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「NO-7 「過去」」 とも  (MAIL)



 「さて、どうしよっか。」
 紅蓮に頼まれた買い物の後、朋樹の買い物をすませ、一同は喫茶店でくつろいでいた。
 「そうだな…」
 ぷろろ…ぷるるる…
 「悪い、ちょっと待っててくれ。」
 言いかけた矢先、レンの携帯が鳴った。
 「朋樹くん。あれ、何です?」
 「携帯のこと?簡単に言えば、誰でも使える遠距離通話器だね。」
 「便利ですね。」
 そんなことを話す二人。そして、なにげにレンの方を見てみると、その顔が急に険しく
なっていくのが見て取れた。
 「朋樹、ちょいとばかり大変なことになった。」
 携帯を切り、テーブルに戻ってきたレンはなおも険しい顔つきでそう言った。
 「…どうしたの?」
 「今のはレミアからだったんだが…ディアーナと由香が連れて行かれた。今から、レミ
アと合流する。」


 「ごめん、みんな!」
 会うや否や、レミアはいきなり泣きながら頭を下げた。レンは、
 「落ち着け。こんなことがあって悪いが、詳しく話してくれ。」
 と、言いながらレミアの頭に手を乗せる。
 レミアの話では――彼女たちはケーキを食べ、ウィンドウショッピングを楽しんでいた。
レミアはレンの携帯に連絡を入れようとし、二人に待っててもらったのだという。二人か
ら少し離れ、少し後。怒鳴り声の後に悲鳴が聞こえたと言うことだった。
 「…で、慌てて戻ったら二人とも連れさらわれていた、か。」
 こくり、とレミアは力無く頷く。唇を噛み、自分の行動を悔やみながら。
 「…せめて、ディアーナがしゃべれれば…」
 「そう、ですね。今さら、ここで魔法を使わないなんてこと言ってられませんし。」
 「なんで?」
 「いえ。以前、緊急の合図を決めていたんです。向こうでは道に迷うこともありますし、
万一はぐれた場合のことも考えて。」
 ビュォォォ…!
 直後。そんなに離れていない場所の上空に、細い竜巻のようなものが現れた。通常、風
は無色透明のはず。すなわち、何かものが飛ぶなどで空気の流れが見えるはずだ。が、そ
れは淡い黄を帯びた風。魔力も感じられた。
 「ディアーナの合図だ! あそこは…中学校?」
 「いや、廃校になっちまったとこだ。そこの路地から近道できる、いくぞ!」
 レンが先導し、六人は路地の奥へと消えていった。



 「てめぇ、何しやがった!」
 ジタバタしていた女が急に大人しくなり、気が抜けたところで風が起きた。それも、竜
巻と言っていいくらいの強さの。
 「もう、あたし達に手を出さない方がいいですよ。」
 風を起こした女…ディアーナは、忠告するようなそぶりで言った。
 「ちょっと、ディアーナ。何やったの?」
 一緒に捕まっている由香も、それを忘れたように聞き返してきた。常人に、竜巻なんて
起こせるはずなんてないのだから。
 「もうすぐ、朋樹くん達が来ます。」
 「「!」」
 確信したように言うディアーナに、由香とさらった者達のリーダー格が言葉を失う。ど
うも、男の方も朋樹を知っているらしい。二人をさらったときも、朋樹の何反応していた。
 「へっ、まさか合図まで決めてたとはな…。手品みたいだがかまわねぇ…さらったかい
があった。ちょうどいい、今度こそどっちが上か教え込んでやる…!」
 その男は、軽く指を鳴らすとニヤリと薄ら笑いを浮かべた。



 「ようこそ。俺の城へ。久しぶりだなぁ、朋樹。」
 数分後、近道を駆使して辿り着いた廃校。そこでは、リーダー格の男を筆頭に50人か
らの集団があった。それらは、手に手に得物をかまえている。が、
 「…誰?」
 と、朋樹は真顔で聞き返した。ズルッという音が聞こえてきそうなくらい、男は豪快に
転ける。
 「忘れんじゃねェ!」
 「冗談だよ、綱矢。とにかく、二人は返してもらうね。」
 言いながら、すたすたと無防備で近づく。その大胆さに一同は一瞬にして固まった。襲
われても一人で対応できるくらいの力があるのか…何も考えていないだけなのか…
 「渡すか!」
 集団の一人がふと我に返り、襲いかかるが
 「…邪魔」
 ひと睨みで動きを縛られる…その猛禽類を思わせる視線に。選択は決まった。前者のよ
うだ。
 「「朋樹(くん)!」」
 それっきり襲おうとする者もいず、無事に二人は解放された。ただし、集団のど真ん中で。

 「やれ。」
 二人が解放された直後、無機質な命令が響き…戦いが始まった。各々得物を手に、思い
思いのやり方で襲いかかろうとしている。
 「由香、ディアーナ。二人は何とか外に出て。…ニードル・スクリーム」
 無表情のまま、朋樹は魔法を放つ。刃の入り交じった蒼き風が一直線に走り、人の壁に
道をつくりだした。
 「朋樹くんは…?!」
 「大丈夫。ああ、これ預かっててね。じゃ、…早く」
 「ほら行くよ、ディアーナ!」
 由香に手を掴まれ、ディアーナは走り出した。ディアーナにメガネを渡し、朋樹は無事
に二人が外に出たのを確認すると、元凶となった綱矢を睨みつけた。

 一方、外では
 「由香! ディアーナちゃん!」
 外に出られた二人を襲おうとした者をブチのめし、ユウが二人を助け出していた。二人
が出てきた道は、瞬く間に閉じていってしまう。綱矢の命令で、中央に人が寄りつかない
ようにしているようだ。
 「ありがと、ユウ。でも、まだ朋樹が中に…!」
 「ユウさん、他のみんなは?! 早く、朋樹くんが…」
 言って泣き崩れるディアーナ。ユウは体を支えると、なだめるように言った。
 「大丈夫だ。今、他のやつらが助けに向かってるよ。俺は二人を守るように言われてる
からな、もう少し離れよう。」
 そう言って、ユウは祈るような気持ちで集団の方を見た。

 レン達は…。
 朋樹の元へ辿り着かせないように命令されているため、その進み具合はいっこうに良く
ならなかった。後から後から押し寄せてくる。
 「くそッ…これじゃ、いつになっても朋樹のとこへ着けねぇ…!」
 また一人倒したカズが愚痴をこぼす。
 「あいつ、大丈夫かな…?由香とディアーナは無事みたいだけどさ。…っと、邪魔よッ!」
 何人目になるかも分からない敵を、レミアは蹴り一撃で沈める。
 面々は、周りの者達に手こずりながらもその心配は真ん中に取り残された朋樹に関して
のことだった。

 そして、中央では。
 取り囲んでいたうち、数人ほどが地に伏せていた…。後の者は一定の距離をおいており、
かかってくる者はいない。ギロリと睨んでいる朋樹の目が周りの者達に威圧感を与え、攻
撃に躊躇を与えているのだ。
 「オオォォォ!」
 刹那、声と共に一つの影が躍り出てきた。手には木刀。それも、漆黒の色をしている。
 「綱矢。君、まだこんなコトやってたの…?」
 「うるせぇ。お前に何が分かる? お前に!」
 ガッ!
 横凪にふるわれた木刀を朋樹がかわす。と、そのまま近くにいた者が巻き添えとなって
いた。気にもとめず、綱矢は得物をかまえ直す。
 「お前は…。お前にとっては「潰したチーム」くらいだったろう。…けどな…自由を無
くしたんだ…俺は! 分かるかよ?! 俺の気持ちが!」
 「だからって、人をさらったりするワケ? あの時もそうだよ。そんなことが許される?
因果応報。僕だって同じだよ…。けど。そんな生き方…僕は。…認めない!」
 叫びながらさらに視線を鋭くし、朋樹は応戦するべく構えをとった。



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