中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「もう一つの世界で NO-1「狂気」」 とも  (MAIL)
 「…なんて、消えればいいんだ。」
 少年空を睨むようにしては憎々しげに言い放つ。地には六忙星を基準とした
真っ赤な魔法陣が不気味な輝きを放っていた。
 「…だって、…だって。表だけいい顔してる…みんな。みんな…!」
 さらに何名かの名を次々とあげ、魔力を集中する。そして一冊の本を取り出
すと、あるページを見ながらゆっくりと詠唱を始めた。
 『月よ…その鮮血の如き真紅の色に染まり、禍々しき力を宿し魔なる月よ。
  我が魔力を糧とし、彼の者らを異なる世界へと誘わん…』
 次々と詠唱をしながら、少年は魔法陣へと近づく。近づくにつれ、その輝き
はさらに禍々しく、強い力を放っていく。
 『我が願いに答えよ!』
 少年が最後に力ある言葉を発すると同時に、魔法陣から1mほど上に赤い液
体の入った小瓶が現れる。
 「これで…ぼくも認めてもらえる…。もう、あいつらなんかにいじめられる
ことなんてないんだ…!逆に、やられる側の苦しみを教え込んでやる…!」
 少年は小瓶を取ると、その場で高らかに笑い始めた。そして、その遙か上空
では…かつて、『紅月』と呼ばれた悲しき亡霊…が彷徨っていたことを見守っ
ていた、真紅の満月が静かに輝いていた。







 「こんにちわ〜。」
 「は〜い…。あ、朋樹くん。先生、待ってますよ。」
 「うん。でも、今日はなんだろう?」
 トーヤに呼ばれた朋樹をディアーナが出迎え、いつものように挨拶を交わす
と診察室へと二人は足を運ぶ。

 「こんにちわ。ドクター、今日は何の調合?」
 いつものようにイスへ座るなり朋樹は腕をまくる。特別な薬草の扱いや、少
々複雑な調合をするとき、朋樹はよく手伝いを頼まれるのだ。
 「すまんな、今日は違う。少し野暮用を頼まれてくれないか?」
 「え?うん、いいけど。」
 トーヤの言葉にうなづく朋樹。
 「今日、急に予約の患者が多くなってしまってな。それで、ジョートショッ
プと夜鳴鳥雑貨店へ荷物を取りに行ってきてほしい。必要な薬品がどっかの馬
鹿のせいで残り少なくなってしまったんだ。」
 トーヤはそこで息をつくとディアーナをじろりと睨む。
 「うぅ…。」
 「でも、それならディアーナ一人でもいいんじゃないの?」
 「それがな…こいつ一人では無理なんだ。それに、一つや二つ程度だったら
うちの馬鹿弟子一人で十分だ。」
 「えぐえぐ…(泣)」
 「で、僕に頼まざるをえなくなった、と。」
 納得したように、朋樹はうんうんと何度も深くうなづく。
 「すまんな、急に呼びつけた上に使い走りのようなことを頼んで。」
 「いいよ、どうせ暇だったし。で、急ぎなんでしょ?ディアーナ、いこ。」
 「え?あっ…と…、じゃ、行ってきます、先生!」
 ベシャ!
 「ふええ…(T-T)」
 「ほら、変に急ぐから…」
 朋樹は倒れたディアーナを立たせると、出入り口から出ていった。
 「…やれやれ。ディアーナも見習って欲しいものだな、あの器用さを。」
 トーヤはため息混じりにつぶやくと、かたわらにあったカルテに目を通し始
めた。



 カランカラン♪
 「こんにちわ。」
 「あれ?朋樹さんにディアーナさん。今日はどうしたッスか?」
 出迎えてくれたのはテディ一人。デュークらは仕事中としても、アリサの姿
が見あたらない。
 「うん、ドクターに頼まれて薬もらいに来たんだけど。」
 「なるほど、そう言うことッスか。ご主人様から聞いてるッス。とりあえず、
こっちの地下室に来て欲しいッス。今、ご主人様が薬を探してるはずッスから。」
 そういうと、テディは先導するようにトコトコと歩いていく。二人はその後
に続いた。

 数分後
 「ごめんなさいね、あまりなくって。お預かりしていたものなのに…」
 「いえ、薬は使うのが当然ですよ。こちらこそ、無理に保存しててもらった
んですから。」
 「そうそう。今日ね、これからパイを焼くのよ。よかったら夕方当たりにで
も、みんなを連れていらっしゃいな。」
 「はい、じゃあお言葉に甘えて。後でみんなでお伺いします。それじゃ、あ
りがとうございました。」



 同時刻…日のあたる丘公園前
 「ったく、あの弱虫が俺らを呼び出すなんてよぉ。いい度胸してるじゃねぇ
か。」
 「ああ、またシメてやろうぜ。おれ、ああいうウジウジしたヤツ、ムカつく
んだよ。」
 エンフィールド学園生の中でも特に悪名を持つ二人が、恐怖に顔を歪ませる
時間を知らずに待ち続ける姿があった。



 「ふ〜ん、それは大変ですね。僕も手伝いますよ。」
 「おう、俺も手伝うぜ。女の子に重労働させるわけにはいかないからな。」
 ジョートショップを出た直後。ぶらぶらと散歩していたクリスとアレフが手
伝いを申し出、四人で夜鳴鳥雑貨店へ向かうことになった。そして、公園にさ
しかかったとき…
 「もう、お前らなんて恐くないんだ!」
 「言ってくれるじゃねぇか、弱虫くん?」
 「ぼくは弱虫くんじゃない!コウっていう名前があるんだ!」
 二,三人の怒鳴り声が響いてきた。四人が気になって声のする方へ行ってみ
ると、学園生の中で悪いうわさの絶えない二人の少年と、顔を真っ赤にして対
抗している少年がいた。
 「朋樹くん、あれ…!」
 「うん、コウだよね。って、相手が悪すぎるよ。僕、ちょっと加勢してくる。」
 「僕も行きます。」
 「あたしも!黙ってみていられないですよ!」
 「俺も行く。一人だけ傍観者なんてカッコ悪ぃからな。」
 四人はうなづき合うと、今にもケンカへと進展しそうな三人の元へと急いだ。

 「コウ、何やってんの?また、呼び出されたの?」
 「ゲッ!朋樹!…コウ、お前はめやがったな!わざと俺ら呼び出して、こい
つにシメさせようって魂胆か。お前の方がよっぽど卑怯もんだぜ。」
 「…なに?朋樹にクリス。何か用?」
 コウはジロリと助けに来た四人を睨みつけると、少年らを再び睨みつける。
 「お前ッ…せっかく助けに来たのにその言いぐさは何だよ!」
 「うるさいな…!どうせ、みんな偽善者のくせに。朋樹だってその娘にいい
とこ見せたかっただけだろ?」
 「コウ…?」
 「いいよ、そんなヤツ、嫌いだ。…消えろ。」
 コウは懐から赤い液体の入った小瓶を二つほど取り出すと、朋樹に向かって
投げつけた。
 「え?ちょっと…」
 パリン…
 小瓶は朋樹の頭の上でぶつかり合い、小さな音を立てて砕け散った。そして…
 「つめた…」
 「きゃ…」
 「え…?」
 朋樹の両隣にいたディアーナとクリスにもその液体はかかり…三人は霧のよ
うに姿を消した。










 後書き

 ども、ともです。う〜ん、前置き長すぎ。(笑)
何はともあれ、新作、「もう一つの世界で」をお送りします。

 次の話はちょっと混乱するかもしれませんね。場所がちょくちょく入れ替わ
りますから。

こんなとこで。ともでした。

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