2005/2〜私鉄王国関西、も今は昔…

 今月は先月の続き。今月は批判を承知でキビシイことをかきます(尚苦情はうけません あくまで一意見としてお読みください)。

 三岐鉄道で近鉄富田に出た後、富田でアーバンライナーの特急券を買い、そのまま大阪に向かった。近鉄富田から近鉄四日市まで普通で向かい四日市から津まで賢島行き特急、津でアーバンライナー難波行きに乗りついた。津で乗り継いだアーバンライナーは近鉄ご自慢のアーバンライナーNEXT21020系。この車両は全席が禁煙となっているため、愛煙家は3号車デッキとなりにある喫煙コーナーに行って一服することとなる。最近どこへいっても愛煙家は虐げられる傾向にある。これも時代の流れか。もうひとつ、車内の自販機で缶コーヒーを買ったのだが、すでにオリックスとの合併が決まった大阪近鉄バファローズのマスコットキャラクターが印刷された缶だった。来年以降は普通の缶コーヒーを売るのだろうか。しかし、あの一連の騒動での近鉄小林社長のコメント(とくに「プロテクトされへんよ」発言)に心底頭にきていた私としては、いまだにこんな缶使ってるんじゃないよと文句をいいたかった。
 このアーバンライナーは名阪間でJRの新幹線と勝負を繰り広げている。もちろん速度では到底敵わないのだが運賃の安さもあって健闘している。個人的には一因として新幹線は名阪間のみでなく対東京や大阪以遠の乗客も混じってくるからどうしても混雑することになってしまうし、その点でも新幹線と比べると「ゆとり」が近鉄にはあるのかなと思われる。
 車内には近鉄が「ゆりかご型シート」と宣伝するシートがならぶ。なるほど、すわり心地は悪くない。最近の特急車両は感心できるつくりのシートが増えてきた。天井に目をやるとやはり最近の特急車両の流行の間接照明となっている。そのためご他聞にもれず天井の照明の反射面は弧を描くような形で、白い。最近の特急車両では間接照明を採用する例が多いが、照明の淡い光で雰囲気を出すと言うのも理由にあるだろうが、穿った見方をすると、蛍光灯カバーが不要だから掃除が従来のグローブつきの直接照明より楽なのかも…。
 さて、列車は、新幹線とはルートが違い南側を回って大阪をめざしていく、サミットとなるのは大阪線の青山越え、ここには5600mほどの長いトンネルがある。北神急行が開通するまでは民鉄最長のトンネルだった。この青山越えの区間は以前は単線で、輸送力増強のためにこの長いトンネルの新線に切り替え、複線化された。このトンネルの前後には33‰の勾配がつづいているが電車のみの運転なのでこれくらいの勾配は軽くのぼっていく。青山を越えて下っていくとニュータウンの駅がちらほらと現れてしだいに奈良盆地の街中へと入っていく。ここまでくると完全に大阪への通勤圏内である。やがて高架にあがり右から奈良線が合流してくる。ここに布施駅があるのだがいまだにこの駅のつくりには納得がいかない。上下2層式の駅なのだが路線別に階がわけられているのである。これだとここから大阪方面に向かう場合、次の列車の発車を見て2階と3階を使い分けないとならない。関東にも京成に青砥という似た構造の駅があるが、こちらは都心方面が2階、逆方面が3階として方面別に階層を分けている、この駅で折り返しの列車も多くあるのだが、3階ホームから立体構造の引き上げ線を使って折り返し、2階ホームから発車するというきめ細かいことをやっている。
 近鉄難波駅は、これだけ長距離を走ってきた特急が滑り込むターミナル…という風情に乏しい。それは仕方のないことで難波では後参入の近鉄は、駅のスペースの幅が充分にとれなかったのだ。そこで到着ホームが1本、発車用のホームを島式1面として列車を捌いている。今日は難波駅前のネットカフェで一夜をすごす。
 翌日、朝早くから動くことにする。最初の狙いは南海汐見橋線である。さらっと書いてしまったが、汐見橋線というのはあくまでも通称で、正確には南海高野線の一部である。しかし、高野線の高野山方面の電車は岸里玉出から南海線に沿って高野線用に作られた複線をとおり、難波から発着しているので、本来のターミナルの汐見橋から岸里玉出までの間が別線のようになってしまったのだ。高架化で、いまでは直通も不可能な形となっている。汐見橋の駅は、高速道路の陰に隠れるようにしてぽつんと建っているようにみえた。駅舎は開業当初からのものがそのままで改札の上には昔のレリーフも飾られている。その下に並ぶ自動改札機がなんともミスマッチである。列車はおおよそ30分に1本、ワンマン運転の2両編成の電車が走ってくる。大阪都心部に近い路線とは思えない光景である。途中にとまる駅も大都会の中で存在が忘れかけられているような感じであった。東京にも京成の博物館動物園というなんとも不思議な駅があったが、あれを超越する存在である。「こち亀」の舞台が大阪だったら間違いなくマンガにでてきたであろう。
 岸里玉出から、高野線電車で三国ヶ丘まで行く。それにしても、南海の運賃は高い。営業が苦しいのかなという目でみると、なんとなく途中の駅も手を入れる余裕がないのかなと思ってしまう。確かに南海には長く残して欲しいと思う駅舎も多いが、古くとももうちょっと手をいれられないものか…。
 三国ヶ丘から、阪和線で天王寺へ、それから大阪環状線で京橋へ向かい、片町線(学研都市線、以後省略)にのってみることにした。片町線と京阪交野線を乗り比べてみようというわけである。この両線は乗換えとして案内されていないものの片町線の河内磐船、京阪河内森の両駅が近い位置に存在しており、徒歩で歩けば乗換えができる。ご存知の通り片町線はJR東西線と直通となっているために車両は207系で固められており、長尾以遠の電化によりサービスレベルが格段に上がった路線である。その結果、京阪との競合が以前より激しくなってきた。さて、三国ヶ丘からここまで、先日利用が可能になったJR東日本の「Suica」で乗ってきたのだが、河内磐船で降りようとすると残額が足りなかった、しかしICOCA対応精算機でチャージがちゃんとできる。便利。このとき気づいたのだが、チャージの際のカードの挿入方法が東と西で異なっているのである。東日本は従来の磁気カードと同じ挿入口からカードを入れてチャージ、西日本ではカードポケットのようなところにカードを差込み読み取る仕組みとなっていた。どちらが優れているかといわれると、東日本方式は従来と変わらない方法なのでわかりやすいし、処理中にカードが抜かれて処理エラーになったり(すると思う)という心配がないという長所があるし、西日本だとカードが目に見える場所にあるので安心感があるのかな、それに機構も簡素にできる。自分も券売機にSuicaをいれてチャージしようとしてカードが詰ってしまったということが数回あるし…。やはり東は「不慣れな人でもわかりやすいように」という方針、西は「わからなければ聞けばいい、わかりやすさより合理性」と言った感じなのかな。こんな細かいところにも土地柄がでているように感じたものである。
 さて一方京阪河内森駅。京阪交野線のテコ入れのため、交野線直通のK特急がラッシュ時に設定されるようになったが日中は枚方市折り返しとなっている。そして枚方市駅では交野線は駅を出てすぐに急カーブで向きを変える線形のため、乗り換えには必ず階段を使って隣ホームへいかねばならない。特急の枚方市停車も交野線との連携を考えての方策だろうけども、やはり乗り換え抵抗が大きいと感じた。もっとも片町線と交野線は完全に平行している路線ではないし、河内森←→河内磐船の乗り換えも便利とはとてもいえないので、ある程度の棲み分けができる関係とはいえそうだ。関東のJRと民鉄でよく見られる関係に近いと感じた。しかし…利便性を考えるなら素人考えではあるけれども交野線を枚方市折り返しにするのではなくて、普通列車としてでもいいから本線に乗り入れて萱島とかで準急接続にして乗り換え、とするとかできれば便利なのでは…
 続いて、関西民鉄と言えば、やはり阪急についても話さざるをえまい。先に予告しておきますが、厳しい意見ばかり述べさせていただきたい。正直、ここ数年の阪急には失望ぎみなのである…。
 周知の通り、阪急はここ数年新車両の投入を極端に控えている。やっと京都線用特急車両として9300系が登場したが、他の車両投入の話をきかない。新車両の投入をしないと言うことは、車両性能も旧来のままとなるから、当然スピードアップは望めない。対するJR西日本は最高速度130km/hという新快速を走らせているというのに…。つまり、阪急は完全にスピードアップでの対抗を捨てているのだ。阪急は、特急停車駅を見直して緩急接続を図ることで途中駅からの利便性をあげる、ということらしい。それはわかる。
 しかし、そのような消極策だけでいいのだろうか?確かにそれでも阪急は、京都線を例にとると京阪間で71km/hという表定速度で特急を走らせてはいる。関東で京急を例にだすと、品川〜横浜間で最高速度120km/h、途中2駅停車で80km/h近い表定速度をだしている。横浜以遠も計算にいれると、横浜〜南太田までの市街地の線形のわるさと、上大岡以南の入り組んだ地形に沿って走っている線形に邪魔されて60km/h台後半まで表定速度はおちてしまっているが…。しかし、どう見ても京都線、神戸線は京急と比べてはるかに線形がいい。車両さえ対応できれば120km/h、130km/h運転も充分できるはずだ。途中駅からの利便性、といっても、新快速も高槻に止まるようになっているし、停車駅が増えても運転速度アップで時間短縮という戦略はとれないのか。京阪間の利用者のみでなく、高槻辺りから乗り継いでくる途中駅利用客にとっても恩恵があるはず。阪急はスピードダウンの改正しかここのところ聞こえてこない。関東民鉄を見ているかのようである。
 と、関東民鉄を引き合いにだしたけれども、その関東民鉄は逆に最近積極的な話が多くて、まことに面白いことになってきた。湘南新宿ラインの設定の影響もあるけれども、東横線に特急が登場したし、小田急も湘南急行、そして次のダイヤ改正ではやくもこれが消滅して快速急行が登場となった、対JRだけではない。小田急は京王相模原線にも勝負をいどむべく、多摩急行まで設定してしまった。JR東日本は西日本のようにスピードアップしていないのでは?というなかれ、車両的には130km/hくらいE231系は問題なく出せる性能だと思う、実際難なく120km/hで走っているのを見ている。出さないのではなくて、列車本数の都合でだせない、というのが本当のところだと思う。E231のようにコストダウンを狙った車両が登場した理由でもあるけれども、これだけのハイペースで車両を製造していても、いまだに在来の車両を見かけることが多い、それだけ大変な量の車両をJR東日本は保有しているのだと言うことを念頭においておきたい。
 さて、その話題はおいておいて、阪急ウォッチングとなると私は十三に行くことが多い。やはり3線の列車があつまるというのがポイントであろう。ここで見ていて気づいたこと。車両修繕を行った車両と、新車両9300系。どちらもE231で初めて取り入れられた緑色のガラスがはまっていたのである。これはちょっとショックだった。阪急といえば、鉄道業界ではトレンドの発信源だった、という印象が個人的には強かった。ホームの待合室設置もそうだし、傾斜タイプの自動券売機もそうだった。しかし…その阪急がJR東日本の生んだトレンドに追従するとは…。昔は「私鉄王国」といわれていた関西だが、いまや関東のほうが「私鉄王国」なのかもしれない…。そういえば、今の阪急や京阪の停車駅のパターンも図らずもなんとなく関東私鉄っぽい感じである。
 そんなわけで、一個人の目からみたレポをこれで終わりにしたいのだが、最後に一言、関西民鉄に、もっと元気を出して欲しい。本当に、以前私鉄王国と言われていた関西の今の姿は、個人的には信じがたいです…。関東民鉄もまだ努力はたりないけれども、現状、関西より関東民鉄の方がずっと頑張っているとみてます。

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