中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「NO-6 「守護の石」」 とも  (MAIL)




 次の日。
 「そういえばさ…」
 「ん? どうした?」
 「なになに? 今日の予定、決まったの?」
 朋樹のつぶやきに反応するのはユウと由香。少々難しい顔をしている朋樹に反し、心底
楽しそうだ。
 「えっと…。確か、みんなまだ学校行ってるよね?」
 「当たり前じゃない。五人が五人とも、同じ学校よ。朋樹や紅蓮も一緒の学校だったで
しょ。」
 「じゃ、学校は? 確か、今日は学校ある日だよね?」
 『もちろん…サボるぜ(わよ)!!』
 その問いを待っていたかのように、五人はハモらせて答えた。朋樹達三人+レン達五人
+彩&翔の十人で食卓を囲んでいる最中のことである。
 「あなた達、そんなことして大丈夫なの?」
 「あ、それなら大丈夫です。こんなこともあろうかと代返とか頼んでますし。少しくら
い休んでも、うちの学校は何も言いませんから。ね、みんな。」
 「そうそう。下手な騒ぎ起こさなけりゃ大丈夫。朋樹と紅蓮だって、売られてし仕方な
くケンカに応じただけだから、別に謹慎処分とか停学になったりしなかったし。」
 「朋樹くんと紅蓮さん、そんなに騒ぎ起こしてたの?」
 「ああ、二人の友達が抗争に巻き込まれてやばい状態になっちまってさ。で、運悪く二
人も巻き込まれた。そこでそいつがリンチにあった。二人は当然助けようとする。しかし、
連中はそれが邪魔されないように二人に襲いかかった。しかも、2対30だぜ。んで、そ
いつらは逆に返り討ちにあって、紅蓮と朋樹はその筋のヤツらに狙われる羽目になった…。」
 「ユウ、お願いだからばらさないで…。それに、追われるって…。どこぞのドラマじゃ
あるまいし。」
 「朋樹ちゃん、そんなことがあったの…?」
 声でふと顔とあげると、いつの間にか朋樹の脇に彩がいた。しかも、ちょっと怒ってい
るような顔つきだったりする。
 「えぅ…あ、その…う…と…」
 「もしかして…負けたなんてことないでしょうね?!」
 「は? …ってそっちの方?! (怒られるかと思った…)そんなことないよ。大人数
で来られたこともあったけど、狭いとこにおびき寄せて…ってね。」
 「ま、少人数対大人数だとそういう戦い方が有効だものね。八〇点ってとこね。」
 呟きながら、彩は納得したように何度も頷く。その行為に注意もせず。
 「…話、横道それてていいんですか?」
 「そうそう。いいこと言うじゃない、クリスくん♪」
 「うわぁ!か、勘弁して下さいよぉ!」
 どさくさ紛れで、レミアはクリスにくっつく。由羅みたいだが、クリスがいやがると手
加減する分、レミアの方がまだいい方なのだろうが。
 「じゃ、また八人で行動する?」
 「ううん。ね、ディアーナ。あたし達とちょっと出かけない?良いお店知ってるのよ、
ケーキの美味しいとこ。」
 「…え? いいんですか?」
 「行ってくれば? 大丈夫。この二人がついてるんなら、そこらの5,6人くらいのヤ
ツなんてアッという間にのしちゃうから。」
 「………」
 「ずいぶんと非道い言い草じゃない?」
 「…別に〜♪」
 由香がディアーナを誘い、ディアーナの沈黙をいいことに朋樹がチャチャを入れる。暇
さえあれば、冗談を交えて会話を盛り上げたりする――悪口に聞こえるような言葉も、こ
の面子の中では単なる言葉のやりとりにすぎないのだ。
 「…はい、じゃあ行ってきます。…あ、そこの一番美味しいケーキってチーズケーキだっ
たりしません?」
 「いい感してる! 大当たりよ、ディアーナ。なに? 大好物なの?」
 「…いえ、その逆…。チーズが大の苦手なんです…。」
 由香の嬉しそうな表情の反面、ディアーナは赤くなりながらポソリと呟いた。
 「そうなんだ…。いいのっ! そこのお店、み〜んな美味しいんだから! 友達になっ
た記念よ! 行きましょ!」
 「いざ、ケーキバイキングへ! れっつご〜!」
 女性陣は、大騒ぎしながらとっとと出かけていった。あと、残るは男連中のみ。
 「…俺らはどうする?」
 「う〜んと…。紅蓮に頼まれた買い物と、僕が買いたい物があるけど。クリスはどうす
る?」
 「一緒に行きますよ。買うことは出来ませんけど…」
 「あ、それなら心配いらないわよ。」
 と、彩はクリスに手帳みたいな物と紙を手渡す。
 「なんです? これ…」
 「蓮の貯金通帳よ。あの子の買う物買って、余ったらみんなで使っちゃいなさいな。あ、
暗証番号は◎◇×☆−▽△よ。これに書いておいたから。」
 「え?!」
 「どうせ、その買い物が終わったら無用の長物ですもの。この際、一気に使っちゃいな
さい。」
 「……じゃ、彩さん達の分は…?」
 「いいのよ。これでも、お金には裕福なのよ? 嘘だと思うなら、この子の通帳の中見
てみなさい。十代の男の子が持つような金額じゃないから。もっとも、お小遣いとバイト
のお金両方だけどね。」
 いわれて、クリスはこわごわと中を覗く。…が、通貨の単位が違うためにクリスは頭を
ひねる。
 「う〜んと…こないだの夜鳴鳥雑貨店のセールで、缶詰3つで3Gだから…換算すると
…。うん、クリス。これ、あっちの世界で換算すると2万5千Gくらいだね。」
 「へぇ、2万5千Gですか…。結構な金額で…。え? …に、2万5千〜〜〜〜〜〜?!」
 そりゃあ驚くだろう。そこそこの店での月給が、平均して約2〜3千G前後。それで言
う、一年強分の金額に相当する。それの何割かを、当時の年齢でクリスとあまり違わない
紅蓮が稼いでいたというのだ。
 「あらら、クリス固まっちゃったよ。んじゃ、彩おばさん。行ってきます。さ、みんな
行こう。」
 「おう、クリスはどうする?」
 「仕方ない、表で起こすか。」
 「いってらっしゃい。あなた、もうそろそろ時間じゃないの?」
 「ん?ああ。じゃ、行って来る。お前ら、くれぐれも変なことに顔突っ込むなよ。」
 翔は、そういいながら出かけていく。朋樹達も、後に続いて出かけていった。


 「あれ、朋樹じゃない。帰ってこれたの? 今度は、どこほっつき歩いてたのよ。でも
…元気そうね。」
 「あれ? お前、何でここにいるんだよ。神隠しに遭ったって聞いたぞ?(笑)」
 「よ。帰ってたんか。今度は長こと旅行に出てたんだな。え? なに? 違う世界に行っ
てた? おいおい、冗談もほどほどに…え? マジ? へ〜。やっぱ、お前と紅蓮は人間
離れしてるのな(爆)」
 「あら?……(以下略)」
 男5人で街に出たはよかった。が、朋樹の姿を見つけた者達が代わる代わる話し掛けて
きていた。平平凡凡とした者から気合の入った者、その容姿と性格は様々であった。中には
 「と、朋樹?! 久々だなぁ、元気にしてたか? ああ、俺の方は相変わらずだよ。い
ろんな所走ってる。…は? 違う世界? 紅蓮と一緒に? いいなぁ、俺も行きたいよ。
連れてって…え? だめ? もう行くのか? ちぇ…んじゃ、元気でな。あっちでも紅蓮
と一緒に伝説作ってくれよ。あん時みたいにさ!」
 なんて言いだす始末だ。
 「朋樹くん、本当に強かったんですね…。いろんな友達もいるみたいですし。」
 「ああ。なんせ、『ツイン・オブ・デビ…」
 ゲシィ!
 「ユウ、これ以上クリスにいろいろ教え込まないでよ。じゃないと…殴るよ。」
 「った〜…。殴ってから言うなよ!」
 「いつものことだよ。」
 「朋樹くん、ちょっと性格変わってません?」
 いつもよりやけに攻撃的な朋樹を、クリスはなんとなく変わった者を見るような目で見
る。
 「き、気のせいだよ。目の錯覚じゃない?」
 「…そうですか?」
 ややうろたえ気味な朋樹を見、首をかしげながらもクリスは渋々と納得する。そして、
そんなことを話しているうちに紅蓮に頼まれた、という店の前についた。


 『The lost collections』 それが、その店の名だった。その名の通り、かつて失われ
た物…いや、失われたといわれている物などの貴重品を主に扱っている店なのだ。貴重な
分、ショーウィンドーに陳列している物、その値段は全て6桁以上の物ばかりだ。
 「はぇ〜…あいつ、こんなとこの頼んでどうするんだ?」
 「さぁ? 僕も、この店の店主に紅蓮の名前出せばいいって言われてるだけだし。けど、
150万も何に使うんだろ?」
 「150万?! あと、いくら残ってる!?」
 「う〜んと…7〜80万弱かな? よく見てないよ。」
 「あいつ、どういう生活してたんだ? まさか、やばいもんに手ェ…いや、そういうこ
とは好まねェわ、紅蓮は。」
 「そういえば、14〜5歳くらいから年齢誤魔化してバイトしてたよ。なんか、細かい
物作る作業とか…」
 「なるほど、あいつの手先の器用さはかなりのものだったからな。今も、それで稼いだ
りしてるんじゃないか?」
 「うん。評判いいみたいだよ。じゃ、入ろうよ。」
 そういうと、朋樹は店の扉をギィッと開いた。


 「いらっしゃい。なんか用かね?」
 おずおずと入っていった矢先、店主と思われる老人にギロリと睨まれる五人。
 「あの、紅蓮に頼まれてきたんですけど。」
 「じゃあ、合い言葉を言って見ろ。あれの代理なら、知ってるはずじゃ。『ラピス・…』」
 「『ラピス・ラズリ』…これでいいですか?」
 「うむ。」
 老人は満足げに頷くと、奥から小さな箱を二つ出してきた。両方をあけ、おもむろに中
のものを皆に見せる。
 「へえ、きれいな宝石だな。」
 「…あれ? 朋樹くん、これ…」
 「うん。わずかに、魔力の痕跡みたいのがあるよ。」
 「ほほう、何かが分かるのかい?これは昔からの言い伝えで、持つ者を守ると言われて
いる物じゃ。この中央に星みたいものが見えるじゃろ?」
 老人は、赤と緑の宝石の中央を指さす。言葉通り、宝石の色に反するような白い星のよ
うな模様が見て取れた。それぞれピアスになっている。
 「ああ。」
 「これが、守護の力の源とされておる。赤はスター・ルビー。緑は翡翠で、スター・ク
リソプレイズ…またはスター・ジェイドと言うそうじゃ。」
 「じゃあ、これが預かってきた代金です。納めて下さい。」
 「確かに。そして、こいつはおまけじゃ。」
 と、老人はカウンターの下から古ぼけた小箱を出した。
 「あれに会ったら渡しておいてくれんかの。あれにはいい仕事をしてもらったからのぉ。
ついぞ前に姿を消したいううわさが立ったきり、ここに来ることはなかったからの。あれ
に会えるんじゃろ? あんたは。それじゃ、頼むぞい。」
 それだけ言うと、老人はさっさと奥に引っ込もうとする。…が、ひょこっと顔を出すと
付け加えるように言った。
 「言付け頼むの忘れとったわい。その小箱にゃいくつか物が入っとる。自由に分けとけ、
といっといてくれんか? それと、こっちに来ることがあったらいつでも尋ねてこい、と
な。」




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