中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「NO-9 「想い出」」 とも  (MAIL)


 翌日の朝。
 「ほんじゃ、また。」
 「うう、クリスくん…」
 大げさに悲しんでみせるレミア。レンはその横で複雑そうな顔をしていた。
 「レミア、浮気すんなよ…今さらだけど」
 「大丈夫♪ クリスくんもいいけど、あたしはレン一筋だもん。」
 「…ま、いっか…」
 「また学校終わったらな、朋樹。」
 「うん。」
 「じゃーね、ディアーナちゃん♪ また来るから♪」
 「は、はい…」
 「あんたは眠りなさい(怒)」
 「ぐはぁ…」
 「あ、あはは(汗)」
 調子に乗っていたユウを由香が鉄蹴制裁(笑)し、ディアーナは苦笑いを浮かべていた。
 あんまり学校サボるのもいけない、と彩に言われ(彩の一声(本当は鶴)とも言う)今
日は学校へ行くことになったのだ。
 「頑張ってきてね〜〜♪」
 朋樹だけ無責任な笑みを浮かべ、四人はレン達を見送った。


 「さて、と。今日は荷物の整理でもしようかな。」
 「え? 荷物なんて持ってきてたの…?」
 「いや、僕の家のこと。それと、忘れ物を取りに行くんだ。」
 「そうですか…じゃ、僕は今日は本読んでます。昨日彩さんと翔さんの書斎でいい本見
付けたんですよ。」
 と、脇に置いてあった本を見せる。
 「ディアーナは?」
 「あたしもついてっていいですか?」
 「うん。じゃ、行こうよ。じゃ、行って来るね、クリス。」
 「はい、気をつけて。」
 そう言って、朋樹とディアーナは出かけていく。
 「最後の日くらい気を使わなきゃ、ってとこかしら…」
 密かにその行動を見ていた彩は、誰に言うも無く…一人呟いた。


 がちゃり
 少し錆び付いたような音を立て、鍵が開く。
 「よかった、まだ錆び付いていなかったみたい。っと埃がない…? 彩おばさんかな?」
 と、朋樹はディアーナに上がるよう促し、奥へ足を運んだ。

 着いた先は仏間。やはり彩がやったのだろう、長い期間ほおっておかれたにもかかわら
ず埃はほとんど積もっていない。
 「ありがと、彩おばさん…。」
 「朋樹くん…」
 朋樹はここにいない彩に一つ感謝すると、男女それぞれ一つずつの写真が飾ってある前
に座り込んだ。つられて、ディアーナもその脇に座る。
 「父さん、母さん。僕、新しい故郷ができたよ…。」
 ぎこちない笑みと共に、朋樹は呟いた。
 「後ちょっとで向こうに戻るんだ。新しい家族、友達、みんなよくしてくれるよ。」
 「…」
 「紅蓮、おじさんとおばさんとの最後の会話でさ、『息子になったことを誇りに思う』っ
ていったんだよ?おじさん、『そんな臭いこと言う息子に育てた覚えはない』だってさ。」
 亡き父と母に、淡々と報告する。
 「笑っちゃうよね? でもさ、僕も思うんだ。父さんと母さんの息子に生まれたこと、
誇りに思えるってね。そうそう、あっちの世界で魔法も覚えたんだよ。」
 言って朋樹は詠唱を行い、玄武を具現化する。
 「どう? 面白いでしょ。僕、父さんと母さんに向こうを見せたいよ。緑が多くてね、
とってもいいところなんだ。写真、持っていってもいいかな?」
 「…」
 「それとさ、僕の家に伝わる式流武術。向こうに持っていきたいんだ。多分…ううん、
もう二度とここには来れないと思う…から…。」
 そして軽く一礼すると、朋樹は写真があるところの下にある引き出しから数冊の古ぼけ
た本を取り出す。
 「いいよ…ね。ぼ…く…!」
 後は言葉にならず、朋樹は声を上げず泣き出した。ディアーナはそんな朋樹を優しく抱
きしめ、そのまま時が過ぎた。

 そして、次の日。この世界にいることができる最後の日がやってきた。



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