中央改札 悠久鉄道 交響曲

「手水狂少女夢想曲」 春河ゆん  (MAIL)
悠久幻想曲アンソロジー

手水狂少女夢想曲
〜エミル・学園手水事情をしらべる〜



*完全に音入れをメインテーマとしているため
一部好ましくない表現がありますが、
表現の対象はオリジナルキャラだけです。*

春河ゆん

晩秋だけど陽射しが春のようなエンフィールド。
ぽかぽか陽気のこんな日は・・・・

だけどエミルにとっては無関係。休み時間はいつもの場所で
予鈴までぼーっとしているのが日課だから・・・・。

ついに学園公認となってしまった、一階中央トイレの奥、元は2つだった個室。
そこがエミルの専用となってしまっている。
私、春河ゆんの手によるすっごく可愛いネームプレートが打ち付けられているし、
和式・洋式両方が一つの個室内になるように改造までされている。

その日もぼうっと子供用の小さな陶器の溝にしゃがんで、自分だけの時を
過ごしていたのだったが・・・・

急にエミルの脳裏をひとつの思考がエタ久線特急のごとく突っ切ったのだった。
(こうもこうも頻繁に手洗いに行きたくなるなら、いっそ、エンフィールド中の
自分が利用できるお手洗いのガイドブック作ってみたらどうだろう・・・・?)
これが全ての始まりだった。
(まずは・・・・・・・・ね。先立つものを用意しないと。)
水が陶器に吹き出す音をバックにエミルはひとり意気込むのだった。

円盤メディアのボイスフォート(要は録音MDプレーヤー)と超小型デジフォート
(要はデジカメ)をセリーシャに秘密裏に用立てしてもらい、まずは北エンフィールド
(旧市街)エンフィールド学園地区から取りかかる事にした。

学園内はいつも利用しているから楽だと言ったら大間違い。エミルは特定の手洗いしか
利用していなかったのである。全て網羅するに当たっては全ての箇所を実際に使って
みるという作業が不可欠だった。しかも休憩時間内、放課後といった限られた時間内に
これを遂行する必要があった。

エンフィールド学園は、王都マリエーナに次いで大きな規模の学園である。だから、
各地から生徒が集まる。ということで使用方法も多種多様なのである。これらを身を
もって体験し、文章化するという事も重要である。最近、ようやくエインデベルン周辺
から東方にかけて分布するしゃがみ式に慣れたエミルだったりするのだ。何が待って
いてもおかしくないだろう・・・・。

利用し慣れた一階中央児童手洗いをさくさくっとレポートする。使い慣れているだけ
あって事細かなりポートが出来る。
「次の時間は・・・・・。」
エンフィールド学園には、生徒の利用できる女子手洗いが全部で25ヶ所もある。
魔法学科、美術学科、専攻学科
それぞれの学科に8ヶ所、そして中央の低学年生徒用である。
それぞれの学科もさらに初等部、中等部、高等部、履修院に細分化されているので、
各学部ごとに2ヶ所となっている。
先のエンフィールド拡張で学園敷地も拡大され、校舎が増築されたためこのように
なっている。

「魔法学科の中等部に行ってみようっと。ゆんお姉ちゃんに逢えるかもしれないしね。」
エミルの腕で、悠久と共に買ったイルクジのイルカが可愛く飛び跳ねて、持ち主の少女
に予鈴がまもなく鳴ることを告げていた。

エミルは初等部生徒なので、中等部にはあまり出入りする機会はない。
エミルが私に会うときは、私の方から中央手洗い前に出向くことが多いから。
3階にのぼってくるとそこはエミルにとって未知の世界だった。

「ほ・・・ほぇ・・・・」
きょろきょろ辺りを見回しながら進む・・・・。全てが大きい、そして、ちょっぴり怖い。
不安に飲み込まれそうになったその時、ぽんと肩を誰かに叩かれる。

「ほぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?」
エミルが怯えつつ振り返ると、そこにはゆんの良き伴侶であるメイドのねこみみ少女
の姿があった。純白の耳に、淡い黄色のロングヘア。スカートの裾から飛び出た白い
尻尾がゆらゆら揺れる。それにあわせて首もとの鈴がちりちりんと、澄んだ音を奏でる。
エンフィールドにただ一人のライシアンの亜族キャルシアンの女の子、ウィンディだった。
「ふみぃ・・・エミルちゃん、おちついて・・・うぃんですぅ・・・・・・。」
必至で落ち着かせようとしたのだが、エミルは完全に混乱状態だった。
「ふみゃぁぁぁぁ・・・うぃん、悪くないですぅ〜〜〜〜〜」
ついにはウィンディまで泣き出す始末だった・・・・
「何の騒ぎ・・・・いったい?」
私が廊下が騒がしいので教室の外に出てみると、ウィンディとエミルの二人が泣いていた。
「・・・・いったいどうしたっての?うぃん、あなたが泣かせちゃったの?」
「違うですぅ・・・・」
申し訳なさそうにウィンディが言った。

「なるほどね。そういった用件で来ていたの?エミルちゃんらしいや。」
中等部の学科準備室。ヴィクセン先生に頼んで少しの間使わせてもらっている。
「エンフィールド学園の化粧室マップね・・・・。そうだ、アレにチャレンジしてみる
気はない?学園でもここだけの珍しいタイプのトイレがあるんだよ。私の住むエインデ
ベルン以南の地域で使われている女の子用の小用専用陶器ってヤツなんだけど。
絶好のネタにはなると思うけど・・・」
しゃがんだり座ったりあげくにたったまま・・・エンフィールドが属する広大な王国
マリエーナが人種の坩堝と言われるみたいに様々な習慣も混在しているようだ。
「みゃぁ・・・ご主人様もぉ、学園内ではこれを使ってるみたいなのぉ・・・」
ウィンディが自慢げに言う。
「慣れれば手早く用を足せれるからね。私の故郷南エインデベルンではよく見かけるよ。」
私の言葉に・・・・・
「うにゅ、チャレンジしてみる・・・。」
そうひとこと言うエミルだった。

しかし、見学するのと実際にやるのでは大違い。
「・・・・・おっきひ・・・・・・・」
開口部はエミルの胸の高さぐらいにあった。
放課後、風紀委員長権限で中等部トイレを閉鎖。一部のギャラリーが見守る中で
レポートははじまった。ギャラリーと言っても、セリーシャに結にミア・バクスター
(リオの双子の妹。通称、女の子りお)トリーシャ、シェリル、マリアぐらい。
あとウィンディもいる。

「ちょっとエミルとふたりっきりにさせて・・・・。ここが見えない場所までみんなを
待避して欲しいの、うぃんちゃん。(使い方の実演なの。)セリーシャは例外だから。」
ぼそぼそっと耳打ちすると、ウィンディはこっくりうなづいて、数人のギャラリーを
遠ざけてくれた。

私も・・・人前で用を足してみせるのには少し抵抗があったが、仮にエミルがこれを
まとめた場合、困ったときのガイドブックになり得ると考えて、協力する気になった。
片足をパンティからそっと抜いて、個室中央に据えてある陶器開口部を股で挟み込む
ように下半身に沿わせる。ゆっくりとひざを前へ曲げて肌と陶器を密着させる。
やはり少し冷たい気がする。
「・・・・と、こうしたら、後はするだけ。注意するのは、陶器内部の管が狭い
らしいから、極薄の専用のペーパーで拭くことぐらい・・・・・・・・・・・・
・・・・・・ふぅ・・・・・・・あ・・・・ああ・・・・気持ちいい・・・・。」
丁度ぱんぱんに張っていたわたしの水門は、心に響くけたたましいサイレント共に
その貯水を陶器内面へと勢いよく浴びせかけた。しゃあああああああああという独特の
音が二人きりの個室に響く。
「ゆんお姉ちゃん、相当我慢していたんだね・・・・体に悪いよぉ。」
動画デジフォートを回しながらじっと見ているエミルがいう。
 確かに・・・・今日ここへ来たのは2度目。朝登校してスグに用を足して以来だ。
ちなみに、局部はスカートによって隠される様になっていて、他人から見えなくは
なっている。

「体験してみる?」
私のひとことから、今度はエミル自身が身をもって体験することに。
「ほらほら気を付けてね・・・・コレ気に入ったなら保健衛生委員会に児童用の設置
嘆願しといてあげるけど・・・こう見えてもかなりの委員会掛け持ちしているから。」
貯水池を完全に空にした私は手際よく後始末をし、壁のノブを押し込んで洗浄し、
それからエミルの身体を届くように持ち上げた。
ぺた・・・・・ぶら〜ん・・・・・・
当てがうと言うよりは漏斗に座っているといった表現が正しい。
「どう?あ、やっぱり高学年サイズだからエミルちゃんには無理だったかなぁ・・・。」
たら〜り、大粒の汗を浮かべながら私がエミルに言った。
「何とか・・・・大丈夫だよぉ・・・・・。」
そんな私を見てエミルが笑いながら言った。

エミルの手帳にはこう記される。
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エンフィールド学園・物理魔法科(中等部)フロア生徒用トイレ

聞いたところによると、各学科とも設備はどこも同じ。内装の違いだけ
らしい。あたしの所属する魔法学科のお手洗いをとりあげる。

ブース数:座り(洋式)10、しゃがみ10、立ち(小用専用)5
混雑度 :ゆんお姉ちゃんによるとさすがに立ってするのには違和感ありらしく、
     常時閑散としているが、多忙の生徒にウケているらしい。
     昼休みの場合、座りは完全に満室。しゃがみも8割が満室に。
清潔度 :ゆんお姉ちゃんのお気に入りのお手洗いなだけあってすごく綺麗。
内装  :カントリーっぽい可愛らしいちいさな花柄の壁紙と無地の壁紙との
     ツートンで構成。

所見  :いっつも多忙なゆんお姉ちゃんも愛用する立ち方式を使ってみようと
     ・・・したけど身長が届かず、お姉ちゃんに手伝ってもらわないと
     使えない。混んでいてもしゃがみを使うのが懸命。カリキュラムに
     学科合同授業が多くあるだけに、私にあったのがないのは残念だった。

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「やっぱりエミルちゃんだけでは無理だと思うよ。私も手伝ってあげるから。
ミアちゃんやうぃにゃんにも応援をしてもらうよ。いいね。」

それ以降、私は立ち入ることのなかった美術科のトイレをエミルを連れて見に行く
ことにした。さすがにもう絞っても雫一滴も出ない状況だ。
美術科とはいえ、内部の設備数は全て魔法科などと同じ。だけど、パーティーション
などは美術科らしく、すこしネイチャルな仕上がりになっていた。小さな額縁が
至る所にあったのも特徴だ。
「ブース扉がすりガラスなんだ・・・」
エミルが言う。魔法学科は魔力による液晶シャッターになっていて、誰もいないときは
扉上半分にあたる魔力回路連動ガラスが透明なのだが、鍵がかかると、回路が作動し、
液晶シャッターが展開されて視界が遮断される仕組みだ。単純なすりガラス埋め込みは
魔法学科との差別化なのだろう。
「あれ・・・形状が違うね・・・。」
配管類やゴミ入れ、ペーパーホルダーが完全に壁に収納されている。デザイン重視の
内装に私たちは驚いた。
「うにぃ?」
床全体が少し低くトレイ状になっていて、その中心にくぼんだ溝と丸い穴があいている。
「変わった形状ね・・・」
私が言うと、エミルが
「このタイプはね、お水を流すと床全体、つまり低くなっている場所全てが
洗浄される仕組みになってるの。非常に清潔な手段よっ。」
と説明してくれる。
縁から張り出すステップに足をかけてしゃがんでみる。横からエミルがレバーを押し
下げると床全体に水が溢れた。
「そういう風に流れるのかぁ・・・・」
確かに、これは清潔だ。マリエーナ南部辺境地帯ではこういう形状のが多く使われて
いるのだとエミルが解説してくれた。
「化粧室っていっても奥が深いね・・・」
さすがエミルである。十数回も一日のうちに駆け込むだけある。

自分のためそしてみんなのために始まった「エンフィールドトイレガイド」プロジェクト。
この後は学園を離れて至る場所のありとあらゆる個室の調査だけである・・・

***** 悠久のあとがき *****

その場のノリだけで書き上げた、私のSSの最壊形態です。
音入れネタだけで一本引っ張ってしまいました。
何か、第3者の視線がかなり怖いです。

私自身、結構近いんで(核爆)

では・・・・このネタの、次が有れば続編で。その場合は
橘家の手水(ちょうず)処が登場するはずです。多分。
純和風の家屋に住む由良さんとこの音入れはかなりのモノらしいです。
玉砂利、つくばい、唐竹、土壁、水琴くつ・・・どこか懐かしく、どこか落ち着ける
オアシスのようなイメージができあがっているので早く形にしたいなぁ・・・。

みなさん・・・・呆れないでくださいね。
****** 発行履歴 ******
1998年11月12日 初版発行



中央改札 悠久鉄道 交響曲