中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「いちばん恐いもの NO-1〜幸か不幸か…〜」 とも  (MAIL)
 いちばん恐いもの NO-1〜幸か不幸か…〜




 ガダン!
 先生の言葉を聞いたトリーシャは大きな音を立てて立ち上がると、
無意識のうちに声を上げていた。
 「グループでの課題研究ぅ?!」
 「トリーシャさん!静かになさい!」
 突拍子な声を上げたトリーシャに、ピシャリと先生の檄が飛ぶ。授業中
なのだ、仕方のないことである。クスクスと聞こえる周りの笑い声に真っ
赤になりながらも、トリーシャは立った拍子で倒れたイスを起こして席に
つく。先生はそれを確認するようにうなづくと、最初の指示を出す。
 「では、まず四人グループになって下さい。ああ、五人になっても結構
ですよ。自由に決めて結構です。その後、リーダーを決めて下さい。」
 先生の指示で、皆がそれぞれ自分の友人の元へと集っていく。先ほど突
拍子な声を上げたトリーシャのまわりにも朋樹、シェリル、クリスの三人
が集まっていた。彼ら全員、共通学課の同じ科目を受けていたのだ。ちな
みに、マリアはこの時間は違う科目…もちろん魔法関係の科目である…を
受けている。今日は年間の研究も終わりに近づき、数日かけてグループで
研究をすることになったのである。その間の他の授業は受けなくてすむ代
わり、グループ研究のレポート等に打ち込まなくてはならないのだ。
 「うん、シェリルがいれば簡単だねっ♪」
 「トリーシャちゃん…私だって出来るものと出来ないものがあるんだけ
ど…。」
 すでに「出来たも同然!」というトリーシャに、シェリルは諭すように
つぶやく。
 「ま、正論だね。ところで、何やることになるんだろう?」
 「とりあえず、リーダー決めてからじゃないですか?」
 朋樹、クリスのメガネコンビはすでに課題のことを気にしていた。
 「当然、ジャンケンだよ。あ、負けた人ね。」
 と、いつの間にかトリーシャとシェリルが話に入ってくる。しかし、な
ぜ負けた者なのだろうか…?それはともかく、男二人はすぐにそれに同意
する。
 「せーの。ジャ〜ン、ケ〜ン、ポン!」
 いっせいに手を出す四人。グーが三人にチョキが一人。いきなり決まっ
てしまった。不幸にも(?)リーダーとなったのは…
 「はぁ…、僕ですか…。」
 「あはは…残念だったね、クリス。」
 落ち込むクリスの肩を叩く朋樹。決まったのはクリスだった。
 先生は生徒達の反応を見、次の指示を出す。
 「ほぼ決まったようですね。では、リーダーになった人は前に出てきて、
ここにある封筒を取って下さい。その中に課題が入っています。なお、指
示があるまでくれぐれも開けないように。」
 生徒は各々自分の勘を頼りに封筒を引く。クリスも無事、封筒を取って
きた。
 「この中に、一つだけ難しい課題を入れておきましたが、それには後ろ
の左隅に赤いヘキサグラムが書き込まれています。それを引いたグループ
のリーダーは立って下さい。」
 先生の言葉と同時にノロノロと立ち上がったのは…まぎれもなくクリス
だった。しかも、その顔は誰が見ても分かるぐらいに青白い。
 「では、クリスくん達のグループですね。あなた達は他のグループより
も少々時間がかかるでしょう。その代わり、出来次第では今期末のテスト
をいくつか免除します。頑張って下さいね。それでは、解散!」
 先生の言葉で、皆グループごとに散って行く。ある者は旧王立図書館へ。
また、あるグループは先生の元へ。そしてクリスはというと…。他の三人
が五分もかけて、やっとの思いで現実に引き戻したのであった。

 放課後、四人はひとまずシェリルの部屋に集まった。
 「え〜っと…。『北の山の洞窟…その中の、一つの洞窟に生息するキノ
コの種類とその効能や毒性について』…あれ?続きがある…『ただし、標
本もつけること』…?要するにキノコそのものも取ってこいってコト?」
 「…もうすぐ冬ですよね?」
 「ボク達大丈夫かなぁ…。」
 「………」
 朋樹はさっそく封筒の中身の確認に入っている。朋樹の独り言のような
一言一言に引き気味になるのはトリーシャとシェリルだ。クリスに至って
は声すら出ない。目は完全に泳ぎまくっていて、焦点すら合っていない。
おそらく、精神はどっか違う世界にでもいっちゃってるのだろう。さっき
からず〜っとこの調子だ。
 「で、どうするの?」
 あらためて朋樹は皆に尋ねる。その目はやる気十分だ。テストがいくつ
か免除になる、ということもやる気の理由の一つでもあるが…。まあ、亡
き父親にサバイバル技術等を叩き込まれていた朋樹にとってな朝飯前なコ
トなのだろう。しかし、他の三人にとっては勝手が違いすぎる。
 「…。朋樹くんはこのメンバーで大丈夫だと思います?」
 やはり不安なのだろう、シェリルは朋樹の判断を仰ぐ。朋樹はその問い
に対し、
 「全然大丈夫だけど?まあ、準備に時間とお金がかかるくらいだよ。あ、
探索にも時間かかるか。けど、そんなに危険じゃないと思うな。」
 と、あっさりと言う。さらに、
 「そうだ!準備金は学園の方で全額出してもらおうか!」
 などととんでもないことを言い出す。しかし、それくらいは考えてもい
いだろう。なんせ、彼らの全財産を全て足してでも備品の一/二ほどしか
用意できないからである。事実、学園の方で「数日間に及ぶ泊まりがけ調
査がある場合、その準備金はある程度までは支給する。」と言ってきてい
るのだ。これを断るのは自殺行為に等しい。
 「すいません…僕がこんなの引かなければ…!」
 とクリスは相変わらずの青白い顔で謝る。が、朋樹は「気にしないで!
成功させて驚かせてやろうよ!」とクリスを励ましている。
 「やろ。やってやろうじゃない!それに…テストがいくつか免除になる
んだしね。」
 「そうね、トリーシャちゃん。私もやってみますよ。あ、これを元にし
て小説書いてみようかしら…。」
 トリーシャとシェリルは意地にでもなったのか、腹をくくったのか…どっ
ちにしろ、やる気にはなったようだ。問題はクリスである。いまだに復活
できていないのだ。
 「クリス、覚悟決めてやっちゃおう!」
 「そうだよ。ここで退いちゃうなんて男らしくないよ!」
 「やりましょう!クリスくん!」
 それぞれ、口々にクリスにハッパをかける三人。それらの言葉で、クリ
スもやっとやる気になってきたようだ。
 「はい!すいません、皆さん。なんか、僕だけウジウジしちゃって…。」
 と、頭をかきながらいうクリス。
 「よし!じゃあ、まずドクターのとこ行こうよ。キノコの種類とか、何
か分かるかもしれないし。」
 「そうだね、レッツゴー!」
 そして、四人は一路クラウド医院へと向かったのであった。

 「ふむ…、北の山の洞窟か。なら、うちのディアーナも一緒に連れて行っ
てくれないか?」
 「はい?」
 すべてを聞いたトーヤの、あっさりとした第一声にディアーナは一瞬に
して凍りつく。他の四人も同じく凍りつき、その後数秒間、辺りに沈黙が
流れた。
 「ド、ドクター?」
 「先生?!あ、あんまりですよぉ…。」
 我に返った皆は、トーヤに抗議し始めようとする。が、トーヤはそれを
手で制すと話を始めた。
 「本当は俺が行きたいんだが、往診等をかかすわけにいかないからな。
ちょうど、自警団かジョートショップに頼もうと思ってたんだが…。」
 そこで少し話を止めるドクター。そして、話を聞いていた五人に顔を向
けると再び話を始める。
 「そこでディアーナ。お前を信頼して頼みがある。そこのキノコを取っ
てきてくれないか?近くにある薬草もいいが、そろそろ薬になるキノコも
取ってきてもらいたい。なにより、一人でお前を行かせるには相当の覚悟
が必要だ。道も覚えておいた方がいいしな。ディアーナ、キノコについて
の詳しいことは後で教える。お前らにも、礼としてレポート作成用に資料
をいくつか提供しよう。」
 「分かりました!不肖、一番弟子ディアーナ、その申し出を謹んでお受
けいたします!」
 トーヤの言葉に、あまりわけの分からない言葉を並べ立ててディアーナ
は承知した。やはり、「信頼して」という言葉が効いたのだろうか…。
 「どうしよう?」
 「いいんじゃないの?人数増えた方が荷物の一人当たりの絶対数が減る
し。それに、女の子が多い方がにぎやかでいいと思うけど?」
 クリスの問いに、別に考えもしないでにこやかに言う朋樹。
 「またまた〜。朋樹くん、ホントはディアーナさんが一緒になって嬉し
いんじゃないの?」
 朋樹の判断に、トリーシャは彼女らしいつっこみを入れる。
 「トリーシャちゃん、今はそんなこと言ってる時じゃないと思うんだけ
ど…。」
 「(ぎくっ)そ、そうそう。なんでいきなりそういう解釈するかな…。
ローラじゃあるまいし。」
 シェリルと朋樹に言われ、トリーシャは…
 「だって…。朋樹くん、最近休みの日とかしょっちゅうここに来てるじゃ
ない?だから、やっぱりディアーナさんが目当てなのかな〜って。」
 と、モゴモゴと言い訳をする。途端、顔を赤くするディアーナ。ディア
ーナもまんざらではないらしい。
 「まったく…。お前はいつもそういうことしか考えてないのか?朋樹は
薬草の効能、組み合わせ等の情報をまとめるためと、それらを俺やディア
ーナに教えたりしているだけだ。特に、向こうの世界特有の薬草の組み合
わせが多く時間がかかっていてな。暇な時にでも来るように言ってあるか
ら、休みの日に来ることが多いんだろう?」
 その言葉に、トーヤはあきれたように言い放つ。
 「とにかく、だ。その時はディアーナをよろしく頼むぞ。いいな!」
 そして、四人は何だかんだでディアーナを連れて行くこととなった。

 カララ〜ン♪
 次に向かったのはさくら亭。
 「いらっしゃい!お、とも達じゃないか。パティなら、今買い出しの最
中だぞ。」
 彼らを出迎えたのは、パティではなく紅蓮だった。
 「こんちわ、紅蓮。」
 「しっかし、なんで五人もいるんだ?男二に女三…まさかグループデー
トでもしてたんか?にしちゃぁ男が足りないな…。」
 何か誤解したような言い方の紅蓮。そんな紅蓮に、トリーシャはとんで
もないことを言い出す。
 「紅蓮さん?そんなコト言ってると、ティナさんに言いつけちゃうぞ?」
 「トリーシャ、何言ってンだ?俺はティナ一筋だぞ。それに、誰が入れ
て欲しいって言った?」
 なぜか自慢げな紅蓮。が、次のトリーシャの一言がさらにとんでもなかった。
 「じゃあ、なんでアレフくんと一緒にナンパしてたの?」
 「へ?」
 目を丸くする紅蓮。「そんなことあったっけ?」と言わんばかりの顔で
うんうんうなった末、ハッと何かを思い出す。。
 「ああ。あれは、アレフに無理矢理…」
 「でも、無理矢理でもなんでも一緒だったのは事実だよね。ティナさん
は無理矢理ってコト理解してくれるからいいとしても、問題はヴァナさん
だよ。話したら怒るだろうな〜。ヴァンパイア・ハーフの力でも使ってさ、
問答無用でヴァニシング・レイとかやりそうだよね♪」
 にこやかに、しかしやばそうな雰囲気を込めて言うトリーシャ。実際紅
蓮は、以前に勘違いされ、問答無用で魔法を喰らったことがあるのだ。
 「トリーシャ、紅蓮脅迫してどうすんの!?」
 その言葉に、おもわずつっこみを入れる朋樹。
 「あ…。いっけな〜い。つい…。でも紅蓮さん、いつになったら魔法の
効果集中教えてくれるの?今度、ボク達北の山の洞窟へ行くことになった
んだけど。ね、紅蓮さん。危険な目にあったらイヤだしさ、教えてよ。」
 トリーシャの言葉に、紅蓮は…
 「ついって…。ま、いいや。んじゃ、約束のエンフィールド学園の校長
と魔術師ギルドの長からの証明は?って聞くだけ無駄だね。俺のとこに連
絡来てないもん。駄目だよ。まだまだ、ね。」
 と、すべてを見透かしたような口ぶりで淡々とする。
 「それに俺、明日の早朝から遠出しなくちゃいけないんだ。教える暇も
無いってコト。よし。んじゃ、これ渡しとくわ。」
 と言いながら、紅蓮は両手で何かを包み込むようにしながらブツブツと
詠唱をし、その詠唱が終わった直後。強烈で、しかし暖かみのある光が辺
りを包む。光がおさまり、広げた手の中にあったのは、白っぽい半透明の
石のついた五つのペンダントと、アメジストを思わせる小さな石のついた
指輪だった。紅蓮はペンダントをそれぞれ一人に一つづつ、さらに指輪を
朋樹に渡すと疲れたようにいすに座り込む。
 「やっぱ、無理はいけねぇな。疲れる疲れる。」
 と、紅蓮は首の骨をポキポキ鳴らす。
 「ま、使い方は特に無い。身につけてりゃいいだけだからな。こいつは
最近開発したヤツで、身に付けただけでもある程度の効果を発する。後、
もう一つ。鎖を断ち切るとあることが起こるんだが…。ま、そこまでする
ほど危険なコトはねぇだろうがな。んで、朋樹に渡したのは一応武器だ。
闘うことにでもなったら、石の部分を回すだけ。そうすりゃお前が考えた、
お前にとって一番扱いやすい得物になる。危険だから扱いには気ィ付けろ
な。…あ、重要なこといい忘れてたぜ。ペンダントつけてるときは、効果
を持続させるために所持者の魔法力(MP)が10%くらいは落ちるから。
その代わり、魔力強化と身体能力強化の効果がえんえんと続くぜ。」
 と言うと、紅蓮は一息つく。
 「紅蓮、もう一つあるんだけど…。」
 「ん?ああ、食いモンのことは心配すんな。いいモン揃えてくれるさ、
パティがな。俺の方からもいろいろ頼んどいてやるよ。あと…いつものヤ
ツだろ?まかせとけって。」
 疲れていることを感じさせないような口振りで、ケラケラと笑う紅蓮。
 「ありがと、紅蓮。」
 「すいません、気を使わせたみたいで…」
 「紅蓮さん、ありがとね。」
 素直に礼をする朋樹達。唖然としていた紅蓮だが、それを三人目で止め
るとさらに笑い出す。
 「何言ってんだよ?ダチじゃねぇか。俺は、俺のやりたいようにお前達
に助けを出しただけだ。後は、お前らがどこまで出来るか、やろうとする
かだ。んじゃ、俺ァ仕込みがあっから。頑張れよ!」
 紅蓮はそう言い残し、人数分のジュースを置いて厨房の奥へと消える。
五人はジュースを飲んで一休みした後、一時間ほどの相談の末に「今日は
いったん帰り、各自で最小限の荷物の整理」という結論を出した。出発は
三日後の早朝。待ち合わせの場所は日の当たる丘公園、南口。



 後書き

 ども、ともです。う〜む。なんだか初っぱなから長めになっちゃいまし
た…。ま、いいですよね。(爆)

今回のお話は、SS読んで分かったと思いますがちょっとした探検もの
です。題の真意は、多分終わりの方で分かるでしょう。一応、そんな感じ
で書いてますし。でも、分かっちゃう人は分かっちゃうんですよね……。
ちょっとお約束もはいってますし、楽しんでいただければうれしいですね。
しかし…、エンフィールド学園ってこんなものでいいんでしょうか…?

とりあえず、予定としては4〜5話編成になると思います。結構長めに
なると思います、今回も。わても好きですね〜。なっがいSS。でも、ど
うしてもこーゆーふうに長くなってしまうんです。…短めの、考えてみよ
うかな…。

しょーじんします。ともでした。


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