机に前のめりに体を預け、横を向いたミリィは、それまで固く握りしめていた手を徐々に開いた。
 使われていた年代は定かではない。が、古びたコインは相応の歴史を感じさせる。

 このコインはアリシアからケインへと渡る前は、どんな道を辿ったのだろうか。
 ミリィはふと、そんなことを考えた。
 しかし、そんなことはどうだっていいような気もした。
 いろいろな人々の手を渡り歩いていても、今はケインから託された宝物として、ミリィの手の中にあることは確かな事実なのだから。

   クシュン!
 軽いくしゃみをした瞬間、開いていたミリィの手のひらからコインが滑り落ちた。
「いっけない」
 慌てて体を起こして立ち上がったミリィ。落ちてそのまま転がるコインを追いかける。


 やがてコインは、灰色の靴にぶつかった。
 視線を下ばかりに向けていたミリィの目にも、当然その様が写った。
 カラカラカラ、とコインが音を立てて止まっていくが、動けないミリィはそれを拾い上げることもできない。
「だめじゃねーか、ちゃんと持っててくれって言ったろ?」
 ケインはコインを拾い上げると、彼女の手のひらに押しつける。
「……ふっ……」
 彼の言葉が引き金になったのか、張り詰めていた気が一気に緩んだのか。
泣き出しそうな表情のまま、ミリィは勢いよくケインに抱きついた。
「帰って来るんならもっと堂々と帰って着なさいよぉっ!」
 ワンワン泣き出した彼女の背中に手を回したケイン。

「ただいま」

 ミリィのこめかみでささやくように告げる。そして、腕に力を込めた。