中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「〜準備!〜」 とも  (MAIL)
 NO-2 〜準備!〜





 出発まで後二日…

 この日は、まずエンフィールド学園に行って準備金の交渉。その足で夜
鳴鳥雑貨店へ。そしてマーシャル武器店に行くことになった。

 準備金の交渉は、学園側が少々出し渋った。が、朋樹のサバイバル体験
の厳しさを切々と訴え(一部大げさにしたが)、シェリルが生徒のみでは
全てをそろえるのは不可能であり、なるべくならば学園で準備金を全額出
して欲しいと説得を試みた。長時間の説得の結果学園長が折れ、学園から
出てきた四人はディアーナを加え、意気揚々としながら学園を後にしたの
だった。ちなみにこのときの説得方法は、前日の相談の際に朋樹が出した
原案を、シェリルが再編集+書き足したものであった。

 カランカラン
 「イラッシャイ!イラッシャイ!」
 雑貨店のオウムが、いつものように大声を出す。
 「おじさん。ここって寝袋とか、キャンプ用具売ってる?」
 朋樹が尋ねたところ、店主はゆっくりと顔を上げると、
 「ここの地下の倉庫ン中に、ついこないだ仕入れたばっかりの寝袋が十
組ばかりある。キャンプ用具もあったと思ったが…。ただし、ものがもの
だけに値は張るぞ。それでもいいんなら奥からもってきな。」
 と言って奥の扉を指さした。
 「ありがとう。あ、料金はエンフィールド学園に請求してね。」
 と、あらかじめ必要なことを言うトリーシャ。さすが、こういうことに
なるとしっかりしてくる。ま、この年ですでに家計を考え、家事一般をこ
なしているのだ。将来いい嫁さんになるだろう。(笑)

 「う〜ん。相変わらず怪しいなぁ…。ここ…。なんか、また由羅さんが
出てきそう…。」
 クリスは前にここで由羅に拉致(?)されそうになったことがあったら
しく、ブルリと身を震わせる。
 「そんな、二度も起こらないよ。」
 のほほんと笑う朋樹。彼にとって由羅は、一緒にいれば大好きな酒をい
くらでも飲ませてもらえる人なので、別に嫌ってはいない。クリスのよう
に迫られることもないので、むしろ歓迎できる人物なのだ。
 「そうそう。そんな心配することはないって。」
 ガサゴソとランタンだの、飯ごうだのを探しながら同意するトリーシャ。
ディアーナやシェリルも、同じようなことを言いながらキャンプ道具を探
している。
 「あ、これ使えそうですね。朋樹くん、どうです?」
 見ると、クリスは大きめの釣り竿を手にしている。
 「う〜ん、もうちょっと小さめのヤツってない?それはローズレイクで
使った方がいいよ。」
 朋樹はランプ用の油を一升瓶の中に入れながらそれに答えた。

 数十分後…五人はそれぞれの寝袋と用具一式を抱え、夜泣鳥雑貨店を後
にした。そして、荷物を当日まで預かってくれる、と言ってくれたジョー
トショップ…朋樹とトリーシャが、昨日の帰りに頼みに行っていたのだ…
に預けると、五人は今日の最終目的地、マーシャル武器店へ向かった。目
的は…

 ガチャ…
 「やっほ〜。エル、いる〜?」
 トリーシャの声に顔を上げるエル。カウンターの上にはチェスがあった。
 「なんだい、トリーシャ達か。どうしたんだい?そろいもそろってさ。」
 と、物珍しそうに五人を見るエル。
 「あ、これなんだけど…。」
 朋樹は、向こうの世界から持ってきたサバイバルナイフをカウンターに
置く。エルはそれを手に取ると、品定めするように見始めた。
 「へぇ…。朋樹、これあんたの世界の物かい?なんて言うんだ?」
 「これ?サバイバルナイフっていうんだ。これはちょっと大きめなヤツ
だけどね。普通はこれより一回り小さいんだけど。これ、父さんが愛用し
てたヤツで、そろそろ手入れが必要になってきてね。で、急で悪いんだけ
ど、これ仕上げてくれないかな。二日後の早朝には出発しなきゃいけない
んだ。」
 エルはその言葉を聞くと、その類を扱うものとしての血が騒ぐのだろう
か…ナイフを見ながら笑みを浮かべてもいた。
 「面白いじゃないか。いいよ、アタシの意地にかけてでも明日の夕方ま
でに仕上げてやるよ。」
 と、胸をドンと叩くエル。
 「で、お金のことなんだけど…」
 「いいよ。こいつを手掛けるってコトだけで十分だ。それにこれ、人が
作った物だろ。いい業物だよ。」
 「(やっぱ分かるんだ…。)」
 エルはそう言い残し、さっさと仕事場へ引っ込もうとする。
 「エル!」
 「ん?何だい?」
 朋樹の言葉に振り返るエル。
 「…ありがと。」
 「何言ってんだい、それはこっちのセリフだよ。じゃ、明日の夕方、忘
れずに来るんだよ。」
 「うん!じゃあ、任せたよ!」
 エルは片手をあげてそれに答えると、早々と奥の仕事場へ引っ込んだ。



 出発前日…

 「クリス…。こんなにいらないよ。ホントにこれが最小限なの?」
 困惑の顔つきの朋樹。その目線の先には、いろんな物の入った大きな荷
物があった。
 「でも、必要かなって物入れてたらこんなになっちゃったんだ。どうし
よう?」
 「どうしようって…。着替えなんて下着ぐらいで十分だよ。服だって着
ていくのと探検用だけでいいし。寝間着とかは個人の自由だからどうでも
いいけどさ。ああ、タオルもいくらかは必要かな。汗かくからね。」
 ちなみに、クリスの荷物の中には朋樹のあげたそれ以外に、風呂でも入
るつもりだったのか…バスタオルなんて物も入っている。それ以外にもお
菓子、本、等々…。三〜四日ほどの荷物が、大きめの肩掛けバック(ボス
トンバックより一回りほど大きくなったくらいのものである)一つにパン
パンに入っていた。
 「もしかして、女の子達はもっと大荷物だったりして…。クリス、この
荷物整理したらちょっと行ってみよう。今の時間なら、シェリルの部屋に
いるはずだから。」
 サッと顔を青ざめさせた朋樹は、クリスを急かしながら荷物を整理し始
めた。明日、無事に出発できるかを考えながら。

 コンコン…
 「はい、どなたです?」
 ノックしてみるとシェリルの声が返ってきた。他にも声がするところを
見ると、ディアーナとトリーシャもいるようだ。
 「あ、クリスです。朋樹くんもいるんですけど、入ってもいいですか?」
 ガチャ
 ドアが開き、シェリルが顔を出し、
 「構いませんよ。どうぞ。」
 と、二人を招き入れる。中には予想通り、ディアーナとトリーシャもいた。
 「あれ、どうしたんです?」
 突っ立ったままの朋樹とクリス。ディアーナはいつまでたっても入って
こない二人に首をかしげている。
 「あの…。この荷物なに?」
 「なに言ってんの?シェリルの明日の荷物だよ。」
 そこには、二つの…しかもパンパンになった大きいバックが転がっていた。
 「…なに入れればこんな風になるの?」
 「何言ってるの。女の子にそんなこと聞くなんて野暮だよ、野・暮♪」
 唖然としている朋樹に、トリーシャはチッチッと指を振ってみせる。
 「そーゆー問題じゃなくって…。なんでこんな大荷物になったかってこ
と!たかが三〜四日のキャンプだよ?!本当に必要な物だけなの!?」
 「えっと…。着替え、洗面用具にシャンプー、リンス、小説のネタのメ
モ帳に筆記用具…後、夜暇になったら書こうと思ってた小説の原稿です。
それとお菓子と…。」
 指折り数えるシェリル。朋樹はそれを聞く度に脱力し、両膝をつく。
 「あのさあ…。洗面用具はともかく、どこでどーやってお風呂入るつも
り?なに?僕とクリスでドラム缶でも持って行けッて言うの?頭洗ったと
してもどうやって髪の毛乾かすわけ?夏ならともかく、今時期に山の中だ
と風邪引いちゃうよ?それに、小説のネタくらいなら書くコトは出来ない
こともないけどさ、原稿なんて書く暇も無いと思うよ。クタクタになって
てすぐに眠っちゃうと思うしね。」
 うつむきながらもしっかりと言う朋樹。
 「ええ〜っ?!お風呂入れないの?!汗かいたら気持ち悪いよぉ?」
 首を横にふり、イヤそうに言うトリーシャ。
 「汗かいたとしても、たき火で沸かしたお湯にタオル浸して体を拭けば
いいじゃない。言っておくけど、整備されたキャンプ場に行くんじゃない
んだし、遊びに行くわけでも無いんだからね?それは頭に入れておいて。
じゃ、シェリル、トリーシャとディアーナもバック一つ分ほどの最低限の
荷物にしてね。自分の荷物は自分で持っていくってことを忘れないように。」
 そう言いながら、一人一人の顔を順々に見ていく朋樹。
 「どうしても持って行かなくちゃいけないってもので持っていけないも
のは、僕に言ってくれればものによっては代わりに持って行ってあげるか
ら。じゃ、よろしくね。」
 三人は渋々ながらもそれに同意し、「お風呂は無理でもタオルで体を拭
くことは絶対やらせること」を約束させた。

 その日の夕方。マーシャル武器店…
 朋樹はえんえんと荷物整理をする他の四人を残し、エルに言われたとお
りの時間帯にやってきた。
 ガチャ…
 「こんにちわ〜。」
 「ん?ああ、朋樹か。ちょうどいい、今出来上がったとこだよ。見てみ
るかい?」
 ちょうど店番していたエルは朋樹を見ると、カウンターの下からナイフ
を取り出した。
 「…。ありがと!上出来だよ。…よかったなぁ、これでまた一緒だよ。」
 と、朋樹はじっくりと刃の部分を見た後、軽くナイフをこづく。
 「なんだ、朋樹はナイフにも話しかけたりするのかい?面白いねぇ。」
 エルはその光景は見ると、小さな笑みを浮かべる。
 「あんたは物を大切にするんだね。飽きっぽいトリーシャとは正反対だよ。」
 「あはは…。確かにそうかもね。」
 と、一緒につられて笑い出す。
 「じゃ、ホントにありがとね。無事に帰ってきたら、礼代わりにさくら
亭でなんかおごるからさ。またね!」
 朋樹は軽く頭を下げると、エルに言い返させないようにとっとと店を出
ていった。
 「…まったく。礼はいいって言ったのに…。」
 エルはあくびを一つすると、
 「さてと…たまにはマーシャルの在庫整理でも手伝ってやろうかな…。」
 とつぶやきながら、奥の倉庫へと歩いていった。




 後書き

 ども、ともです。今回は、いんたーみっしょんその二です。
準備からこの騒ぎ。果たして、彼らは無事に出発できるのでしょうか?

今回のお話はかなり長くなりそうです。ネタが多いですから。
一応は短くする努力はするつもりですけどね。(笑)

次回はいよいよ出発、お楽しみに。

ともでした。


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