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「NO-7 〜思わぬ敵〜」 とも  (MAIL)
 NO-7 〜思わぬ敵〜







 「いろいろありがとうございました。」
 次の日の朝。洞窟の前で、五人はそろって頭を下げた。
 「いや、君たちのように人間にもいい者がいることを知ったのだ。これはそ
の礼みたいなものだよ。それより、また遊びに来るといい。ここは春になると
珍しい花が咲く。今度、それを見せてあげよう。…!」
 「特に、朋樹は絶対来てよね!」
 族長はにっこりと笑い、朋樹達を見送ろうとした。イリスは朋樹が気に入っ
たのか、名残惜しそうにしている。と、族長が急に鋭い目つきをする。そして
五人を守るようにそばによると低いうなり声をあげる。
 「帰るにはまだ早いようだ。それに、君達を面倒事に巻き込んでしまった…。」
 族長の視線がゆっくりと気配を嗅ぎつけるように左右に動く。四〜五〇メー
トル先の茂みに視線がいったとき、若い男の声が響いた。
 「おや?狼と人間が一緒とは…面白い組み合わせですねぇ。」
 族長の視線の先から出てきたのは、サングラスをかけた若い青年だった。パ
チン、と青年が指を鳴らすと、その後ろに二〇人ほどの屈強な男達がぞろぞろ
と出てくる。皆それぞれに得物を持ち、今にも闘いに突入しそうだ。木々に隠
れてはいるが、その後ろにはかなりの大男も見える。
 「今日は力ずくでも我々と共に来ていただきましょうか。いい加減、研究の
方も遅れ気味でしてね…。」
 感情を込めず、淡々と言い放つ青年。
 「断る!貴様達のような…悪魔のような連中に手を貸す気なんぞ無い!」
 族長は威嚇のうなり声をやめずに怒りをぶつける。
 「やれやれ…。ならば、これならどうです?お優しい族長さん?」
 青年の傍らの男が、いつの間に捕らえたのか、クリスを抱えながら前にでて
きた。連中に気を取られた隙にやられたのだろう、族長でさえも気付いていな
かった。その行動に族長は、さらに怒りをあらわにする。
 「貴様…!どこまで卑怯なのだ!」
 「卑怯…?計算高いと言って下さい。はっはっは…。」
 手出しできないことをいいことに、青年はその場で笑い続ける。が…
 「…エネジー・アロー!」
 その時、青年の笑い声を引き裂く女性の声が響き、クリスを抱えていた男の
後頭部に魔法が直撃する。抱えられていたクリスは放り出されて宙を舞ったも
のの、違う方向から飛んできた赤髪の女性に助けられた。
 「ったく、危なっかしい連中やなぁ。もう少し、周りに気をくばらなあかん
で?」
 なんと、クリスを助けたのはアルザだった。そして…
 「ホント、あたし達が助けなかったら危ないとこだったわよ。あんた達、後
でなんかオゴりなさいよね。」
 と言いながら、ヴァナも茂みの奥から姿を現す。
 「ちょ…な、なんでここに…?」
 「紅蓮から頼まれたのよ。あんたら尾行して、危険なことに巻き込まれたら
守ってやってくれって。頭下げられちゃ断れないわ。それに、断る理由も無い
しね。」
 顔にかかる髪を掻き上げながら言うヴァナ。その時、ポカンとしていた男達
の内の一人が我に返り、いきり立って後ろからヴァナに襲いかかる。
 「この女ぁ…!よくもやっ…。」
 ミシッ…
 後ろを見ず、襲いかかってきた男の顔面に裏拳をかますヴァナ。男はそのま
ま崩れ落ちるように気絶してしまう。
 「まったく、か弱い女性を後ろから襲うなんて最低ね。どんな教育されてた
のかしら…。」
 「…か弱い…のかなぁ…。」
 「そこ…?何か言ったかしら…?」
 朋樹のつぶやきに気付いたヴァナは、睨みを利かせながらゆっくりと尋ねた。
 「いえ、何でもないです。」
 「ならいいけど。」
 そのやりとりを見ていた青年は、朋樹の顔を見てポン、と手を打った。
 「思い出しましたよ。そこの…黒髪の少年はあれですね?以前…凶悪なオー
ガーを倒しましたよね?しかも一撃で。」
 「?!…な、なんで知ってるの!?」
 朋樹がオーガーを倒した、という事実は皆が知っていることだ。しかし、一
撃で倒した、ということは誰も…リカルドとアルベルト以外は誰も知らないは
ずである。本人を含め、その場にいた三人以外は…。
 「あのオーガーは失敗作でしてね。いやぁ、処理してくれてありがとうござ
います。あのクズも利用価値といったら部品しかないんですよ?そのくせに逃
げ出してしまって。あなたがあっさりと殺してくれたおかげで、回収は楽でし
た。でもねぇ…。あんなクズ如きに墓なんぞ過ぎたものですよ。掘り起こすの、
大変だったんですよ?あいつも、失敗作とは言え材料なんですから。」
 「…。」
 「さぁ、あなた達もこんなとこで死にたくないんだったら族長さんを渡して
もらえませんかね?族長さんなら、きっといい材料に…。」
 ドガァッ!…メキメキィ…ズドォン!
 朋樹の横にあった木が大きな音を立てて倒れる。朋樹が怒りにまかせて殴っ
たためだ。その拳には血がにじんでいる。
 「材料…?」
 木を倒し、青年をにらみつけながら怒りに震えた声でつぶやく。
 「死んだ者に対してクズとかいろいろ言ってくれるね…。そういう、死者へ
の暴言…は許さないよ!」
 「…。こんな人が同じ人間だなんて…!」
 「どんな人にも、命を弄んでいい権利なんて無いはずです!」
 「ふ〜ん、そないなこと言うんか…。いい度胸やないか!」
 皆、口々に怒りの言葉をあらわにする。が、青年はそれを鼻で笑っていた。
 「ふん、死んだら単なる肉の塊にしか過ぎないでしょう?私たちはそれを利
用し、役立てえているだけですよ。」
 「ほんっとにむかつくヤツね。あたし達にケンカ売っといて後悔しないこと
ね…ライトニング・ジャベリン!」
 バリバリバリィ!
 「ぐああぁぁ!」
 ヴァナはニヤリと笑うといつの間に詠唱をしていたのだろうか、いきなり魔
法を放った。突如宣戦布告したのだ。
 「くそっ!出てこい、四号!」
 青年が声を張り上げると、それに反応したように一匹のモンスターが出てく
る。大男と思っていたのはモンスターだった。
 「いいですか!あの狼!それとあのガキども、女ども!すべてあなたの獲物
です!ただし、狼だけは生け捕りにしなさい!」
 「ボクノ獲物?モウ、暴力ハ…。」
 「うるさい!」
 なぜか反論するモンスターに対し、青年は笛を取り出すとそれを吹こうとす
る。
 「ワ、分カリマシタ!ダカラソノ笛、ヤメテクダサイ!ボクガボクデナクナ
ル!」
 四号と呼ばれたモンスターは、笛を見るなりおびえだす。
 「あなたのようなモルモットは、黙って私の言うことをきいてればいいんで
す!狼以外の獲物は必ず殺しなさい!どんな手を使っても!」
 青年はそれにかまわず大声で叫ぶと、笛を吹いた。
 ピィィィィィ!
 直後、モンスターは静かに朋樹達の方に向き直ると、他の男達共と一緒に襲
いかかってきた。その目にさっきのような戸惑いの色は無く、ただ任務を遂行
する機械のような冷たい光が宿っていた。

 「ディアーナ、シェリル、トリーシャ。三人であの笛奪っちゃってくれない
?で、ちゃっちゃと奪って、一人は笛を持って僕のとこに。あとの二人は…、
クリスとアルザの方を手伝って。」
 メガネを取り、すでに戦闘態勢に入っていた朋樹は、三人を集めると耳打ち
をした。
 「なるほど。あのモンスターを止めちゃおうってわけですね?」
 「そうか!あったまいい〜♪」
 「じゃ、行きましょう!」
 三人はそれに同意すると、四〜五人のボディガードと後ろで高見の見物をし
ている青年のもとへと走って行く。
 「というわけで、クリス、ちょっときついと思うけど、アルザと一緒に男達
の足止めしてて。ティナ…っと、今はヴァナだよね。僕と一緒に四号って言う
モンスターをくい止めるよ!族長達は、出来るだけ後ろに下がってて下さい!」
 「よっしゃ!行くで、クリス!」
 「は、はい!朋樹くん、気を付けて!」
 「大丈夫よ。あたしが付いてんだから。」
 心配するクリスに、ヴァナはドン、と自分の胸を叩いてみせた。





 後書き

 ども。ともです。…うう、描写ムズい…(_ _;
しかも、長くなってるしぃぃぃぃ!!わては長いのが好きなんかぁ?!

 さて…。次はほぼ全員が闘いの中に身を投じます。みんな、疲れてんのにな
ぁ…。ま、頑張ってくれるでしょう。(爆)
 こっちは、ある意味おっかないですね。(いや、ホントに(笑))

んでは。ともでした。



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