「……僕たちにしかできないことだよね……」
「そうです。だから……」
Make a vow to Kiss
ようやく自分の気持ちに気がついた。
生まれたての初めての感情はまだまだはっきりしないものだと伝えたら、今はそれでも構わないと、キラ先輩は優しく微笑みながら受け止めてくれた。
何度も口付けを交わし、互いの存在を確かめる。
強くて柔らかくて温かい腕。
男の人に抱きしめられたことは何度もあるけど、今いるこの腕の中が一番安心できる場所になることは間違いなくて。
「このまま、を僕のものにしちゃいたい……、だめ……かな?」
耳元で囁かれた言葉に、私は早くなる鼓動を押さえることができない。
でも、今はまだだめ。
「……ごめんなさい……。もう少し待っててください……その……ちょっとまだ覚悟が……」
「いいよ、僕も焦らない。
生まれて16年しか経っていないんだ。僕たちの時間はまだまだ長いんだから」
光量を落とした薄暗い室内。
ベッドに腰かけて向かい合ったまま、キラ先輩と私は、自然に両手を重ねてしっかりと組み合わせていた。
「そのかわり……約束しようね……」
「……え……?」
「僕たちが守りきって、AAを無事にアラスカに送り届けよう?」
「あと少しで目的地に……辿りつくんですもんね……」
「……うん。L3のヘリオポリスを脱出してから、ようやくここまで来た。
これ以上はやらせない」
何度ぶつかって、いくつ人の命を奪っていったのだろう。
守り切れなかった命を、何回後悔して泣いたのだろう。
手を取り合えなかった友との別れを知っているから。
決定的に周りとは違う物を抱えて、生まれてきた同じ立場のキラ先輩と私だから。
すれ違いばかりが生まれて、ここに来るまで遠回りしてしまったけれど。
今やっと、守りたいと思う気持ちが同じだと気がついた。
守りたいと思うものが同じだと、気付くことができた。
「は僕が守るから」
「キラ先輩は私が守るから」
「「だから、AAを……帰る場所を一緒に守ろう」」
絡ませた指。互いの手はしっかりと組まれ。
私が顔を上げると、キラ先輩の唇が降ってきた。
廊下で無理やりされたのとは違う。
温かくて……優しくて……甘酸っぱさが私を満たしてくれた。
「……ない……てた……?」
既にアラスカの防空圏に入り、AAは明日には本部へ到着する位置。
私は静かに起き上がると、隣のベッドで寝ているニコルを起こさないようにして、シャワールームに入った。
少しうなされてしまったのか、背中が汗でベトついてしまっている。
着ているものをすべて脱ぎ捨てて、着替えを用意して、私はコックをひねった。するとシャワーヘッドの位置を確認してなかったせいで、頭から湯をかぶるはめになった。
「……ま、いいか……」
とりあえず顔にかかった水分を手で拭おうとして、お湯とは別の温かいものが流れていることに気がついた。
「……っふ……」
急ぎ頭を流れる湯の滝の下に持っていっても、涙は止まらない。
「……キラ……やだよぉ……
守るって……帰る場所を一緒に守るって約束……約束したじゃないっ……。
約束破るんなら……針千本……飲ませるんだからっ……。
……もういい、もういいから、私なんか守らなくてもいいから……。
だから帰ってきてよ、先に死なないでよ……キラぁ……」
足に力が入らない。立っていることができない。
私はシャワーのコックを閉めることもせず、その場に腰を落として膝を抱えて泣いた。
黒マント製作機から
ちょっと番外っぽく。別に読まなくても、話の進行上に影響はありません。
今現在、本筋にキラが出てこないんで……。
題名の『make a vow to Kiss』直訳して『誓いをたてるキス』です。
キラとヒロインが交わした約束は、それは1つの誓いでもあるんです。
同胞を選ばずに友人を選んだこと、そしてAAを失ってしまっては、帰る場所すらなくしてしまうこと。
だから守り抜くと約束し、誓ったんです。
そして最後のセリフ『私なんか守らなくても……』のくだり。
ヒロインは出撃前に見たキラとフレイのことを引っ張ってます。
帰ってきてほしいとは願っていても、もう彼が守るべき人は自分じゃないと考えてるんですね。
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