〜アンテナ百選・NO.11〜15〜



  No.11 クイックキャスト(ポケベル)用コーリニアアンテナ

 21 世紀を目前にすっかり廃れてしまったポケットベル用のアンテナです。2007 年 03 月 31 日にはついに NTT ドコモのサービスが終了停波してしまいました。

 アンテナは携帯などと違い、ひっそり立っている上数が少ないので、お目にかかったことのない方も多いと思います。また残念ながら撮影時期がおそすぎたのか、情報によるとこの基地局は既にアンテナが撤去されたあとの模様で(^_^;)のこされているのは支柱のようです。

 実際にはこれにごく小径のやたらと長細い(携帯用とくらべると異様に長くみえるが波長の関係でしょう)アンテナが、何本かずつ取り付けられていた模様です。

 形式的にはコーリニアで、写真のように並んで建っていることが多いようです。ポケットベルは基本的に、同一周波数で複数基地局から電波が送信されています(例えば東京なら 7 局程度でカバー)。

 同一周波数・同時送信では、干渉によるビートノイズで通信不能になってしまうので、各基地局でキャリアの位相を同期させています。現在主流の NEXT システム(FLEX-TD)では、より精密な同期のため GPS を使うこともあるようです。

 また、1 キャリアあたりの出力も 250W と桁違いなのもポケベルの特徴です。280MHz 帯というおいしい周波数帯と、この出力により少ない基地局で広範囲をカバーでき、しかも不感地帯が極端に少ないという利点があります(実際エリア内では鳴らないことの方が少ない)。

 一時期は全国で 1000 万以上のユーザを抱え、呼び出し時に輻輳まで発生していたのがウソのようですが、サービス終了前のある時点では 100 万程度のユーザ数が残るのみでした。

 いち早く、E メール転送ができたり(97 年当時は i MODE すらなく画期的だった)、ニュース配信サービスなどとても便利だったのですが、移動電話の低料金化などにより人気は低迷、時代の流れに取り残されたメディアとなってしまいました(02DO 契約だった NEXT 端末が手元残っています)。

 それかアップがこちらの写真です。てっぺんの長細いのは避雷針でしょう(^_^;)。
 




  No.12 航空無線受信用・自作ヘンテナ

 ヘンテナに関しては市販品が皆無に等しいので、自作品を特別に掲載します(^_^;)。ヘンテナは日本のアマチュア無線家が考案した、シンプルかつ高性能なループアンテナです。

 写真は私が実際に制作したヘンテナで、航空無線受信用として 130MHz 付近に設計されています。垂直偏波用になっているので、ループエレメントは寝かせてあります。
 ループ型ですから、電波を磁界として捉えます。従ってループエレメント自体は、電界面とは直交する状態になると、垂直偏波になるというわけです(給電部が垂直になっている、と言った方が解りやすいでしょうか)。


 ヘンテナは一見、形状が変なので付いた名前ですが、名前に似つかわしくなくシンプルな構造ながら、約 6dB 程度の利得があります。指向性はわずかに、8 の字型を描きますがかなりブロードなので、回す必要もありません。写真のものは、まったくのあり合わせで造りましたので、スタバのコーヒー数杯分?しかかかっておりません(^_^;)。

 ループエレメントには、3.5mm^2 の銅単線を用い、大きさは横 1150mm X 縦 380mm 程度です。長手方向のブーム(支持棒)には、強度が必要なのでアルミパイプを、左右端の垂直部材には小径の塩ビパイプを利用しています。

 垂直偏波モードでの設置は上の写真のように、右端の腕木をクロスマウントなどでマストへ固定するのがベストです。

 間違っても下の写真のようにブーム中央にクロスマウントを取り付け、ループエレメント中心にマストなどの金属が縦にかかる状態で固定してはいけません。



 この写真のようにループエレメント中心にマストなどの金属がかかってしまうと、せっかくのヘンテナの性能がガタ落ちになってしまいます。
 かくいう私も最初はうっかりこの建て方にしてしまい、自宅から 20km 強にある東京ヘリポートの「江東フライトサービス」がノイズだらけで、メリット 1〜2 程度というていたらくで受信不能となっていました(超ボカスカ)。

 しかし正しい建て方に直した途端、RS54 程度で明瞭に受信できるようになったのです♪。この差は劇的でその時までヘンテナの高性能を半分も発揮していなかったことに落胆するとともに、ヘンテナの真の実力に改めて驚かされたものです。
 もしこの例のように変な建て方をしている場合はぜひ、正しい建て方に直すことを強くお勧めします。


 本題に戻りますがヘンテナは無線用だけでなく、テレビや FM ラジオの簡易受信用としてもなかなかの性能を発揮します。また比較的短い波長であれば、小型になるので八木と同じ形状にして、利得を稼ぐこともできます。

 このように、ちょっと手間をかけるだけでただ同然の、高性能アンテナができるなんて素晴らしいと思いませんか?。みなさんも、機会があればぜひ制作して、そのすばらしさを実感してみてください。
 八木・宇田アンテナに次ぐ?!、日本人の名発明だと思うのですがいかがでしょうか。




  No.13 防災無線個別受信用・垂直ダイポールアンテナ

 防災無線といえば首都圏など都心部では、地区ごとに受信所がありそこのスピーカーから通報が流されるわけですが、地方では個別受信の地域も結構あります。

 離島や山間部などがそうで、これはそのための 60MHz 帯用垂直ダイポールアンテナです。受信機は、沖電気や NEC などを見かけます。写真のものは某伊豆七島でみつけたものです。

 家がまばらで、密集していない場合やはり個別受信でないと、いろいろと不都合があるためでしょう(一つの受信所でカバーできる範囲はたかがしれているので)。個別受信ですと、いやな反響や残響などで聞きづらいということもないので、うらやましく思います(^_^;)。個別受信の地域では、皆が集まるような部屋に受信機が設置されております。形は、片通話インターホンの出来損ないみたいな感じです。

 場合によっては、付属のロッドアンテナの場合もあるようです。以前ご紹介した、地線付き八木みたいな地域もありますが、垂直ダイポールも個別受信用としては、比較的多いのではないかとおもいます。




  No.14 業務無線用・スリーブアンテナ

 これは首都圏でみかけた、業務線用のスリーブアンテナです。左側の黒い棒ではなく、右側のものがそれです(^_^;)。

 大きさからすると、VHF 用の物かと思います。隣には UHF 用とおぼしき同型アンテナが建っていました。またあまり、ズームの効かないカメラで撮ったものなので、かなり拡大してあります。従って、少し状態の悪い写真で申し訳ありません。

 あまりにも、映りが悪かったため後日撮り直した物を、左側に追加掲載しておきます。別のアンテナですが、同様に VHF 帯の物です。

 その他スリーブ型でポピュラーなものといえば、航空管制用ですとか身近なところでは、無線 LAN の AP にも多く使われています。
 航空用では大概、エレメント全体が同一径の筒に入っていて、一直線の円筒形に見える物が多いのが特徴です。
 それからかつては、MCA の車載用にも本当に小さくて短い、スリーブ型があったように記憶しています。

 また、グラウンド側放射素子のバリエーションとして、写真のようなタイプ以外に逆 L 字型をした、エレメント形状のものも存在します。

 基本構造は 1/2λダイポールそのものですが、グランド側放射素子の内側に給電線が貫通しているのが、特徴でしょうか。




  No.15 航空用マーカービーコン・ダイポールアンテナ

 これは航空機が着陸時に使用する、ILS を構成する要素のうちのひとつ、マーカービーコン局です。

 航空機に滑走路端からの、大まかな距離を知らせるためのもので計器板への表示とともに、音でもその位置を知らせるようになっています。

 マーカービーコンには、滑走路端からの距離に応じて外側から順に、アウター・ミドル・インナー、の三つがあり写真のものはミドルマーカーのものと思われます。

 形式は2素子ダイポールで、70MHz 帯の VHF(低出力)を使用しています。指向性は垂直面に対して、扇形になるのが特徴です。
 そのため、ちょうどアンテナ上空を航空機が通過する際にだけ、計器が反応するようになっています。