〜アンテナ百選・NO.06〜10〜



  No.06 NTT DoCoMo 衛星携帯・自動車電話の自動追尾式アンテナ

 ドコモでサービスされている衛星携帯・自動車電話用の自動追尾式アンテナです。通常、レドームに覆われていて中身は拝めませんが今回は特別にお見せしましょう(^_^;)。

 外観は右の写真の様になっており近年ではある程度の規模の客船に搭載されていますし、港ではプレジャーボートや漁船などにもこのアンテナを見ることができます(※文末の写真は実際の船に搭載されている様子)。

 客船では、旧沿岸船舶電話(250MHz 帯)がリプレースされ、デッキに出て良く注意すれば見ることができるでしょう。大きさは直径 30cm程度で小ぶりにまとまっています。

 一応仕様上は先の船舶を含め自動車などへの適用が可能ですが、車についているのは見たことがありません(^_^;)。

 そして次の写真がアンテナの中身です。ちょっと不鮮明で恐縮ですが、かなり写真(あなろぐ)を拡大しているのでご了承下さい。

 構造的には平面パッチパターンの様で横に 4 つの素子が見えます。方位角方向は、機械追尾で仰角方向はある程度ビーム幅を持たせた上で、おそらく電子追尾可能なはずです(^_^;)。

 詳細な資料がないので、細部への言及はできませんが、航空機などに搭載される自動追尾アンテナと、機械追尾部分を除き似た構造と言っていいでしょう。

 航空機用では、四方向の面にパッチパターンアンテナが配列された固定パネルがあります。

 具体的な大きさは直径 300mm×高さ 45mm 程度、重量 3Kg 程度となっています。一度でいいので、このアンテナを使って路上走行中に通話をしてみたいものです。
 船上からは、船舶公衆電話によって実験したことがありますが、遅延があまりにもひどく笑ってしまいました。相手が携帯ならなおさらです。

・貨客船に取り付けられたアンテナ。船内の公衆電話に利用されている。概ね日本の領海内で利用可能。




  NO.07 みかか・パネルリフレクター付きコーリニア(5段)

 これはみかかドコモの、5 段ダイポール構成のコーリニア・アンテナでパネルリフレクター(反射板)付きのものです。指向性は、見る限りブロードかと思われます。

 これに似た形状アンテナで、水平偏波のものは放送用(特に地方局や非常局)に採用例が多く、近年では移動体通信用で見かけることは少なくなっています(ただし水平偏波の場合は、コーリニアとは呼称しないと思います)。

 かなり古くから建っているようですが、そのまま現役で残っているようです。情報によると、写真のものはクイックキャスト用だそうです。このほかかつての自動車・携帯電話用では、高速道路沿いなどではエリアの線的カバーのため、コーナーリフレクタ(V 型リフレクタ)も採用されることがありました。




  N0.08 鉄道無線基地局ノーマル 350MHz 帯アンテナ

 これは都心の JR 駅に設置されている、列車無線通話用及び、一斉同報送信用の八木アンテナです。周波数は 350MHz 帯で半複信又は複信を用います。

 通常、鉄道は線的な無線エリアとなり空間波での一局によるカバーは、なかなか至難の業です。

 従ってこのような指向性アンテナを用い、複数の基地局で線的カバーをするのが一般的です。写真上部のものは、放射器に樹脂製カバーのついた比較的新しいもの、下部のものはループ型でむき出しという、少々旧型のものです。

 八木アンテナの形態としては、最もポピュラーと言って良くコーナーリフレクタ(反射器)がないだけで、UHF テレビアンテナとし大して構造は変わりません。

 また移動体通信の中でも、あまりスポットのあたることがないこの無線ですが、人身事故発生時など緊迫した通話が聞こえてくる、という無線でもあります。電車により通勤・通学される方は、列車無線の受信できる無線機(もしくは受信機)を携帯されることをお勧めします。

 先のような事故発生時はもとより、諸般の理由による遅延発生時にも詳細な情報が即座に流れるからです。当該路線以外の受信は厳しいですが、一斉同報用チャンネルを受信すれば首都圏の情報は、ほぼ網羅できます。

 私自身これによって、何度人身事故(死にたい人はこっそり迷惑をかけずやって欲しい<ボカスカ)による遅延を回避したか、わかりません。特に JR はたるんでいるのか、事故や遅延発生時のアナウンスが非常に遅く、内容もあいまいなのでまるであてになりません。

 アナウンスされた頃には、もう手遅れと言うことが大半なので、情報源としての列車無線はとても重宝するのです。




  N0.09 船舶用レーダーアンテナ

 これは沖縄で取材した、船舶用レーダアンテナです。形式的には、1次元配列のアレイアンテナになります。

 構造は、導波管スロットアレイといって、全体が導波管になっており放射面に、斜めに多数のスロット(細長いすき間)を設けた形になっています。

 また視界の悪い時に目の役目をするのが、このレーダーです。霧の空港と同じく視界のきかない海上は、ロマンティックかもしれませんが航行する側としては、あまりよいもではないはずです。

 通常観測用などを除き、船舶には気象レーダーはあまり積まれていないので、それほどの出力は出ていないと思われます。それでも使用する周波数が高いため、あまり長時間そばにいたくないものです(^_^;)。

 このアンテナは 360゜に棒状の部分が回転し、船舶全周に向けをくまなく電波の送受信を行います。




  N0.10 航空用レーダーアンテナ

 右の写真は戦闘機に搭載された、アクティブ・フェイズド・アレイアンテナです。船舶用が 1 次元配列なのに対し、こちらはアンテナ素子が2次元に配列されています。

 中央の板状に見えるのが、アンテナ本体でちょうど戦闘機先端のカバーを開いた状態になっています。

 2次元アレイの中でもこのようなアンテナは、電子式走査を行うためにアンテナ自体は固定されています。またこのようなフェイズドアレイを特に、アクティブ型(能動型)と呼び数十度の角度に、指向性を可変出来るようになっています。

 船舶用と違うのは、電子走査式(可変指向性)なのでアンテナを動かすことが必要ない、と言う点に尽きるでしょう。可動部分が実質なくなるため、信頼性も高くなっています。

 昔はホーミングアンテナと言い、パラボラのディッシュ(反射鏡)自体を小刻みに動かすレーダーアンテナもあったくらいです。