中央改札 悠久鉄道 交響曲

「学園協奏曲3〜開演〜その1」 春河ゆん  (MAIL)
悠久幻想曲アンソロジー
学園協奏曲(アンサンブル)

第3話:開演〜少女達の長い一日〜
    その1・ショタロー執事と(爆)☆

著者 :春河ゆん

そしてエンフィールド学園祭の当日を迎えた。
美術科の少女、七瀬由那は作品を仕上げたので、親友の美術科の少女ウェンディと
学園を見て回ることにしたのだった。

学園北校舎の3階。回廊状のオープンエアの廊下を歩く2人の女の子。
「しってる?ゆんちゃん達が自主製作映画作ったんだって。うぇにゃんも見に行こうよ。」由那が話しかける。
「でも、学生寮の出し物だし、有名人が集まって作っているから、かなりの人気ですぐ
には見ることが出来ないっていうらしいですよ。でも行くんですか、由那ちゃん?」
「それ言われたら・・・・・・身も蓋もないけれど・・・」
ウェンディの返答に目をうるうるさせて由那が言う。
「なら、ゆんさんにお願いして貸し切り上映にしてもらえばどうですか?それまでは
エンフィールド中のイベントを楽しみましょうか?」
それを見たウェンディが由那に提案した。
「ゆんさんは・・・・どこにいらっしゃるでしょう・・・」
そういうと・・・由那は手すりに両手をかけて、ローズレイクの向こうに広がる
新市街を見つめた。

「ゆんお姉ちゃん・・・・・」
学園共学校舎1階中央に位置する共用化粧室に、私とミア、そしてリオはいた。
しかし驚いた。リオに双子の妹がいたとは・・・・。
「お手洗いに行きたいって言うから案内してあげたんだよ。」
「でもね・・・恥ずかしいよぉ。」
「男の子と女の子の区別がないなんて・・・・」
ふたりのバクスターが口々に言う。
「だぁかぁらぁ・・・・ここは初等部用だから。入り口から別々になるのは
中等部エリアからだよ・・・・ちゃ〜んと中で区切られているから・・・ね。」
説明しながら半ば強引に二人をトイレ内部へと引きずり込む。
「そういえばミアちゃんはまだエンフィールドに来たばっかだものね・・・・・。」
ミアことミア・バクスターはリオにうり二つの女の子。
リオ同様薄紫の髪が綺麗な小柄な子だ。(声:小桜エツ子)
少し身体が弱いため、エンフィールドより医療設備が整っているフィンレイの療養所
に最近までいたのだという。ようやく身体も丈夫になってきたので、エンフィールドの
自宅へ帰ることが出来たのだ。

「りーちゃんも大変よね。由羅さんに追いかけ回されて・・・その点、ゆんお姉ちゃん
なら、安心してりーちゃんを任せられるね。」
リオそっくりの大きな瞳が私に語りかけてくる。だからもう、私ははにゃ〜んと
してしまうのだ。ミアみたいな妹が欲しい。そういう考えが湧いてくる。
「ミアちゃんぐらいの子用は・・・」
リオに待ってもらって、さきにミアちゃんを個室へと連れていく。
2分ほど後、ミアを従えてリオを連れていく。リオの場合、
由羅や執事のこなさんに狙われる可能性がかなり高いので用心に越したことがないのだ。
共用トイレと言うことで、どちらにも自由に性別を問わず出入り(利用)できる。
男の子ブースにいる女の子の大半は付き添いのおねーさん達である。

「・・・・・・・こうなっているの・・・男の子のって・・」
とだけ言うと、ミアは黙り込んでしまう。
腰の部分のみを隠すようにもうけられた小さな扉・・・の奥にそれぞれ並ぶ
あさがおの鉢。少し低めに設けられている。
「ほら、そこ空いているよ。」
私が指さす先の鉢にリオは向き合う。
「・・・・ほんとうに大丈夫?由羅さんもこなも来ない?」
「保証するって・・・・絶対に。」
上半身を私の方に振り向かせ、念を押すリオを私は安心させようと説得(か?)する。
「・・・・・絶対だよ。」
それだけ言うと、リオは上半身を戻す。

そして少年から、陶器の小さなあさがおの鉢の中へと
金色の雫が放物線を描いて注がれた・・・・
(X指定ショタ小説的表現)

「大丈夫・・・・・・・だよね・・・・・はぅ・・・・・・ふ・・・・」
行為中でも私に向かって声をかけてくるリオ。相当不安になっているんだろうけど・・・
吐息混じりってのは・・・・・ちょっとヤバいよぉ・・・。
そう私が感じていたとき・・・ミアが小声で私に耳打ちした。
「ゆんお姉ちゃん・・・視線を・・・感じます。りーくんのいる個室を見下ろす位置に
きらっと・・・・・・何かが光った気がしました・・・・。」
ミアが示す天井部分を見ると、何かが確かに光っている。これはあからさまに怪しい。
私はアイシクルスピア収束アレンジ版の呪文を小声で詠唱し始めた。プリキャストして
おけば、キーワード一つで手軽に発動できるので、警戒時はいつもプリキャストをして
いる。
・・・・・もきゅ・・・・・
その音を私は聞き逃さなかった。
「そこだぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
キーワードを叫び、呪文を発動させる。
甲高い空気の鳴動と共に打ち出された冷気の矢は天井に潜むモノに次々と直撃
していった・・・・・。
「がふゥ!!!!!!」
という声と共に何かが目の前の通路に降ってきた。

どべちっ!!!

鈍い音と共に通路に叩きつけられたモノ・・・・その声は、
その場にいた3人にとっては聞き慣れていた声であった。

オシッコを済ませ、天井のタンクに繋がるレバーをリオが引く。
鉢の内縁へと滝のように上部リムから水が勢いよく噴き出して洗浄をはじめた

のはどうでもよかった。今はただ、リオの行為を一部始終見ていたコレを・・・。
「何か・・・・いるねぇ・・・・ひょっとしたら・・・屋敷のショタローかもね・・・。」
といいつつ私はその見えない物体に対しケリをかましていたりする。

どげし・・・・げし・・・げし・・・・

「がふゥ・・・げふッげふッげふッげふッ・・・」
とくるしそうにソレはもだえている。
「こなは簡単には来れないはずだよ。お父様が用事を申しつけたから・・・」
ミアが言う。

がさがさ・・・・ごそごそ・・・・じたばた・・・・じたばた・・・

私たちの前の見えないそれは、何とかあがきつつ私たちから必至に離れようと
しているようだった。
ていっ★
私が足をのばすと・・・・

どべち・・・・

それはド派手に転倒した。

「ねぇねぇゆんお姉ちゃん、ミアね、いいモノ持っているんだ。」
といいつつポシェットから取り出したのは護身用追跡マーキングスプレーだった。
「これをね、ぷしゅっと吹き付ければ、輪郭だけでも識別できないかなぁ。」
とミアが言う。確かに、コレを使えばこの猥褻魔の正体を知ることが出来る。
それを聞いていたのか、見えないモノはなおもごそごそと後ずさりを続ける。
「貸してッ!!!」
ミアからスプレーを受け取ると、私は手早く缶を振ってそのモノに向かって
スプレーを噴射した。

ぷっしゅうううううううううううううううううううううううう・・・・・・

蛍光ピンクの霧はそのモノに絡みつき、次第にその姿を浮かび上がらせていた。
見慣れた姿・・・・そう、ロリショタ大魔王こと、執事こなであった。

「やっぱり・・・・ショタ執事の仕業だったのねっ!!!」

私の一言に・・・
「ぐはァ・・・・バレたんでスカイ・・・」
と言葉を返す執事こなだった。
「だが・・・このおトイレリオくん生録りテープだけは・・・・・これだけは
・・・・・渡すわけにはいかないのだよ。リオくんの全てを記録する・・・・
そのかなり困難な生活実態コレクションの一つとしてね・・・・・・。」
「だからといって・・・・放*マニアとはね・・・・」
私のさめた言葉と視線が執事こなに激しく突き刺さる。
「イヤ〜ン、変態執事・・・・(;;)」
目を潤ませてミオが追い打ちをかけた。
「まぁ・・・今日のトコは目的を完遂したのでよしとしよう・・・ただ・・・
ゆんちゃんがいたのが大きな誤算だったけれどね。」
と言いながらも何かを小声でつぶやく。すると全身ピンクに染まった執事こなの
周囲に光のフィールドが広がっていった。

「駄目・・・逃げられる・・・アレは空間転移呪文!」
ミオが叫ぶ。
「やっぱり、ボクってこうなる運命なのかなぁ・・・・(;;)」
目をうるうるさせながらリオが一言つぶやいた。

「あ・・・ゆんちゃ〜ん・・・・・・・」
執事こなに逃げられた3人が化粧室の入り口に来たとき、私を呼ぶ声が聞こえた。
廊下の向こうから七瀬ちゃんとウェンディちゃんが走ってくる。
「・・・・・捜しました、ゆんちゃんを・・・・。」
「さっき、セリーシャさんに、リオ兄妹を連れてトイレに行っているって聞いたから。」
ちょっと疲れたぞといった表情で二人が言う。
「こっちだって散々。あの執事のこなが湧いたの。よりによって、リオくんのおトイレ
を一部始終隠し撮りされて・・・・」
「ゆんお姉ちゃん・・・・恥ずかしいよぉ・・・・・」
「あ・・・リオくん、ごめんね・・・・・」
私が二人に事を説明してるとリオが顔を赤くして、恥ずかしそうにストップを要請して
くる。そんなリオに慌てて私が誤る・・・・・・。
「私たち、ゆんちゃんの映画が見たくて・・・だけど、超人気で会場には入れなくて
・・・でも、見たいの・・・だから・・・」
二人が声をそろえて言う。
「だったら、後で特別興業やってあげるよ。さすがに学園祭の公開時間中は無理が
あるから、今日の夜、私の部屋で、ね。」
「暇だったら、ボク達と一緒に出し物を回ろうよ。」
リオが由那達を誘う。
「そうね・・・。美術科と言っても、作品出してしまえばヒマなんだし。」
「今日はゆんちゃんと一緒にゃ!」
5人になったパーティはエンフィールド学園内会場をあちこち巡ってみることにした。





鳴り響く開演のベル。
観客達の拍手の音に迎えられて幕は上がる。
それぞれの音が一つになり・・・・・
曲が姿を現す・・・・・・

その曲・・・・・「学園協奏曲」。

<続く>

***悠久の小箱(あとがき)***
このシリーズはいつものように支離滅裂な文章ではなく、丁寧な描写に
心がけました。学園サイド中心の描写になりそうです。
今回は睡魔に襲われることはなく、何とか書き上げることが出来ました。
(ビールで酔ったいきおいで寝ちゃう事はありましたけど)

今回も本編中エミルちゃんがトイレに一度も駆け込みませんでした。
そのかわり、リオくん達がトイレシーンを見せてくれました。
こなさん・・・・散々な扱いでした・・・(合掌)
その2は、ゆんにリオ兄妹、七瀬由那ちゃん、ウェンディちゃんで校内を
見て回るお話です。
ヴィクセン先生やウィンディくんの登場もある様ですよ。
もちろん、悠久レギュラー陣もしっかり出ます。出します。
次回も幼稚園側は描写無しです・・・(ネタがない)

今度の敵は由羅だね・・・・・(をい)

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98年10月28日23時 初版発行



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