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「NO-3 「親子」」 とも  (MAIL)



 「ん……?あ…れ?ここは…」
 「おい、朋樹!」
 「…レン?ユウ、カズ、由香、レミア…。あれ?ディアーナにクリス…。ここ、
どこ…?」
 ポカ!
 「…!ったいなぁ〜!なに…って、あれ?」
 「何寝ぼけてんだ!お前は戻ってきちまったんだよ!」
 「あ〜…そうなんだ。」
 朋樹はまだ状況を把握しているのかいないのか、ポケ〜っとした顔で周りを見回
す。
 「あちゃ〜…。コウの魔法でこっち飛ばされたんだ…。仕方ないか…。で、どう
するの?」
 「…お前、順応早すぎ…。」
 「ほんっと、相変わらずね〜〜。」
 「まぁ、それが朋樹のいいトコ、なんだがな。」
 「ありがと。じゃ、とりあえず紅蓮の家に行こうよ。消えたまんまだったからね、
僕。今後の相談もあるし。」
 「んじゃ、久しぶりに軽く流すか?衰えていないか見てやるよ。」
 レンはそう言うと、朋樹に自分のバイクを渡す。
 「ディアーナちゃんと二人で乗れよ。…それくらい、やっとけよな。」
 「あの…僕は…?」
 「選択肢は二つ。カズの後ろかレミアの後ろ。」
 「それじゃぁ僕は…」
 「悪ぃ、俺今日は一人乗り用なんだ。」
 「じゃ、あたしの後ろね♪しっかりつかまってないと落ちちゃうから気を付けて
ね♪」
 「ご愁傷様…クリス…」
 ひっそりと、朋樹は手を合わせた。レミアは後ろに人が乗っていようがいまいが
お構いなしに突っ走っていく娘なのだ。
 「じゃぁ、いっくよぉ〜〜〜!」
 「うわぁぁぁぁぁ!!」
 グォォォォォォ……!
 レミアはクリスを乗せるや否や、爆音を残して走り去っていく。残りの四台も続
きながら後について走っていた。



 「おい、宴会だ宴会!よく帰ってきた、朋樹!しかもこんな可愛い娘まで連れて
よ…父さんは嬉しいぞ!」
 「…あなた…。いつから朋樹ちゃんの父親になったの?慎也さん(朋樹の父親の
名だ)とそんな約束でもしていたの?」
 「いや。まったくこれっぽっちもしていない。」
 「だったら自粛なさい。いいわね?さもないと…今日のごちそう抜きよ♪」
 「何ぃ?!…すまん、俺が悪かった。しかし、酒くらいはいいだろう?」
 「…仕方ないわね。羽目を外しすぎなければいいわ。」
 たずねていった途端、朋樹達は問答無用で家の中に招かれた。しかも、あがった
途端これだ。朋樹やレン達はまだ免疫があるのでまだしも、ディアーナとクリスは
まったく免疫がないので呆然としていた。
 「ん?どうした?異世界のお二人さん。そうかそうか、急に歓迎されてうれしさ
のあまり…」
 「感動なんかしてませんよ。唖然としてるだけです。」
 紅蓮の父の言葉に、紅蓮の母はクスリともしないで冷ややかに突き放す。
 「ぐっ……。ああ、俺は蓮の父、翔(しょう)だ。気軽にお兄さんでいいぞ。」
 ゴギィ!
 「ごめんなさいね。蓮の母、彩(あや)です。私のことは自由に呼んでくれて結
構ですから。この人は…「おっさん」とでも呼んで下さいな。あまりそういうとこ
ろは気にしない人ですから。」
 紅蓮の母…彩は口に手を当てて上品に笑うが、足下では紅蓮の父…翔がピクピク
と痙攣している。顎にクリーンヒットしたらしい。
 「はぁ…」
 「(朋樹くん、紅蓮さんの親御さんっていつもこうなの?)」
 「(うん。けど、ぜんっぜん変わってないよ。)」
 「あの…ここ、紅蓮さんの家ですよね?」
 「ああ、正真正銘、紅蓮…蓮は俺の馬鹿息子だが?」
 「いや、なんだか話が…紅蓮さんの家なのに蓮とか…」
 「ん?ああ、うちの馬鹿息子の本名は「紅 蓮」(くれない れん)だよ。略し
て「紅蓮」。聞いてなかったのか?」
 「え?!そうだったんですか?!…そういうこと、全然聞いてなかったですから…」
 『てめぇ!この大馬鹿クソ親父!よりにもよって馬鹿息子はねェだろうが!しか
も思いっきり本名ばらすんじゃねぇっ!!』
 その時。クリスのポケットから、紅蓮の怒声が響きわたった。



 数十分前のさくら亭…
 「はぁ…。少し休憩しよう。無理しすぎるとキツイからな。」
 「はい、それじゃ…」
 シェリルは紅蓮からコーヒーを受け取ると、イスに腰を下ろす。周りには魔力を
貸し与えるために集まった面々が座っていた。試すこと数十回。しかし未だにつな
がった気配がない。向こうの音すらとらえられないのだ。
 「ちきしょう…これじゃあいつらが無事かどうかも分からねェ…!」
 「不謹慎よ?紅蓮さん。ここにいる人達は皆、三人を心配して来ている人達なの
だから…。そのような言葉を言うのは、この場の人間に不安を与えるだけだわ。以
後、慎んでいただきたいわね。」
 紅蓮の言葉に、イヴはクギをさした。ここにいる者皆、無事を信じている者ばか
りなのだ。真には受けないだろうが、十分不安にさせる言葉である。
 「…ああ、悪ぃ。」
 「あたしのクリスくん、どこかで非道い目に…!いやぁ〜!」
 …真に受けているもの約一名。

 「じゃ、始めましょう。」
 数分後、シェリルはゆっくりと立ち上がった。
 「シェリル、もういいのか?」
 「はい、大丈夫です。」
 言いながらシェリルは、再び魔力を集中する。しかし、口では大丈夫とは言って
いるものの実は限界が近づいていた。それを振り払うように、頭を強く振ると詠唱
を始める。
 『音を司る者よ…空間を司る者よ…
 この布を通じ、異なりし場所に飛ばされし
 我が友人との意志の伝達を助けよ…!』
 テーブルの上にあるハンカチが、シェリルの言葉に応じるように鈍く輝き出す…
が、それもすぐに消えてしまった。
 「…くそっ!また失敗か…!」
 紅蓮はしばらくの間耳をすませていたが、何も聞こえなかったのか肩を落とす。
 『…!』
 「あれ?今、誰か…」
 『あの…』
 「これ?!クリスの声だよ!」
 「っしゃ!つながったか…!」
 すかさずトリーシャがクリスの声と判別し、紅蓮は思わずガッツポーズを取る。
が…
 『…馬鹿息子の本名は「紅 蓮」(くれない れん)だよ。略して…』
 「なんだ、紅蓮の本名って蓮ッて言うん…」
 偶然、紅蓮の父親らしき男の声を聞いたアレフはボソリとつぶやいた。そして、
紅蓮はというと…
 「てめぇ!この大馬鹿クソ親父!よりにもよって馬鹿息子はねェだろうが!しか
も思いっきり本名ばらすんじゃねぇっ!!」
 アレフの言葉をさえぎり、置いてあったハンカチに向かって声の限り怒鳴ってい
た。



 「うおぅ?!…どこだ?!馬鹿息子!」
 『見えるか阿呆!!声だけだ!』
 「あ、あの!ちょっと落ち着いて下さいよ、二人とも!え〜っと…」
 クリスは紅蓮の声が出たハンカチを皆の前に出す。
 「蓮!無事なのね!?」
 『ああ、お袋か。大丈夫、ピンピンしてる。』
 彩は久しぶりに我が子の声を聞いたため、泣きそうになりながら話しかけた。
 「紅蓮?!俺だ、レンだ!ユウ、カズ、由香、レミアもいる!」
 『おう、お前らもいたのか?!久しぶりだな、相変わらず走りまわってるのか?』
 「ああ、みんな相変わらずだ。」
 『そっか、あんま無茶はすんなよ?またいざこざに巻き込まれても助けてやれね
ーんだからな。』
 『紅蓮さん、時間が…』
 『そうだった、悪ぃ、シェリル。…で、だ。俺が連絡したのは他でもない…』
 「おい!馬鹿息子!今の可愛い声した娘は誰…」
 バキィ!
 「…蓮、話を続けなさい。」
 話の腰を折ろうとした翔だが、あっけなく彩の一撃で撃沈する。
 『ああ。で、とも達三人がそっちにいることが出来る時間が限られてる。そっち
の時間にして4日…96時間。だから…お袋。その間面倒見ておいてくれないか…?』
 「まかせなさい、頼まれなくても面倒見るわよ。…でも、4日でお別れっていう
のはちょっと寂しいわね…」
 『とも、ちょっと頼みがある。ちょっと俺の声が出てる布に耳を近づけてくれな
いか?』
 「え?…うん。」
 『…、……か?』
 「え?…そうだけど。」
 『そう…、………だ、頼む。』
 「うん、頼まれたよ。まかせといて。」
 朋樹と紅蓮は小声で何事か話すと、朋樹は真剣な顔つきでうなづいた。
 『んじゃ、そろそろ通信途絶えるみてぇだから…な。親父、お袋。まだ話し足り
ないけど…しかたねぇ。最後に…直接話できて嬉しかったぜ。こう言うのも恥ずか
しいが…二人の子供で良かった。俺はそれを誇りに思ってる。』
 「やっぱ、馬鹿息子だな。んな臭いセリフ吐くように育てた覚えはない。…しか
し、だ。蓮っつー息子は確かにいた。俺の息子なら、強く生きるだろ。もう、一人
立ちできるくらいにな。」
 「蓮…ありがとうね。私も誇りに思うわ…あなたという息子がいたことを。そし
て、お父さんの言ったように…強く在りなさい、常に。それが私の…お母さんの最
後のお願い…よ。」
 「紅蓮…話できて嬉しかったぜ。」
 『ああ、無茶はすんなよ。…それじゃあ…元気で…!』
 その言葉を最後に紅蓮の言葉は途絶え、ハンカチからは一切の音すら聞こえなく
なっていた。

 「で、なんだったの?朋樹ちゃん。」
 紅蓮からの通信が終わった直後、彩は朋樹と紅蓮が交わした会話の内容が気にな
ったのだろう。逃がさないように朋樹の肩を掴む。
 「あ…ごめん、彩おばさん。ちょっと内緒なんだ。あの…さ、紅蓮の貯金まだ残
ってる?」
 「え?ええ、まだあるけど…」
 「よかった。ちょっと買いたいものあるっていうから、貸してもらえないかな?」
 「分かったわ。…もしかして…ティナちゃんへの婚約指輪?」
 真面目な顔してサラリととんでもないことを言う彩に、朋樹は思わず失言する。
 「どっ…どういう解釈すればそういう結果になるの?!まったく…この親にして
この子ありだよ…。それに、紅蓮はそういうことは自分でやるってば…。」
 「だって…あの子厳しい生活してると思ってね…」
 「大丈夫。仕事もあるし、ちゃんと生活してるよ。」
 「そうなの…?ねぇ、クリスちゃん。どうなの?」
 「え?あ、僕にも聞くんですか?!…きっちり仕事してますよ。ウェイターや講
師…後、自警団の魔法の講師…ですね。授業も分かりやすいし、年も近いんで人気
ありますよ。」
 「なにぃ?!あの馬鹿息子が講…じ…」
 バキッ!
 「あなた、そんなこと言ったら蓮がかわいそうでしょう?」
 「…なら、俺の心配もしてくれ…」
 しばき倒された翔は、最後に一言言うと突っ伏して気絶してしまう。
 「でも、あの子がね…。一目、見たかったわ…」
 「ほんと、あたしも見たいわね。由香もそう思わない?」
 「でもさ、紅蓮が講師してるっていうトコ。想像してみなさいよ。意外と笑えな
い?」
 「ぷっ…確かにね。でも意外よね…違う世界に飛ばされたと思ったら、滅茶苦茶
強くなってる上に彼女作っててさ。あげく、ウェイターに学校の講師よ?」
 「そんなこと言っちゃダメだよ。結構苦労もしてるんだからさ。」
 レミアと由香もおしゃべりに、朋樹が思わず口を挟む。
 「そんなに知りたいんだったら、教えるよ。ただし、僕が言える範囲で、ね。」
 朋樹は片目をつぶり、イタズラっぽく笑いながら言った。





 後書き

 ども。ともです。…やっちまったにょ〜〜!(爆)
 見事に暴走してます…紅蓮の親父。ま、基本的にこういうキャラって書いてて楽し
いんですけどね。(笑)
 しかも、モデルがいるから書きやすい書きやすい。…ちなみにモデルは実在の人物
だったりします。(爆)
 紅蓮のお袋さんも暴走してます…。…恐い家族です。こういう家族の中で育ったか
ら、紅蓮は口が悪かったり…時々変なこと言ったり…あんまり動じない性格だったり
するんでしょうね。(笑)しかも、やけに丈夫だし。

 次は…さらに暴走が続きます。いろんな意味で。(爆)
…そろそろ異世界の方にしぼろうかな…。書いてて混乱しそうだったし。

んでは。ともでした。

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