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「第四章 〜約束…と再会〜」 とも  (MAIL)
 第四章 〜約束…と再会〜

 「お帰り!…あ!ティナにヴァナ!お帰り!みんなも無事のようね。」
 最初に俺らを出迎えてくれたのはレミットとアイリスさんだった。
アイリスさんの話によると、俺らが帰るまでの一週間、ずっと城門の
とこで待っていたらしい。
 「よぉ。出迎えご苦労!…なんてな。なんだ、ずっとここにいたのか?」
 「そうよ。ったく、お父様ッたら、あたしが行けばもっと早く二人
が帰れたかもしれないってのに全然外に出してくれないんだもの。城
門からだって、一歩でも外に出たら謹慎処分にされちゃうし。だから、
じっとここで待ってたのよ!」
 レミットが参戦…。俺は少しゾッとしちまった。たしかにレミット
がいれば魔法面での心強い戦力になる。けど、魔法ブッ放すのが大好
きなもんだからな…。ヴァルムの城…半壊してたかも知れねぇ…。けど、
 「そっか、ありがとな。」
 と、俺はレミットの頭をなでてやった。こいつは妹みたいなヤツだっ
たからな。
 「ちょっと!あたし、子供じゃないんだからね!頭なでるなんてし
ないでよ!」
 でも、照れたのか真っ赤になったレミットが怒鳴り散らした。その
途端…みんなの笑い声が響いた。とりあえず、これで今回の冒険は終
わったんだ…。

 「で、もう行くのか?」
 「せっかくお友達になれたのに…。」
 「まあ、また会えるやろ。達者でな、デューク。」
 「じゃ、あたし達を助けてくれた時の借りは後まわしってとこね。」
 「たまには遊びに来なさいよ!あんたも仲間なんだからね!」
 一週間後。デュークは傷も全快し、また旅に出る、と言いだした。
俺らはみんな引き止めはしたんだが、それを聞いてくれはしなかった。
 「世話になったな。まあ、どっかの街に滞在するようなことでもあ
ったら手紙送るわ。みんな、しばらくここにいるんだろ?」
 「ああ、気ィ付けろよ。また会おうぜ、約束だ。」
 「約束、か。ああ。」
 俺らはしっかりと握手を交わすとデュークを見送った。
 …数ヶ月後だよ。デュークがエンフィールドって街にいるって手紙
をくれたのは。一時的な記憶喪失で、送るに送れなかったってな。で、
俺らはこの街にやってきたんだ…。

 「とまあ、こういうこった。」
 まだその時のことを思い出しているのか、穏やかな顔つきの紅蓮。
 「あ、そっか。前にちょこっとだけ聞いたんだった、この話…。だ
から聞いたことあるような気がしたんだ…。」
 「ああ、ともにはこっちに来て間もないときに話したっけな。」
 朋樹のつぶやきに、紅蓮は思い出したように手をポンと打つ。
 「へぇ…。恋に障害は付き物だったんだ、やっぱり。」
 「そうかもね…。」
 いっちゃってるローラ。曖昧に相づちをうつパティ。いつの間にか、
ちゃっかり話に入ってきていた。
 「でもさ、マリアみたいな人、いたんだね。」
 「そうだね。ボクも驚いちゃったよ。レミット王女がそんなおてん
ばだなんて。」
 まあ、普通は王女そのものに対するイメージは清楚な感じ、と言っ
たイメージしか浮かんでは来ないと思うが…。
 「意外な一面ってのはよくあるコトじゃないですか。現に、朋樹君
だって見かけとは全然違うじゃない。真面目そうでも実は…って。」
 「ディアーナ、それは言わないでよ…。気にしてるって言ったでしょ?」
 可笑しそうな顔して言うディアーナに、朋樹はジト目で言い返した。
 「仲いいわね〜〜。紅蓮、何か食べない?あたし、おなか空いちゃ
った。」
 「ん?じゃあ、気分いいし…俺のおごりで好きなもん食ってくれ。
たまにゃいいだろ。」
 ヴァナの言葉にうなづく紅蓮。途端に、皆歓喜の声を上げ始めた。
中には、すでにパティに注文をしている者もいる。
 「え?ほんと?!」
 「ラッキー!」
 「え?」
 その時、聞き慣れない声が響いた。全員がそこを見ると、一匹(一人?)
の妖精(ぬいぐるみ?)がふよふよと浮かんでいる。
 「「「フィリー!」」」
 途端、紅蓮、ヴァナ、朋樹の三人が同時に妖精の名を呼んだ。
 「おっひさし〜!って、そこのメガネ君…はあたし知らないんだけ
ど。…あんた誰?」
 「え?あ、僕、向こうの世界での紅蓮の幼なじみで、朋樹って言う
んだ、よろしく。ほら、紅蓮が家族に送った映像を僕も見せてもらっ
ててね。で、名前とか知ってるんだ。」
 朋樹の言葉を聞いた途端、フィリーは案の定、大声を上げた。
 「え〜〜〜?!う、うそぉ!じゃ、あんたも異世界の住人だってい
うワケ?!」
 「うん。」
 驚くフィリーの言葉に、あっさりとうなづく朋樹。
 「ふ〜〜ん、あんたが紅蓮の幼なじみ、ねぇ…。で?やっぱり紅蓮
の後ろでビクビクしてたの?ケンカとか弱そうだケド。」
 「やっぱり…。何でみんなそーゆー解釈するかなぁ…。」
 フィリーの一言にがっくりと肩を落とす朋樹。クスクスと笑い出す
ギャラリー。フィリーはわけも分からすキョトンとしている。
 「え?なになに?あたし、そんな変なコト言った?」
 「フィリー、よぉっく聞けよ。とも…あ、俺はこいつのこと「とも」
って呼んでんだけどな。ともはな、こないだ手合わせしてみて分かっ
たんだけど、魔法抜きなら俺より強いんだぜ?こっちで闘いに慣れて
いた俺よりもだ。向こうの世界の時も、こいつは俺以上に名が売れて
たし。ガッコの帰りに待ち伏せされたりするくらいにな。魔法…今は
まだ教えるときじゃないけど、ともが魔法覚えたら俺よか強くなっか
も知れねぇんだ。」
 「げ。じゃあ、とんでもないヤツってコトじゃない。人は見かけに
よらない、か…。」
 一人、納得するフィリー。
 「もう、とんでもないヤツでも見かけによらなくてもいいよ。あ〜
あ。なんだか僕もお腹空いちゃったなぁ…。パティ〜。どう、一人で
さばききれそう?」
 朋樹は、すでに注文を聞いて料理を作っているパティにカウンター
越しに声をかけた。見ると、ヴァナからティナに変わったのか、せっ
せと手伝いをしている、ティナの姿も見える。ティナは料理が得意な
のだが、ヴァナは苦手なのだ。
 「そうね…ティナも手伝ってくれてるし、何とかなると思うけど。
でも、あんた自分で作れるんだからさ、待ってらんないんなら作っちゃ
えば?」
 「う〜ん…。じゃあ、作っちゃおうかな。以外と時間かかりそうだし。」
 と、朋樹は腕まくりしながら厨房へと入っていく。さくら亭によく
来るディアーナ、クリスはバイトしていた朋樹にあっているので知っ
ていたが、シェリルはあまり知らないようだった。もちろん、フィリ
ーは朋樹には初めて会うのでさらに驚いている。
 「朋樹くんって御料理得意だったの?」
 「げげ。ほんっとに見かけによらないわ、朋樹って。」
 「僕さ、小さい頃からサバイバルって名目で山ンなかに寝泊まりし
たんだよ。もちろん、食材も自分で調達、自分で料理。父さん五〜六
年前に死んじゃったし、母さん一人に世話かけないように身のまわり
のことは自分でしてたんだ。その母さんも死んじゃって、しばらく本
当に自給自足の生活してたんだから。料理なんて朝飯前になっちゃっ
たよ。今じゃ、趣味みたいなもんだね。」
 言いながらも、一品つくって皿に盛りつけている。さすが、手際が
いい。伊達に「料理は朝飯前」といってない。
 「そうなの?トリーシャちゃん。」
 「うん。それに、ボクはいいって言ったんだけど…。「いいからい
いから」っていってね。今、お料理とお掃除なんかは交代でやってる
んだ。でも、お料理は上手だよ。ボクが保証するもん。」
 「へぇ。朋樹くんのお嫁さんって楽でいいですね。」
 「そのかわり、ちょくちょく雷鳴山の奥に遊びに行ってるかもよ?
自分の子供連れてって、家事は奥さんに任せたりして。」
 ディアーナの一言に、クギを差すように言う朋樹。
 「ひっど〜い。奥さんほったらかし?」
 「あはは、楽なんていうからだよ。」
 朋樹はむくれるディアーナを笑っている。なんて話していながらも、
二品目が完成していた。
 「さってと、パティ、筍ってあったっけ?」
 「え?うん、今旬だからそこの袋の中に五〜六本…。何作る気?」
 「向こうの料理。チンジャオロウスウってヤツ。」
 と筍の皮むきに入った。皮がついた状態の筍に、包丁で縦に切り込
みを入れる。そこに指を入れ、左右に力を込めると全ての皮が綺麗に
むけた。根の部分を切り落とし、水洗いする。筍の中身を包丁で二つ
にすると、手早く細切りにする。かたわらにあった肉、ピーマンも同
様にしていた。
 「へぇ。相変わらず手慣れてんな。」
 「す、すごい…。」
 ジャッジャッ!
 「ちょっと火が出るから注意してね〜。」
 ボォォォ!
 「うわっ!」
 「きゃっ!」
 「これで出来上がりと。」
 火が起こったにもかかわらず、朋樹は平然と皿に盛りつけている。
 「なぁ、量多くねぇか?これ。」
 「あ、いいのいいの。みんながつまめるの想定して作ったから。」
 よく見ると、大皿に盛りつけてある。この量なら八人くらいがちょ
うどいいだろう。
 「ちょっと!朋樹、こっち手伝って!ったく、こっちのスピードも
考えなさいよ!」
 朋樹は自分の分+みんな用の一品を作り終え、一息ついたところに
パティに怒鳴り声が響く。朋樹は、手早くできる物を重点的に作って
いたようだ。二人の方を見てみると六割出来ている、といったとこだ
ろうか。
 「怒んないでよ〜。手伝うからさ…。」

 「うわぁ…。いっただっきあ〜す!」
 結局、料理の半分くらいが朋樹の作になってしまった。そして、成
り行きでフィリーの歓迎会みたいなものが始まった。当然、いきなり
料理に手をつけ始めたのはフィリーだった。
 「お、おいしい…。」
 「そぉ?そう言ってもらえると嬉しいね。」
 ガツガツ!
 「これ、レシピ教えてよ。後で挑戦してみよっと。ねえねえ、他に
もおいしそうなものないの?」
 「あ、私にも教えて。さくら亭のメニューに加えてみたいし。」
 「あ、私もいいですか?」
 料理をよく作る三人が、口々にレシピを求める。さっきの料理以外
にも、一,二品ほど朋樹の料理があったためである。
 「うん。後でレシピ帳でも作っておくよ。」
 ガツガツガツ!
 会話しているかたわら、黙々と食べ続けるフィリー。朋樹はそれを
あきれた顔つきで見ている。
 「フィリー…。少しゆっくり食べれば?たくさんあるんだしさ。」
 「もぐもぐ…だって、ここんところくなもの食べてなかったんだも
の。いいじゃない。それに、朋樹が作ったの、おいしいんだもん。い
くらでも食べれそうなのよ。」
 朋樹の言葉に、至福の表情を見せながらも食べ続けるフィリー。
 「太るぞ。飛べなくなるかもな。」
 …げほっ!
 が、紅蓮の一言に思い切りむせかえった。
 「うっさいわね!あたしの勝手でしょ!それに、運動すれば万事オッ
ケー!」
 フィリーは紅蓮に怒鳴り散らした後、再び料理に手をつけ始めた。
他の女の子達に至っては、紅蓮の「太るぞ」の一言で量を加減したの
は言うまでもないが。

 皆の食事も終わり、ほとんどの友人が帰途についた。さくら亭に残っ
ているのは紅蓮、朋樹、パティ、フィリーの四人。朋樹はついでだ、
とさくら亭を手伝っていたのだ。フィリーは紅蓮のとこに世話になる
ためにここにいるのだが。
 「そういやフィリー。」
 「え?なに?」
 「ロクサーヌは?またどっかいっちまったのか?」
 「うん。しばらく経ったら顔出すって言ってたケド、あてになんな
いわね。」
 「ま、いつものこった。とも、久々に飲むか?」
 「は?」
 「うん。最近トリーシャ、お酒飲ませてくれないんだ(当たり前で
ある)。由羅とも最近あわないし。いいよ、久々に飲もう。」
 紅蓮の誘いにあっさりとのる朋樹。そんなに飲みたかったのだろう
か…。その答えに、フィリーは驚く。
 「ちょ、ちょっと!紅蓮、こいつまだ未成年でしょ!」
 「だいじょうぶ。吟醸酒三升で酔っぱらうヤツだから。」
 「げ。」
 「そうそう。パティ〜。いつものヤツ持ってきて〜。」
 「朋樹、あんたトリーシャにしばらくお酒ダメって言われてなかっ
たっけ?」
 厨房にいるパティがクギをさす。会話は聞き取られていないはずだっ
たから、トリーシャから前もって聞かされていたのだろう。
 「いいじゃねぇか。俺が無理矢理飲ませたってコトで。」
 「そうそう。」
 「どうなっても私は知らないからね…。」
 言いながらパティは、渋々と朋樹リクエストの「大風呂敷」をだす。
 「よぉ〜っしゃ!飲むぞ〜!」
 「おお〜〜!」
 「な、何かわかんないけど…。あたしも飲んじゃおうっと!」
 大騒ぎし始める紅蓮、朋樹、フィリー。こうして、今日もさくら亭
の夜は更けていった…。

 以後、フィリーは紅蓮が合成魔法をするとき、アリサやティナらの
作ったドレスを身にまとい、妖精の踊りを披露していた。その後、フィ
リーは「小さな踊り子」として、さくら亭のもう一つの名物となった。
 ちなみに、朋樹は言い訳も聞いてもらえず、問答無用のトリーシャ
チョップコンボをかまされた上、二ヶ月間、家事一般の八割をやらな
くてはならなくなってしまった。紅蓮も朋樹に酒を飲ませた張本人と
して、朋樹同様、チョップコンボをかまされた…ということを付け加
えておく。


 後書き

 どもども。ともです。ん〜、長かった。って、まだこれで終わりじゃ
ないですけど。(笑)ん〜。でも、オチがこれじゃぁ…。
紅蓮くんも朋樹くんも浮かばれないかな?
 最近、みんなヒドイ目にばっかあってます。…これじゃぁ、単なる
不幸話?

 次のお話…かな?ちょっとしたエピローグ編です。
まあ、一つの未来の形なので、これとは別の未来もあるでしょうが…。

では。ともでした。

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