中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「第三章〜古城内の闘い〜」 とも  (MAIL)
 第三章〜古城内の闘い〜

 「…焼き尽くせ!…クリムゾン・ナパーム!」
 ドドォン!
 カイルの魔法が、城に侵入してから出会ったモンスターの群を焼き
尽くす。これで十組目の群だ。いい加減、うんざりし始めてきている。
 「くそったれ!一体どれだけ倒せばいなくなるんだ!」
 「ぼやくな、カイル。相当奥まで来たんだ。そろそろ着いてもいい
はず…。」
 愚痴るカイルに少々のカツを入れるデューク。まあ、カイルは気が
短い方だって知ってたから、俺らは相手にしなかったがな。いちいち
対応してるとこっちがまいっちまうしな。と、そんなカイルとデュー
クの会話が急にとぎれる。今までのモンスターの気配とは明らかに違
うものを感じ取ったからだ。
 「おやおや、結構優秀な人間達ですねぇ。ここまで来たにも関わら
ずピンピンしているとは…。」
 闇がさらに濃くなったかと思うと、そいつは現れた。
 「申し遅れました。僕の名はルーン。ティナの許嫁、と言ったとこ
ろですか。」
 ルーンは見下すように俺を見る。たぶん話で聞いてたんだろうな。
 「君が紅蓮…ですか?単刀直入に言いましょう。ティナから手を引
いて下さい。」
 「黙れ。このボンボン。」
 俺の対応にうけたのか、デューク達が笑いをこらえていた。でも、
見たまんまどっかのお坊っちゃんにしか見えなかったんだからな。で、
ルーンのプライドも一緒に傷つけたらしい。
 「ぼ、僕を侮辱する気か?!…そういう風に出てくるなら…死んで
もらう!」
 と、怒り出すと妙な詠唱を始めた。
 『汝、地獄の門番ケルベロス!我が誘いに答え、ここにその姿を現
さん!』
 詠唱が完成した瞬間、床に五忙星の魔法陣が現れ、ケルベロスが徐々
にその姿を現していく。
 「ケルベロス!あの人間共を殺せ!一緒にいる魔族もだ!」
 「グルオオォォォン!」
 召喚主の言葉に応え、ケルベロスは俺らに襲いかかってきた。…が。
強いと言えどもしょせんは一匹。六人組の…しかもうち五人は古代の
閉鎖遺跡の凶悪なモンスターを瞬殺出来るし、デュークはその俺らと
あまり変わりない。よって…。
 「これでもくらえ!!」
 バキィッ!
 「ライトニング・ジャベリン!(×3)」
 バリバリバリィッッ!
 「おまけだァッ!ブレイク!」
 ザクッッッ!ドォン!
 「これで終いや!!」
 ドゴォッッッッ!
 「キャイイィィィン…」
 …ぱたっ……
 ケルベロスは、俺らに何もする暇もなく見るも無惨な姿になってし
まっていた。そして数十秒後、ケルベロスは跡形もなく消え去っていっ
ちまった。
 「これでおしまいか?」
 俺はゆっくりと裂刃…ヴァニシング・レイの具現化だ…の切っ先を
ルーンに向ける。
 「お…お前ら手加減っていうものを知らないのか?」
 「あ?お前「殺す」言われて手加減する馬鹿がどこにいると思って
ンだ?」
 混乱でもしていたのか、矛盾したことを口走るルーン。もう、手が
ないのだろうな。オロオロして何もできないでいた。
 「まあいい。もっかいティナらの許嫁だなんてぬかしてみ。生き地
獄見してやっからよ。消えろ。もう、二度とその根性曲がったツラ見
せんな。」
 「は、はひぃぃい!」
 ルーンはそういうと、煙のように消え去っていった。
 「…何だったんだ?あいつ。」
 「知らん。しかし、一応はヴァンパイアだろう。魔力の雰囲気で分
かった。」
 俺のつぶやきに、カイルは素っ気なく答える。
 「ふ〜ん…。ヴァンパイアにもいろいろいるんだな。ティナらの親
父なんかめっちゃ強そうなのにな。」

 そして数分後…
 おそらくルーンが最後の砦みたいなものだったんだろう。俺らはそ
んな苦労もなく、ティナらの親父と再会した。けど、ティナ達はどっ
かに閉じこめられてるみたいでどこにも姿は見えなかった。
 「よく来たな…。ルーンを倒すとは…。やはりケルベロス一匹くら
いでは物足りなかったかな?」
 「んなこたぁどーでもいい。二人はどこだ?」
 俺は双破甲を手に、親父を問いただした。
 「会いたいのか…。なら、私と勝負してもらおうか。そちらは何人
でも結構だ。我が名、…ヴァルム…ロードヴァンパイアなり…。では
…行くぞ!」
 『汝らが名、ガルム。地獄より生まれし者共よ…。いでよ。我が言
葉に従い、我の命ずるままに…!』
 ヴ…ン
 「ルオォォォォ!」
 得体の知れない音と共に、十数匹のガルムが姿を現す。個々は先ほ
どのケルベロスの強さには及ばないが、集団で来ると厄介なことこの
上ない。そして、ガルム達の狙いは俺を除く五人。ヴァルムは俺だけ
を相手にしたいようだった。
 「ち…。デューク!アルザとウェンディを援護してくれ!カイルの
方は…お前だったら揚雲守りながら闘うなんて朝飯前だろ!俺のライ
バルのお前ならな!」
 「んじゃ…犬ッコロ退治と行こうか、お二人さん!」
 剣をかまえ、アルザ達と共にガルムに対峙するデューク。
 「ふん、貴様こそやられるんじゃないぞ、紅蓮!」
 揚雲を守るように立ち、照れ隠しのつもりか俺に怒鳴り声をかける
カイル。
 「ん。そんだけ言えりゃぁ上等!」
 俺はそう言うと、迷わずヴァルムに突っ込んだ。

 「ケリ…つけようぜ!」
 「お前に娘は渡さん!」
 カキィン!
 ヴァルムの剣、俺の双破甲がぶつかり合って火花を散らす。
 「クリムゾン・ナパーム!」
 おそらく、ヴァンパイアの能力でも使ったか。ヴァルムは闇にまぎ
れると十数m離れた所に現れ、魔法を放った。
 「んなもん、効くかぁッ!」
 次々と、俺は迫る火球を斬り裂いていった。まあ、ロードヴァンパ
イアのヴァルムが放つ魔法だからな。それなりに衝撃もあったけど、
なんてコトはない。全てを消し終わった時、ヴァルムは興味深そうに
俺の両腕についた得物を眺めていたのが見えた。
 「ほほう…。あれだけの魔法を喰らって無事とは…。噂に聞く『具
現化』か…。このヴァルム。久々に闘いを楽しめそうだ!」
 ヴァルムは言うな否や、突っ込んできた。しかも、その勢いを利用
して鋭い突きをさらに鋭くしてくる。
 ザクッ!
 「…ちっ!」
 あっちの方が一瞬速かったんだろう。俺の左頬を剣がとらえた。血
が流れるのが分かるが、そんなの気にしてたらやられちまう。流れる
血をそのままに、俺は左の手甲で剣をはじき、ヴァルムのみぞおちに
勢いづけた正拳をぶち込んでやった。
 ドゴォッ!
 「ぐッ…。く、なかなか。だが、これでどうだ!」
 剣を両手でかまえたヴァルムは、思いっきり剣を横凪に振ってきた。
 「これぐらい!」
 俺は迷うことなくそれを両手で止めにかかった。けど…、それが間
違いだったんだ。
 「くくく…。かかったな!」
 ドコォッ!
 「な…に…!」
 ヴァルムは、俺が両手で止めに入った瞬間。俺にとって死角になっ
ていた背中にケリを喰らわせてきたんだ。
 「まだまだのようだな…。さらばだ!」
 そして、ヴァルムが笑みを浮かべながら俺にとどめを刺そうとした
その時…。
 「俺もまぜろ!!(×2)」
 「何ィッ?!」
 ゲシィ!
 「ライトニング・ジャベリン!(×2)」
 バリバリィッ!
 「グアァッ!」
 「うちも忘れたらあかんで!」
 バキィッ!
 「く…そぉっ!」
 油断していたのか、次々とみんなの攻撃をくらってた。みんなの方
もガルムに少しばかりてこずったのか、ひっかき傷や噛み傷が目立っ
てたから、ヴァルムに対する恨みを込めてタコ殴りにしてたんだろうな。
 「いい加減にしろ!…ヴァニシング・レイ!」
 ドゴォォォォン!
 いい加減に怒り始めたのか、一掃するように魔法を放つ。みんなも
フクロにするのに夢中だったみたいで、全員ふっ飛んじまった。けど、
さすがに疲れてたのか、威力はそれほどのもんじゃなかったらしい。
吹っ飛ばされたものの、みんなすぐに戦線復帰してきた。
 「っしゃ!みんな、障壁張ってくれ!もっかい派手に決めてやる!」
 「ちょ、ちょっと待て!もう少し待ってくれ!」
 「…障壁、あと少し張り終わります。」
 俺は障壁が張り終わる時間を先読みして、まだ張り終わってない時
に詠唱を始めた。もちろん、さっきみたいに魔力全開なんてコトはせ
ず抑えて、だけど。
 『右手に集うは荒き神々の怒り
  左手に集うは紅く降り注ぎし光 …我が身通じて一つとなれ!
  ライトニング・シャワー!』
 バリバリバリィ!…ドドドォン!!
 「ぐわぁぁぁ!」
 衝撃の直後、ヴァルムの悲鳴が響いた。倒した、って思った次の瞬間…
 「のあああ!」
 「きゃぁぁ!」
 「なんでや〜!」
 「ばっきゃろぉ〜!」
 「くっ!」
 みんなの悲鳴が聞こえた。どうやら、先読みが若干早かったらしい。
障壁が出来上がってなかったんだ。

 「悪ぃ悪ぃ。早すぎちまったみてェだな。」
 その後すぐ、俺は最後の魔法力を振り絞ってみんなを回復させた。
ま、ちょっとした罪滅ぼしみたいなもんだ。けど…
 「早すぎるにもほどがあります!揚雲さんだけがなんとか張ってく
れたからよかったようなものの…下手すればみんな黒こげだったんですよ!」
 「紅蓮!貴様…!ティナに会う前にブチ殺してやろうか?!」
 「まあまあ、無事だったんやからええやないか。でもな、紅蓮。帰っ
たらくらいは飯おごってぇな。それくらいやっても罰はあたらへんで。」
 「…おっしゃ。アルザに賛成。紅蓮の財布が空になるまでおごって
貰おう。」
 「今後、先読みはしないようにして下さい…。」
 「へぇへぇ。分かったよ。分かったから、そんなに詰め寄らないで
くれ…。」
 とばっちり食ったみんなに囲まれ、生きた心地がしなかったよ。回
復したっつっても、服は焦げてるし小さな傷は残ってるし…。で、そ
んな感じでわいわいやってる向こう側で、ヴァルムはいまだに雷の直
撃うけた衝撃でピクピクとケイレンしていた。
 「ところで、こいつはどうする?」
 急にマジな顔つきになったカイルがヴァルムを見る。まだ、ティナ
達を救い出す、と言う目的は達していないんだ。そして、カイルの口
調から察するに「殺すか否か」のようだ。
 「とりあえず、起こす。みんな、ちょっと下がっててくれ。」
 俺はみんなを少し下げると、ヴァルムに意識を無理矢理取り戻させた。
 「…。私は…負けたのか…。」
 ヴァルムは軽く頭を振ると、パチン、と指を鳴らす。すると…
 「あら…?みんな!」
 「お前達は自由だ。どこへでも、好きなところへ行くといい…。」
 ティナ達を呼び出した。おそらく、空間移動の魔法でも使ったんだ
ろうな。そして、ヴァルムは俺に向き直るとこういった。
 「紅蓮。お前の手で私を殺してくれ…。」
 !
 ティナ達とアルザ達は再会を喜んでいたけど、その言葉を聞いた途
端に凍りついたように固まった。
 「お前のようなものにだったら悔いはない。さあ!」
 「イヤだ。」
 そんとき、俺は本当に殺したくなかった。まあ、二人がさらわれた
当初はそれくらいの気持ちはあった。けど、なんかそんな気持ちはな
くなっていたんだ。
 「なぜだ…!?」
 「なぜって言われても…。なんでだろ?ま、強いて言えば…俺の義
父になっかもしんねェんだ。そーゆー人を殺せるヤツがいるか!」
 それを聞いたヴァルムはキョトンとした顔つきになった。途端、急
に笑い始めたんだ。
 「くっくっく…なるほどな。それも一理あるというものだ!面白い!
気に入ったよ、紅蓮。もう、言うことはない。お前達を見守らせても
らうことにしよう…。」
 ヴァルムは言い終わった直後、霧のようなものに姿を変え、何処か
へと姿を消したんだ。
 「さぁって!じゃあ、レミットんとこに戻るとすっか!」
 「はい…!」
 「ふぁ〜あ。なんや、疲れてもうたわ…。」
 「おい、紅蓮。おごるの、忘れるんじゃないぞ!」
 「そうだ。忘れんなよ〜!」
 「…結果だけならOKと言ったところですか…。」
 「そう…ですね。」
 そして俺らは、ティナに回復してもらった後、とりあえずレミット
んとこに戻ることにしたんだ…。


 後書き

 ども。ともです。戦闘シーン。もうちょっと描写が出来ればいいなぁ…
わてがやるとど〜も緊迫感が足りないような気がするんですわ。結局
今回も最後の方はオチがとんでもなかったし。仲間巻き込むか?普通。
ってそれ書いてるのわてだ。(爆)

 次は過去のお話+現在のお話です。どこで切れてるのかが分かるように
書きたいと思ってます。

 では。また。ともでした。


中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲