NO-6　～みんなで考えよう！～

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「NO-6　～みんなで考えよう！～」 とも　(MAIL)
　NO-6　～みんなで考えよう！～

　約二時間後。どうにか洞窟や暗闇にも慣れ、この洞窟に生息するキノコをほ
ぼ集め終わった五人＋一匹は最後のキノコ、灯火茸が生息する所の近くまで来
ていた。
　「あれ？なんだか洞窟が明るくなってきたような…。」
　「そうよ。この奥には灯火茸が群生してるの。だいたい数十本はあるはずよ。
でも、成長するスピードが遅いから乱獲されないようにガードしてるヤツがい
るのよ。」
　そういって、イリスは奥へと進んでいく。五人も、つられて奥へと進んでい
った。そこには…
　「久しぶりね。」
　「をや？イリスですか。ほほう、それにこんなとこに人間の子供とは珍しい。」
　トコトコとイリスが歩いていった先には、青く輝く鱗を持つ一匹のドラゴン
が横たわっていた。
　「また灯火茸を取りに来たんですか？やめておきなさい。あなた、私の問題
を一問も解くことができないじゃないですか。それとも、後ろの人間が解くと？」
　朋樹らの顔を順々に見、時折興味深そうな表情を見せるドラゴン。
　「そんなに難しいの？」
　「お父さんは簡単に解くんだけど、あたしはまだ解いたこと無いのよ。」
　「へぇ…。でも面白そう。挑戦して見ようよ。どっちにしろ、解かなきゃ灯
火茸はもらえないんでしょ？」
　「そうです。解いた者にのみ、私は灯火茸を与えています。貴重ですし、何
よりも１㎝育つのに一年かかりますからね。私みたいな者が代わる代わるこう
やって管理しているんですよ。」
　「へぇ…。だから問題を解いた者にしかくれないんだ。」
　「もちろん、私を倒して奪っていくという方法もありますがね。しかし、命
を粗末にするものではありませんよ。したがって、問題を解くだけにして下さ
い。」
　その言葉を聞き、
　「あの…。問題の難易度は分かりませんが、一つの問題にみんなで挑戦する
というのはいけませんか？私たち、実は…」

　シェリルは事の次第を全て話した。ドラゴンはその言葉にちょっと考えたが、
　「まあ、その両方。どちらもかまわないでしょう。まず、心無い者が灯火茸
を奪いに来ないよう、手を打ってもらいたいですね。」
　「分かりました。では、私たちの街でそれを手伝ってくれる人を知っていま
すから、頼んでみます。おそらく、快く引き受けてくれると思いますよ。ね、
トリーシャちゃん。」
　「あ、そっか。お父さんに頼めばいいんだっけ。そうそう。ボクのお父さん
に頼めばきっと大丈夫だよ。」
　トリーシャとシェリルの目を見、その目に信じるに足る偽り無き光をみとめ
ると、満足そうにうなづき、灯火茸の近くにその身をおろす。
　「分かりました。その言葉、信じましょう。問題に関することとしては、知
恵を出し合うというのもまたいいことです。」
　「じゃぁ、いいんですね？」
　「ええ。では、一つの問題をだしましょう。まあ、簡単なものにしておきま
しょうか。答えは…人間の子達。あなた達が一人一つずつ答えなさい。」
　と、急に真剣な顔つきになったドラゴンは厳かな口調で問題をだした。
　『その力、四つよりなりて五つを生みだすべし。癒・翔・護・猛。汝ら、人
間の子よ。己が身に五つを示せ。』
　「…『癒・翔・護・猛』？何を意味するんだろ…。」
　「四つよりなりて五つを生み出す…。四つ…から五つ…。………。」
　「あ～ん！何言ってるんだかさっぱりだよ～～！」
　「ほら、だから言ったでしょ？難しいって。ま、あたしは関係ないから昼寝
でもして…。」
　イリスはあくび混じりに昼寝に入ろうとしたが、ドラゴンがひょいとつまみ
上げる。
　「こら、イリス。お友達が頑張っているのにあなたは昼寝ですか？いけませ
んねぇ、そういうことは。あなたも一緒に考えてあげなさい。」
　「う～。」
　イリスは不満そうな声を上げるが、ドラゴンはイリスをつまみ上げたまま、
じっとその顔を見続ける。イリスがＹＥＳと言うまで下ろさないつもりらしい。
　「分かった、分かりました。ねぇ、朋樹達と一緒に考えるから下ろしてよぉ。」
　「では、行ってきなさい。」
　ドラゴンはその言葉を聞き、にっこりと笑みを浮かべるとイリスを下ろす。
イリスは下ろされた途端、五人の元へと走っていった。

　「あれ？イリス、どうしたの？」
　「うん、友達なら一緒に考えてあげなさいって。えへへ、と言うわけであた
しも一緒だよ。」

　…一時間後
　「…じゃ、無いよね。う～ん…。」
　「…ってのは？…あ、そうか。そうだね…。」
　ずっとこの調子である。なんとなくは分かってきたのだが、決定的な答えに
はつながらないのだ。
　「あ～！もう、身体的じゃなくって、頭とか精神的な加護がある精霊魔法っ
てないのかしら。頭痛くなってきちゃった。」
　「分かった！」
　イリスの疲れたようなつぶやきを聞き、シェリルはハッとしたように顔を上
げながら声を上げる。
　「分かったって？」
　「精霊魔法のことを言ってるんですよ！癒はウンディーネ・ティアズ。翔は…」
　「そうか、シルフィード・フェザーですね！」
　クリスも言葉の意味を続け、うなづく。
　「そっか…だから『己が身に五つを示せ。』って言ったのか。でも、練金魔
法も同じように四つからなって五つを生み出すけど…。自分の身に示せないも
んね。」
　朋樹は頭をポリポリと掻きながら言うが、イリスは笑いながら揚げ足を取る。
　「ちょっと、そんなコトしたら自分の身が危ういじゃない。朋樹ってば結構
抜けてんのねぇ…。」
　「イリス、そんなこと言っちゃダメだよ。朋樹くんが抜けてるのは「結構」
じゃなくって「時々」なんだから。」
　「ト、トリーシャちゃん…。それ、全然フォローになってない…。」
　トリーシャの無意味なフォローに突っ込むディアーナだが、実際それに近い
ものがあるので少々笑いをこらえていたりする。
　「ゴホン、さて、そろそろ答えが分かったようだね。では、子供達よ、己が
身に示してもらおうか。」
　半分漫才と化している五人＋一匹に対し、ドラゴンは答えを求める。
　「じゃ、一番手…ウンディーネ・ティアズ！クリスくんどうぞ！」
　「ええ～！ぼ、僕ですかぁ～～？じゃ…」
　トリーシャの言葉に、クリスは渋々と言った感じで詠唱を始める。
　『水の精ウンディーネよ、汝らが水の恩恵によって
　　我が身を癒さん…ウンディーネ・ティアズ』
　ウンディーネが現れ、クリスの体に宿り淡く青く光り出す。
　「さて、次はシェリル、シルフィード・フェザ～～♪」
　「わたし？！…わかったわ、トリーシャちゃん…。」
　『風の精シルフよ、汝の力により
　　我が身に風の翼を与えん…シルフィード・フェザー』
　シルフの風の翼が、優しくシェリルを包み込む。
　「お次は…ディアーナさ～ん！イシュタル・ブレス！」
　「あ、あたしですかぁ～～！？…じゃぁ、いきます…。」
　『地の精イシュタル…その大地を司りし
　　大いなる守護の力で我を守護せん…イシュタル・ブレス』
　イシュタルの力で大地の守護を受けたディアーナの身が淡い緑色に輝きだす。
　「次はボク！四番トリーシャ、いっきま～す！」
　『炎の精イフリートよ
　　その猛る怒りの炎の加護を我に与えよ
　　イフリータ・キッス！』
　イフリートの炎がトリーシャを包み赤い炎がその身に宿る。
　「え～…。最後は朋樹くん、張り切ってエーテル・バーストいってみよ～！」
　「やっぱり…、でもなんで僕を最後にもってくるかな…。」
　『我、四大なる精を統べし者に命ず…
　　汝が力、我が身に宿らせ力となせ…エーテル・バースト』
　朋樹の周りにそれぞれの精を表す色の光が集い、一つになったかと思うと一
気に体に宿る。
　「正解です。」
　ドラゴンは五人が魔法を使い終わったと同時ににっこりと笑った。
　「あ、ちなみにそれぞれの魔法の組み合わせは、髪の色に基づいて決めてみ
ました♪」
　「じゃ、僕はなんでエーテル・バーストだったの？」
　トリーシャの言葉に、朋樹は疲れたようにたずねる。エーテル・バーストは
結構疲れるらしい。
　「朋樹くんの髪の色、真っ黒だから。」
　「って、たったそれだけの理由で…？」
　「で、でも問題解けたんだし、これで灯火茸もらえるんですよね？」
　「ええ、では…これがそうです。」
　と、ドラゴンは柔らかな光を放つ一つのキノコを手に持ってくる。
　「ふ～ん…。これが…灯火茸。」
　「以外と小さいのね。あたし、もっとおっきいのかと思ったのに。」
　「じゃ、お受け取りします。ありがとうございます。」
　皆を代表し、（一応）リーダーのクリスがそれを受け取る。そして、扱いに
長けている朋樹がそれを渡され、リュックの中に大切にしまった。
　「あの…一つお聞きしたいことがあるんですけど…」
　「なんですか？」
　「この灯火茸、光が失われることがあるんでしょうか？もしそうだとしたら、
後どのくらいで光が消えてしまうんですか？」
　シェリルの問いに、ドラゴンは少し考えると、その首を横にふる。
　「いやいや、その光が失われることはありません。灯火茸の光は…まぁ、食
べたり腐ったりてしキノコ自体が無くなってしまわない限り、消えたりはしま
せんよ。」
　「そうですか…。ありがとうございました。」
　シェリルはその話を聞きながらメモに何やら書き込み、ぱたんと閉じると頭
を下げる。
　「じゃ、そろそろ行こうよ。今戻らないと日が落ちちゃうよ？今日の夕食の
こともあるんだし。」
　朋樹は明かりの下で時計を見ると、急かすように言った。時刻としてはまだ
早い時間だが、皆の洞窟を歩くスピードを考えると出発を考えなければならな
いのだ。
　「をや、もうそんな時間ですか。では気を付けて行きなさい。くれぐれも急
ぎすぎないようにしてくださいね。」
　ドラゴンは大きな手を器用に皆に振ってみせると、ゆっくりと元いた場所に
戻っていく。
　「さよなら…ありがとうございました…！」
　五人＋一匹は灯火茸の群生地から出るとき、もう一度ドラゴンに向かって頭
を下げた。

　こうして、初めての洞窟探検は帰りに二～三回ある人物が転んだ以外、気に
していたモンスターも出ることなく無事（？）に外に出ることができたのだった。

　後書き

　ども、ともです。…洞窟編、あっさり終わっちゃいましたね…（＾＾；
こっちメインになるはずだったんだけどなぁ…（爆）

　そんなこんなで、次は佳境に入っていきます。…わてって、闘い好きなのか
なぁ。結構多いな、割合的に。

　今回、一番苦労したのは「ドラゴンの問題」でした。多少難しいかな？と思っ
たんですが、たぶん大丈夫だろう（爆）と思ってこんなにしちゃいました。（笑）
　んでは、また。ともでした。

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