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「NO-10 「故郷へ」」 とも  (MAIL)



 「…ふぁ〜あ…。むにゅ…じかん…時間…?」
 昨晩。結局またどんちゃん騒ぎへと発展してしまい、全員居間で雑魚寝状態だった(マ
スターやレン達もまた、一緒にいた)。彩は寝ぼけ眼で時計を見、…凍りついた。
 「みんな、起きなさ〜〜〜い!!」
 次の瞬間、怒鳴りながら全員を叩き起こしていく。
 「ふぇ…? どうしたの…?」
 「もう10時よ! みんな、早く起きてッッッ!!」
 『…えええッッ!?』
 皆も一瞬凍りつき、慌てて用意を始める。女の子三人はダッシュで着替えのため二階に
走った。
 レン達も一応着替え、マスターも慌てて準備に取りかかった。
 「ほら、朋樹ちゃんにクリスちゃん! 早く着替えて!」
 「「分かってるよ(ますよ)!」」
 声をハモらせ、二人も着替えに急ぐ。向こうの服装になるためだ。

 …30分後。
 お土産や荷物を車に詰め込み、乗れない者らはバイクで急ぐ。元の場所に行くには少な
くとも50分。そして、それはバイクでの時間だ。車だと通れないところもあるため、そ
こに+20分は見なければならない。

 11時45分。予定の時間よりは少々遅れたがなんとか着いた。荷物を持ち、ディアー
ナとクリスの記憶を頼りに三人が現れた場所に行く。

 5分後。その場所に着き、一同は最後の会話を楽しんでいた。
 「ディアーナ、あたし達のこと忘れないでよね!」
 「そうよ、親友なんだから!」
 「はい!」
 女の子三人は、そろって泣いていた。三人でとった写真をもって。

 「じゃあな、朋樹、クリス。」
 「うん、いざこざは控えめにね。」
 「はい、皆さんもお元気で。」
 「おいおい、こんな時にまで敬語使うなよ…」
 「すいません、元々こういう口調なんです…」
 「ま、いいや。紅蓮にもよろしくいっといてくれ。」
 「はい、分かりました。必ず伝えておきます…!」
 男五人は笑って別れを惜しんでいた。

 「朋樹くん、頼んだよ。」
 「うん、ちゃんと紅蓮に渡すよ。」
 マスターの言葉に頷きながら、朋樹は箱を受け取った。これの中には、届け物が入って
いる。持っていけるという保証はどこにもないが、持っていけたら必ず渡すという約束に
なっていた。

 「朋樹、馬鹿息子によろしく…ってーな…蹴るなよ、彩。」
 「朋樹ちゃんに変なこと頼むからでしょ。元気でね。それと、あの子にもそう伝えてちょ
うだい。」
 「あ、そうだ。…これ、紅蓮から。」
 朋樹はあの時買ったものを手渡した。言われた通りに、ルビーは彩、翡翠は翔に。
 「これは…」
 「二人への誕生日プレゼントだって。時期がずれちゃったけど…って。」
 「あの馬鹿息子が…」
 「あ…なた、そんなこと…言っちゃ…」
 彩は、それを聞いた途端涙を流す。翔もそっぽを向きつつも涙を流した。

 「おーい、レン達。レミアと由香も、ちょっと来て〜。」
 「どうした?」
 「うん、最後に…。はい、この手にはなにもありません。」
 「当たり前じゃない。」
 「で、呪文を唱えます。……具現化せよ…!」
 途端、朋樹の手に一つのピアスが出てくる。
 「はい、レミア。…で」
 さらに一つ。そしてもう一つ。五人分行き渡ったところで朋樹は一息つく。
 「それ、何やっても壊れないはずだよ。実験済みだから。最後の、僕からのプレゼント。」
 そういうと、朋樹はディアーナとクリスを促して荷物を持つ。それと同時に、12時を
告げる音楽が響いた。直後、三人の足下から透明になっていく。
 「レミアさん、由香さん!あたし、一生このこと忘れません!」
 泣きながら、ディアーナは叫んだ。
 「もしも…またここに来ちゃったら…! また、バイクに乗せて下さいね!」
 クリスも、涙でずれたメガネを直しつつ叫ぶ。
 「…じゃ。おじさんにおばさん、みんな、マスター。ありが…」
 言い終わらないうちに…三人の姿は消えた。皆が託した物と共に…



 ヒュン!
 次の瞬間、三人は日のあたる丘公園の前…あの時消えた場所にたっていた。周りに人影
は見えず、しばらく三人はそのまま立ちつくす。
 「…とう…」
 「え?」
 「ううん、なんでもないよ。さ、とりあえずどうしよう?」
 「そうですね…紅蓮さんにお届け物ってのはどうです?」
 「いいですね、クリスくん。」
 「そうだね、行こうか。」
 三人は軽く頷き合うと、さくら亭へと歩いていった。


 カララ〜ン♪
 今日もさくら亭のベルが、新たな客の訪れを告げる。
 「とも?!」
 「え?! か、帰って来たんだ…!」
 「うん、ただいま! 紅蓮にお届け物だよ!」
 そういって、朋樹達は紅蓮にマスターの箱を渡した。
 それは、かつて紅蓮が送った映像投写機に酷似した、もう一つの映像投写機だった。紅
蓮の親の、友人のメッセージがいっぱいに詰まっている贈り物が…
 「ご苦労さん、とも。で、あれは…?」
 「うん、ちゃんと渡したよ。で、お店の人からこれ…」
 「は? あのじいさん…。…って、この宝石魔力こもってっぞ?! 何モンだ、あのじ
いさん…」
 もう一つの届け物に、紅蓮は言葉を失っていた。

 「朋樹ッ!」
 話している最中、駆けつけたイリスが朋樹に飛び乗った。
 「バカバカバカァ! 心配してたんだから!」
 「はいはい…うおぇ!?」
 ゴスッ!
 「朋樹くんのバカァ! 心配してきてみれば…!」
 「ちょ…! トリーシャ、いきなりどつくことはないん…じゃ…」
 「ボクの気持ちも知らないで…! 心配したんだからね…!」
 と、トリーシャも抱きついてきた。イリスも一緒に、そろってわんわん泣きながら。
 「誰か助けて…」
 「自業自得ですよ、朋樹くん。しばらくそうしてて下さい♪」
 朋樹の呟きも、笑っているディアーナに却下される。

 「クリス! お前、大丈夫だったか?」
 「あ、アレフくん。ええ、大丈…夫…?! ゆ、由羅さん!?」
 久しぶりにアレフと離そうとした矢先、由羅が絡んできた。
 「クリスくん、大丈夫だった?! あたし、もう心配で心配で〜。」
 「あはは…それはいいですけど、離してもらえませんか…?」
 「あれ? クリス、いつの間に耐性ついたんだ? あんまり嫌がってないな。」
 「いや、そんなことは…って、由羅さぁ〜〜〜ん! いい加減に離して下さいよぉ!」
 やっぱり、クリスはクリスだった。(爆)

 「あの…朋樹…?」
 「あ、コウ。…ちょっと助けてくんない?(泣)」
 朋樹は未だにトリーシャとイリスにくっつかれていた。
 「あはは…。うん。トリーシャ、イリス。僕、朋樹と話があるんだけど…」
 ギロッ
 「あ、朋樹、やっぱり後でね…」
 説得しようとするも、コウは二人の勢いにのまれ、何も言えなくなってしまった。


 そして、しばらく経った後。
 「どうしたの? 話って。」
 ようやく解放された朋樹が、コウのもとに来た。コウはやや躊躇するも、勢いよく頭を
下げた。
 「ごめん! 僕のせいで向こうの世界に飛ばされちゃって! 僕にできるコトなんてあ
まりないけど、できることなら何でも言って。できる限り、何でもするから。」
 「じゃ、一週間分。」
 「は?」
 その言葉が理解できず、コウは間抜けな声を出して呆然とする。
 「お昼ご飯一週間分おごってくれればいいよ。それとも、それじゃ多い?」
 「そんなことないよ! でも、そんなことでいいの?」
 「うん、だって…」
 朋樹は嬉しそうな顔をして懐から写真を取り出す。
 「父さんと母さんを、こっちに連れて来れたからね!」
 そういって、朋樹はにっこりと笑いかけた。



 コウの件は、(一応)被害者の朋樹、ディアーナ、クリスの懇願や紅蓮の意見があり、
紅蓮の内密な事後処理によって事故という結果になった。全ての事情を知っている者も了
承している(トリーシャとイリスはかなり渋っていたが)。コウをいじめていた二人が学
園に報告はしていたが、
「本に取り憑いていた魔物がコウに取り憑き、一連の事件を起こした。なお、コウはそれ
に必死に抵抗し、異世界に送り込まれる期間を永久から数日間にまで抑え込んだ。魔物は
その場にいたアレフが何とか眠らせ、紅蓮によって消滅させたれた。」
という報告書を提出、そっちの件についても片が付いた。



 後書き

 ども。ともです。
…ふぅ〜〜〜。やっと終わりました。途中いろんな予定入っちゃったんで、長引きすぎて
しまった…。長いの書いてるからですね。
 このSSの本題は、朋樹と紅蓮の過去です。向こうで何をやっていたのか、家族、友人
はどんな人なのか…。あと、なぜ朋樹がすんなりエンフィールドになじんだのか…という
のも書きましたが。
 反省もありますね。…オリキャラが多い(爆)
八人…いや、名前が付いているので九人ですか。多いですね。でも、元の設定ではもっと
多かったんです(更爆)。縮めて、こうなったわけですから。


 次のSS…どうしよう。書く暇あるのかな…

では。SS読んでくれて感謝です。ともでした。

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