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復刊ドットコムについて

復刊ドットコムは、そのスタートから興味深く成り行きを見ていました。実際、このような事業が、特定の作家レベルでなく全般的な規模で行われるということは、非常に有意義なことです。しかも、復刊希望を出す本の選択基準が、本を欲しいと思っている末端ユーザーの声に従うという点も、非常に画期的でした。当初は僕も、復刊希望に票を投じました。

しかし、すぐに雲行きは怪しくなってきました。まずはじめに「おいおい」と思ったのは、「藤子不二雄 FF LAND」第1期全301巻の復刻について、復刊ドットコム担当者が中央公論社へ行ったというレポートを読んだときです。この「FF LAND」は、ご存じの方も多いと思いますが、「藤子不二雄」が「藤子・F・不二雄」と「藤子不二雄A」に分かれる以前にスタートした全集で、その後権利関係がややこしくなってしまって、ほとんど重版もされないまま絶版になってしまったものです。しかし、復刊ドットコム担当者は、その経緯を知らないどころか、「藤子不二雄」が2人の作家の共同ペンネームだという、マンガ読みであれば小学生レベルの事実すら知らなかったのです。というか、知らなかったとしても、ある程度下調べして行くのが当然ではないでしょうか!?この時点で、復刊ドットコムの事業に関わっている人たちの、熱意のなさを痛感しました。つまり、ビズシークの広報のひとつでしかないのではないでしょうか。

現実には、たとえ復刊ドットコムが形だけのものであったとしても、そこで票が集まったことが出版社に重版を促したり、文庫本での再発が実現したりという波及効果もあります。だから、全く無駄なことだとは思いません。また、実際に復刻本もいくつも発行されています。ただ、マンガに関することしかわかりませんが、復刊ドットコムからマンガで復刻された本に関しては、果たして復刊ドットコムの力というのはどの程度影響したものなのか?と思わざるにはいられないものが多いです。マンガで復刻されているのは、ほとんどが三原順さんの本です。三原順さんは、ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、1995年に若くして亡くなられた少女まんが家です。彼女には、非常に熱心なファンが多数ついていて、しかも著作権を管理されているご親族とも密接な関係にあり、以前からも白泉社を動かしてほとんどの作品を早々に文庫化させるなど、作品復刻に関しては実績がありました。だから、復刊ドットコムで「夢の中悪夢の中」や「かくれちゃったのだあれだ」などが候補に挙がったときも、そう時間を待たずとも復刻されるだろうと思っていました。実際その通りになったのですが、これはやはり特殊なケースだったのではないでしょうか。

その後復刻されたマンガといえば、三原さんの他の本を除けば、「SNOOPY BOOKS」全86巻のみ。これとて、権利がちゃんと角川書店にあり、しかも現在も新作を刊行中という状況だったから成功したのでしょう。つまり、事情があって絶版になっているというよりは、復刊も可能な状況が整っているものの復刊を後押ししているというのが、実体だと思います。

さて、前置が長くなりましたが、やっと本題に入ります。2001年7月9日、復刊ドットコム担当者から、1通のメイルがやってきました。以下、担当者の実名以外の全文を引用します。

From: "Fukkan" <info@fukkan.com>
To:
Subject: 大友克洋様関連のサイトの管理者様へ
Date: Mon, 9 Jul 2001 18:44:40 +0900
MIME-Version: 1.0
X-Priority: 3
X-MSMail-Priority: Normal
X-MimeOLE: Produced By Microsoft MimeOLE V5.50.4522.1200

はじめまして、ホームページを拝見させていただきました。
復刊ドットコム< http://www.fukkan.com >というサイトを運営しております
株式会社ビズシークの ** と申します。

私共は、絶版本を一般の方からのご投票を元に、出版社や著者にかけあいなが
ら復刊させよう、という初の試みをやっております。

現在実績において、三原順「かくれちゃったのだぁれだ」や、永らく絶版状況
が続いていましたA・デュマ「ダルタニャン物語 全11巻」が、復刊ドットコ
ムを通して復刊しており、その他にも続々と絶版本の復刊が予定されています
。また幾つかの書籍に対しても、出版社の方への良い影響となって、重版決定
が見られるようになり、現在、20書籍程度の復刊が決定しております。
※復刊決定書籍 < http://www.fukkan.com/list/index.php3?mode=comp >

このような中、現在得票数59票という位置につけております、『ヤングマガジ
ン特別編集「AKIRA・POSTER&GRAPHIC」』の更なる投票数アップのご協力
をお願いしたく、「大友克洋様関連のHP」をお持ちの方にメールをさせて頂
きました。

現在、我々に受付けていただいている得票数では、まだまだ現実的な要望には
程遠いです状況です。
そこで是非、より多くの投票を集めるべく、あなた様のサイトと相互リンクさ
せていただきたく思っております。
不躾なお願いで恐縮でございますが、現実に復刊させるためにも、ご協力をお
願いいたします。

相互リンクの登録は、私共のサイトの「ヤングマガジン特別編集「AKIRA・
POSTER&GRAPHIC」」の投票ページにおい
て受付けております。
【投票ページ】 http://www.fukkan.com/vote.php3?no=1705
こちらのページの下段にある「リンクサイト」アイコンをクリック後、
「相互リンクしてくれるサイトを募集しています」によりご登録ください。

上記以外での大友克洋様の3書籍の復刊リクエストがございます。お手数をお
かけいたしますが、復刊ドットコム< http://www.fukkan.com >のトップページ
で検索をかけていただければ幸いです。あわせてそちらの書籍への投票もよろ
しくお願い致します。

また、大友克洋様の復刊特集ページというものがございますので、そちらの方
もご覧くださいませ。

【復刊特集ページ】 http://www.fukkan.com/group/?no=64

※ご投票や相互リンクの登録には、ユーザー登録(無料)が必要になってしま
います。ご手順がご面倒だとは思いますが、ユーザー登録後、上記の手順で相
互リンクを行ってください。何卒よろしくお願いいたします。
手順でわからない事や、登録の解除のご要望がございましたら、私宛にメール
をくださいませ。

また、本サイトは2000年6月に正式リリース後数多くの方にご来訪いただき、
現在では、
・ご利用者数 16,000人
・リクエスト書籍数 3,000冊
・延べ投票数 32,000票
を数えるまでにいたりました。
(TVやラジオ、新聞・雑誌に数多くとりあげられております)
※復刊ニュースページ < http://www.fukkan.com/news/ >

是非ご検討くださいますよう、お願い申し上げます。

このメールは今後、定期的にお送りするものではございませんので、ご安心く
ださい。それでは失礼いたします。

=====================
◇復刊ドットコムスタッフ◇
  ** ** ( ** ** )
 info@fukkan.com
=====================

このメイル自体に問題はありませんでした。そこで、同日深夜、次のような返信を送りました。

To: "Fukkan"
From: junya@[130.158.223.1] (SUZUKI Jun'ya)
Subject: Re: 大友克洋様関連のサイトの管理者様へ
Cc:
Bcc:
X-Attachments:

はじめまして、大友克洋データ・ベース、Apple Paradise 主催の鈴木と
申します。

ご連絡ありがとうございました。

「復刊ドットコム」の活動は、スタート時から拝見させていただいており
ます。実際に次々と復刊を成功させていることは、賞賛に値すると思って
おります。

また、大友克洋さんの書籍の復刊希望があることも知っていました。特に、
「ヘンゼルとグレーテル」の復刊希望は、この本が大友克洋さんの「AKIRA」
や「童夢」とは別の面を知るのに非常によい本であると思うこともあり、
是非応援させていただきたいと思います。
#ところで、しばらく前までは「GOOD WEATHER」も候補に挙がっていた
#ように思いますが、どうしたのでしょうか?

しかし、希望されている物のなかには、ちょっと疑問を感じてしまうものも
あります。その内の一つが、今回ご連絡いただきました「POSTER & GRAPHIC
AKIRA」です。この書籍は、その大きさ、形の特殊さもさることながら、
内容が「映画 AKIRA」の資料的意味合いの強いものです。確かに、入手を
熱望されている方がいることはわかりますが、その数がどれほどなのか、
疑問に思っていました。

実は、以前にも何度か、Apple Paradise の掲示板で「POSTER & GRAPHIC
AKIRA」の復刊投票を求める書き込みがありました。しかし、最初に投票が
あってから既に1年を過ぎようとしているのに、未だ50数票です。結局、
絶対数ではそれほど希望者がいないということなのではないかと思います。

ちょうど良い機会なので、もう1点の疑問に思っている本についても書か
せて下さい。それは、「国際版 AKIRA」です。この本は、 ** 様をはじめと
する「復刊ドットコム」を運営されている方々がご存じかどうかはわかり
ませんが、アメリカで発行された AKIRA の paperback を3冊一組にし、
さらに日本独自の翻訳冊子と箱を付けて日本で流通させたものです。従って、
もしこの本の復刊を考えるならば、まずアメリカ版の paperback を確保する
ところから始めなければならないと言えます。しかし、1988〜1996年当時
アメリカで AKIRA を発行していた Marvel Comic Inc. 傘下の epic comic
には、既にアメリカでの AKIRA 発行の権利はありません。現在は Marvel と
並ぶ大手の Dark Horse Comics, Inc. が権利を持っており、まさに今、
アメリカ版を再発中です。しかも、「国際版 AKIRA」として流通した、カラー
版ではなく、日本と同じ白黒版です。従って、現在アメリカで流通している
物を用いたとしても、復刊を希望している人々が欲しいと思っているであろ
う、カラーの「AKIRA」は発行することができないと思います。もちろん、
現在もカラー版を発行しているフランスやブラジルなどから輸入すれば可能
かもしれませんが、あまり現実的とは思えません。

それから、現在も候補に挙がっている「アキラ絵コンテ全2巻」は、どう
やら10月に発売が予定されている「映画 AKIRA DVD BOX」に特典として
収録されるようです。

「復刊ドットコム」は、復刊を希望する人たちの票をとりまとめ、会社対
会社として交渉してくれるという点で非常に画期的だったと思いますが、
残念ながら各々の書籍がなぜ絶版になっているのかという理由一つ一つ
関しては、考慮が足りないのではないかと思わざるを得ません。もちろん
候補に挙がったものを一つ一つ調べるのが、極めて困難な作業ということ
はわかっています。しかし、なかには非常に特殊な事情のある本もあるの
だということを、安易に希望するだけの人々に知らせる意味も含めて、
なんとか示していただきたいと考えています。

ということで、上記の「ヘンゼルとグレーテル」等であれば、協力すること
も吝かではありませんが、「国際版 AKIRA」のように、復刊が非現実的と
感じる書籍を含んだままであれば、あまり積極的な気持ちにはなれません。
その辺りをどうお考えになっているのか、お聞かせ願えないでしょうか。

よろしくお願いいたします。

少し補足するならば、上で前置として書いたような、復刊ドットコムに関する疑問はほとんど書きませんでした。また、「〜は賞賛に値する〜」の辺りは、社交辞令のつもりです。

しかし、8/29日現在、返事をもらっていません!こんな失礼なことがあるでしょうか!?こちらのメイルが期待していたもの違ったからといって、返事をよこさないなんて、なんて非常識なんでしょうか!はっきり言って頭に来ました。

その後、復刊ドットコムの「交渉状況」や、それに関する記述を読みました。交渉状況の公開に関しては、数々の問題があるため、特殊な場合を除いては現在公開されていません。最初に書いた「FF LAND」の交渉状況も、現在は参照できません。その事自体は仕方ない (確かに、出版社にとって、版権や刊行までの状況というのは非常に高度な政治的問題を孕むものだということは知っています) のですが、出版社と交渉をはじめる以前に、少しは調査をしたらどうなんでしょうか。ファンサイトに一方通行のメイルを送りつける以前に。全体からすれば一部かもしれませんが、無駄な投票を呼びかけるのはファンをがっかりさせるだけなんじゃないでしょうか。

それから、時々「Poster & Graphic AKIRA」や「国際版 AKIRA」の復刊に協力してくれというメイルを送ってくる方がいますが、これが、僕の「Poster & Graphic AKIRA」と「国際版 AKIRA」の復刊に関する意見です。ハナから復刊を不可能と決めつけるのは前向きでないと言われる向きもあるかもしれませんが、それよりは、「ヘンゼルとグレーテル」や「GOOD WEATHER」のように、簡単に手に入れられる状況であるべき本がちゃんと復刊される方が重要だと思っています。いちいち上記のような返事を返すのも面倒になったので、ここで確認してもらったことにします。以降は返事をしません。だいたい、今まで返事した数名、誰一人として返信をよこさないじゃないか。失礼な奴らだ。

ということで、この復刊ドットコムがらみ(特に大友克洋関連)では、頭に来ることばかりです。従って、以降 Apple Paradise から復刊ドットコムへリンクを貼ることはしません。しかし、繰り返しになりますが、復刊ドットコムの事業全体が無駄だと言っているわけでは決してありません。他の作家さんで復刊も可能ではないかと思うものなど、サイト・ベースでなく、個人的には協力していこうと思っています。

2001.08.29

ご意見、ご感想などありましたら junya.thesphere [at] gmail.com まで。

 

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