊詩人はロクサーヌって言うヤツだよ。まあ、ローラの
話聞いてると俺らの話が多少美化されてたり、事実と話が食い違って
いるとこもあるんだけどな。」
 「ふうん…。ね、実際の話を聞かせてよ。そっちの方が面白そうだ
し。」
 興味津々の朋樹達。紅蓮の視線にティナは決心したようにコックリ
とうなずき、さらにティナが中に引っ込み、ヴァナが表に出てきた。
 「いいわよ、紅蓮。話しちゃっても。ティナも納得したわ。それに、
デュークも関係あるんだしね。」
 「デュークさんも?!」
 「そ。ああ、ロクサーヌの話と実際の話は結構ギャップがあっから
な。特にローラ。現実知って落ち込まないように。んじゃ、とりあえ
ず話を始めるか…。」


 後書き

 ども、ともです。前々から考えてたものですが、ある方から「書い
てみて欲しい」と言われて書きました。書いてみると面白くなってき
てしまい、長くなっちゃいそうです。(まあ、読みやすくするため、
多少は短くしますが…)。
 しかし、悠久メインのとこでエタメロメインのSS書いてるとは…
わてもあほというか、ひねくれてるというか…。まあ、悠久とエタメロ
入り交じってるもんなんで、いつどっちに転ぶか分かったモンじゃない
です。その辺はご愛敬とゆーことでご勘弁を…(前も同じコトいってる
し…(爆))
 次は紅蓮くんの過去のお話。所々解説入れるんで、悠久から入った人
も読んでくれるとありがたいです。たぶん、わかりやすいと思います。

 それでは、また。ともでした。

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