中央改札 悠久鉄道 交響曲

「学園協奏曲3〜開演〜その3」 春河ゆん  (MAIL)
悠久幻想曲アンソロジー
学園協奏曲(アンサンブル)

第3話:開演〜少女達の長い一日〜
    第3幕・セリーの学園祭密着取材

著者 :春河ゆん

そしてエンフィールド学園祭の当日を迎えた。

七瀬由那ちゃんにウェンディちゃん、リオとミアの双子のバクスターの面々で
校内を回る。
丁度昼時なので講堂をまるごと使っている「屋台コーナー」で、昼食を確保する
事にした。楓ちゃんのさくら亭から、新作のお弁当を。悠久さんのジョートショップ
でアリサさんのサンドイッチをゲット。私が大好きな牛丼も買い込んで食べ物は完了。
悠久さんから、妹の魅緒ちゃんの面倒見を頼まれたので、魅緒ちゃんが合流している。

飲み物は、セリーヌの手作りジュースを購入。出来たてをキンキンに冷やしてもらった。
セリーヌはそろそろ材料が尽きたと言うことで、店じまいを検討していた。そこで、
私が一緒にと誘ったのだ。

セリーヌに後で迎えに来ると行って、ひとまず中央校舎の屋内パティオでお食事。
そこへ、物理魔法科主任のヴィクセン先生が来て・・・・・。
今回は、ここから始まるアンサンブル。果たして・・・・?


「んじゃ・・・私も・・・」
箸を割った私は、大好物の桜盛りからたいらげにかかった。

一口肉をほおばると、肉汁とタレの風味がじわりと口に広がる。
まさに至福の時。
「はふはふぅ〜ひははへ☆」
噛めば噛むほど肉汁とタレが微妙に絡み合い、味覚を刺激してくる
「・・・ゆんお姉ちゃん、美味しい・・・・・・?」
「もぉ・・・・ジューシーなタレが口の中に広がってうまうま状態。」
ミアが聞いてきたので、至極の笑みを浮かべながら私が答える。

「ゆんちゃん・・・ここにいたんですのね。捜しましたわ。」
聞き慣れた声と共に私の目の前に見慣れた童顔がアップになった。
私の大親友のセリーシャ・フィスターだ。
趣味はビデオ撮影とかで、この学園祭でも記録係としてあちこち
取材のために歩き回っていた。
思わぬセリーシャの登場に、私の箸が止まる。
「またゆんちゃんは牛丼桜盛りですのね・・・栄養バランスが
崩れてしまいますわ。わたくしの家の家庭料理でも召し上がって・・・」

「その件だけど、既にさくら亭で買ってきてあるの。別腹でいただく
つもり。」
セリーシャが薦めてくれるはずの料理は既にマークしている。
私はさくら亭の包みをセリーシャに見せた。
「まぁ、そうでしたのね。とにかく暖かいうちに味わってくださいね。
それで・・・本題なのですけれど、ゆんちゃん達を密着取材させて
いただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
ロリロリッとしたセリーシャの大きな瞳がさらにアップになる。
しかも岩男潤子のようなハスキーロリボイスときたからたまらない。

そのせいか、セリーシャは男の子にとってカリスマ的存在になっている。
私は、女の子のなかでカリスマ的存在だから・・・。だって風紀委員だし、
寮長だし・・・。
つ・ま・り、私とセリーシャがセットになれば学園中の人望を掌握できるという
わけだ。当然、そういうメンバーの映像と言うことで、視聴率もかなりいく
はず。
両者の利害がここに一致した。
「セリーシャちゃんの頼みだもの。いいよ。」
私はセリーシャの肩にぽんと手を置いて言った。

まだ食事が済んでいなかったので、再びみんなでランチタイムとなった。
セリーシャはパティにもらった香草焼き弁当(自分の家の料理)を食べながら
他愛のないおしゃべりに興じている。
「マリアちゃんのクラス、突如の大爆発で出し物が不意になったようですわ。
どうやら、いつものように魔法の暴走が起きたらしいですわね。」
「トリーシャちゃんのところは、ゲーム大会らしいですね。」
「シェリル・・・いつの間に?」
シェリルがベンチに座る私の後ろでにこにこしている。
「シェリルさん、・・・・小説販売会の方はどうなっているのですか・・・?」
ヴィクセン先生が、シェリルに聞く。
「ええ、少し気分転換にと、お友達にお願いしてきました。」
私の横にシェリルが座る。ヴィクセン先生がさらに横にずれてくれた。
「私のアレ、どうなってる?」
「ゆんちゃんの『魔法少女フリリィセリィ』ですか?・・・かなり人気が
あって、午前中に用意していた分のセットを完売しましたよ。午後はばら売り
分を出すつもりですけれど。」
シェリルはコミケまがいの即売会を実施。自分以外の作者の本を委託と
いうことで扱っているが、まさかじぶんのほんの売れ行きがここまでだとは
想像していなかった。
牛丼を平らげてから、さくら亭の特製お弁当に取りかかる。
お肉をほおばってみる。
癖のない程良い堅さの焼き加減に、肉の中からしみ出す肉汁、それに
ミア絶賛のホワイトソースには、しっかりと濃縮されたコクのある
チーズの風味が効いていた。少しとろっとした感じがたまらない。

「ねぇ、セリーシャ、これ、ちょっとこってりしているね。」
私が聞くと、セリーシャは笑いながら
「わたくしの屋敷がある地方は特に水と空気がきれいな場所なのですわ。
ですから、酪農も盛んなのです。」
「なるほどね・・・だから乳製品をふんだんに使った濃厚なソースが
出来るんだね、セリーシャ。」
「わたくしのお父様は貿易商なのですけれど・・・・・」
笑いながら、セリーシャが耳元で言った。

「そ、そぉ・・・・・」
ただ笑うことしか私には出来なかった・・・。

食事を終えた私たちは、セリーヌを連れて学園内を回ることにした。
数名の放送委員クルーも私たちに同行している。

「ねぇ、セリーシャ、今からどこを回っていこうか?」
後はどうせぶらぶらするか、エミルみたく個室内で適度に惚けているかと思っていた
んだけど、こんなにメンバーが増えてしまったために不許可確定となってしまった。

「魔法コンテストなどどうでしょう?体育館でこれから行われますわ。」
セリーシャが私に言った。魔法コンテストは魔法学科の面々にとっては自分を
アピールできる最高の場だ。もちろん、優勝者には賞品に賞金と成績アップが約束
されることから参加者の多いイベントとなっていた。
「面白いじゃない、いこうか?」
私が笑いながら言ったとき・・・・・
「うにゃあああああああああああああ・・・・・・・・」
ハスキーボイスと共に埃を上げて何かが突っ走ってきて・・・・

どっごおおおおおおおおおおおおん

派手に私と正面衝突・・・・

「うぎゃふぅ・・・・!!!!」
勢いよく壁にたたきつけられた私。だけど小声でクロノスハートを詠唱したので、
受け身ぐらいはとれる余裕が何とかあった。

ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅううううう

靴ブレーキ痕を残し、止まるそれはねこみみとねこしっぽが可愛いメイドさん。
しかも私にとってよーく知っている人物(?)だった。

「ウィンディ!!私をはねてどうするの!!」

「ふにぃ・・・・ごめんなさぁい・・・ごしゅーさまぁ・・・・」
大粒の涙をぽろぽろさせて私の元に駆け寄るウィンディ。
「ご愁傷様の間違いじゃないんですか?」
ボロ雑巾のように横たわる私を見てミアがひとこと言うが、これがシャレにならない
状況だったので、その場に居合わせた面々は笑うに笑えない状況だった。
あたりを極度に重い空気が流れた。

「で・・・どうしたっての、うぃん。あんたはうちのクラスのねこみみメイドさん喫茶
の看板娘でしょ?」
私が尋ねると、うぃんは、
「だからぁ、お休憩もらったんですぅ〜ごしゅーさまと一緒に回っておいでって。」
と言う。
「(ま・・・仕方ないか・・・)これからは前をよく見て移動すること。いいね。」
「うぢゅ〜〜〜〜・・・・・」
うぃんの頭をお仕置きに軽く叩いてから立ち上がる。とはいえ、
あの衝撃は私にとってかなり効いた。まだ身体の節々が痛い。

「ところで・・・うぃんは何か魔法修得できたの?」
体育館へ向かう間、私がうぃんに話しかける。
「ヴォーテックスが何とか使えるようになりましたですぅ〜、ごしゅーさまっ!」
「かなり頑張ったんだ・・・もうちょっとでヴァニシング・ノヴァが使えるように
なるから、頑張ってみたら?」
私がうぃんとの会話に熱中している頃・・・・
「あなたが美術科の七瀬さんにウェンディさんですね。ゆんちゃんがいつも
お世話になってます。わたくし、精霊魔法科のセリーシャ・フィスターです。
よろしくお願いしますね。」
「放送委員会のセリーシャさんですね。こちらこそよろしく。」
「うにゃ、よろしくにゃ!」
「セリーシャお姉ちゃん、トリーシャドウのモデルなんだって。」
「ボクの双子の妹、ミア・バクスター。最近エンフィールドに来たばかりなんだ。
今日は編入前に学園のことを知ってもらうために連れてきたの。」
外野は外野で勝手に盛り上がっていたりした。
「ミアさんの適性はどうなっているんですか?」
「編入前の魔法力適性検査によると、物理系4神聖系3精霊系3と言うことで、
物理魔法科4期に編入されると言うことをこなから聞いています。」
「こなさんと言えば、ロリショタ属性の執事さんでいらっしゃいましたよね。」
「ええ・・・・否定できませんが、そうですぅ・・・」
「リオのお父様もかなり困っているみたいね。」
私とうぃんが会話に割ってはいる。
「ゆんお姉ちゃん、ウィンディお姉ちゃんとの会話は終わったの?」
「うん。終わったよ。ほら、体育館。まだ参加受付やってるよっ!」
体育館入り口に隣接するように参加受付が設営してあった。
「あ、ゆ〜ん!!!」
受付の女の子が私の姿を見て手を振る。
「え?今回は受付なんだ・・・。」
「ゆんも出ちゃいなさいって。あんた、出れば優勝候補だって前評判高いんだから。
一番キャパのあるマリアの場合は不発が多いし。確実に発動するならゆんが一番だって。
それと今年は学科対抗もあるし・・・物理魔法科を代表して、是非、エントリーしてよ。」

頼まれるとダメといえない性分の私。だけど、魔法が使えるみんなで参加したかった。

「条件は・・・部外者の参加承認ね・・・・」

旋律が響きあうとき・・・・感動が生まれる。
旋律は個々の楽器から生まれる。

登場人物は楽器。旋律は物語。
感動を生む物語が現在進行中。
多くの学園生徒と多くのエンフィールド住民、
みんなで作る協奏曲・・・それが学園協奏曲である。
第3楽章・・・・それは私という楽器のソロ演奏で幕を開けることとなる。
<続く>

***** 次回予告 *****

私を筆頭に、ウィンディ、ミアで結成した物理魔法科即席トリオ、
対するはソロ参加の物理魔法科最大の爆弾ことマリア、そして、精霊魔法科の
期待の星、学園アイドルのセリーシャ、神聖魔法科のメロディ!!(など)
強敵揃いにどこまで太刀打ちできるのか?

学園協奏曲3〜開演〜
第4幕『熾烈!M−1魔法グランプリ!!』

***** 悠久のあとがき *****

ようやく書き終えました。2週間もかかってしまったぁ・・・うみゅぅ・・・
学園アンサンブル、かなりの文章量になってきそうですね。
開演編に入ってから内容が全く別作品のようになってしまっていますが(爆)

今回、新キャラクターが登場しました。現在執筆中の短編、『猫耳輪舞曲』
のメインキャラクター、ウィンディ・ミュア・テイル・春河です。キャルシアン族
という稀少種族の女の子で、私のパートナーです。
私が3つの時にお父様が愛玩生物オークションに出されていたのを買い取って、
家族として一緒に過ごしてきたんですね。
このシリーズ、登場キャラがどんどん増えていきそうです。

私が気力切れするまでに終われるんでしょうか・・・・
気長に応援してくださいね。

***** 発行履歴 *****
98年11月12日 初版発行

中央改札 悠久鉄道 交響曲